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少子高齢社会に関する調査会

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少子高齢社会に関する調査報告(中間報告)(平成17年7月8日)


第一 調査会の調査の経過

 参議院少子高齢社会に関する調査会は、少子高齢社会に関し、長期的かつ総合的な調査を行うため、第百六十一回国会(臨時会)の平成十六年十月十二日に設置された。

 本調査会における調査テーマについては、調査会設置後の理事懇談会において協議を重ねた結果、「少子高齢社会への対応の在り方について」とすることとし、平成十六年十一月十日の調査会において、調査会長から報告を行うとともに、第百六十一回国会においては、少子高齢社会への対応の在り方について幅広い議論を行いつつ、具体的な調査計画等の策定に向けて調査を進めることとした。

 平成十六年十一月十日、国立社会保障・人口問題研究所所長阿藤誠氏、政策研究大学院大学教授松谷明彦氏及び株式会社大和総研チーフエコノミスト原田泰氏を参考人として招き、意見を聴いた後、質疑を行った。十一月十七日には、政府の取組状況について、林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣、蓮実国土交通副大臣及び下村文部科学大臣政務官から説明を聴いた後、質疑を行った。

 平成十六年十一月二十四日、これまでの参考人からの意見及び政府からの説明聴取を踏まえ、今後の具体的な調査計画等策定の参考に資するため、調査会委員間で自由討議を行った。この自由討議においては、少子高齢社会を活性化するためのマクロ的な政策の必要性、年金・医療・介護保険制度に係る経費負担の在り方、人口減少社会から人口均衡社会に転換させるための政策、高齢者が健康で心豊かに生活できる社会の構築、性教育等の現状、幼保一元化の在り方、子育てと仕事の両立支援策、子育ての経済的負担感解消策、最近急増中のニートも含めた若者の就業支援策等について意見が述べられた。

 このような意見を踏まえ、理事懇談会において協議を行った結果、当面は「少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件」を調査事項として取り上げ、調査を進めることとした。

 第百六十二回国会(常会)においては、平成十七年二月九日、政府が十六年十二月に策定した子ども・子育て応援プランについて、林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣及び塩谷文部科学副大臣から説明を聴いた後、質疑を行った。

 また、平成十七年二月十六日、我が国の少子化の要因としての未婚化・晩婚化、晩産化及び小児医療の現状等について、お茶の水女子大学名誉教授袖井孝子氏、東京学芸大学教育学部教授山田昌弘氏及び国立成育医療センター名誉総長松尾宣武氏を、二月二十三日には、少子化の下での就業支援・経済的支援・地域子育て支援の在り方等について、慶應義塾大学商学部教授樋口美雄氏、全国商工会議所女性会連合会副会長・横浜商工会議所女性会会長秋山桂子氏及びNPO法人びーのびーの理事長奥山千鶴子氏を参考人として招き、それぞれ意見を聴いた後、質疑を行った。

 さらに、平成十七年三月二日、少子化が教育及び家族に与える影響について、白梅学園短期大学学長無藤隆氏、教育評論家・法政大学キャリアデザイン学部教授尾木直樹氏及び山口大学教育学部専任講師田中理絵氏を、四月六日には、少子高齢社会における社会システム、住宅政策及び都市政策の在り方について、社団法人日本経済研究センター理事長八代尚宏氏、神奈川大学経済学部教授森泉陽子氏及び株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門上席主任研究員篠原二三夫氏を、四月二十日には、少子高齢社会における税制、年金及び医療の在り方について、早稲田大学法学部教授宮島洋氏、上智大学法学部教授堀勝洋氏及び国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官大日康史氏を参考人として招き、それぞれ意見を聴いた後、質疑を行った。

 これらに加えて、平成十七年五月十一日、生命の大切さ及び女性の健康について、赤枝六本木診療所院長赤枝恒雄氏、NPO法人円ブリオ基金センター理事長遠藤順子氏及び社団法人日本家族計画協会常務理事・クリニック所長北村邦夫氏を参考人として招き、意見を聴いた後、質疑を行った。

 このような少子高齢社会への対応の在り方並びに少子化の要因及び社会・経済への影響についての参考人からの意見及び政府からの説明聴取を踏まえ、平成十七年五月十八日、中間報告の取りまとめに向けて調査会委員間の自由討議を行った。この自由討議においては、人口増加を前提とした税制・社会保障制度等社会システムを見直す必要性、社会保障給付費における児童・家族関係給付費を拡大する必要性、仕事と子育ての両立のため生活時間を犠牲にしない働き方の重要性、小児救急医療を始めとする医療体制整備の必要性、子どもを生みたいと思わせる施策の必要性等が指摘された。

 以上のような議論を踏まえ、理事懇談会で協議を行った結果、少子高齢社会への対応の在り方についての当面する課題について意見を集約し、「子どもにやさしい社会の構築」を始めとする五つの柱から成る十四項目の提言を取りまとめた。

 このほか、少子高齢社会に関する実情調査のため、平成十七年二月十七日及び十八日の二日間、大阪府及び兵庫県に委員派遣を行うとともに、五月十三日には東京都において視察を行った。

第二 調査会の調査の概要

一 少子高齢社会への対応の在り方について

1 参考人からの意見聴取及び主な意見交換

 少子高齢社会への対応の在り方について、平成十六年十一月十日、参考人から意見を聴取し、意見交換を行った。その概要は次のとおりである。

国立社会保障・人口問題研究所所長  阿藤 誠 氏

 我が国は二〇〇六年を境に人口減少社会になると推計される。人口減少は多くの先進諸国、アジアNIES及び中国にも共通する。また、日本を含めた先進諸国は高齢化が一段と進展する。

 高齢・人口減少社会となる原因は長寿化及び少子化である。我が国では平成十五年の合計特殊出生率が一・二九となり、出生数も百十二万人にまで減っている。先進諸国のほとんどは少子化状況にあるが、その水準は多様である。英語圏諸国、北欧諸国及びフランス語圏諸国の出生率は一・六から二・一と相対的に高いのに対し、ドイツ語圏諸国、イタリア等の南欧諸国、日本・アジアNIESの国々は一・二から一・四と低い。

 少子化の人口学的要因は晩産化であり、その背後に晩婚化・未婚化がある。相対的に出生率の高い先進諸国では同棲・婚外子の割合が高く、三十歳代の出生率が大きく上昇しているという特徴がある。一方、社会経済的要因としては、(1)女性の社会進出に伴う仕事と家庭の両立の難しさの増大、(2)子どもの消費財化と子育て負担感の増大、(3)近代的避妊手段の普及と中絶の合法化による望まない妊娠・出産の減少、(4)豊かな社会の到来による価値観の変化、(5)若者のパラサイト・シングル化、(6)若者の失業増大が挙げられる。ただし、これらのうち我が国では(3)は当てはまらず、(4)は明確になっていない。

 我が国における超高齢・人口減少社会には、ゆとりの増大、資源消費の減少、環境保全等の利点もあるが、経済成長率の鈍化、社会保障制度の維持困難性等のマイナス面もあり、社会経済的対応及び人口政策的対応の二つが必要となる。

 人口政策的対応としては、いわゆる少子化対策及び移民・外国人労働者の受入れがある。少子化対策としての家族政策については、仕事と子育ての両立支援等我が国の施策は十分にその効果を発揮してこなかったと考えられる。子ども・家族に対する社会保障給付は先進諸国中最も低い水準にあり、高齢者のための給付割合が高く、子ども・家族に対する給付割合が低い。

 今後は、仕事と子育ての両立支援策の実効性がより問われてくる。また、男女共同参画の促進、若者の自立促進といった価値観の変化とともに、企業・労働市場の役割として若者の職業意識の醸成・雇用対策、ファミリー・フレンドリー企業になるための努力が求められる。さらに、地域社会における保育サービスを拡充するとともに、子ども・子育て者にやさしい社会を構築することが必要である。

政策研究大学院大学教授  松谷 明彦 氏

 日本経済は、技術進歩を可能な限り織り込んだとしても、今後数年の間に継続的なマイナス成長、縮小に向かわざるを得ない。その原因は労働力の急激な縮小であるが、これは第一次ベビーブームと第二次ベビーブームの二つの山がある日本特有の人口構造に起因する。仮にドイツ並みに外国人労働力を活用したとしても、日本経済の縮小は避けることができないことから、縮小を前提として方策を考えていく必要がある。

 日本経済が縮小しても悲観的に考える必要はない。国力あるいは国際的なプレゼンスは経済の規模ではなく、一人当たり国民所得の高さにより決まる。今後の一人当たり国民所得が横ばいであると予測できることから、三十年後においても日本が世界の中で最も豊かな国の一つであるという事実に変わりはない。ただし、年金、公共事業及び財政については、相当抜本的な発想の転換、政策の転換が必要である。

 年金については、世代間の所得移転というフローには限界があるので、低廉で良質な公共賃貸住宅の供給等社会的ストックを活用することによって給付水準を引き下げるなど、社会保障政策の再設計が必要である。

 公共事業については、高齢化により貯蓄率が低下する中で大幅に縮小せざるを得ない。既存の公共施設の整理・縮小を行わなければ、新しい社会資本整備ができないばかりか、その時存在する社会資本の維持、更新すら十分にできないという事態となりかねない。

 財政については、増税は更なる貯蓄率の低下を招き、民間設備投資の圧迫要因等となることから、人口減少に合わせて財政支出を縮小することにより、収支の均衡を図るべきである。

株式会社大和総研チーフエコノミスト  原田 泰 氏

 人口減少の要因は基本的に子どものコストの増大であるが、そのうち最も大きなものが女性の出産等による就業中断の所得の喪失である。我が国の年功賃金カーブでは、退職後パートタイマーとして再就職した場合の所得喪失額は一億八千万円に上る。これに見合う児童手当や休業補償を支出すれば人口を増加させることは可能であるが、年金財政以上の支出が必要となり現実的ではない。ただし、年功賃金カーブの傾斜が緩やかになれば、フランスや北欧諸国のように数百万円単位の援助を行うことで、ある程度子どもを増やすことは可能となろう。なお、外国人労働力の導入により労働力人口を維持することは不可能である。

 人口が減少しても、豊かな日本を維持していくことは可能である。そのためには、(1)高齢社会のコストを引き下げること、(2)一人当たりの労働生産性を高めること、(3)より多くの人が働くことが必要である。

 高齢社会のコスト引下げについては、購買力平価で調整しても世界一高い我が国の年金受給額を福祉先進国であるスウェーデン並みに引き下げることで解決する。

 一人当たりの労働生産性については、先進諸国において労働力人口増加率と労働生産性の伸び率が右下がりの関係にある。我が国も農業、建設業等の労働生産性を高めることで毎年二%程度の労働生産性の伸びは可能であり、労働力人口の減少に対応することができる。

 より多くの人が働くことについては、高齢者の就業促進とともに、アメリカやフランスのように女性の労働力率のM字型カーブを解消することにより対応できる。

 長寿は人類の理想であり、子どもが大事に育てられるようになった結果が少子化である。年金制度を始めとする人口増加・高度成長時代の制度を人口減少・安定成長時代に適合するよう改革すれば、空間の豊かさを享受できる明るい少子高齢社会となる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 我が国においては、諸外国に比べ二十歳代で出産しなかった人が三十歳代で出産する割合が非常に低いため、コーホート合計特殊出生率の推計値も期間合計特殊出生率と同様に低い値となっている。

(2) 労働力不足、国力への影響という観点からではなく、子どもを生むに当たっての社会的制約を取り払い、子どもを持ちたい人がその希望を実現できるよう社会政策を講じるべきである。

(3) 子どもをコストとして考えるのではなく、子どもと一緒に楽しみ生きる人生について、積極的な意義付けを行うことが重要である。

(4) 年金・医療の負担の増大による将来の生活に対する不安の増大や若者の失業問題等が、未婚率の上昇や晩婚化、離婚率の上昇につながっている。

(5) 離婚時に子どもの養育費を強制的に支払わせる児童扶養履行強制制度を導入することは、父親の子どもに対する責任を強く求めることになることから、女性は安心して結婚することができ、結婚が増えて子どもが増えるという効果が期待できる。

(6) 多様な婚姻形態を認めている英語圏諸国、フランス語圏諸国では出生率が上がっているが、我が国では制度的な問題というよりはむしろ伝統的な家族主義という文化的、歴史的な制約が強いことにより、同棲や婚外子が少ないと考えられる。

(7) 少子化対策において、労働者としての親の権利を保障するという視点とともに、保育者・教育者としての親を助けるという視点が重要である。

(8) 北欧諸国で実施されているパパ・クォータ制を我が国でも導入することは、男女共同参画政策の推進策として有効である。

(9) 女性労働力率のM字型カーブを解消するためには、多様なニーズに適合できる子育て支援施設をつくることが必要であり、経営上のチェックを十分行った上でNPO法人等による自由参入を認めていくことも求められる。

(10) 労働力人口の減少に労働時間の短縮傾向を勘案した国民総労働時間が、二〇〇〇年に比べ二〇三〇年には三二%減少すると予測されることから、同期間における実質国民所得は一五%減少すると見込まれる。

(11) 我が国の将来の労働力人口の減少に対応するためには、労働生産性の向上のみならず、労働力の高齢化等労働力構造の変化に応じた産業構造を構築していく必要がある。

(12) 人口減少社会においては、新しい投資や工夫に対する規制を緩和することにより、労働生産性の向上及び産業構造の転換を図るべきである。

(13) 少子高齢社会に対応した制度改革は早急に着手すべきであり、とりわけ企業行動の変化が政策に与える影響及び効果が改革を後押しするきっかけになると考えられる。

(14) 人口減少経済における増税は、経済の大幅な縮小、貯蓄率低下による社会資本整備に問題が生ずる危険性があり、慎重な判断が必要である。次善の策として、建設国債を永久国債に転換し、その利息だけを払い続けるという選択肢も考えられる。

