請願

 

第159回国会 請願の要旨

新件番号 2650 件名 国民本位の公共事業推進への必要な職員の確保に関する請願
要旨  日本では、土砂災害、水害、地震が毎年発生し、多くの人命や財産が失われている。国土交通省の調査(平成一五年)では全国で土石流危険渓流が八九、五一八か所、急傾斜地崩壊危険箇所が一一三、五五七か所もあり、国民の生命が脅かされている。内閣府の世論調査(平成一三年六月)では、今後の国土づくりで特に力を入れるべきものとして、(一)災害に対する安全性の確保(二)自然環境の保護(三)食料や資源の安定供給の確保(四)身近な生活施設の整備、の順となっており、これからの公共事業は、地域と国民生活に密着した暮らしに役立つ防災、福祉、教育、環境保全重視への転換を国民は望んでいる。したがって、無駄な公共事業を抑制し、国民の期待にこたえるための施策とそれを十分に実行していくための体制強化が必要である。一方、巨額の予算を使う公共事業をめぐって、贈収賄事件を始めとする不正腐敗が起きており、国民から厳しい糾弾・批判を受けている。不正腐敗の根絶のためにも、入札・契約制度の一層の適正化とその運用の徹底、建設産業に対する指導・監督体制を強化することや業務執行における情報公開などの透明性の確保が必要である。建設産業では著しいダンピングを強要するような指し値発注や厳しい下請単価の切下げなどが横行し、それが建設労働者の労働条件悪化につながるなど社会問題化している。中小建設業者・建設労働者からは、行政の監督・指導によって問題を改善してほしいと切実な声が寄せられている。こうした情勢を受けて成立した入札契約適正化法の施行に伴い、旧建設省では入札契約管理官・工事施工管理官などの新ポストが二〇〇二年四月から設置され、建設産業に対する指導・監督機能が一定強化され、その数も増えている。しかし、職員の定員が削減され続け、増員していないために十分にその役割が発揮されておらず、過重労働を招く結果になっている。職員の不足を業務委託職員と非常勤職員で補い、その数は一〇、〇〇〇人を超え、労働者の約三分の一にまでなっているが、非常勤職員は低賃金で採用している反面、業務委託一人当たりの経費は、職員の二~三倍にもなっており、人件費は減少しても、事業費で無駄な予算を使う結果になっている。旧建設省は一九六八年の第一次定員削減計画開始以来、二〇〇三年度までに一一、六〇〇人(三四・一%)もの職員が減らされ、二〇〇二年度の事業費は約二〇倍にも膨れ上がっている。業務面では、事業に対する住民理解を求めるためにきめ細かい「対話型行政」や入札契約制度の改正、建設産業に対する指導・監督など業務が複雑化し、労力と時間の掛かる業務が増えている。その結果、旧建設省の二〇〇二年度超過勤務実態は、平均で職員一人当たり年三百数十時間に及び、中には年一、四〇〇時間、女性でも年八〇〇時間を超えるなど、極めて異常な長時間過密労働となっている。これに起因すると見られる長期病気休暇者や自殺者が後を絶たず、健康診断で治療を要するとされる職員が多くなっている。さらに超過勤務予算の削減などに伴うサービス残業も生まれている。業務委託職員と非常勤職員を職員に置き換えることを含め、増員しなければ深刻な行政サービス低下を招く事態になりかねない。
 ついては、国民の要望にこたえ、信頼される国民本位の公共事業の推進、行政サービスを推進していくため、次の事項について実現を図られたい。

一、国土交通省の地方整備局、事務所・出張所、国土地理院、国土技術政策総合研究所、独立行政法人土木研究所・建築研究所の機構拡充及び必要な職員を確保すること。

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