請願

 

第162回国会 請願の要旨

新件番号 42 件名 HAM及びHTLV―1ウイルス感染症の対策強化に関する請願
要旨  HAM(HTLV―1関連脊髄(せきずい)症)はHTLV―1ウイルス(ヒトTリンパ球指向性ウイルス)が引き金となって起こる脊髄の神経麻痺(まひ)である。現在までに、日本で一、四四二人の患者が確認されている。四○代が一番多く発症し、徐々に進行していく。軽い人で、しびれやこわばり、排尿障害(自己導尿や膀胱(ぼうこう)ろう)、歩行障害(杖(つえ)から車いすへ移行)に悩まされ、仕事が続けられないなど生活の不安を抱えている人がほとんどである。重症になると強い痛みを伴いながら寝返りが打てないなど寝たきりの状態になる。根本治療法が見付かっていない現状では、いずれは寝たきりになっていくという精神的苦痛は計り知れない。過去の調査でも四○○人中四人の自殺者が出たと報告されている。HTLV―1ウイルスを持った人(キャリア)が必ずHAMを発症するわけでなく、生涯発症率○・二%というごくまれな確率で起きている。HTLV―1の関与があってもHAMを引き起こす根本的な発症原因はいまだ解明されておらず、根本治療法も確立されていないことから、難病指定の定義(特定疾患治療研究事業の対象)に当てはまる。またHTLV―1ウイルスは、血液疾患であるATL(成人T細胞性白血病)の引き金にもなっており、日本国民のキャリアは二二○万人と言われている。エイズと同じレトロウイルスが引き起こし、エイズに匹敵するようなHAMやATLといった重篤な病気があるにもかかわらず、HTLV―1の感染防止対策は十分とは言えない。感染経路の中でも一番多い母子感染では二・六%のキャリア児が出ており、感染防止対策が全国で一律的に行われていない現状がある。政府においては、HTLV―1の感染防止対策を強化するとともに、HAMの発症原因の究明や根本治療法の確立及び患者の経済的支援に関し、国を挙げての早急な対策を強く求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、HAMを難治性疾患克服研究事業の対象疾患に加えるとともに、特定疾患治療研究事業疾患の対象に認定すること。
二、HAMの治療法としては、唯一αインターフェロン療法があるが、効果的な治療法には至っていない。根本治療法に向けた画期的な新薬の開発を進めるために国を挙げて研究を推進すること。
三、HTLV―1はレトロウイルスとして古くから日本に存在し、HAMとATLは日本人によって世界で初めて発見された。我が国がその治療と研究を世界中から期待されているにもかかわらず、エイズ対策に比べて充実しているとは言えない。HTLV―1に対する研究を更に推進すること。
四、医療や生活に掛かる患者、家族の負担を軽減し、介護保険や障害者福祉施策などの谷間に置かれている患者の福祉対策を充実すること。唯一の治療法であるαインターフェロン療法は月一○○万円と高額であり、その他自己導尿、杖・車いすなどの福祉機器も必要で、患者の経済的負担は大変である。しかも発症して働けない人も多く、国の支援を必要としている。
五、診断されるまでに病院を転々とし、医師から治療法が確立されていないと告げられ見放されるような心証を受けることのないように、医療機関の連携と充実を図り、患者が安心して受診し、治療が受けられる体制を整えること。
六、HTLV―1ウイルスの感染防止対策の強化に早急に取り組むこと。

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