請願

 

第162回国会 請願の要旨

新件番号 550 件名 国籍選択制度及び国籍留保届の廃止に関する請願
要旨  一九八五年、父系優先血統主義であった国籍法が改正され、日本人母と外国人父の子供が日本国籍を取得できるようになったが、国籍選択制度が導入され、重国籍を持つ者に国籍選択が義務付けられた。父と母の異なった国籍を持つ子供たちや、父母が日本人でも出生地国の国籍と日本国籍を同時に持つ子供たちは、二二歳までに国籍選択をしなければならない。日本国籍を保持するには、外国籍を放棄するか、日本に「外国の国籍を放棄する旨の宣言」(国籍選択届)をしなければならない。定められた期間内に選択しなければ日本国籍を失うとされている。父と母の異なった国籍や文化を受け継ぐ子供たちは、両方を大切にしながら、自らのマルチアイデンティティを形成する。多文化を身に付けた者の存在は日本社会に多様性を与え豊かにする。ところが、選択制度は当事者に多大な負担や苦痛を与えている。また、二〇歳を過ぎてから、外国人との婚姻などにより外国籍を取得した日本人も、取得から二年以内に国籍選択を義務付けられている。外国人と結婚し相手国に長期間居住する場合は国籍が必要であるが、日本国籍を放棄する理由がない。「国籍唯一の原則」は現実にそぐわなくなっている。選択制度導入前に重国籍となった人たちも多く、実態は国籍選択制度を設ける意味がなくなっている。選択制度の導入は、一九三〇年のヨーロッパ国籍条約「国籍唯一の原則」、一九六三年の「重国籍の減少」条約を取り入れたものとされたが、その後ヨーロッパでは状況は大きく変化し、一九九七年、ヨーロッパ評議会閣僚委員会が新たなヨーロッパ国籍条約を採択し、「出生により当然に異なる国籍を取得した子供がこれらの国籍を保持すること」「自国民が婚姻により当然に外国籍を取得した場合この外国籍を保持すること」を締約国に認めさせ、権利として重国籍を容認している。国籍選択制度の廃止の際には、日本国籍を離脱した人たちにも、国籍回復の道を開くよう求める。同時に、外国の国籍を持つ日本国民が、その外国の法例により国籍を選択しても日本国籍を失わせないように、また、外国に居住している日本人や外国人を家族に持つ日本人が、関係国の国籍を取得した場合でも日本国籍を維持できるよう、重国籍容認に向けての検討を求める。日本の国籍法は血統主義を採用しながらも一九二四年から特定の生地主義国で生まれた重国籍者に国籍留保届を課し、それがない者には日本国籍を失わせてきた。一九八五年の国籍法改正は、留保制度の範囲を、国外で生まれた国際結婚の子供たちにまで広げ、出生後三か月以内に留保届が出されない場合、子供は日本国籍がなく日本人親の戸籍にも記載されない。しかしこの制度を知らない親は多数存在している。失った国籍を回復する規定があるが、手続は日本在住、二〇歳までという条件がある。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、国籍選択制度を廃止すること。
二、国籍留保制度を廃止すること。

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