請願

 

第165回国会 請願の要旨

新件番号 180 件名 父母・学生の負担軽減と私立大学の充実に関する請願
要旨  私立大学・短期大学(以下「私大」)は学生数で七五%、学校数で八〇%を占め、国民の高等教育を受ける権利を保障する役割を担っている。私立学校振興助成法と国会附帯決議(一九七五年)は、私大の振興を図るため、私大経常費の二分の一補助の早期達成を目標として定めている。ところが私大経常費への補助率は、一九八〇年度の二九・五%をピークに減少し、二〇〇三年度には一二・一%まで低下している。また私大への国費支出は、国立大学法人と比べておよそ五分の一、学生一人当たり一八分の一程度しかなく、大きな格差がある。経常費補助が長年低水準に据え置かれたため、私大の教育研究条件の改善・充実を学費に依存せざるを得ない構造がつくり出され、国立大学法人の一・七倍もの高学費の要因になっている。このため、進学や修学を断念せざるを得ない生徒・学生が毎年生まれている。さらにここ数年、経常費補助のうち教育研究の基盤を充実させる一般補助が抑制・削減され、特定分野に対する特別補助が増額されている。これでは学費負担の軽減は進まず、逆に学部・大学間の格差拡大が進み、私大全体の教育研究の向上を図ることは困難である。世界的に見ても日本の高等教育予算はOECD加盟国の中で最低水準であり、また国際人権規約の高等教育の漸進的無償化条項を留保し続けているなど、日本の高等教育政策は余りに貧困と言わざるを得ない。大学が本来持つ機能・役割を自律的に果たすことによって、地域・日本・世界の発展に貢献するためには、高等教育予算を大幅に引き上げることが必要である。そして私大全体の教育研究条件の改善・充実を進め、父母・学生の学費負担を軽減する総合的な施策を実現し、だれもが安心して大学教育を受けることができるようにすることが求められる。
 ついては、当面、次の措置を速やかに採られたい。

一、高等教育予算を大幅に増額するとともに、国立大学法人、公立大学、私立大学の予算配分格差を是正して、国民の教育を受ける権利を等しく保障するために、次の内容で充実・改善を図ること。
 1 高等教育予算をOECD平均並み(対GDP比一・〇%)に増額すること。
 2 一般補助を軸に、私大経常費二分の一補助の実現をすること。なお、段階的に私大経常費補助の増額を図るための措置として現在の一般補助額(約二、〇〇〇億円)を倍増すること。
二、経済的格差の拡大によって大学への進学が困難となっている学生を支援するために、日本学生支援機構の奨学金事業を、次の内容で抜本的に充実すること。
 1 無利子奨学金枠の拡大を基本とした育英奨学金制度の充実改善を図ること。
 2 給費制奨学金制度を創設すること。
三、国際人権A規約(社会権規約)第一三条二項(C)高等教育における無償教育の漸進的導入条項の留保を撤回すること。
   日本政府は、国際人権規約の高等教育の漸進的無償化の導入について、四半世紀にわたって態度を留保し続けている。こうした態度をとっている国は、国際人権規約を批准している一五一か国中、日本、ルワンダ、マダガスカルの三か国のみが留保しているだけである。このことが、世界に類を見ない高学費をもたらす要因でもあり、国際連合の社会権委員会は、日本政府に対して無償教育の漸進的導入の留保解除を要求して、その検討状況について二〇〇六年六月末までに報告することを求めている。

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