(15) 年金制度を持続的に維持するためには、給付を抑制するとともに、高齢者の生活支援として社会的ストックの活用、公共サービスの充実等を併せて行うことが必要である。

(16) 地方に限らず都市においても、人口減少に伴う人口密度の低下により財政コストが増加することを避けるため、居住地をある程度誘導することは、経済合理性の観点から選択肢の一つとして考えられる。

2 政府からの説明聴取及び主な質疑

 少子高齢社会への対応の在り方について、平成十六年十一月十七日、林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣、蓮実国土交通副大臣及び下村文部科学大臣政務官から説明を聴取し、質疑を行った。その概要は次のとおりである。

内閣府

 我が国における少子高齢化の進展は、二十一世紀の国民生活に深刻かつ重大な影響をもたらしかねない大きな問題であり、その対策は喫緊の課題となっている。

 少子化対策については、少子化社会対策基本法に基づき、少子化の流れを変えるための施策の総合的な指針として、平成十六年六月に少子化社会対策大綱を閣議決定した。大綱においては、若者の自立とたくましい子どもの育ち、仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し等四つの重点課題を設定し、それを受けて当面の具体的行動を二十八項目掲げている。また、大綱に盛り込まれた施策について、その効果的な推進を図るため、十六年中に数値目標を盛り込んだ具体的実施計画である新新エンゼルプランを作成することとしている。

 高齢社会対策については、高齢社会対策基本法に基づく高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針として、平成十三年十二月に新たな高齢社会対策大綱を閣議決定した。大綱は、旧来の画一的な高齢者像の見直し等を基本姿勢とし、高齢期の自立を支援する施策等について横断的に取り組むとともに、就業・所得、健康・福祉等の各分野における基本的施策を示している。横断的に取り組む課題についての内閣府の施策研究等の一つとして、高齢者の多様性を踏まえ、活動的な高齢者、一人暮らし高齢者、要介護等の高齢者の三つの類型に分け、それぞれの政策目標ごとに指標を設定し、高齢社会の現状を継続的に把握することとした。

 なお、経済財政諮問会議において、将来の人口減少や少子高齢化の下で制約条件とみなされる変化を新たな成長に結び付け、経済社会の更なる発展を図るための戦略として、日本二十一世紀ビジョンを平成十六年度中に取りまとめることとしている。

文部科学省

 少子化対策については、少子化社会対策大綱を踏まえ、主に以下のような取組を行っている。第一に、若者の自立とたくましい子どもの育ちの支援については、若者の就労支援としてキャリア教育実践プロジェクト、体験活動を通じた豊かな人間性の育成として地域子ども教室推進事業等の経費を新たに平成十七年度概算要求に計上しているほか、奨学金制度による支援を推進している。第二に、生命の大切さ、家庭の役割等についての理解の促進については、中・高校生の保育体験活動等を推進するとともに、子育てのヒント集としての家庭教育手帳の作成・配布等を行っている。第三に、子育ての新たな支え合いと連帯の構築については、就学前の児童の教育・保育の充実として、幼稚園就園奨励費補助、預かり保育や子育て相談等を実施している私立幼稚園に対する補助を行うほか、幼児教育支援センター事業の実施等に必要な経費を計上している。なお、就学前の教育・保育を一体としてとらえた一貫した総合施設については、十八年度からの本格実施を目指すこととしている。また、家庭教育の支援として、家庭教育手帳の作成・配布に加え、子育てサポーターの資質向上を図るリーダーの養成、ITを活用した先進的な家庭教育支援手法の開発・普及を図るため必要な経費を計上している。

 高齢社会対策については、高齢社会対策大綱に基づき、生涯学習の推進体制と基盤の整備として、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される生涯学習社会の形成に努めている。また、学校における多様な学習機会の確保として、大学における社会人特別選抜や夜間大学院等による社会人の受入れの促進、大学公開講座の実施等を行っている。このほか、多様な学習機会の提供、高齢者の社会参加活動の促進及びNPO等の活動基盤の整備に取り組んでいる。

厚生労働省

 我が国の社会保障給付費は、制度の充実と高齢化の進展により、一九七〇年の三・五兆円から二〇〇四年度予算ベースで八十六兆円へと急増している。このうち高齢者関係給付費の割合の伸びが非常に大きく、児童・家族関係給付費の割合は低下している。給付と負担の関係については、二〇二五年には百五十二兆円の給付と見込まれており、被保険者の社会保険料見通しは二〇〇四年の二三・七%から二〇二五年の三一・七%へと大幅な伸びが予想されている。国民負担率の国際比較によれば、現在の水準は高齢化や年金制度が成熟化している欧州より低いものの、将来にわたり持続可能な社会保障制度の確立は最大の課題であり、不断の制度改革に取り組む必要がある。平成十六年に社会保障の在り方に関する懇談会を設置し、今後は社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しの議論を行う予定である。

 少子高齢化社会への対応については、平成六年にエンゼルプラン、十一年に新エンゼルプランを策定し、保育関係事業を中心に具体的な数値目標を挙げ次世代育成支援対策を進めてきたが、合計特殊出生率の低下には歯止めが掛かっていない。十六年中には少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画となる新たなプランを策定することとしている。新プランは、保育関係中心から企業の取組や教育、まちづくり等の取組も含めて可能な限り幅の広いものとする必要があり、サービスの受け手である国民の目線からの目標も取り入れること等により、総合的な取組が進められているということが実感できるものとしたい。また、効果的な少子化対策を進めるためには、高齢者給付中心の社会保障制度を見直し、社会保障全般の在り方の中で少子化対策を検討する必要がある。

国土交通省

 国土交通省は、バリアフリー化された生活環境、子育てをしやすい生活環境、高齢者が安心して暮らせる生活環境の実現に向けて、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、だれもが利用しやすいまちづくりや交通施設の整備を積極的に推進している。

 バリアフリー化された生活環境について、鉄道、バス等の公共交通機関については交通バリアフリー法により、駅等の新設、車両の新たな導入に際してバリアフリー化が義務付けられている。道路、駅前広場の歩行空間については道路の移動円滑化整備ガイドラインにより整備が進められている。住宅については公共賃貸住宅を新設する場合にはバリアフリー化を標準仕様とし、持家についても住宅金融公庫による融資の優遇措置によりバリアフリー化を推進している。建築物についてはハートビル法により、百貨店、劇場等不特定かつ多数の者が利用する建築物の新築等の場合にはバリアフリー化が義務付けられている。また、駅、駅前広場、道路等のバリアフリー化を一体的かつ総合的に推進するため、交通バリアフリー法に基づき、平成十六年九月末現在、百六十一の市町村が基本構想を策定している。このほか、バリアフリー情報を提供するらくらくおでかけネットを整備するとともに、交通バリアフリー教室を開催している。

 子育てしやすい生活環境について、税制、金融面での子育て世帯に対する住宅取得の支援等良質な住宅・居住環境の確保、子どもの遊び場の確保、建築物、公園等の施設等に関する安全対策の推進を行っている。

 高齢者が安心して暮らせる生活環境について、高齢者円滑入居賃貸住宅の登録・閲覧制度の実施、バリアフリー化された優良賃貸住宅の供給、公営住宅への優先入居等を実施しているほか、住宅施策と福祉施策の連携によるシルバーハウジング・プロジェクトを推進している。また、交通事故が多発している住居系地区等七百九十六か所をあんしん歩行エリアとして指定し、生活道路への歩道の設置や通り抜け車両の抑制に取り組んでいる。

 このような政府からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 高齢者施策については、平成七年の高齢社会対策基本法制定からの九年間に、画一的な高齢者像を見直し、多様な高齢者像という観点から施策を体系付けるという転換がなされている。

(2) 男女共同参画基本計画策定後の教科書等の記述が、少子化社会対策大綱に規定される「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」を深めるものとなっているかどうか照らし合わせてみる必要がある。

(3) 晩婚化が進んでいることから、育児と介護の両立を支援することも重要である。

(4) 児童手当の支給対象年齢、支給額の水準を見直すなど、子育てに対する経済支援を拡充する必要がある。

(5) 公立保育所運営費の一般財源化により、四割の地方公共団体で公立保育所運営費が削減され、常勤保育士の非常勤への置き換え、保育料の引上げ等両立支援策の充実とは逆行する流れがみられる。

(6) ノルウェーでの父親の育児休業取得率、家庭参加の状況にかんがみ、我が国においてもパパ・クォータ制を導入すべきである。

(7) キャリア教育実践プロジェクト、専修学校を活用した若者の自立・挑戦支援事業等若年者の雇用対策の充実を積極的に図ることが重要である。

(8) 子どもを持てない理由の一つに教育費等の経済的負担が重いことが挙げられるため、税制上の措置も含めて積極的な支援を行うことが必要である。

(9) 男性の育児参加の重要性について、学校教育のカリキュラムの中で積極的に示す必要がある。

(10) 地域教育力再生プラン等において、学校に来ることができない子ども、児童虐待を受けている子どもについてもケアすることが重要である。

(11) 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保等出産のための体制を整備することにより、「いいお産」を普及させることが重要である。

(12) 抜本的な少子化対策を講ずるためには、新たな財源の確保が必要である。

(13) 社会保障制度の議論に際しては、国民負担率を五〇%に抑えることにこだわるのではなく、経済財政のバランス、世代間の公平性の確保等を考慮した上で、財政赤字も含めた潜在的な国民負担率に基づく負担と給付のバランスについて考える必要がある。

(14) 少子高齢社会を人口減少社会としてとらえ、人口増加を前提としてつくられた制度を抜本的に改革することが必要であり、その中でも財政システムの改革が極めて重要である。

(15) 社会保障制度については、自助・共助・公助の三つの柱によって支えていくことが重要である。

(16) 歩行空間のバリアフリー化については、歩道を拡幅するだけではなく、用途別に区分するなどの対応が必要である。

(17) 少子高齢化対策の観点から、二世帯・三世帯住宅取得に対する支援の拡充が必要である。

(18) 災害時への対応として、乳幼児のための粉ミルク、おむつ等の備蓄、避難所として使用される学校等の耐震対策等が不可欠であり、そのことがだれでもどこでも生活しやすい社会の形成、ひいては少子化対策にもつながる。

3 調査会委員間の自由討議

 参考人からの意見及び政府からの説明聴取を踏まえ、少子高齢社会への対応の在り方について、具体的な調査計画等策定の参考に資するため、平成十六年十一月二十四日、調査会委員間における自由討議を行った。そこで述べられた意見の概要は次のとおりである。

(1) 少子高齢社会を活性化された社会にするためには、マクロ的な政策については、移民政策及び婚外子について議論するとともに、ミクロ的な対策については、地方分権を推進する流れをつくることが必要である。

(2) 一年目の調査の論点としては、長寿化に伴う労働力人口の範囲の見直し、総人口が大幅に減少する社会の在り方、年金・医療・介護保険制度に係る経費の負担割合の検討において、単純な国民負担率ではなく国債の発行残高及び税の直間比率を考慮することが挙げられる。

(3) 人口減少社会から人口均衡社会に転換させるために必ず実施すべき政策の在り方及び現時点における国民の多様な価値観を前提に提起し得る選択的政策の在り方について、経済的・財政的負担の視点からも議論が行われることが望ましい。

(4) 少子高齢社会に対応した国の基本方針が担うべき役割について議論を深めるとともに、個々の対策の効果についての検証及び評価が必要である。また、人口減少社会における財政を始めとする国の基本構造についても議論すべきである。

(5) 国の負担率の引上げ等介護保険制度の基盤整備の推進、最低保障年金制度の実現、育児休業期間中の賃金保障率の引上げ等による仕事と家庭生活との両立の推進、公的な保育サービスの質・量の充実、男女の給与格差の是正の五つについて具体的に検討していくべきである。

(6) 高齢社会対策としての自助・共助・公助の役割を具体化し、現行の社会保障制度を前提に、今後発生する公的需要の明確化により公助の限界を明らかにした上で、自助・共助社会の設計を考えていく必要がある。

(7) 高齢者が健康で心豊かに生活できる社会を構築するため、生活習慣病の予防・リハビリの強化等健康づくりの推進、社会貢献・高齢者雇用等の生きがいづくり、資産を活用したバックファイナンス等生活対策から具体的な問題を取り上げて議論する必要がある。

(8) 少子化対策としては第三子に対する財政的支援を、高齢化対策としては高齢者の健康づくりのため、高齢者の地域ボランティア活動の参加等に対する財政的支援を検討すべきである。

(9) 少子化が社会にもたらすマイナス面を分析し、子どもにやさしい社会、子どもを育てやすい社会を構築するための仕組みについて議論する必要がある。

(10) 少子化対策として幼児期の子どもだけでなく、子どもを生む、育てる等の各段階での支援を考えていく必要がある。

(11) 少子高齢の問題に関しては、これまでは高齢化対策が先行し、子どもが健やかに育つために必要な対策については不十分であった点を踏まえ、社会全体に対して子育ての重要性について問題提起をすべきである。

(12) 少子化の要因は、子育ての経済的負担感に加えて、何か子どもにあったときは親の責任を追及するという社会的風潮の中での子育てに対する心理的負担感である。

(13) 少子化により子どもが社会の中で少数派となり、社会的に囲い込まれたり意見が反映されないという問題が生じるため、大人の責任で子どもの健やかな成長を考えていく必要がある。

