請願

 

第165回国会 請願の要旨

新件番号 284 件名 じん肺とアスベストの根絶に関する請願
要旨  じん肺は、最古にして今なお最大の職業病である。いまだに二万人近くのじん肺有所見者がおり、毎年一、○○○名前後が最重症患者として新たに認定されている。また、毎年一、○○○名以上が死亡していると言われている。数多くのじん肺裁判の結果、企業責任は明確になっており、二〇〇四年四月に出された筑豊じん肺最高裁判決によって、炭鉱における国の加害責任が明確になり、米海軍横須賀じん肺によって、造船における国の責任も明確になっている。そして、本年七月の東京地裁判決、熊本地裁判決で、いずれもトンネル工事についての国の責任も明確になっている。ILO(世界労働機関)・WHO(世界保健機関)は、二〇一五年には世界中からじん肺を根絶すべきである、そのために各国政府はじん肺根絶計画を策定すべきであると提唱している。日本も、我が国最大の職業病であるじん肺を遅くとも二〇一五年には根絶するための抜本的な制度改革に取り組むべきことが強く求められている。また、アスベストは、じん肺の原因物質であるとともに、強い発がん性を有していることが明白になっている。安全衛生法施行令が改正され、二〇〇六年九月から石綿及び石綿をその重量の〇・一%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されることになったが、まだ多くの例外が残っており、今後アスベストを使用した建物の解体等によってアスベスト粉じんによる大量の被害発生も危惧(きぐ)される。二〇〇六年三月から「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行されたが、救済の対象となる指定疾病を中皮腫(しゅ)と肺がんに限定するとともに、救済給付金も労災法や公健法に比して低額に抑えるなど、極めて不十分な内容となっている。また、トンネルや炭鉱、金属鉱山などじん肺を多く出してきた職場では、じん肺のほかにも振動病が多発しており、その根絶と被害救済も課題となっている。厚生労働省は、振動障害の医学的検査、労災認定基準に関して一九七七年に発出した通達を改定しようとしているが、その内容は医学界等の合意もないまま、振動障害に苦しむ患者を切り捨てるものになりかねない。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、遅くとも二○一五年までに日本におけるじん肺根絶を実現するため、じん肺法、労働基準法、労働安全衛生法等関係諸法律を速やかに改正すること。
二、じん肺多発の継続を放置する関係省庁の実態(政令・省令の不備、監督等の労働行政の不備等)を調査し、速やかに改善すること。
三、じん肺を多発させているトンネル建設工事、造船、各種製造業、建設業を始めとするすべての職場における粉じん対策を徹底すること。特に、最大のじん肺多発の職場であるトンネルについては、粉じん測定の義務付け、粉じん作業時間の短縮などを直ちに実施すること。
四、速やかにアスベストの完全禁止を実現すること。
五、振動障害患者の切捨てにつながる認定基準の改定を行わないこと。

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