請願

 

第163回国会 請願の要旨

新件番号 223 件名 父母・学生の負担軽減及び私立大学の充実に関する請願
要旨  我が国の高等教育において、私立大学・短期大学(以下「私大」)は学生数で七五%、学校数で八〇%を占め、非常に重要な役割を担っている。私大の振興は国の重要な責務であり、私大助成の拡充・改善は重点的に取り組むべき施策である。このことは、私立学校振興助成法と国会附帯決議(一九七五年)が私大経常費の二分の一補助の早期達成を目標として定めていることにも、端的に表れている。ところが私大経常費への補助率は、一九八〇年度の二九・五%をピークに減少し、二〇〇三年度には一二・一%まで低下している。また私大への補助は国立大学への国費支出のおよそ五分の一、学生一人当たりわずか一八分の一程度でしかなく、国立大との間に格差をもたらしている。経常費補助が長きにわたり低い水準に置かれているために、私大は教育研究条件の改善・充実を図る上で国立大の一・七倍もの高学費に依存せざるを得ず、それでもなお国立大の教育研究条件とは差別的とも言える格差が存在している。さらに、非常に重い学費負担のために、進学や就学を断念せざるを得ない青年が増加するなど、国民の大学教育を受ける権利が著しく侵害されている。ここ数年、私大経常費補助のうち基盤的な教育研究条件を充実させる一般補助が削減される一方で、一部特定の分野に対する特別補助のみが大幅に増額されている。これでは学費負担が軽減されないばかりか、学部間・大学間の格差が広がり、私大全体の教育研究の向上を図ることはできない。世界的に見ても、日本の高等教育予算はOECD加盟国の中で最低水準であり、また国際人権規約の高等教育の漸進的無償化条項を留保し続けているなど、日本の高等教育政策は余りに貧困と言わざるを得ない。大学が、知、文化、科学技術を通して地域・日本・世界の発展に貢献するためには、高等教育予算を大幅に引き上げ、だれもが安心して充実した大学教育を受けられるよう、私大全体の教育研究条件を整備するとともに、父母・学生の学費負担を軽減するための総合的な施策を実現することが求められている。
 ついては、当面、次の措置を速やかに採られたい。

一、日本の高等教育予算を大幅に増額するとともに、国立大学法人、公立大学、私立大学の予算配分格差を是正して、国民の教育を受ける権利を等しく保障するために、次の内容で充実・改善を図ること。
 1 現在の高等教育予算について、GDP比でOECD平均並み(対GDP比一・〇%)の水準を目指すこと。
 2 私立大学等経常費補助金について、私立大学の経常費総額の二分の一補助を政府の責務として達成すること。
二、経済的格差の拡大によって大学への進学が困難となっている学生を支援するために、日本学生支援機構の奨学金事業を、次の内容で抜本的に充実すること。
 1 無利子奨学金枠の拡大を基本として育英奨学金制度の充実改善を図ること。
 2 給費制奨学金制度を創設すること。
三、国際人権規約でうたわれている高等教育における無償教育の漸進的導入に関して、これまで国会(国際人権規約批准に際しての附帯決議一九七九年五月八日衆院外務委員会・同年六月五日参院外務委員会、日本育英会法案に対する附帯決議一九八四年七月四日衆院文教委員会・同年七月二六日参院文教委員会)で附帯決議されてきたとおり、留保の解除を検討すること。

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