(14) 我が国の一歳から十四歳までの子どもの死因の第一位が不慮の事故であることを踏まえ、子どもの安全をいかに守るかという観点から調査を行う必要がある。

(15) 少子化関係施策である幼保一元化、教育から就業への移行等所管相互の連携が取れていない分野について調査することは意義がある。

(16) 保育所における給与所得者と自営業者との負担額の格差是正、保育サービスの供給主体についての規制の洗い直しが必要である。

(17) 少子化社会を前提にして、子育てと仕事の両立支援、パパ・クォータ制の導入等子どもを生みたい人がその希望を実現できるようきめの細かい支援を検討していく必要がある。

(18) 高齢社会の支え手を増やすため、最近急増中のニートも含めた若者の就業問題について検討する必要がある。

(19) 我が国においては企業が極めて大きな社会的役割を果たしているため、女性、高齢者及び外国人の雇用に対する企業経営者の理解が必要である。そのための政治の役割としては、税制上の優遇策、企業の社会的評価が上がるような誘導的政策を講じることが求められる。

(20) 少子化社会対策大綱に規定される「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」についての教育現場の取組状況、家族責任の理念化、勤労観・自尊心を高める教育の在り方について調査する必要がある。


二 少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件

1 政府からの説明聴取及び主な質疑

 少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、平成十七年二月九日、林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣及び塩谷文部科学副大臣から説明を聴取し、質疑を行った。その概要は次のとおりである。

内閣府

 我が国では過去三十年間出生率が下がり続けており、総人口は二〇〇六年をピークに二〇〇七年以降減少に転じる見通しである。少子化が急速に進行して社会全体の中で若い力が減少することは、持続的な経済成長や社会保障制度の維持を始めとした国の基盤に深刻な影響を及ぼす問題である。

 このため、平成十六年六月に少子化社会対策大綱を定め、我が国の人口が減少に転じていく向後五年程度をとらえ、集中的な取組を進めることとした。大綱では四つの重点課題として、「若者の自立とたくましい子どもの育ち」、「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」、「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」、「子育ての新たな支え合いと連帯」を掲げ、政府全体で取り組むべき二十八の行動を提示した。

 平成十六年十二月に策定した子ども・子育て応援プランは、本大綱に基づく重点施策の具体的実施計画として二十一年度までの五年間に講ずる具体的な施策内容と目標を示すとともに、目指すべき社会の姿を掲げている。また、保育サービスの一層の整備とともに、若者の自立支援、働き方の見直し、地域の子育て支援等を加えた幅の広い内容となっている。

 少子化社会対策においては、子どもが健康に育つ社会、安心と喜びを持って子育てに当たっていくことを社会全体で応援していく体制づくりが重要であり、内閣府としては関係省庁と一体となってこの新たなプランを推進していく。

厚生労働省

 現在、我が国では少子化が急速に進行しており、平成十五年の合計特殊出生率は一・二九となり、国際的にみても最も低い水準になっている。

 これまで平成六年にエンゼルプラン、十一年に新エンゼルプランを策定し、保育関係事業を中心に具体的な目標を掲げて次世代育成支援対策を進めてきているが、働き方の見直しに関する取組が進んでいないこと、子育て支援サービスが十分に行き渡っている状況になっていないこと、子育て家庭における経済的負担感が増大していること等により、少子化の進行の流れを変える対策の効果が追い付いておらず、出生率は低下の一途をたどっている。

 少子化社会対策大綱に掲げた重点施策の具体的実施計画として平成十六年十二月に策定した子ども・子育て応援プランでは、従来のプランよりも幅広い取組について、おおむね十年後を展望した目指すべき社会の姿を提示し、二十一年度までの五年間に講ずる具体的な施策内容と目標を掲げている。また、掲げた目標値は全国の市町村の目標値の積み上げを踏まえており、地方公共団体の計画とリンクするものとなっている。

 本プランにおける厚生労働省の施策として、(1)「若者の自立とたくましい子どもの育ち」については、若年者のためのジョブカフェにおけるカウンセリングや職業紹介等の各種サービスの推進、若年者の試行雇用制度の活用等、(2)「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」については、企業の行動計画の策定・実施の支援、男性の子育て参加促進に向けた取組の推進、長時間労働者の一割以上削減等、(3)「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」については、保育所等における中高生と乳幼児との触れ合う機会の推進、全市町村において安心して子どもを生み育てることができる社会について共に考える機会の提供等、(4)「子育ての新たな支え合いと連帯」については、つどいの広場や地域子育て支援センターの全国六千か所の設置、待機児童の多い市町村を中心に三年間で受入れ児童数二百十五万人への拡大、全市町村への児童虐待防止ネットワークの設置、適切な小児救急医療の提供等を掲げている。

 このほか、今後の課題として、社会保障給付について大きな比重を占める高齢者関係給付の見直しに加え、社会全体で次世代の育成を効果的に支援していくため、地域や家族の多様な子育て支援や児童手当等の経済的支援等の次世代育成支援施策の在り方等を幅広く検討することとしている。これらの課題については、社会保障制度全般についての一体的な見直しの検討の中でも検討を進めていくことが重要である。

文部科学省

 少子化の進行は、子ども同士が切磋琢磨する機会の減少、親の子どもに対する過保護・過干渉を招きやすくなるなど、子どもの教育面へ大きな影響を及ぼす重要な課題である。

 子ども・子育て応援プランにおける文部科学省の取組として、「若者の自立とたくましい子どもの育ち」については、(1)若者の就労支援の充実として、初等中等教育段階におけるキャリア教育の推進、インターンシップの推進等、(2)奨学金事業の充実として、日本学生支援機構の奨学金制度による支援の推進、(3)体験活動を通じた豊かな人間性の育成として、子どもの多様な活動の機会や場所づくりの推進、地域ボランティア活動の推進等、(4)子どもの学びの支援として、義務教育改革の推進、「生きる力」の育成、地域に開かれ信頼される学校づくり等を盛り込んでいる。

 「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」については、学校教育を充実し、将来親となる世代が幼い子どもと触れ合いの体験等を通じて子どもや家庭を知り、子どもと共に育つ機会を提供するため、中高生の保育体験活動を推進する。

 「子育ての新たな支え合いと連帯」については、(1)就学前の教育・保育の充実として、幼稚園における地域の幼児教育センターとしての機能の充実、幼稚園就園奨励事業の推進、総合施設の制度化等、(2)家庭教育支援の充実として、家庭教育に関する学習機会や情報の提供の推進、ITを活用した家庭教育支援手法の普及、(3)特に支援を必要とする子どもとその家庭に対する支援の推進として、学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究等、(4)子どもの健やかな成長の促進として、食育の推進等、(5)子どもの安全の確保として、子どもを犯罪等の被害から守るための取組の推進等を盛り込んでいる。

 このような政府からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 子ども・子育て応援プランは各省庁の施策を寄せ集めて継ぎはぎした感がある。進行する少子化に真剣に 対処するためには、子どもを基本に据えた政策に国を挙げて取り組んでいく姿勢が求められる。

(2) 子ども・子育て応援プランでは教育や若者の雇用まで分野を拡大したことは評価できるが、そのプランをいかすためにもこれまでのプランの検証が必要であり、特に保育所の待機児童対策が詰め込み保育の原因となっている点についての検証が必要である。

(3) 待機児童解消のためには、母子手帳の交付時において各地方公共団体が保育サービスの必要性や求められるサービスの内容について把握することが重要である。また、小学校入学後の学童保育の充実も必要である。

(4) 就学前の教育・保育を一体としてとらえた一貫した総合施設に関しては、その基本的な考え方、年齢に応じた対応内容、責任官庁等を明確に示すべきである。

(5) 保育運営費の財源となる地方交付税交付金の増額とともに、子どもを持ちたい若い世代のニーズにこたえ、育児休業給付金の支給割合を現行の四〇%から少なくとも六〇%に引き上げることが必要である。

(6) 子ども・子育て応援プランの着実な推進のためには、企業の役割が重要であり、次世代育成支援対策推進法に基づき企業が策定する行動計画の実効性確保のための方策を検討する必要がある。

(7) 従来の仕事と家庭の両立支援においては、保育の外注化が中心となっていたが、今後は生産性を高めつつ従業員が定時退社できるよう企業の意識を改革するとともに、企業内託児施設の設置に対して支援すること等が重要となる。

(8) 子ども・子育て応援プランにおいて、中小企業の達成目標が低く抑えられるなど、大企業との格差が一層拡大する可能性があるため、両者のバランスを検討すべきである。

(9) 親となる若い世代に、子どもを生み育てる意義や家庭の役割を理解し社会を構成する一員であることを自覚させる教育が必要であり、特に男性の意識改革が重要である。

(10) 子どもの達成感、様々な体験、人間関係等の欠如に対応するため、受けるより与える方が幸せであるという生き方や姿勢を子どもがつかめるような体験プログラムを義務化するとともに、キャリア・カウンセラーを小学校段階から配置できるようなプログラムの策定が必要である。

(11) 子ども・子育て応援プランに子育てをしながら学習するという視点を追加する必要がある。

(12) 牛海綿状脳症(BSE)、食品添加物等、食品の安全性に懸念が生じている中で、食品の安全性の確保について国が講じようとする施策の方向性を明確にした上で、保育所等における食育の推進を図るための施策を考える必要がある。

(13) 小児救急医療体制を整備するためには、通常の医療が小児救急医療圏において賄えるよう、従来からの拠点病院の整備とともに、初期診療体制を地域でいかに整備するかが課題となる。また、保護者の不安解消のための小児の救急電話相談事業、地域の開業医の診療時間の夜間シフト等による、患者の大病院集中緩和策が不可欠である。

(14) 出産後の施策のみならず、不妊治療に対する財政的支援や社会の理解の涵養等、出産前の環境整備が必要である。

(15) 出産費用の国による負担は少子化対策の大きな柱として位置付けなければならないが、医療保険による対応、公的な財政支出等その方法については十分な検討が必要である。

(16) 平成十四年度の社会保障給付費における高齢者関係給付費は五十八兆円であるのに対し、児童・家族関係給付費は三兆円規模である。また、子ども・子育て応援プランの五年間の予算規模も明確にされておらず、踏み込んだ対応が求められる。

(17) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実現のためには、当事者の意見の反映、計画の検証・評価が必要である。

(18) 治安の悪化や子どもが犯罪の被害者・加害者になるかもしれないという不安が少子化に影響している可能性がある。子どもの安全の確保のため、関係省庁間の連携を図るとともに、政府としての対策の方向性を社会に明確に示すことが求められる。

2 参考人からの意見聴取及び主な意見交換

 少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、平成十七年二月十六日、二月二十三日、三月二日、四月六日、四月二十日及び五月十一日にそれぞれ参考人から意見を聴取し、意見交換を行った。その概要は次のとおりである。

(平成十七年二月十六日)
お茶の水女子大学名誉教授  袖井 孝子 氏

 我が国が第二次世界大戦以降経験している出生率低下の要因としては、ベビーブーム以降一九五〇年代前半までは夫婦の出産抑制、七〇年代末から八〇年代までは未婚化・晩婚化、九〇年代以降は非婚化・夫婦当たりの出生児数の減少が考えられる。少子化の要因のうち、未婚化、非婚化について二つの側面から考えたい。

 なぜ結婚しないのかという主体的要因としては、まず結婚の必要性・魅力・メリットの減少が挙げられる。従来、結婚に対し、男性は家事・身の回りの世話を、女性は経済力を期待していたといえるが、家庭電化製品等の普及、男女雇用機会均等法の施行等の社会変化により、一人でも暮らしていくことができるようになり、結婚の必要性が減少した。また、行動や生き方の自由が失われること、女性にとっては結婚により賃金の低下やキャリアが中断される上に仕事と家庭の両立が困難であるなど失うものが大きいことが結婚の魅力・メリットを減少させている。このほか、結婚に対する社会的圧力が低下したこと、親や周囲の結婚生活が魅力的ではないこと、親もあえて結婚を勧めないこと、我が国はカップル文化ではないこと等が主体的要因として考えられる。

 生涯未婚を望む人は少ないが未婚率は上昇している。なぜ結婚できないのかという客観的要因としては、結婚相手に求める条件のミスマッチ、恋愛結婚の増加、学縁婚の少なさ・職場結婚の減少にみられる出会いの場の減少、男女の適齢期人口のアンバランス等が挙げられる。

 少子化対策として、非婚化現象を解消するためには、結婚そのものの自由化、安心して暮らせる社会・将来に不安のない社会の構築、敗者復活を可能にする社会の実現を通じ、結婚や家族に対する考え方や社会全体を変えることが必要である。

東京学芸大学教育学部教授  山田 昌弘 氏

 結婚したい、子どもを持ちたいという欲求は弱まっていないが、お金と相手がなければ子どもは生まれてこない。結婚・出産促進の条件は、カップルが稼ぎ出せる収入の将来見通しが結婚又は出産後に期待する生活水準より高いことである。期待する生活水準は未婚者の生活水準に連動し、将来見通しは若者の収入増加の期待に依存する。

 高度成長期は、期待する生活水準と男性の将来の所得見通しが共に上昇し、出生率は安定していた。安定成長期は、パラサイト・シングルの発生により期待する生活水準が上昇する一方、男性の収入の伸びが鈍化したため、結婚を先送りする人が増え、出生率が低下した。一九九〇年代後半には、期待する生活水準は変化がないものの、将来の所得見通しが不安定化したため、出生率の低下が加速した。

