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本会議決議

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防衛大臣一川保夫君問責決議

平成23年12月9日

参議院本会議

 本院は、防衛大臣一川保夫君を問責する。

  右決議する。

     理由

「私は安全保障の素人」発言を始めとして、一川防衛大臣の様々な言動が、日本の安全保障に重大な影響を及ぼしている。

民主党政権発足以来、日本の外交・安全保障は危機的状況にある。尖閣諸島沖では、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、北方領土においてはロシアのメドヴェージェフ大統領が国後島に上陸するなど、かつてない事態が続いている。

普天間基地移設問題では、鳩山元総理の「最低でも県外」という軽率な発言に始まる迷走が、沖縄県民を混乱させ、米国との関係を悪化させたのは言うまでもない。

このような状況下、「素人」である一川防衛大臣の軽率な言動や行動が、日本の安全保障を脅かし、国益を損ねているのは明らかである。

以下、一川防衛大臣を問責する理由を、列挙する。

第一に、田中前沖縄防衛局長に対する監督責任である。

十一月二十八日、田中前沖縄防衛局長は、報道陣との懇談の席で、普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書を提出する時期をめぐり、「これから犯す前に犯しますよと言いますか」と発言した。これは女性の尊厳を踏みにじる表現であるだけでなく、一九九五年の沖縄米兵少女暴行事件のほか、米兵の性犯罪に苦しんできた沖縄県民の心情を傷つけ、愚弄する以外の何ものでもない。

在日米軍施設の七十四パーセントが存在する沖縄県の負担を軽減すべく、最前線で交渉に当たるべき沖縄防衛局長の今回の発言が、今後どれほど大きな影響を与えるかは計り知れない。これは、一官僚の更迭のみならず、トップである一川防衛大臣が職を辞すことで、沖縄県民にお詫びをし、責任を取るべき問題である。

第二に、「私は安全保障の素人」との発言である。

一川防衛大臣は、野田内閣の認証式前、報道関係者に対し、「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロールだ」と発言した。尖閣諸島、竹島、北方領土などを巡って、周辺国との関係が不安定化し、また、東日本大震災で自衛隊の重要性が増す中、防衛大臣が安全保障の素人であることは許されない。国際社会に対し、我が国の防衛、自衛隊を所管する大臣が素人であるとのメッセージを送ったことは国益を大きく損なうものであり、全国二十四万人の自衛隊の士気に影響することは言うまでもない。

また、一川防衛大臣はシビリアンコントロールの意味を全く理解していない。シビリアンコントロールとは文民の政治家が実力組織を統制するという意味であり、文民と素人は同義ではない。自らの立場に対する理解が全くないと言わざるを得ない。

第三に、ブータン国王夫妻歓迎宮中晩餐会の欠席である。

一川防衛大臣は、十一月十六日に行われた、ブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席し、民主党の高橋千秋参議院議員の政治資金パーティに出席していた。ジグミ・ケサル国王陛下からは東日本大震災の直後、百万ドルもの義援金を寄付していただいており、東日本大震災以来初の国賓である。日本国の閣僚として晩餐会に出席し、謝意を示すのは重要な責務である。

さらに一川防衛大臣は、同議員のパーティでの挨拶の中で、「宮中で催し物があり、ほかの大臣は皆そちらに行ったが、私はこちらのほうが大事だと思って来た」と、国賓であるブータン国王に対して、失礼極まりない発言を行っている。

また、国務大臣の任免の認証は天皇の国事行為であり、天皇は日本国民統合の象徴である。その天皇陛下の宮中晩餐会より、同僚議員の政治資金パーティを優先した一川大臣の行為は、天皇陛下への侮辱であり、日本国民を愚弄した行為である。このような行為を平然と行う一川防衛大臣に大臣の資格はない。

第四に、十二月一日の参議院東日本大震災復興特別委員会での、自由民主党の佐藤正久委員に対する答弁である。

一川防衛大臣は、佐藤正久委員の質問に対し、九十五年の米軍少女暴行事件の「正確な中身を詳細には知っていない」と答弁した。普天間飛行場移設に至る経緯や、先日の日米地位協定の運用見直し合意の背景を全く理解していなかったことになる。

また、一川防衛大臣は、十二月二日の記者会見で、九十五年の少女暴行事件を「乱交事件」と発言した。もはや、言い間違いで済む問題ではない。田中前局長を更迭した直後の大臣の発言としては、緊張感の無さや防衛省の姿勢が問われるものである。

一川防衛大臣の自覚と資質の欠如には、多くの国民から、批判が集中している。一刻も早く、職を辞すことが、野田内閣による日本の国益への損失を少しでも抑えることにつながると確信する。もはや、素人が防衛大臣であることは許されない。

なお、野田総理は自らの内閣を「適材適所」と称しているが、このような多くの問題を抱えた大臣を選んだ野田総理の見識を疑わざるを得ないことを付言する。

以上が本決議案を提出する理由である。

(愛知治郎君外七名発議)