請願

 

第155回国会 請願の要旨

新件番号 975 件名 医師卒後研修の改善・充実に関する請願
要旨  二〇〇〇年一二月の医師法等改正により、二〇〇四年度から医師卒後初期臨床研修(以下「卒後研修」)が必修になる。厚生労働省内での作業グループが議論してきたことが今年九月に「新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)」として具体化された。今年一一月中には施設基準・プログラムについて省令化するとしている。今回の必修化はインターン制度の廃止から三六年振りの改革となるもので、現在の日本の貧困な卒後研修が抜本的に改善されるものでなければならない。しかし、医学生の最も重大な関心事である、研修先選び・決定方法や研修医の研修内容や生活に関する部分が一〇月現在の必修化議論で未解決な部分であり、かつ、最も改善が望まれるところでもある。特に、卒後研修の改善に必要な財源についての議論はほとんど進んでおらず、しっかりと整備されなければこれまでの議論は「絵に描(か)いたもち」になりかねない。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、研修医がアルバイトせずに研修に専念できるだけの財政的な保障を行うこと。
二、大学病院も含めすべての研修病院が研修指定基準を満たすようにさせるとともに、研修指導体制を充実させるために財政的な保障をすること。
三、医学生に対して研修必修化に関する制度の仕組みについての情報提供を十分に行うとともに医学生・患者・国民の声を研修改革に反映させること。
四、研修必修化実施初年度に当たっては、混乱を招かないよう配慮すること。

   理由
 (一)研修医がアルバイトをしないで研修に専念できるような給与の保障を始め、研修医が労働者であることをしっかりと認識した上で、処遇の確保に全力を尽くすことを求める。労働時間の管理により研修医の過酷な労働条件を緩和すること、研修医すべてを常勤職員として採用し、共済や健康保険などへ加入させることを求める。これらがしっかりと行われるためにも、国が責任を持って卒後研修改善の財源を確保することを求める。(二)卒後研修を教育の中身から改革していくことを求める。大学病院を含むすべての研修病院に、指定基準を当てはめて評価することにより研修の質を高めていくことを求める。研修プログラムの整備・確立、指導医の養成・確保などの指導体制の充実、客観的な評価システムの確立などが必要である。研修に必要な設備・資材を充実させることも求める。(三)マッチングシステムや定員制の導入、出身校の偏りの解消など、今回の必修化案では研修先選択に際して幾つかの変更が予想されている。必修化初年度該当学年である医学部現五年生に対するアンケート調査では九八%の学生が「臨床研修に関する情報は得られていない」と答えている(国立大学附属病院長会議調べ)。また、今年九・一〇月に医学連が高学年対象に集めたアンケートでは、「どういうふうに制度が変わるのか情報がない」「マッチングは準備期間がなさ過ぎる」といった不安と不満の声が強く、混乱が生じている。このような状況では、研修改革に翻弄(ほんろう)されて不本意な研修のスタートとなりかねない。医学生が自らの研修について主体的に考え、行動できるだけの正確で十分な情報提供を求める。また、今後は研修の主体者である医学生や研修医の要求を踏まえて卒後研修を改革していくことを強く求める。(四)特に医学部現五年生は、実施初年度を迎えるに当たって混乱が生じるのではないかと強い不安を持っている。無用な混乱を招かないような配慮と、仮に予想されないトラブルが生じたとしても移行期の措置も含めて、誠実に最後まで責任を持って対応することを求める。

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