 一九九〇年代後半以降、フリーター等が増大し、若者が稼ぎ出せる将来の収入見通しが低下し、未婚化が更に進展している。未婚女性が未婚男性に求める収入と未婚男性の実際の収入とのギャップが未婚化を進展させ、パラサイト・シングルの高齢化という現象が起きている。また、将来の生活への不安が、既婚女性の出生率の低下、予定子ども数の低下に現れている。

 今後予想される問題は、(1)経済的縮小、若者の雇用の悪化、若者の将来見通しの悪化、結婚・出産の先送りといった、少子化と経済停滞のスパイラル、(2)親の年金という生活手段がなくなる不安定雇用の女性、結婚相手がみつからず不安定雇用の状態にあり将来に絶望する中年男性の増加といった、パラサイト・シングルの不良債権化、(3)経済的に不安定な中で妊娠が先行する結婚の増加である。

 現在、「男性は仕事、女性は家事」という枠組みで豊かな生活を目指すことができなくなり、また女性の雇用が二極化している。今求められているのは、不安定雇用の准安定化や生活安定化のための資金給付・貸与等により、不安定雇用の若者が将来の生活の見通しを立てられるようにすることである。少子化対策が効果を上げるためには、施策の集中化と迅速性が重要である。

国立成育医療センター名誉総長  松尾 宣武 氏

 少子化対策として非常に有効な対策はないことを認識した上で、次世代対策を考える必要がある。効果の不明確な対策を採り、借金を次世代に先送りすることは、最も避けるべきである。

 すべての先進諸国において少子社会を迎えており、子どもの数が減少しているだけでなく、子どもの質が低下している。我が国においても子どもの半数は心身不健康であると推測される。子どもを増やすことではなく、子どもの健康の質を確保することに少子化対策の主眼を移すべきである。

 少子化の要因の根源には、親が子育ての意味を見いだし得ないという育児思想の崩壊、親が子育てできないという家庭機能の低下があり、新たな育児思想の確立が求められている。

 少子化対策の視点を、出生率の向上から、子どもの健康と幸せの確保に移すべきである。実効ある少子化対策とは何かを問い直す必要がある。

 子育てにおいて乳幼児期と思春期は重要である。乳幼児期の母親の重要性が軽視されていることを憂慮している。乳幼児期においては母親が、思春期においては父親が主体になるという役割分担を考えなければならない。

 仕事と家庭の両立は先進諸国すべてが抱える問題であると同時に、すべての国においてみられる子どもの健康障害の原因でもある。仕事と家庭の両立は非常に困難であることをまず理解する必要があり、出産・子育てを優先したキャリア女性に対する復帰支援策を充実させることが非常に重要である。

 少子化対策において最も重要な課題は親教育であり、それは社会的規範を取り戻すこと、人間性を深く学ぶことである。

 このほか、我が国の医療計画から完全に脱落している子どもの視点を取り戻す必要がある。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 結婚の契機となる男女の出会いの場をつくることは産業の一形態となっており、恋愛結婚が増えている現状においても、ある一定の役割を果たしているといえる。

(2) 嫡出子と非嫡出子との法律上の差別を撤廃するなど現在の制度を徐々に改めることにより、結婚や家族に対する考え方を変えることができると考えられる。

(3) 我が国においては家族政策についての明確な理念があるとはいえないが、あらゆる政策の中に家族の生活を大切にするという視点を入れることは必要である。

(4) 子育てにおいては親への社会的支援が有効である。また、乳幼児期における母親と子どもの関係が子どもの人格形成に与え得る影響の大きさを、親になるべき若い世代に教える必要がある。

(5) 新たな育児思想の一つとして子育てによる親の自己像の確立が挙げられるが、育児思想には子どもの側に立つという視点を入れることも重要である。

(6) 保育者としての親への支援、母性への支援を考えるべきであり、就業形態の多様化、育児休業の保障、産後うつ病等になるリスクの高い母親に対するカウンセリング等が必要である。

(7) 少子化の要因として考えられる将来に対する不安を解消するためには、若者のうち生産性の低い者に対し将来の収入の見通しが立てられるような方策を講じること、持続可能な社会保障制度を構築することが必要である。

(8) 若者に対しては、将来の収入の見通しが立てられるような労働環境を整備するだけでなく、精神的に自立できるようアイデンティティーの確立や実社会について学ぶための教育を行う必要がある。

(9) 初等中等教育段階から一人一人の職業観や勤労観を育てる教育を行うべきである。

(10) 若者が生きる力を身に付けるためには、多様な生き方を学べる環境、努力が報われる場としてのコミュニティーの構築、安全にスポーツを行える場が必要である。

(11) 出産を健康保険の適用範囲に含めることを検討するなど、出産期の経済的支援の在り方を考える必要がある。

(12) 生殖補助医療により超低出生体重児の出生が増加するというリスクについての社会的認識が不足しており、かつ新生児集中治療管理室(NICU)やその後の後方医療施設が不足している現在の我が国において、生殖補助医療を推進することは周産期医療・新生児医療が混乱することにつながるため、生殖補助医療について法的な規制が必要である。

(13) 小児医療の場が混乱している原因は、小児科医の不足ではなく小児科医が勤務している病院数が極めて多いことであり、その解消のためには、小児科医を集中させる必要がある。

(14) 将来子育てをしながら生活が成り立つ保証があることが、出生率の向上につながると考えられる。我が国においてはその保証を社会保障制度で担保するのか、年齢差別・性差別のない労働市場で担保するのかについて検討する必要がある。

(15) 少子化対策を実効あるものとするためには、正規雇用を基本として考えられている社会保障制度や雇用保障制度を非正規雇用や自営業の女性をも対象としたものに改めていく必要がある。

(16) 単に出生率向上のためではなく社会的公平の観点から、独身者の社会保障や税制上の負担を大きくし、子育て世帯を優遇することも考えられる。

(平成十七年二月二十三日)
慶應義塾大学商学部教授  樋口 美雄 氏

 我が国では戦前の「産めや、増やせや」政策の苦い経験から、政府は家族政策に対しては慎重であった。しかし、特に若い世代の現実の子ども数が希望子ども数を下回っている現状においては、マクロ的施策又は財政的なバランスの問題からではなく、個々人が希望する子どもの数を実現するための政策的サポートが必要である。

 先進諸国間の比較でみると、一九八〇年には女性の労働力率の高い国は合計特殊出生率が低いといった関係が、各国の様々な対策によって、二〇〇〇年には女性の労働力率の高い国の方が合計特殊出生率も高いという関係に変化している。対策の効果の指標として、国内総生産に占める家族政策財政支出の割合を取り上げてみると、その比率が高い国ほど出生率が高いことが分かるが、財政支出は十分条件ではなく、男女の役割分担が明確な国では出生率の低下が進んでいる。また、女性の働きやすい環境が整備されている国の方が出生率は高い。女性の就業環境の整備が国際競争力の低下を招くという懸念があるが、女性の就業環境が整備されている国の方が国際競争力が高く、国内の企業においても同様の関係が出てきている。

 出生率低下の要因としては、一九八〇年代後半はパラサイト・シングル、女性のキャリア志向の強まりという経済が豊かになったがゆえの晩婚化が挙げられていたが、九〇年代になると経済成長が止まり、若者の収入の不安定化、将来に対する不安から晩婚化、少子化が進んだことが指摘されている。男女共にフリーターよりも正社員の婚姻率が高いことからも、経済的支援等により若者の将来に対する不安を取り除くことが重要な少子化対策となる。

 今後は、雇用不安の解消として、普通の人が普通に暮らすことができる状況をつくるため、正社員とパートタイマー間の労働時間の二極分化及び賃金格差の是正等が求められる。また、家族への経済支援策として、育児休業手当の一般財源化、減税・タックスクレジット制度の導入、児童手当の拡充、ひとり親に対する支援強化及びベビーシッターの活用等多様な選択肢のある保育サービスの提供が必要である。

全国商工会議所女性会連合会副会長・横浜商工会議所女性会会長  秋山 桂子 氏

 急速な少子高齢化が進む中で、仕事と子育ての両立支援は緊急性の高い重要課題であるにもかかわらず、雇用者及び被用者双方に対する両立支援策は十分に実現されていない。

 平成十四年四月に全国商工会議所女性会連合会会員の企業の従業員に対して行った「子育て世代の就業環境に関する調査」では、仕事と子育ての両立の実現には、保育施設の利用時間の拡大・一時利用等保育サービスの拡大や施設整備等による保育環境の一層の充実、一緒に働いている人々の理解、勤務時間短縮制度やフレックスタイム制度等の就業時間に関する配慮、出産手当・児童手当の充実等が求められている。十月には調査の結果を踏まえ、「仕事と子育ての両立支援の充実を目指して」と題する提言を取りまとめ、政府に提出した。提言では、政府・地方公共団体に対しては、保育施設・サービスの一層の整備・充実等子育て世代の女性が働きやすい条件整備を、また各地の商工会議所女性会に対しては、各地域の現状を踏まえ、地方公共団体に対し両立支援策の拡充・推進の要望に努めること、仕事と子育ての両立を実現するための情報収集の場の提供等への取組を求めた。

 平成十六年十月に経営者である女性会会員に対して行った「事業主に対する仕事と子育ての両立推進支援策に関するアンケート調査」では、財団法人二十一世紀職業財団・地方公共団体等が実施する事業主向け支援策についての認知度が低かったことから、事業主向け支援策を広く周知することが求められる。また、従業員の両立支援推進に効果的と考える企業の配慮として、育児休業取得後に復帰しやすい環境整備、育児休業を取得しやすい環境整備、育児施設の提供・利用に対する補助等が挙げられたが、その実現に関しては女性会会員は中小企業経営者が多いため、経済的な面から対応することが困難となっている。

 少子高齢化は国の将来を左右する問題であり、子どもは社会の宝という共通認識を社会に熟成させつつ、具体的な対策を講じることが必要である。子育て世代の女性が安心して働きやすい条件整備の推進とともに、従業員のみならず事業主に対しての支援が必要であり、休業助成金等の更なる見直し・整備が求められる。

NPO法人びーのびーの理事長  奥山 千鶴子 氏

 〇歳から二歳までの子どもの約八割の育児が在宅で行われる中、育児不安が専業主婦に多いこと等を背景として、地域の人たちに支えられながら親も子も伸び伸び育ち合う子育て環境をはぐくむ「おやこの広場びーのびーの」を平成十二年四月に開設した。十四年度からは、厚生労働省のつどいの広場事業の認定を横浜市から受けている。

 広場の特徴は、子どもと保護者が通う場所であること、食べること・寝ること・遊ぶことが保障できる「もうひとつの家」であること等であり、幅広い年齢層のボランティア等多くの人とのかかわりの中での子育て・子育ちが行われている。親自身は心の安定を得られ、成長し、利用者からスタッフになる循環型支援が生まれている。

 つどいの広場事業の効果としては、子育てに関する知識や情報が増えたこと、子育てをしていて孤立を感じることが減ったこと等が挙げられる。また、地域の関係機関と連携して活動している広場の方が利用者に安心感をもたらす傾向がみられ、利用頻度が高いほど孤立感の解消・ストレスの軽減につながっている。

 子ども・子育て応援プランの四つの重点課題に則した今後の次世代育成に向けて求められる方向性として、十八歳になったら若者が自立できる社会の構築、十代のベビーシッターの養成、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の内容の検証、学校における乳幼児とのふれあい授業づくり、子育ての拠点づくり、保育サービスと育児休業の整合性等が挙げられる。また、プランに少し足りない視点としては、責任を持って推進する主体が明確でないこと、都市部が中心であること、財源に踏み込んでいないことが挙げられる。

 今後の課題としては、社会保障制度の一体的な見直しの中で財源にどこまで踏み込めるかが挙げられる。また、我が国を成熟した社会に転換するためには、行政主導からの市民の自立、草の根からの継続可能な地域づくり、政治家が子育て家庭の現状を認識すること、親が親として育つための支援も必要である。地域に多くの拠点をつくることが親への支援としてできることの一つであり、支えられ感のある親は必ず地域社会に貢献できる親になる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 〇歳から二歳までの子どもの保育施設が不足していることへの対応として、保育所、幼稚園等と連携を深め地域に密着したつどいの広場を増やしていくとともに、NPOへの財政支援、家庭支援の専門家の育成が必要である。

(2) 多様な保育ニーズを満たし、柔軟な保育サービスを提供するためには、保育施設における非正規労働者の活用は有効であるが、そのためには正規職員と非正規職員の格差是正に取り組むことが重要となる。

(3) 女性が安心して子どもを生み、男性も女性も一緒に子育てできる環境をつくるためには、育児は男女共通の役割であることを認識し、男性の育児を評価していく企業風土及び社会風土を醸成していく必要がある。

(4) 企業のコストアップにつながらずにだれもが育児休業の取得等が可能となるためには、勤務時間短縮制度、フレックスタイム制度の活用等雇用形態の多様化による働き方の見直しが必要である。

(5) 一九九〇年代以降、労働基準法における有期労働契約期間の上限延長、労働者派遣法における派遣職種の拡大等非正規雇用における規制緩和が行われてきたが、雇用機会拡大のため規制緩和を進める際には正社員と非正社員の均衡を図ることが重要である。

(6) フリーター等非正規労働者の増加が婚姻率低下の一つの要因となっているため、試行雇用、紹介予定派遣の活用等により、有期雇用から正社員に転換できるよう雇用慣行を見直すことが必要である。

(7) EUで適用されている時間差差別禁止制度等の導入により賃金体系の一本化を図るとともに、税・社会保障制度も含めた正社員と非正社員の区分を撤廃していく必要がある。

(8) 少子高齢社会においては、男女共に自己責任の下で自己選択が実現でき、個人で工夫できる働き方・暮らし方を認めていく社会を構築することにより、競争力を高めていくことが可能となる。

