請願

 

第156回国会 請願の要旨

新件番号 1682 件名 日本育英会の奨学金制度の拡充に関する請願
要旨  小泉内閣は、二〇〇一年一二月の閣議で、日本育英会を廃止し、財団法人の内外学生センターや日本国際教育協会等と統合し、新たな学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人化すると決定した。その上で「新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議」が二〇〇二年五月に設置され、九月に「中間の取りまとめ」(以下「中間報告」)が発表された。「一八歳以上自立型社会の確立」を目指し「債券発行による市場での資金調達…」と「債務保証制度の導入」というものである。そのために学生が保証料を支払い、返済不能時には、保証機関が新法人に代わって支払い、機関が学生に返済を求める。回収率を高めるために回収業務を民間委託するとしている。「中間報告」は、「一八歳以上自立型社会」を主張しているが、高卒初任給は一二九、八四〇円(可処分推計)と生活保護基準(一八歳東京で一三九、七五〇円)以下であり、大卒初任給も一五六、〇八〇円(可処分推計)と低く、しかも長期にわたる不況の中で、就職もままならない。自立しようにもできない現実がある。ヨーロッパを始め先進諸国は、高校・大学等を始め中等・高等教育費が無償化され、奨学金についても給付が主体となっている。それに引き換え日本の高等教育費は世界一高く、奨学金についても貸与のみである。こうした違いを放置したままで、「一八歳以上自立型社会」を目指すことはできない。奨学金事業の独立行政法人化は、日本育英会の奨学金事業の理念とは大きく掛け離れている。その最大の問題は、効率が第一で、教育の機会均等や基本的人権が、後景に追いやられることである。今日の奨学金制度は、深刻な不況の中で、経済的理由によって、中途退学者が戦後最高となっている事態にかんがみ、教育を受けたいと願っているすべての学生・生徒に教育の機会均等を保障することである。そのために諸外国に見られるとおり、中等・高等教育の無償化と、公的奨学金制度の拡充が今ほど求められているときはない。次世代に対する期待と深い愛情を持ち、教育という国家百年の大計として奨学金制度をより発展させることこそ、国家の進むべき道である。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、日本育英会の奨学金制度を廃止せず、拡充すること。
二、教育の機会均等を保障する欧米並み(給付制中心)の奨学金制度をつくること。
三、国・地方自治体の高校奨学金制度の拡充を図ること。

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