平成24年4月20日
参議院本会議
本院は、国土交通大臣前田武志君を問責する。
右決議する。
理由
前田国土交通大臣が、岐阜県下呂市長選挙において、告示前に特定の候補の応援を要請する文書に自ら署名し、この文書は国土交通省の公用封筒で、下呂市の建設業協会と温泉旅館協同組合の理事長あてに郵送されていたことが判明した。
前田大臣は四月十一日の衆議院国土交通委員会における答弁で文書への署名を認めた。
これは公職選挙法に抵触する行為であり、刑事罰にも問われかねない状況であり、国務大臣の地位にとどまることは許されない。当然自ら辞任すべきであるにもかかわらず、未だその地位に恋恋とする前田大臣を問責するものである。
理由の第一は事前運動である。
公職選挙法第百二十九条は
「選挙運動は、・・・公職の候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない」と規定する。
文書は三月吉日に署名されており、四月二日の消印で岐阜県下呂市の建設業協会と温泉旅館協同組合に出されている。市長選挙の告示日は四月八日であり、事前運動としての文書にほかならず、第百二十九条の規定に明らかに反する。
第二に地位利用による選挙運動である。
公職選挙法第百三十六条の二は
「次の各号のいずれかに該当する者は、その地位を利用して選挙運動をすることができない。
一 国若しくは地方公共団体の公務員又は特定独立行政法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員」と規定する。
建設業界と観光業界を監督する立場にある国土交通大臣として建設業協会と温泉旅館協同組合の幹部に働きかけたことは、正しく地位利用による選挙運動である。
大臣の立場で、公職選挙法違反の事前運動や、公的地位を利用した選挙運動を行うことは断じて許されるものではない。
さらに四月十七日に前田大臣は「国土交通大臣政務秘書官に促されるまま内容を確認せずに署名した」「郵送先や用途などは知らなかった」と説明し、その責任を秘書官に負わせようとしている姿は、反省の意識も薄いと言わざるを得ない。
以上が本決議案を提出する理由である。
なお野田総理は内閣人事において「ベストの布陣」「適材適所」と述べているが、遵守すべき選挙法規も知らない議員を閣僚に選んだ、正に党内からの順送りとしか思わざるを得ない人事を行った野田内閣総理大臣の罪も極めて重いことを付言する。
(愛知治郎君外七名発議)