(9) 企業が競争力を高めるためには長期雇用も重要であるが、正社員と非正社員を採用時に選別し固定化するのではなく、転換制度を設けるなど再挑戦を認め、努力している人が報われる社会を構築する必要がある。

(10) 子どもを持ちたい人がその希望を実現できるような環境を整えるためには、国民が肌で感じられるよう重点的・集中的に施策を展開していくとともに、企業の管理職の多くを占める男性の意識改革も必要である。

(11) 我が国で出生率の上昇と女性の就業継続を両立させるためには、表彰制度等により企業の好事例を広めていくとともに、次世代育成支援が成功している企業に対して減税等を行うことが考えられる。

(12) 仕事と子育ての両立のためには、親の帰宅時間を早めることへの職場の理解を深めることが重要である。

(13) 中小企業においては、育児に対する職場の理解、代替人員の確保等により育児休業を取得しやすい環境を整備する必要がある。

(14) 若い世代に子育ての素晴らしさを体験する場を増やすことが重要であり、そのためには中・高校生の保育実習等による福祉と学校の連携が必要である。

(15) 雇用保険の本来の趣旨とは一致しない側面が生じてきた育児休業手当については、一般財源化を検討する必要がある。また、高齢者に手厚い社会保障給付費の配分を見直すことも求められる。

(16) 少子高齢社会への対応として、労働者の時間当たりの生産性をいかに高めていくかという視点が重要である。

(17) 団塊世代が六十歳定年を迎える二〇〇七年以降は、都市部においても少子高齢化問題が顕在化し、労働人口の減少等労働市場への影響、家計貯蓄率の低下等経済全体への影響が懸念される。

(平成十七年三月二日)
白梅学園短期大学学長  無藤 隆 氏

 最近三十年間の我が国の変化は、少子化、情報化、富裕化及び長寿化というキーワードで集約できる。一九八〇年代後半にバブルの影響と家庭用テレビゲーム機器の普及等によって子どもの生活パターンや感覚の変化が生じ、学習意欲や勉強時間の低下が進み始めた。また、二〇〇〇年以降は携帯電話、インターネットの普及が大きな影響を与えていると推測される。

 子どもの発達に及ぼす影響として、少子化により、子ども同士の付き合いが小さい時期から減少し、友人関係が少人数化した。情報化により、テレビ、テレビゲーム、携帯電話の利用が増え、低年齢での外遊びが劇的に減少した。富裕化により、個室の普及等子ども一人一人に要する経費が増加し、全体の教育費が上昇した。長寿化により、母親の子育て以外の生きがいの追求が必然的になった。これらの変化により、具体的には、(1)子どもが貴重財化し、お金を掛けることで大事にする存在となった反面、子育ての失敗が許されないという感覚が広がった、(2)子どもの交友関係の狭小化、公共的なしつけの機会の喪失、相互干渉でもまれる経験の減少等により、優しいが打たれ弱くなり、集団形成の技量が低下した、(3)大事にされるため自尊感情は高まったが、努力の価値が減少したため、向上心・忍耐力が低下した、(4)子どもが商品経済に組み込まれ、見掛けの価値を重視する傾向が強まった、(5)知識が広く浅くなり、じっくりと体験したり読書をしつつ自分で考えるという機会が減少した、(6)親が多様化し、子どもへの関心の大小と消費への関心の大小の組合せにより四つに分類できるようになった、と指摘できる。

 とりわけ親の多様化については、一般的に、子どもへの関心が高い層において、消費への志向が高い層は少子化とならざるを得ず、消費に向かわない層は子どもを少数にして手を掛けることになる。子どもへの関心の低い層は消費への関心の大小にかかわらず自分の生活の楽しみを追求するため、四類型とも必然的に少子化が進行する。したがって、少子化を考える際には、子どもに対する関心の在り方や価値観それ自体をとらえ直す必要がある。

教育評論家・法政大学キャリアデザイン学部教授  尾木 直樹 氏

 平成十六年十一月発表の朝日新聞世論調査によると、少子化の進行は社会の問題という回答が五八%を占めているが、夫の育児休業取得は困難が八三%、子育ては楽しいが四五%、苦しいが四四%となり、七四%が日本は子育てしやすい社会と思わないと回答している。また、十七年二月の読売新聞全国調査では、結婚しなくても幸せであるという未婚女性は七三%になっている。これらの結婚、家族、子育てに対する意識の変化があることから、保育政策の充実のみでは、必ずしも少子化対策の効果はない。

 近年、(1)非行歴がなく成績の良い子が凶悪事件の加害者になるという青少年犯罪の質の変化、(2)コミュニケーションスキルの低下による青少年の発達不全現象の増加、(3)誘拐事件等子どもが被害者となる犯罪の多発、(4)教育改革による学力低下、自己選択・自己責任を強調する風潮等教育への不安により、子どもへの不信感と子育ての不安感の蔓延等がみられる。

 子どもと教育領域における現状の打開策にみられる特性としては、子どもバッシングが挙げられる。例えば少年犯罪への厳罰化による犯罪の抑止が期待されているが、自殺願望が多くの凶悪犯罪の原因となっているため、厳罰化のみでは効果がない。また、子ども観が大人への発達途上人という観点に限定されている傾向があるため、子どもへの対応方法が単純になり、受動的な子どもをつくる危険性がある。さらに、少子化による親の子への過剰期待と子育て責任圧力が子どものストレスにつながっている。

 子どもと子育てに希望を抱くためには、自己肯定心情をいかにはぐくんでいくかが重要である。そのため、社会政策としては、子ども・子育て応援プランの確実な実行、若者の自立と就業支援の拡大等が必要である。また、学校・教育政策としては、(1)少人数学級の実現、(2)キャリア教育の推進、(3)小・中・高等学校を通じた保育実習・保育体験の拡大、(4)成果主義に基づく競争万能傾向の見直し等が必要である。

山口大学教育学部専任講師  田中 理絵 氏

 家族の最小の機能の一つに子どもの社会化があるといわれている。社会化とは人間が周囲の他者との相互作用を通じてその社会の一員として生きていくために必要な価値・知識・技能を習得していく過程である。社会化は生涯を通じて行われるが、乳幼児期から子ども期にかけての社会化が、その後の人格形成に重要な役割を担うため、この時期に子どもの社会化を担う家族は子どもの人格形成において重要な影響を及ぼす。特に母親は母子一体という時期を過ごすことによって、原信頼という愛情に満ちた母子関係を形成し、これが子どものパーソナリティー形成の基盤をなす。他方、父親は社会規範、モラル等の価値基準を教える存在である。つまり、子どもを家族へつなぐのが母親、全体社会につなぐのが父親の役割である。ただし、この家族モデルは核家族と固定的性別役割分担が前提であるため、批判もある。

 高度経済成長期以降、家族規模の縮小と並行して家族内部の相補完的な性別分業が定着していき、近代家族モデルを形成した。しかしながら、このような家族は外部社会から孤立した存在であり、地縁・血縁といった家族支援資源に乏しい。また、家族内部では母親へ育児責任が集中した。近代家族は代替要員がいないため、家族機能が滞る可能性が高く、家族の内外部から孤立した母親は育児不安・ノイローゼに陥ることが指摘されてきた。

 一九七〇年代後半以降に進展した脱工業化は、女性の就業機会の拡大、性別役割分業の否定等家族意識に著しい変化をもたらした。これは多様化と個人化というキーワードでとらえられ、家族の形成、解消における個人の選択が拡大し、家族意識の多様化とともに社会の基礎的単位の個人化が進展した。このような家族の変容は子どもの生活にも影響を与え、子どもの地域社会からの孤立による子どもの社会化機能の母親への集中、大人の選択性の拡大による不安定な家族状況を経験する危険性の増大、子どもの仲間集団の小規模化と遊び文化や活動集団の衰退による自我形成の脆弱化につながった。

 少子社会の進展の中で、女性の社会進出、家族の多様化の更なる進行が予測されるため、育児環境の整備や家族支援ネットワークの拡充施策が急務である。さらに、家族教育について考慮すべき点は、(1)子育ての社会的単位としての家族の在り方の問い直し、(2)子どもの発達に応じた親役割の検討の必要性、(3)子ども世界への大人の適切な介入、(4)新たな家族モデルの提唱と、特定モデルの絶対視の否定、(5)家族に子どもの問題を押し付け過重負担を強いる現状の問い直しが挙げられる。子どもの福祉を重視し、社会的現実に沿った家族モデルの模索が、今後の家族の在り方を考える際の課題となる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 家族力低下の一因として地域の崩壊が考えられることから、地域社会がネットワークを構築し、家族を支援することにより、家族の緩衝材となることが求められる。

(2) 現代の家族はその機能を外注化したため一体感が薄れている。家族は自然に成立するのではなく家族全員 の努力によって成立するものであることを自覚し、家族の在り方、親子関係の在り方を問い直すべきである。

(3) 男性が育児、教育に参加することは自分自身の豊かな人間としての発達という視点からも意義があり、母親の育児不安解消にもつながる。また、異なる価値観の二人の大人が子育てを共にすることにより、子どもにとって経験が広がることは重要である。

(4) 親子の絆の形成においては、子どもの心の状態が弱っているときに信頼できる相手がいるかどうかという観点が重要である。保育条件が一定水準以上であり、かつ家庭に戻ったときにケアをするという条件が満たされれば、保育時間が十二時間を超えない限り重大な問題は発生しないと考えられる。

(5) 親と子の両方に育ちの働きかけを行うため、就園前の親と子が集まる広場をつくるという活動が始まっており、将来的には妊娠期・出産前後から幼児期・小学校低学年まで広場の利用者を拡大することが課題となる。

(6) これからの保育所、幼稚園には、親に対する支援・教育を行うことが求められるが、費用削減の中での人手不足等により現場の対応力に懸念が生じる。

(7) 親の世代は子の世代に対して愛情だけでなくしつけや価値観を伝える役割があり、それは親にしかできないという覚悟を明確に持たなければならない。そのためには、中・高等学校からの親になるための教育が必要である。

(8) アメリカに比べキャリア・カウンセラーの育成が遅れている我が国でキャリア教育を推進していくためには、単なる職業教育ではなく、生涯にわたる生き方の問題としてキャリア教育をとらえ専門家を育成していくことが重要であり、法整備等により支援体制の一層の充実を図っていく必要がある。

(9) 現在の教育における種々の問題に対しては、社会全体の高度化とともに学校教育を含めた戦後の価値観が大きな影響を及ぼしている。社会規範を守る意識の低下がみられることから、社会規範の世代間継承の在り方を見直す必要がある。

(10) 我が国の過度に競争的な教育制度が子どもの人格形成に与える悪影響について国際連合の児童の権利委員会から勧告を二回受けており、子どもの実態や現場の声を改革に反映すべきである。

(11) 知育、徳育、体育と並んで食育という概念が重要な課題となっていることから、食育に関する包括的な政策が求められる。家族そろっての食事の機会を確保するためには、大都市圏における父親の働き方の見直しが必要である。

(12) 現在の少年非行は、大人社会における雇用や将来に対する不安の反映であると同時に、大人と子どもの行動範囲の混在による遊び型非行の助長、インターネットの普及・アクセスの容易さによる加害者化といった特徴がある。

(13) 引きこもりについては、身近な相談窓口の設置とともに家族への支援が重要であり、本人に対しては、最終在籍学校が引き続き地域に密着した形で支援を行う体制を構築すべきである。

(平成十七年四月六日)
社団法人日本経済研究センター理事長  八代 尚宏 氏

 一九六〇年までの出生率低下要因は、就業構造の大幅な変化、幼児死亡率の低下であったが、七〇年以降では、仕事と子育てを両立できる環境が不十分である社会状況、その中での女性の高学歴化・就業率の高まりという変化が要因として挙げられる。女性が働くことに対応しない過去の社会制度を変えない限り、構造問題としての出生率低下は止まらない。

 一九七〇年代半ばから女性の就業率は急速に高まり、高学歴化・専門的職種へと就業分野が拡大している。女性の雇用比率の高まりと出生率の低下は相関していることから、出生率の低下要因を働き方からみることができる。

 現在の我が国の長期雇用保障、年齢とともに高まる世帯給の背景には、男性が働き、女性が家事・子育てに専念するという男女の固定的役割分担を前提とした働き方があり、継続して働く高学歴女性の増加という現実と矛盾している。また、正社員と非正社員の就業条件には格差があり、女性が出産退職後に職場復帰できない雇用慣行とも関連して、子育てのための就業中断による機会費用が増加している。今後は、男性も含めた育児休業取得の推進、子育て後の再就職支援、短時間就業、派遣労働の社会的認知等による多様な働き方に中立的な雇用制度が求められる。

 少子化時代の家族の考え方として、多様な働き方・家族選択に中立的な社会制度が必要である。そのためには、税制・社会保険における世帯主保護の是正、結婚・子育てに関する男女間の非対称性の是正、選択的夫婦別氏制度の導入等が求められる。個人を経済単位とした精神的な結び付きが家族の一つの在り方であり、共働き世帯を一つのモデルと考えるべきである。また、十五万人程度の児童を想定している待機児童ゼロ作戦は二百万人ともいわれる子育て期女性の就業希望者に見合ったものとなっていない。子どもの社会的扶養制度として、潜在的な保育ニーズを想定し、介護保険に対応した育児保険の設立等を検討する必要がある。

 少子化対策には構造改革が必要であり、女性が働かないことを前提とした制度から男女にかかわりなく働くことが標準である社会への移行が求められる。そのためには、個人単位の賃金・税制・社会保険制度、多様な働き方・家族形態の容認、介護・子育ての社会的扶養、保育を福祉から消費者主体のサービス産業へ移行することが必要である。

