請願

 

第156回国会 請願の要旨

新件番号 1533 件名 アメリカのイラクに対する武力行使に反対する旨の国会決議の実現に関する請願
要旨  次の事項について実現を図られたい。

一、「アメリカのイラクに対する武力行使に反対する。」との国会決議を行うこと。

   理由
(一)アメリカは、イラクが国際連合安全保障理事会(以下「安保理」)決議に従わないで大量破壊兵器を所持していること、テロ支援国家であること、フセイン大統領の独裁国家であることなどを理由として、武力行使することを公言し、既に三〇万人を超える部隊を展開している。武力行使によって、多くの人間が殺傷されるだけでなく、自然環境や政治経済情勢にも甚大な悪影響が生ずる。(二)国際連合加盟国であるイラクが安保理決議に従うことは当然としても、アメリカの武力行使が国際法に照らして許容されるかどうかは、別問題である。国際連合憲章は、国際連合の目的の一つに平和に対する脅威の防止と除去を挙げているが、その手段は、平和的であることと正義及び国際法の原則に従うこととしている。また、加盟国の主権の平等を行動原則とし、いかなる国の政治的独立に対する武力による威嚇又は武力の行使を禁止している。軍事的措置が認められるのは、安保理が平和と安全の維持又は回復のために、非軍事的措置だけでは不十分と認めた場合と国際連合加盟国に対する武力攻撃が発生した場合の個別的又は集団的な自衛権の行使だけである。安保理は、イラクが国際社会の平和と安全に対する脅威としているが、加盟国の軍隊の行動を要請していない。また、イラクがアメリカに対して武力攻撃をしている事実もない。このような状況でのアメリカのイラクに対する武力行使は、国際連合憲章上の根拠がない。政権の転換のための武力行使が認められないことは言うまでもない。国際連合と国際法の原則が無視される形で武力行使が行われることは、人類に対して言語に絶する悲哀を与える戦争の惨害を繰り返すこととなる。(三)日本国憲法は、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇と武力の行使を放棄するだけでなく、戦力と交戦権を認めていない。また、集団的自衛権を行使しないということも国是となっている。非軍事平和という意味では、国際連合憲章よりも更に徹底しており、政府は、憲法の禁止を無視して行動することは許されない。ところが、政府は、アメリカのイラク攻撃に対して正面から反対しようとしないだけでなく、武力の行使を容認し、武力攻撃によって破壊されたイラクの復興支援や新たな政治体制の構築を念頭に置いた行動に出ている。政府の態度は、日本国憲法第九条とは両立しない。(四)世界では一、〇〇〇万人を超える反戦デモが行われ、最近の国内世論調査によれば、アメリカのイラク攻撃に反対する国民は八割前後に上っている。小泉首相は「国民世論は大事だが、それを尊重することが常に正しいわけではない。」としてアメリカとの同盟関係を優先し、アメリカの単独行動を支持する姿勢を示している。政府に国民の声が届いていないこのようなときにこそ、国権の最高機関である国会と国民から直接選挙された代表者である国会議員の出番である。(五)一九九九年五月、オランダ王国ハーグ市で、アナン国連事務総長も含め、各国から一万人の人々が集まって「世界平和市民会議」が開催された。そこで「各国議会は、日本国憲法第九条のように、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである。」との確認がされた。日本国憲法第九条は、平和で公正な国際社会を求める各国の民衆の「導きの星」である。平和で公正な国際社会の実現のために、主導権を発揮されるよう期待する。

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