請願

 

第166回国会 請願の要旨

新件番号 2203 件名 高齢期を生き生きと安心して暮らせる住まいと介護保障に関する請願
要旨  政府が実施した介護保険制度の全般見直しは、日に日に問題点が明らかになっている。短期入所や通所サービスを含む施設利用者からの食費や部屋代の徴収は、全国で少なくとも五〇〇人を超す経済的事情での施設退所者を生み出している。軽度者に対する新予防給付では、これまで介護保険でレンタルされていた車いすや介護ベッドが取り上げられ、ホームヘルパーの利用も大きく制限されている。また、地域包括支援センターに介護予防プランが一元化され、居宅介護支援事業所への新予防給付プラン委託は、ケアマネージャー一人八件の上限が付けられた。ケアマネージャー一人三五件が基準とされ、四〇件を超えると大幅に報酬が下がり、逆に重度者を多く担当し新予防給付を一件も受けない事業所に特定事業所加算を付けるという措置が導入された。これによるケアプラン難民が数多く生み出されようとしている。一方、介護保険料は、全国平均で二四%もの大幅な引上げとなり、地域によっては月五、〇〇〇円を大きく超える保険料も続出し、高齢者の負担能力を超えている。高齢期という人生の総仕上げの時期に、生き生きと安心して暮らせる住まいと尊厳が守られた十分な介護が保障されることを求める。
 ついては、介護保険制度の現状及び高齢者の生活の実態を直視し、これまでの政策を抜本的に見直し、次の措置を採られたい。

一、介護保険施設を整備し安心して入れるようにすること。
 1 特別養護老人ホームの深刻な待機状況を改善するため、施設整備補助制度を復活させること。また、第三期事業計画に際して各自治体に指示した施設・居住系サービス抑制の参酌基準を撤回するとともに、計画的な施設整備計画の推進を図ること。
 2 介護療養型医療施設の廃止方針を撤回し、必要な病床数を確保すること。また、医療療養病床の大幅削減を撤回すること。
 3 食費・部屋代の自己負担化が引き起こしている施設退所、利用抑制の実態を調査し、必要な措置を採ること。 
 4 施設における介護事故の実態調査を国の責任で行うこと。
二、生活に必要なサービスを引き続き利用できるようにすること。
 1 新予防給付の対象となる要支援一・二の判定は、真に状態の改善可能性が高い人を選定する方法に改善すること。
 2 参議院の附帯決議及び厚生労働大臣答弁で国民に約束したとおり、新予防給付においても従来のサービスが受けられるようにすること。
 3 介護予防のホームヘルパーや通所サービスの月額制報酬を改め、サービス提供時間・回数を評価した報酬とすること。
 4 一律的な福祉用具の貸与制限を撤回し、介護ベッドについては立ち上がりが自力で困難な人も含めて貸与の対象とすること。
 5 ケアマネージャー一人八件の制限を行わず、利用者のケアプラン作成の機会と事業所選択権を保障すること。
三、高齢期を地域で安心して暮らせる新たな住まいづくりを進めること。
 1 地域包括支援センターが、広大な担当地域を持っていたり、民間法人に丸投げ状態であったりするなど公的責任にふさわしい機能を果たしていない現状を改善するため、財源確保を含む緊急措置を講じること。
 2 地域における小規模多機能型施設の整備については、全国各地で住民の手によってつくられている宅老所の実績と経験を評価した基準・報酬を制度化すること。今回制度化された小規模多機能居宅介護については居住機能を含めるとともに基準・報酬を大幅に改善し、地域ごとに整備促進を図ること。
 3 地域介護・福祉空間整備交付金については、限度額方式によらず、自治体の作成した整備計画に沿って算出した必要額を交付すること。
 4 在宅を支援する多機能施設にあっては、空家・既存建物を活用するものについては、家屋の買上げ、借上げ、また、その改造に要する費用などを助成すること。
四、介護の財源は公的責任で確保し、高齢者・国民に負担を押し付けないこと。
 1 被保険者の範囲(現行四〇歳以上)の拡大については、障害者施策の介護保険への合併に直結するとともに国民に新たな負担を課す問題であり、関係者の合意なく行わないこと。
 2 介護保険料及びサービス料について国として新たな低所得者軽減措置を講じること。 
 3 介護保険財政における国の負担割合を少なくとも三〇%以上に引き上げるとともに第一号被保険者の負担割合を縮減すること。当面、二五%は最低負担し、調整交付金は別枠とすること。なお、自治体財政からの一般財源投入について介入しないこと。
 4 介護報酬については、サービスの向上、安全性の確保、事業者経営の安定、職員の労働条件の改善を図ることができるよう引き上げること。特に、報酬切下げは事業所経営を困難にし、介護従事者の大幅な賃金ダウンや雇用破壊を引き起こ しており、緊急に実態を把握し、改善を講じること。
 5 介護報酬の引上げが利用者負担につながらない措置を講ずること。

一覧に戻る