神奈川大学経済学部教授  森泉 陽子 氏

 少子高齢社会における住宅と経済を検討する際には、豊かな高齢者である親の行動が子の行動に与える影響について考えることが基本となる。親世代が持つ老後の介護負担に対する期待を前提とした遺産動機の有無と、子世代が持つ住宅を核とした財産の移転や子育て支援等に対する期待とが一致することにより、子世代の住宅取得行動に大きな影響を与える。マクロ経済における貯蓄率や住宅市場もこのような親子の経済行動で説明できる。

 親の行動様式は、大別して(1)遺産を残す見返りとして老後の同居を期待する利己的遺産動機型、(2)遺産を残す意思がなくても結果的に遺産が残る意図せざる遺産型、(3)遺産を残さず老後は自ら財産を使い切るアクティブシニア型に分類できる。子の世代は、(1)については住宅取得の必要がないため、将来の介護負担はあるが生活は楽であり、住宅市場は建て替えや規模の大きい住宅の新築の需要が生じる。(3)については、住宅取得の必要があるため貯蓄率が高く、消費は少なくなる。また、住宅市場においては規模の小さい住宅や中古住宅の需要が生じる。(2)は(1)と同様に生活は楽であり、住宅市場では住宅購入が遅れるため、賃貸住宅の需要が生じる。また、マクロ経済における貯蓄率への影響は、(1)と(2)は低下要因、(3)は上昇要因となる。

 先進諸国と比較して我が国の持家率は低くはなく、高齢者では高い。これに比べ若年世代の持家率は非常に低く、近年は低下傾向にある。この原因としては、晩婚化・未婚化による家族形成の遅れ、貯蓄率の低い若年世帯の住宅購入資金借入の困難性、中古住宅市場の未発達といった点が挙げられる。また、少子化の結果、子は相続による親の住宅資産の取得を期待するが、親の高齢化に伴い住宅取得が遅れることも若年持家率低下の大きな原因と考えられる。

 若年持家率の低下は、若年世代の資産形成意識の遅れによる大人としての意識の遅れ、賃貸住宅居住による住宅の質と住環境の低下、中古住宅市場発達の遅れ及び貯蓄率の低下をもたらす。若年世帯の持家率を先進諸国並みに引き上げるためには、中古住宅市場の整備、住宅買換税制の緩和等が必要である。少子化時代の住宅政策としては、住宅価格が低下していく中でのアクティブシニアと若年者の混住を前提とした地域の再開発、空き家や空き地の有効利用、新しい親子世代に対応した住生活を送るための政策として施設入居時における税制の緩和等が重要となる。

株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門上席主任研究員  篠原 二三夫 氏

 まちづくりの基本的なアプローチは、だれでも安全で豊かな生活と就業・就学、憩いの場を確保でき、美しく快適な環境と空間、容易な移動性とをコミュニティーの合意の下に市場原理による持続性を重視しながら計画的に実現することである。

 この基本的なアプローチはいかなる社会経済環境においても考慮すべき条件であるが、我が国では十分に実現できていない。計画的という観点からは、国土総合開発計画から都市マスタープランに至るまでの連携、計画へのコミュニティー等の参画機会、計画実現の裏付けとなる予算措置、実現後の再評価等が欠けている。持続性という観点からは、市場原理を通じたまちづくりの着実な推進とその維持・再生が進められることが重要である。また、持続性を確保する仕組みの支えとなるNPOの存在価値や活用方法が十分に考慮されていない。

 少子化の影響とまちづくりへの課題としては、(1)少子化・高齢化に対応し、バリアフリー法を超えたユニバーサルデザインへの早急な対処、(2)サインボード、行政機能における言語の配慮等多民族社会への対応、(3)近年の都心居住者の増加を契機としたコンパクトな都市やコミュニティー圏の計画的な実現、(4)地域再生への投資におけるインカムゲインの持続的な確保が可能となる財政支援制度の確立を通じた市場による持続性の確保、(5)高齢者・女性の社会参画の拡大とその中で人材活用の場となり市場原理を利用しながらまちづくりを実現する主体となるNPOの活用が挙げられる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 家族はつながりの中で個人が豊かに強められるものであり、母性、父性、家族の保護が必要である。

(2) 安全な保育サービスの提供は民間でも十分対応が可能であり、公的機関については民間保育所の安全基準を管理するという役割を果たすことが考えられる。

(3) 子育てを特定の家族だけの負担にすることなく、社会的に扶養するという考え方の下に育児保険制度について検討する 必要がある。その際には、保育サービスが利用しやすくなるような利用者負担の在り方を考えることが求められる。

(4) 働く女性の就業中断による子育ての機会費用が高いことが少子化の原因であり、児童手当で補填することは非現実的であることから、雇用市場の流動化を図ることにより機会費用を下げることが必要である。

(5) 少子化問題の解決には、終身雇用制の下で育児休業制度を充実させるだけでは十分ではなく、派遣労働等終身雇用以外の働き方や子育て後に正社員として再就職ができるよう雇用の多様化を図ることが必要である。

(6) 終身雇用と有期雇用が代替関係にあり、終身雇用が望ましい働き方であるとの前提から、労働者派遣法に常用雇用労働者の業務の代替防止規定が設けられているが、今後、終身雇用を前提とした労働者に対する需要が小さくなる可能性を踏まえ、雇用契約についての規制の是非を検討する必要がある。

(7) 希望する職種に限定した働き方を選択できるという派遣労働のメリットを考慮するなど、多様な働き方を認めていくことが重要である。

(8) 女性の就業継続を図るためには、世帯主を中心とした働き方を解消し、企業でなく職種別労働市場を通じた雇用保障が必要である。

(9) フリーターへの就業支援が間接的な少子化対策となることから、ハローワークでの職業紹介だけではなく、民間の職業紹介を活用した積極的な就業支援を行うとともに、多様な働き方を認める社会となることが必要である。

(10) 企業の規模にかかわらず少子化対策が企業にとって利益となる状況になるためには、男女にかかわりなく労働者の能力を最大限に活用する必要性が生じる競争政策が求められる。

(11) 生産年齢人口減少への対策として移民等外国人労働者を活用することは、経済的な効果はあるが、出生率低下の問題解決にはならない。出生率低下に歯止めを掛けるには男女の固定的役割分担の構造を解消し、働き方、家族の在り方を変えていく必要がある。

(12) 少子化が進む我が国においては、働く意欲と能力を持つ者を活用する必要があり、そのためには所得税における配偶者控除を見直すなど共働き世帯を標準とし、個人単位の税制・社会保険制度をつくる必要がある。

(13) 典型的な家族像を想定して施策を講じるのではなく、選択的夫婦別氏制度の導入等により、多様な家族選択に中立的な社会制度を構築していくことが必要である。

(14) 住宅政策の見直しに当たっては、若年世代の持家率を高めるための政策だけでなく、優良な賃貸住宅市場を整備することも必要である。

(15) 我が国でリバースモーゲージの制度を定着・促進させるためには、ある土地を個別の物件としてみるのではなく、地域開発の視点からとらえることが重要である。

(16) コンパクト・シティー、コミュニティー圏の実現には、地域の人材を集め活用する場であるNPOに対する支援が不可欠である。

(17) 子育て世代が安心して子どもを生み育てることのできる環境づくりのためには、ユニバーサルデザインの考え方を導入したまちづくりが必要である。

(平成十七年四月二十日)
早稲田大学法学部教授  宮島 洋 氏

 少子化と公共政策は、互いに影響を及ぼす相互依存関係にあるという認識を持つ必要がある。少子化問題は、将来の更なる高齢化や人口減少をもたらす要因としてとらえるのではなく、現在の社会病理としてとらえなければならない。少子化対策においては、子どもが減っても社会に大きな影響が出ないようにする時限政策としての順応政策と、少子化の流れを変えていく恒久政策としての対抗政策とが混在しているため、両者を識別することが必要である。

 人口と経済は社会保障を支える基盤であり、少子化対策と経済の安定成長政策に取り組むことによって自ら安心・安定を構築していくという認識を持つことが重要である。我が国の社会保障は、家族と企業が代行機能を担ってきたため小さな規模に抑えられてきたが、少子高齢化の中で家族と企業の社会保障代行機能が低下してきたことから、社会保障がそれらの機能を果たす必要が生じてきた。今後は、若年層が受益意識を持てるよう、給付の面でも世代間公平に配慮するなど、現役世代向けに社会保障をシフトしていくことが課題となる。

 少子化対策の財源を考えた場合、潜在的国民負担率を抑制し基礎的財政収支を改善するという厳しい制約条件の下では、社会保障の新しい課題にこたえていくことが大変困難な状況となっている。我が国では、国際的にみて、財政規模が小さいにもかかわらず大規模な財政赤字が発生している。所得税減税等の負担軽減には国民の合意が成立するが、歳出削減には国民各層で対立が生じるため、そのギャップが財政赤字として現れているという難しい問題がある。税制については、所得税の税収調達力の回復、贈与税の相続時精算課税制度の評価、消費税の税率引上げによる所得水準の低い若年層への逆進負担対策が課題となる。

 少子化は、過疎化を進行させ、行政の高コスト化の問題を生じさせるなど、地域社会に大きな影響を及ぼす。地域事情が様々であることから、地域特性を踏まえて地域主導で少子化対策を行う必要があり、首長・議会・住民は公共事業から社会保障に施策の重点を移していくという意識改革が求められる。地方分権の中で税源移譲が進んでいるが、税収調達力に大きな地域格差があるため、その行く末には危機感を持っている。

上智大学法学部教授  堀 勝洋 氏

 賦課方式の年金制度の下で高齢化が進めば、年金財政は悪化する。高齢化の要因は少子化と寿命の延びである。少子化は被保険者を減らし、寿命の延びは年金受給者を増やす。

 平成十六年の年金改正が必要となった要因の一つに、少子化が大幅に進展するとの予測がある。平成十六年改正は合計特殊出生率一・三九を前提としたが、更に少子化が進むと年金財政は悪化するため、物価上昇率や賃金伸び率から被保険者数の減少率と平均余命の伸び率を控除するマクロ経済スライドによって給付水準を調整する仕組みを導入し、少子化に対応していくこととした。

 年金制度における少子高齢化への対応としては、少子高齢化に耐え得る制度設計と年金制度による少子化対策が考えられる。

 少子高齢化に耐え得る制度設計については、高齢者の就労環境・条件を整備した上での支給開始年齢の将来的な引上げと、女性の就労環境・条件を改善した上での女性就労の拡大という施策がある。有配偶の男性正社員のうち週六十時間以上就業している者の割合と合計特殊出生率の関係をみると、長時間労働者比率が高い地域ほど出生率も低いという相関関係が認められる。男性も含めた長時間就労の解消が求められる。

 年金制度による少子化対策については、(1)出産・育児を理由とする厚生年金脱退者の厚生年金額の引上げ、(2)育児中の者の年金保険料への定額の児童扶養控除の導入、(3)年金積立金を原資とする奨学金貸与制度の充実、(4)年金・医療の保険料徴収機構を通じて徴収した育児拠出金による育児手当の支給が考えられる。児童扶養控除は逆進的なため育児手当支給の方が望ましい。これら四つの案は、国民の負担増等についての合意が前提となっており、実現可能性は低い。

国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官  大日 康史 氏

 平成十六年五月の厚生労働省の推計によると、現在三十兆円弱の国民医療費は二〇二五年には五十九兆円になると予測されている。高齢化が医療費を増加させることは常識であると考えられているが、医療経済学では過大な予測ではないかという議論がある。年齢別一人当たり医療費と死亡率の推移をみると、確かに医療費は年齢とともに増加するが、医療費と死亡率が高い相関関係にあり、平均寿命以上では医療費はむしろ低下することがわかる。高齢化により治療は体力的に限定されることから医療の選択の幅が狭まるため、医療費は大きくは伸びない可能性があり、厚生労働省推計は四・五兆円から九兆円程度過大であると考えられる。

 しかし、高齢化による医療費の高騰は避けられず、その抑制策としては、終末期医療の抑制、医療の効率化、予防の促進の三つが考えられる。

 終末期医療の抑制については、死亡期を特定することが難しく、治療の中断には倫理的な問題も大きい。尊厳死、安楽死といった死の概念を変更することが必要になることから、短期的には難しい。

 医療の効率化については、我が国では、国民皆保険体制の下でアクセスが自由であるため医療費が青天井になること、効率化を促すための競争原理の導入がなじまないことが阻害要因となる。国が主導して行えることとして、費用対効果に基づく治療行為・新薬の認可、保険収載等がある。また、医療費が高騰する主要因に医療技術の進歩がある。医療技術の研究自体は止めにくいが、認可、保険収載の段階での抑制は可能であり、諸外国では実用化されている。我が国でも今後の高齢化対策として費用対効果分析に基づいた保険収載等が期待される。

 予防の促進については、医療費抑制という短期的な視点に終始するのではなく、疾患を予防し、死亡を減らすことによる非金銭的な効果を社会が享受できることを理解すべきである。予防接種、禁煙という一次予防の推進が費用対効果的にも優れており、最も効果的である。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 少子化対策としての育児支援策としては、育児休業期間の拡大のみでは不十分であり、保育施設の充実、出産手当・育児手当の充実等、有効と考えられている様々な手段を採る必要がある。

