請願

 

第164回国会 請願の要旨

新件番号 852 件名 高等教育無償化条項の留保撤回・学費負担の軽減、高等教育予算の増額に関する請願
要旨  国際人権規約(一九七九年発効)のうち、高等教育への無償教育の漸進的導入をうたった「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(以下「社会権規約」)第一三条二項(C)に対する政府の留保の撤回を求める。国会においては、過去二度にわたって留保撤回の検討の決議がされた。国際人権規約批准承認時の国会審議において外務大臣は「留保条項なしに批准をするのが望ましい姿」「解除する方向に努力をし、また、そういう責任がある」と答弁し(一九七九年三月一六日衆議院外務委員会)、同委員会が採択した要望決議には、「国際人権規約の留保事項につき、将来の諸般の動向を見て検討を行うこと」がうたわれた。二回目は一九八四年日本育英会法の制定に際して、衆参両院文教委員会の附帯決議において「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること」が再度掲げられた。しかし留保撤回は、実現していない。「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解」(二〇〇一年八月)は、日本政府に対し留保の撤回を検討することを強く求め、二〇〇六年六月三〇日までに最終見解に含まれている勧告を実施するために採った手段についての詳細な情報を含めて、第三回報告の提出を求めている。国際的に見ても高学費であり、学習機会が保障されない危険性については、中教審答申「我が国の高等教育の将来像」(二〇〇五年一月)でも指摘されている。我が国の高等教育への無償教育の漸進的導入は、欧米諸外国との比較を待つまでもなく、その実現に程遠い状況にある。高等教育を受ける機会と権利が経済的格差によって阻害されることなく、だれもが高等教育を平等に享受することが保障されるためには、学生納付金の抑制・逓減の方向を確認し、社会権規約第一三条二項(C)の留保撤回を二〇〇六年六月の第三回報告に盛り込むことを求める。GDPに占める高等教育予算の割合は、我が国は〇・五%にとどまり、米国の一・一%、英国の一・〇%、OECD平均の一・二%に比べ、大きく下回って最低位に属している(教育指標の国際比較 平成一六年度版)。そのため我が国では、高等教育における家計の自己負担率が世界的にも極めて高く、家計の経済的格差によって教育を受ける権利が阻害されているばかりでなく、設置形態の違いを超えて、高等教育機関における教育・研究の遂行に様々な障害をもたらしている。経常費の五〇%を目指すべき私学助成はいまだ一二%にとどまっている。また、法人化された国立大学、高専、大学共同利用機関は毎年一%の効率化係数及び経営改善係数二%が加えられる仕組みとされている。我が国の将来を見据えた科学・技術、教育の発展を保障するためには、具体的な年次計画を立てて、大学・高等教育への公的支出を欧米並みにGDP比で一%とすることを実現すること、その際、競争的資金への傾斜を図ることなく、十分な基盤的経費の増額を確保する施策を採ることを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、社会権規約第一三条二項(C)の留保を撤回するとともに、学費を抑制すること。
二、高等教育予算の公的支出を、OECD諸国平均並みのGDP比一%とするための年次計画を策定すること。

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