請願

 

第158回国会 請願の要旨

新件番号 48 件名 二千三年十一月に助産の高度専門職大学院を緊急に認可することに関する請願
要旨  安全で満足のいくお産環境をつくり守るためには、力のある助産師を養成することが不可欠である。その助産師教育が、充実と発展へ向かうのか、それとも後退と退廃へ向かうのかの岐路に立たされている。すなわち、高度専門職大学院での助産教育が、認可されて推進されるのか、あるいは、四年制大学での六か月の過密な助産師教育が推進され、一年コースの助産師養成校の相次ぐ廃校とともに、大学院での助産教育が阻止されるかである。戦後、ほとんどすべての助産師教育は一年コースの助産師養成校(専門学校又は短大の専攻科)において、三年間の看護師教育を終了し免許を取得した者に対して実施されてきた。しかし、平成に入り四年制看護大学が相次いで設立され、助産師教育を行うところが増えてきた。現在、過半数の大学で、三年半の看護師教育と保健師教育(全員履修)の後に、六か月の助産師教育課程(選択コース、多くは一〇名以下、単位の読替えで実質二~四か月)が設けられている。最大の問題は教育期間の短さと実践能力の低下である。これまで一年間掛けて行ってきた助産師教育を六か月未満に短縮するので、手抜きの詰め込み教育にほかならない。実際、教科の単位数も、実習期間も減らされている。教育期間の短縮は、過酷なカリキュラム、分娩(ぶんべん)介助実習例数の低下、卒業生の実践能力不足として表れている。規則では、学生は実習で一〇例程度の分娩介助を経験しなければならないことになっているのに、三例しか分娩介助できなかった学生にも国家試験の受験資格を認定している。こうして力の伴わない助産師が社会に送り出されている。平成一四年に全国助産師教育協議会が、四年制大学で助産教育を担当している教員を対象に行った調査では、「四年制大学の中で助産師教育が可能」と答えた教員は、四三大学中わずか三大学にすぎなかった。助産師の仕事は、重大な判断を行う極めて専門性の高い仕事である。医療事故では産科が三割を占めており、その多くが助産師でない者(看護師、准看護師)に産婦の観察や助産をゆだねていることから発生している。母子の安全を保障するためにも、十分な教育を受けた助産師が必要である。全国助産師教育協議会の調査によると、四年制大学の中で助産師教育をしている四三大学中一五大学の教員が助産師教育を「大学院及び大学専攻科」で行うことを希望している。日本看護協会が行った調査でも、三二・九%の教育機関がむしろ大学院二年間での助産師教育が望ましいと答えている。四年制大学の中の助産師教育が望ましいと答えた教育機関はわずか一六・五%にすぎない。諸外国の助産教育を見ると、アメリカでは看護大学卒業後の大学院での教育が一般的で、イギリスやカナダでは大学での看護教育を経ない三~四年間の助産のみの教育が推進されている。先進諸国の中で、たった六か月間の助産教育を推進しようとする国は日本以外にない。一年コースの助産師養成校の廃校が相次いでいることも問題である。一つの県に一つの看護大学が出来ると、一年コースの県立の助産師養成校が廃校になる例が増えている。また、短大の四年制大学化に伴い、短大の専攻科が廃止される例も増えている。一年コースの助産師養成校の廃校は、助産師を目指す看護師のための助産教育の機会を奪う。四年制看護大学が出来ても、専門学校、短大専攻科での助産教育の存続は必要である。先進国では、我が国とは反対に看護と助産を区別し、助産教育が強化されている。日本においても、厚生科学研究の結果、助産師のみでケアしている助産所が女性から一番高い評価を受けていることが明らかになった。母子に喜ばれるケアを提供していくためには、地域の中で自立して開業できる、力のある助産師の養成こそ必要である。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、専門職大学院での質の高い助産師教育が実現するための援助をするように、文部科学省に働き掛けること。
二、女性が安全で快適な助産ケアを受けられる質の高い助産師を養成するために、先進国での助産師教育期間が二年以上であることを考慮した上で、すべての助産師教育期間を延長する制度改正を検討すること。
三、助産師を養成する専門学校や短大専攻科を廃校にすると看護師が助産師になる道が閉ざされることになるので、専門学校や短大専攻科への国からの助成を増額するなど、助産師養成専門学校や短大専攻科が存続できる施策を行うこと。

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