(2) 就業と家庭生活・地域生活を男女共に両立させるという観点から、国際競争力を落とさず長時間労働を解消するよう、働かせ方を見直すことが必要である。

(3) 労働市場に入る前の段階で、職業訓練、インターンシップ、専門職大学院等、就業の機会を広げるためにスキルアップを図ることを奨学金等で支援することは重要である。

(4) 年金積立金を原資とする奨学金貸与制度の充実は、少子化が進む中、若い人に高等教育を施し人的資源を育成する意味で重要である。奨学金返済金の減免や利子補給の財源は、年金保険料に上乗せして徴収することが考えられる。

(5) セカンドオピニオンの普及等により患者が医療を選択できるようになってきたことは好ましいが、治療内容に関するガイドラインが十分開示され、費用対効果的な医療の選択が可能になることが重要である。

(6) 介護を必要とせず健康で暮らすことのできる期間である健康寿命と平均寿命との差を縮めることが重要であり、それが医療費の抑制につながる。

(7) 膨大な医療費を掛けて延命措置を採ることよりも苦痛の少ない医療を患者や家族の意思で選択するのであれば、その手段として尊厳死を認めることも適切と考えられる。

(8) 消費税の税率引上げについては、年金受給者は物価スライドによりその影響を制度的に回避できるが、現役世代は実質賃金の引上げが困難であるため負担増になることが懸念されることから、逆進性を緩和する対策を始め、多くの点について議論を重ねる必要がある。

(9) 消費税を社会保障への公費負担拡大の財源とする可能性については、逆進性を緩和する対策についての具体的検討や、国際的標準であるインボイス方式を採用していないこと、地方交付税の原資となっていること等、消費税の中身をよく踏まえた議論が必要である。

(10) 我が国は所得税の課税最低限が比較的高いことから、税制全体では逆進性が緩和されている面があるが、今後は、所得税の税源移譲で住民税が増えることや消費税の税率引上げの可能性から、逆進性に配慮した対応策が必要になってくる。

(11) 贈与税の相続時精算課税制度は、贈与の形で相続を早めることができる人とできない人がいることから公平とはいえず、贈与税や相続税の形で徴収する方が公平である。

(12) 年金制度は現役世代から高齢世代への所得の移転であり、それのみでは人口減少によって世代間の不公平をもたらすが、高齢者から現役世代への移転である高等教育費用、住宅資金の贈与、遺産等について併せて考えると、世代間の不公平はそれほど大きくないともとらえられる。

(13) 賦課方式の年金制度の下で高齢化が進めば世代間で必ず損得が生じるが、それを解消する積立方式への転換、年金受給額の三割以上の削減は実現不可能である。公的年金は社会保障制度であり国民の生活保障であるため、損得論は意味がない。

(14) 財政における住宅支援については、公共事業費のイメージが強いが、社会保障としての住宅政策の認識が必要であり、若年層向けの良質な賃貸住宅の提供等への支出を今後増やしていく必要がある。

(15) 退職期を迎えようとする団塊の世代が、NPO法人やボランティアを通じて福祉や教育の分野等で社会的活動を営み、多くの役割を担っていくことが期待される。

(平成十七年五月十一日)
赤枝六本木診療所院長  赤枝 恒雄 氏

 東京の六本木で産婦人科を開業して二十七年になるが、この十年、性感染症や妊娠で手遅れの状態になって来院する子どもが増えた。早く受診しなかった理由を尋ねると、産婦人科が怖い、お金がない、保険証が借りられないとの答えが返ってくる。そこで、六年前にハンバーガーショップで街角相談室を始めたが、子どもの性行動の実態は驚くべきものである。

 性感染症無料検診券を六本木で十代の女性に配布して検査した結果では、八一・六%が何らかの性感染症にかかっていた。また、都内女子高校生の自己採取による調査では約四〇%がパピローマウイルスに感染していた。親はこのような実態を直視しておらず、援助交際についての親子の意識もずれており、性感染症は急速に広がっている。しかし、家庭でも学校でも性教育は十分に行われていない。小学校で命や生殖の大切さ等を学び、中学校卒業時までに性感染症と避妊の知識を身に付けられるよう性教育を徹底することが必要である。

 中・高校生が読む雑誌には、性行為の描写、女性を性の道具としてとらえる広告、風俗産業の求人等が氾濫している。アダルトビデオには、まねをすると危険な性行為が描写されており、そこから子どもが間違った知識を得ているという現実がある。携帯電話の出会い系サイトの利用により、犯罪の被害に遭う子どもが増えており、その実態は報道されている以上のものがある。

 HIVの検査体制が整っていないため検査を受ける十代の子どもは少ないが、より多くの子どもが検査を受ければ十代の感染者はかなりの数に上るのではないかと考えている。HIVに対する意識が低いことも問題であり、調査対象者のほとんどがHIV感染を別れたパートナーに話せないと考えていること等から、今後我が国でHIV感染が激増するおそれがある。

NPO法人円ブリオ基金センター理事長  遠藤 順子 氏

 一九四九年から二〇〇〇年までの我が国の人工妊娠中絶数は厚生労働省の統計では三千四百七十一万九千四百七十四人であるが、実際は産婦人科医が正式に届けた数の二倍から三倍であると考えられていることから、戦後から二〇〇〇年までに行われた人工妊娠中絶数は六千七百万人に上ると考えている。

 エンブリオとは妊娠八週目までの胎児を指し、円ブリオ基金センターでは胎児を人工妊娠中絶から守る運動を行っている。産むことをためらっている妊婦を一口一円の募金で集めた円ブリオ基金で援助することによって、これまでの八年間で百四人の胎児が無事誕生を迎えた。また、妊娠葛藤電話相談「スマイル・エンブリオほっとライン」を二〇〇三年から毎年二十四時間体制で実施しており、二〇〇四年に十日間行った際には百九十四人、二〇〇五年に三日間行った際には百三十三人から相談を受けた。相談者の多くはできれば産みたいと思っているが、将来の生活に経済的な不安を感じること等から、人工妊娠中絶を考えている。

 相談者は年々増加しているにもかかわらず、公的な相談窓口は絶対的に不足しており、相談窓口を増やす必要がある。母子を支援する拠点「ほっとスポット」を全国に約二百つくっており、思わぬ妊娠の悩みや出産後の育児の悩みを相談でき、援助を受けられるような体制を整えているが、更に拠点を五百まで増やすことを目指している。相談体制が充実しているドイツやアメリカでは、生命を最優先させる姿勢でカウンセリングが行われており、見習いたいと思っている。

 小学校低学年で過激な性教育を行うことは、子どもへの明らかないじめである。性教育は子どもの成長に応じて段階を踏む必要があり、人を真剣に愛することがまだ分からない時期に事実のみを教えるのは性教育とはいえない。

社団法人日本家族計画協会常務理事・クリニック所長  北村 邦夫 氏

 我が国の十六歳から四十九歳の既婚者の三二%がセックスレスであるとの調査結果がある。異性とのコミュニケーションを図ることに消極的であったり、セックスに対して前向きな姿勢を持つことができないと、セックスレス傾向が強まることが示唆される。

 既婚女性の一六%が人工妊娠中絶の経験があり、その約三割が複数回の人工妊娠中絶を経験している。最初に人工妊娠中絶を受けた際に、五五・九%が胎児に申し訳ないという気持ちを抱いており、望まない妊娠を経験しないよう確実な避妊法の提供が必要である。また、二二・一%が相手と結婚していないことを人工妊娠中絶を決めた理由として挙げており、我が国では未婚で子どもを産むことが極めて困難であることに留意する必要がある。

 少子化対策を効果的に進めるため、(1)セックスレス解消等のため男女間のコミュニケーションスキルを向上させる施策の推進、(2)勤労者が男女を問わず早い時間帯に退社できるような企業主の配慮、(3)産みたいときに産むことができる環境の整備と妊娠したくないときに女性が主体的に取り組むことができる避妊法の選択の確保、(4)婚外子に偏見を持たない社会の育成を提言する。

 性教育については、十六歳から十九歳の子どもの六割弱が避妊方法についての主な情報源は「教師・学校の授業」であると回答していることから、学校での教育の機会が大切である。性教育は性の乱れにつながるどころか責任感を高めることが証明されており、若者に質の高い情報を提供することによって、性行動が慎重になり、性感染症や望まない妊娠の防止に向けた行動が取れるようになる。アメリカの禁欲教育は、人工妊娠中絶率を減少させたが、性感染症の防止には効果があるとはいえない。情報が提供されないことは大きな問題があり、若者に対して正確な情報を提供する機会を学校教育の場で確保し続けることが重要である。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1) 子どもの性行動が進んでいるのは、都会の繁華街という限られた地域に特有の現象ではないことを理解する必要がある。

(2) セックスは個人差が大きい問題ではあるが、一か月を超えて触れ合いを断ってしまうような関係は望ましいものではなく、セックスレスの現状を少子化という視点からとらえてみる必要がある。

(3) 親とよく話をする子どもや、近隣の人々から行動や考え方に影響を受けた子どもは、性交開始年齢が遅くなる傾向がある。親子の日常的な会話や地域の人々とかかわる機会の重要性を認識する必要がある。

(4) 将来に対する生活不安が人工妊娠中絶を決心する最大の理由であることから、女性が再就職しやすくしたり教育費が掛かりすぎないようにするなど、将来の経済的不安を払拭するための取組が求められる。

(5) 様々な概念を包含した性教育という言葉が混乱を招いていることから、何をどの段階で教えるのかについての冷静な議論が求められる。その際、性に関する事柄の多くは中学三年生までに知るべきだと国民の多くが考えていることを踏まえる必要がある。

(6) 性教育は子どもの発達段階に応じて行われるべきであり、特に小学校段階では、体の発達についてだけではなく、心の発達についても教えていく必要がある。

(7) 生殖としての性、男女間のコミュニケーションとしての性、性感染症・HIVに対する偏見をなくすための人権としての性を包含した性教育を検討していくことが必要である。

(8) 性関係の情報が雑誌等により子どもの周りに氾濫していることから、社会の危険を認識させ、自己の危機管理について教えていく必要がある。

(9) 性の商品化から子どもを守るため、社会の自己規律が求められる。また、情報を受け止める側がその危険性を見抜く能力を高めるような教育をする必要がある。

(10) アメリカにおける禁欲教育の経過から、飲酒等の規制が若者の性行動の抑制に効果があることが明らかとなっていることから、我が国においても飲酒等の規制の強化を検討すべきである。

(11) 十代の若者の人工妊娠中絶や性感染症を減らすためには、セックスが様々なリスクを伴うこと、確実な避妊と性感染症予防を考慮した責任ある行動を取ることを学校教育の場で教えることが重要である。

(12) 自己採取による簡易な性感染症無料検診に行政が取り組むべきである。また、保健所におけるHIV検査については、休日や子どもが受けに行きやすい時間帯での定期的な実施がなされていないことなどから、検査体制の整備を図る必要がある。

(13) 世界人口白書二〇〇三年版にみられる、思春期の若者の健康と権利への投資は次世代に大きな利益をもたらすという考え方は重要であり、若者が望まない妊娠や性感染症で苦しむことのないような社会にすべきである。

(14) ピルについては、確実な避妊方法を女性が手に入れられるという側面があるが、十代の若者の服用には反対意見も強く、慎重な議論が必要である。

(15) 産むことをためらっている妊婦に対しては、産むことができない事情を一つ一つ具体的に解決し、物心両面から支援する体制が必要である。また、カウンセリングが重要であることから、現状では不足しているカウンセラーを早急に養成することが求められる。

(16) 援助交際等の売買春を許容している社会は間違っており、経済至上主義の価値観を見直すとともに、有害図書の規制、強姦罪の厳罰化等大人社会の規制が必要である。

(17) 出会い系サイトやアダルトサイトについて、幼児でもアクセスできる状況は問題であり、法的な規制が必要である。

(18) 介護の必要な高齢期になったときに伝達する能力がないと困難な状況に陥ることから、特に女性に比べて劣っている男性のコミュニケーション能力を高めるための対策が必要である。

3 調査会委員間の自由討議

 参考人からの意見及び政府からの説明聴取を踏まえ、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、中間報告の取りまとめに向け、平成十七年五月十八日、調査会委員間における自由討議を行った。そこで述べられた意見の概要は次のとおりである。

(1) 男女共同参画社会の推進、地域全体で子どもの健やかな育ちを見守るコミュニティーの形成、児童手当の 拡充等子育ての経済的負担の軽減、社会保障給付費における児童・家族関係給付費への重点シフト等、子どもを基本に据えた政策に国を挙げて取り組むことが必要である。

(2) 仕事と子育てを両立できる環境整備のため、ワークシェアリングの導入等働き方の見直し、パパ・クォータ制の導入、次世代育成支援に取り組む企業への優遇策の検討、育児休業取得奨励のための中小企業への助成が必要である。

(3) 少子化対策に係るこれまでの施策の抜本的検証、男女を問わず家庭生活と両立できる働き方の実現、若者への安定した雇用の保障、雇用における男女平等の徹底、出産・育児と仕事の両立支援が必要である。

(4) 少子化対策は社会改革であり、構造改革の中心に子育て支援を据えることが重要であることから、次世代育成特命担当大臣を置くことが必要である。

(5) 就学前の子育て支援の在り方、年齢の区分等施設における子育ての方法について議論する必要がある。

(6) 子育ての経済的負担を軽減するためには、社会全体で子育てを支えていくことを目的とした育児保険の創設、児童手当の拡充、奨学金の拡充、新婚・子育て世帯の住宅確保等に取り組むことが求められる。

