請願

 

第164回国会 請願の要旨

新件番号 2518 件名 いつでもどこでもだれでも医療にかかれる優れた医療制度を守り拡充することに関する請願
要旨  我が国の医療制度は、いつでも、どこでも、だれでも保険証一枚で必要な医療が保障される制度であり、WHO(世界保健機構)からも世界一との評価を得ている。しかし、第一六四回国会に、この制度を破壊しかねない制度改革関連法案が提出された。改革案では、医療保険を都道府県単位に再編しようとしているが、地域の医療費水準が、直接住民の保険料や医療機関の診療報酬、自治体財政などに跳ね返る仕組みにされることから、自治体は保険医療費の抑制を目的として住民、医療機関の保健・予防・医療活動や地域の医療の在り方まで管理せざるを得なくなる。国は、保険医療費の抑制を自治体間の競争を通じて実現させようと各都道府県に「医療費適正化計画」の作成を義務付け、平均在院日数の短い自治体などを目標に、五年間で地域の平均在院(入院)日数や生活習慣病患者及び予備軍を削減させる仕組みまで導入しようとしている。しかし、医療費適正化のための重要な柱とされている生活習慣病対策は、四〇歳以上のすべての国民を対象に、その所属する医療保険の保険者における生活習慣病健診と生活指導を義務化するものであるが、それは疾患への罹患(りかん)を自己責任としてとらえ、個々の自己管理と努力は促すものの、国は、国民生活を取り巻く環境や収入・労働条件の改善などを行おうとはしていない。同じように高齢者を対象とした新たな医療保険の創設も、高齢者の保険医療費の削減が目的となっており、高齢者の医療を別枠にすることで高齢者の医療費は、高齢者が自分で負担するという負担と給付の関連付けが強調されている。そのためすべての高齢者が、生活の糧である年金から保険料を天引き徴収されようとしており、窓口負担の引上げ、入院時の居住費・食費の保険外負担化なども予定されている。また、更なる保険医療費の抑制のために、四月の診療報酬改定では、高齢者を中心とした長期療養患者について保険で認める入院期間を更に短縮し、自宅や介護施設などでの在宅療養、在宅終末死を強要する流れも強められようとしている。このような保険で見る医療範囲の限定・縮小化などを通じた混合診療解禁の動きは、今回の制度改革によって法律的な整理が行われ、医療制度を保険のきく医療ときかない医療を併用する形に転換させようというところにまで至っている。これでは、枠組みとしての国民皆保険制度は残っても、すべての国民に等しく医療が保障される制度ではなくなってしまう。国民に過重な負担を押し付け、生命と健康をお金のあるなしで左右するような医療制度改革は中止し、これまでの医療制度の良いところを守り、むしろ拡充する方向で再検討するよう求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、国民のだれもが、安心して医療を受けられるよう、国の責任において必要な医療を保障すること。
二、医療制度改革の中身を次の意見を踏まえて見直すこと。
 1 高齢者の命と健康を軽んじ、人間らしく生きる権利を脅かす高齢者医療保険の創設には反対すること。 
 2 高齢者の窓口負担増、高額療養費・人工透析の負担上限引上げ、入院時の食費・居住費の負担化などにより、患者から医療を受ける権利を奪わないこと。
 3 自助努力ではどうにもならない暮らしや労働条件の悪化責任に目をつむり、国民にだけ自己責任を押し付ける生活習慣病対策は見直すこと。
 4 医療費適正化計画制度の導入によって地域の住民・保険者・医療機関・自治体を、果てしない医療費引下げ競争に巻き込む医療保険の都道府県単位化には反対すること。
 5 公的保険医療に使う医療費を削減する一方で、お金がなければ良い医療が受けられなくなる保険医療と保険外医療の併用(混合診療)制度を拡大することはやめること。
 6 地域的偏在を是正するためにも、全体として不足している医師・看護師の確保のための政策を確立すること。

一覧に戻る