請願

 

第155回国会 請願の要旨

新件番号 984 件名 大学の構造改革の方針の見直しと大学・高等教育の充実に関する請願
要旨  現在、我が国の国立・公立・私立大学は、その設置形態の違いを超えて大きな変容を迫られている。国立大学の再編・統合、国立大学の「国立大学法人」への早期移行、国公私「トップ三○」大学の育成の三つを柱とした「大学(国立大学)の構造改革の方針―活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として―」(以下「大学の構造改革の方針」)は、大学関係者との事前協議を欠いたまま遠山文部科学相が経済財政諮問会議に突如提出したものであり、大学関係者の真摯(しんし)な大学改革の努力、国民の高等教育への要求に反した構想である。国立大学の再編・統合は、「一県一国立大学」の原則にこだわらず大胆に進めるとしているが、これは行財政改革の手段として国立大学の大幅削減を大学に強権的に押し付けるものである。また、「一県一国立大学」の原則を崩すというのは、文部科学省(以下「文科省」)も認めてきた「教育の機会均等への貢献」(大学審議会答申)という国立大学が果たす積極的な役割を真っ向から否定する暴挙である。「一県一教員養成系大学・学部」の原則を放棄した教員養成系大学・学部の統合も検討されているが、これは、三○人以下学級実現のための教員増、初等中等教育の充実という国民の要求に反するものである。国立大学の法人化については、文科省の調査検討会議が「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)で法人の制度設計を公表した。そこでは憲法に保障された学問の自由と大学自治の理念を放棄し、大学を政府・文科省の強い統制の下に置くとともに、学長の権限強化と学外者の参加によるトップダウン式の大学運営が構想されている。この制度設計のままでは、法人化によって大学の自主性・自律性が拡大することはあり得ない。また、学費は一定の範囲内で各大学が決めることを認めており、学費の高騰や学費の大学間・学部間格差が生じる危険性がある。国公私「トップ三○」大学の育成は、文科省が評価を通じて国立・公立・私立の上位三○大学(全体の五%)を選別し、資金の重点配分を行って世界最高水準の大学に育成するとしているが、これは我が国の大学全体を文科省の統制下の競争に巻き込むものであり、現在でも深刻な大学間格差や地域間格差が拡大し、従来以上に大学の序列化が進行することは必至である。これと並んで私立大学・短期大学(以下「私立大学」)の助成についても、二○○二年度予算において、文科省の審査に基づいて直接配分される特別助成(私立大学教育研究高度化推進特別補助)が新設された。これによって、大学間格差が一層拡大され、私立大学の発展に大きな障害となることは明らかである。また、文科省による私立大学への直接的な介入が強まることは容易に想像される。このように、「大学の構造改革の方針」は、行財政改革と国際競争力の強化に偏重した構想であり、将来、学費の高騰や地方大学・小規模大学の消滅によって低所得家庭や地方居住者の子弟の大学進学が困難になるなど、国民に多大な負担を負わせる危険性が高いものである。今、求められるのは、大学の教育研究の均衡ある発展と、国民が求める等しく高等教育を受ける権利を保障していくための施策を講ずることである。国立大学等の独立行政法人化に反対し、「大学の構造改革の方針」を抜本的に見直すことを求める。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、「大学(国立大学)の構造改革の方針」を以下のように抜本的に見直すこと。
 1 国立大学の再編・統合については、高等教育の均衡ある発展のため「一県一国立大学」、「一県一教員養成系大学・学部」の原則に反する国立大学の強権的な再編・統合を行わないこと。
 2 国立大学の法人化については、独立行政法人制度によらず、学問の自由と大学自治を保障し、大学の「自主性・自律性」が拡大するよう制度設計を再検討すること。
 3 国公私「トップ三○」大学の育成については、国立・公立・私立大学の上位三○校に対してのみ予算を重点配分するという発想を抜本的に改めること。大学間格差を是正して均衡のとれた教育研究条件の整備ができるよう基礎的基盤的経費の充実を図る予算配分措置を講ずること。
二、「私立学校振興助成法」成立時の附帯決議である「私立大学に対する国の補助は二分の一以内となっているが、できるだけ速やかに二分の一とするよう努めること」を踏まえ、私学への経常費総額二分の一助成を速やかに実現すること。
三、高等教育への公財政支出を欧米諸国並みに早急に引き上げ、大学の教育・研究・医療の充実を図るとともに、父母負担の軽減を図ること。経済的地域的事情にかかわらず、高等教育の機会均等を保障するため、奨学金制度の充実、授業料・入学金の軽減等の施策を行うこと。

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