(7) 少子化の解消のためには、固定的な性別役割分担意識を払拭するとともに、男女共に長時間労働を強要されず、必要な休暇が取得しやすい社会環境に変える必要がある。

(8) 職務内容を明確化し、能力による適正な評価を受けることができるよう雇用のルールを変えることで、より短時間で生産性の高い働き方が可能となり、育児のために退職した女性が再就職しやすくなる。また、職務内容の明確化により、高等教育で学ぶべき教育内容の見直しも可能となり、フリーター等の不安定な働き方への対策にもつながる。

(9) 子どもの健全な育ちという視点から、親が子育てを優先できる企業風土・社会風土の醸成等多様な働き方の支援を考えることが重要である。

(10) 企業が子育て期の労働者のニーズを満たし、金銭の価値よりも時間の価値を重視した働き方を提供することが必要である。

(11) 公私の役割分担の明確化、企業が社会的責任を果たすことが可能となるよう、企業の取組を社会化する枠組みの構築、NPO等地域の人材の有効活用により、社会を活性化することが可能となる。

(12) 離職する若者、ニート等の対策のため、仕事に対する意識、意欲、忍耐を培う教育が必要である。

(13) 自己決定権を高めることについてバランスを欠いた教育が少子化を進めている面があることから、生命と家族の尊重についての教育を進め、教育の正常化を図る必要がある。

(14) 子どもを安心して生み、育てることができるよう、小児救急医療を始めとする医療体制の整備、子どもを犯罪等から守るための対策が必要である。

(15) 不妊治療については、医療保険の適用を検討するなどの経済的支援の拡充にとどまらず、心身のケアを含めた総合的な支援を行う必要がある。

(16) 結婚、出産を選択する際に子どもを生みたいと思わせる施策、子育てが楽しいと思わせる施策が必要であり、産むことをためらっている妊婦に対しての相談・支援体制を構築することが求められる。

(17) 人口減少社会の是非や在り方に関しては、国土における地域開発の資源配分やそれに伴い生じ得る経済活力の不均衡、今後の経済の見通しについて議論することが求められる。

(18) 少子高齢社会において労働人口と経済活力を維持するためには六十歳以上の労働人口を増やす必要がある。

その際には、年金支給開始年齢等年金制度についても併せて考える必要がある。

(19) 幼児期から子どもに対して必要な教育等のサービスを提供できるよう、地方公共団体の役割を強化するための法整備、各種資源の活用が可能となる規制緩和、高齢者・NPO等の地域力を結集する対応が求められる。

三 派遣委員の報告

 平成十七年二月十七日及び十八日の二日間、大阪府及び兵庫県において、少子高齢社会に関する実情調査を行った。

 大阪府では、「ふれあいおおさか高齢者計画二〇〇三」に基づき、介護保険制度の円滑な推進、社会参加を促進するための条件整備、高齢者保健福祉サービスの推進に取り組むとともに、「子ども総合プラン」に基づき、子どもの人権尊重と権利擁護、地域における子どもの健やかな成長支援、援助を要する子ども・親への支援等に取り組んでいる。また、平成十七年度からは、社会全体で子どもを生み育てやすい環境をつくることを目的とした「次世代育成支援行動計画」を市町村やNPO・各種団体と連携を図りながら進めていくこととしている。派遣委員からは、保育ニーズの把握の方法、子どもの安全を守るための具体的施策、子育て家庭の経済的負担の軽減策等について質疑が行われた。

 また、六十歳の定年後から六十九歳までの継続雇用制度を導入し、厚生労働省等が主催する「平成十六年度高年齢者雇用開発コンテスト」において奨励賞を受賞した株式会社長谷工ライフ関西の視察を行った。派遣委員からは、採用状況、待遇、最終雇用期限、六十歳以上の採用者への研修の具体的内容等について質疑が行われた。

 さらに、若年者のために一か所でまとめて雇用関連サービスを提供するJOBカフェOSAKAの視察を行った。派遣委員からは、モデル地域指定終了後の方向性、求人と求職のミスマッチが起きる理由、利用者の年齢層、利用者がジョブカフェを知った経路等について質疑が行われた。

 このほか、大阪府民の健康づくりの拠点施設である大阪府立健康科学センターの視察を行った。

 兵庫県では、高齢化率や合計特殊出生率は全国の状況と同様の推移をみせているが、合計特殊出生率が高い市町ほど、二十五歳から三十四歳までの女子の有配偶率が高く、三世代同居率も高いという特徴があるため、結婚に対する支援や、三世代同居を補完する地域での子育て支援を進めている。また、子育てと仕事の両立支援、子どもが健全に育つ環境づくり、若者が自立しやすい環境づくりを推進している。平成十七年度には、「まちの子育てひろば事業」において、専門家による相談機能の強化や親子の社会性の涵養につながる体験活動の取組を推進することとしている。派遣委員からは、郡部の過疎化の状況、中学生の地域体験活動「トライやる・ウィーク」の成果、小児医療体制を充実させる上での要望等について質疑が行われた。

 また、性別、年齢、国籍、専門知識等多様性に富んだ人材の活用を進め、兵庫県と「男女共同参画社会づくり協定」を締結しているP&G(プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク)日本本社の視察を行った。派遣委員からは、時間短縮勤務の具体的内容、採用の状況、先輩社員への相談制度、他企業がP&Gと同様の取組をする際に障害となること等について質疑が行われた。

 このほか、全国トップクラスの高度な周産期医療を提供している兵庫県立こども病院の視察を行った。派遣委員からは、ハイリスク新生児へのケアの具体的内容等について質疑が行われた。

第三 少子高齢社会への対応の在り方についての提言

 現在多くの先進国において少子化傾向にあり、我が国においては、合計特殊出生率が平成十五年、十六年と続けて一・二九を記録し、十八年から人口減少社会に突入すると推計されている。

 これまで政府は、エンゼルプラン、新エンゼルプランに基づき少子化対策を進めてきたが、少子化の進行を食い止めるには至っていない。このため、平成十五年に成立した少子化社会対策基本法、次世代育成支援対策推進法により少子化対策の枠組みを整備し、十六年には少子化社会対策大綱、子ども・子育て応援プランを策定し、従来よりも幅広い分野における施策を総合的に推進することとしている。

 少子化の要因としては、人口学的には晩産化の背後にある晩婚化・未婚化、社会経済的には女性の社会進出に伴う仕事と家庭の両立の困難性の増大、子育て負担感の増大、価値観の多様化、若者の生活・雇用不安、いわゆるニート、フリーターの増大等が挙げられている。これまでの政府の対応においては少子化の流れを変えるための施策が進められてきたが、他方、人口減少社会の進ちょく状況を踏まえて、我が国の社会経済への影響をできるだけ少なくするための政策を考えていくべきとの指摘もなされている。

 本調査会は、この一年、少子高齢社会への対応の在り方についてのテーマの下、結婚・出産・子育て、若者の自立と就業支援、少子化の教育への影響、社会資本の望ましい在り方、税制・社会保障制度の在り方、女性の健康等、少子化の要因及び社会・経済への影響について広範な議論を行い、その課題の把握に努めてきた。

 このような取組を経て、本調査会として当面する課題について、次のとおり提言する。

 政府はもとより企業におかれてもその趣旨を理解され、これらの実現に努められるよう要請する。

一 子どもにやさしい社会の構築

1 次世代を担う子どもが健全に育つ社会、子育てに喜びを感じることができる社会へ転換することを、すべてに優先して取り組むことが必要であり、社会全体として子どもを大切にする視点に立つことが求められる。

2 子どもにやさしい社会を構築するためには、子育てをしやすい生活環境の整備が求められる。そのためには、ユニバーサルデザインの考え方に基づく安全な遊び場、歩行空間の整備等子どもを不慮の事故から守る体制の強化、子どもを犯罪の被害から守る取組の推進を図るとともに、若年者と高齢者の就業及び生活の場での共存、異なる世代の混住を視野に入れた、だれもが利用しやすいまちづくりに引き続き配意していく必要がある。

二 子育てと仕事の両立支援の推進

1 子育て期において親子が十分触れ合う機会が確保されるよう、男女共に子育てと仕事の両立が可能な社会を形成する必要がある。そのためには、男性が働き、女性が家事・子育てに専念するという男女の固定的役割分担を前提とした働き方、家族の在り方を見直すとともに、多様な働き方が可能となるよう企業の積極的な取組が求められる。また、家族選択に中立的な社会制度の在り方についても検討していくことが必要である。

2 恒常的な長時間勤務の解消、短時間勤務制の導入、在宅勤務の活用等、勤務体制の見直しについては、官民を問わず、その実効性の確保が求められる。さらに、出産・子育て後の再就業・再就職のための支援の一層の充実を図るべきである。

3 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画策定の一層の推進はもちろんのこと、子育てと仕事を両立させるための企業の積極的な取組を促進するため、少子化対策の重要性に対する企業経営者の意識の啓発や各種支援策の周知徹底を図る必要がある。また、男性も含めた育児休業の取得を推進するため、各種助成制度の一層の充実を図る必要がある。

4 保育の多様化を確保するためには、施設型保育への一層の支援とともに、ベビーシッター等の利用による在宅保育への支援の拡充に努める必要がある。また、安全な保育サービスを提供するためには、保育の質を確保することが求められる。さらに、子どもの健やかな育ちを重視する観点から、認可外保育施設に係る諸課題及び就学前の教育・保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の在り方について十分検討することが必要である。

三 子育てに対する経済的負担の軽減

1 将来にわたり持続可能で安心できる社会保障制度の構築を図るとともに、社会全体として次世代育成を支援していくため、児童・家族関係給付費を拡充していく必要がある。

2 子育てに係る経済的負担軽減のため、児童手当の拡充、教育関係費用の負担に配意した奨学金制度については、一層の充実を図る必要がある。また、子育て世代の住居関係費の負担を軽減し、良質な住宅を確保できるよう、各種助成措置の拡充を図るべきである。

四 女性の健康と生命の大切さ

1 健康な母体づくりの観点から、妊産婦の健康の維持と、満足できる出産のための環境づくりへの取組を一層充実する必要がある。

2 出産及び不妊治療に係る経済的負担が大きいことから、出産及び不妊治療に対する支援の拡充を図る必要がある。併せて、不妊治療に関する実態把握、検証が求められる。また、生命を大切にする視点に立ち、出産を望みながら精神的、経済的な負担に悩む妊産婦に対する相談等の支援についても充実を図る必要がある。

3 子どもへの性感染症の蔓延や十代の人工妊娠中絶実施件数の増加傾向が憂慮されていることから、将来の世代を担う若者の健康を守るため、公的機関において性感染症の総合的な検診を実施するとともに、相談体制の整備に努めるべきである。また、発達段階に応じた性に関する正しい知識の適切な普及・啓発に努める必要がある。

4 黙視に堪えない暴力や過剰な性の表現が子どもに多大な影響を与えることを認識し、有害な図書や情報が子どもにも簡単に手に入る状況にかんがみ、その規制の在り方、メディア・リテラシーの向上のための施策等について検討すべきである。

五 若者の自立の促進と教育

1 いわゆるニート、フリーターの増大等、若者が将来の生活に対する不安を抱いていることから、雇用のミスマッチの解消、若年者の雇用確保のための各種施策の一層の拡充が求められる。

2 若者が意欲ある社会人になるためには、職業体験等の学習機会が与えられるよう、教育機関、地域の企業、経済団体等関係機関の連携を深め、社会全体で組織的に若者の自立に向けた教育を推進することが必要である。また、次世代を担う子どもに対し、地域・家庭の大切さについての教育を充実させる必要がある。


○参議院少子高齢社会に関する調査会委員(平成十七年七月八日現在)

会長 清水 嘉与子(自由民主党) 理事 中島 啓雄(自由民主党)
理事 中原  爽(自由民主党) 理事 山谷 えり子(自由民主党)
理事 神本 美恵子(民主党・新緑風会) 理事 羽田 雄一郎(民主党・新緑風会)
理事 山本 香苗(公明党)
荒井 広幸(自由民主党) 岩城 光英(自由民主党)
荻原 健司(自由民主党) 狩野  安(自由民主党)
後藤 博子(自由民主党) 坂本 由紀子(自由民主党)
関口 昌一(自由民主党) 中村 博彦(自由民主党)
小川 勝也(民主党・新緑風会) 岡崎 トミ子(民主党・新緑風会)
加藤 敏幸(民主党・新緑風会) 島田 智哉子(民主党・新緑風会)
柳澤 光美(民主党・新緑風会) 山本 孝史(民主党・新緑風会)
蓮   舫(民主党・新緑風会) 山本  保(公明党)
鰐淵 洋子(公明党) 小林 美恵子(日本共産党)

(参考)

主な活動経過

 (一年目)

第百六十一回国会  
平成十六年十月十二日 少子高齢社会に関する調査会設置
十一月十日 調査テーマを「少子高齢社会への対応の在り方について」と決定

「少子高齢社会への対応の在り方について」参考人国立社会保障・人口問題研究所所長阿藤誠氏、政策研究大学院大学教授松谷明彦氏及び株式会社大和総研チーフエコノミスト原田泰氏から意見聴取、質疑
十一月十七日 「少子高齢社会への対応の在り方について」林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣、蓮実国土交通副大臣及び下村文部科学大臣政務官から説明聴取、質疑
十一月二十四日 「少子高齢社会への対応の在り方について」調査会委員間の自由討議
第百六十二回国会  
平成十七年二月九日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件(子ども・子育て応援プラン)について、林田内閣府副大臣、衛藤厚生労働副大臣及び塩谷文部科学副大臣から説明聴取、質疑
二月十六日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人お茶の水女子大学名誉教授袖井孝子氏、東京学芸大学教育学部教授山田昌弘氏及び国立成育医療センター名誉総長松尾宣武氏から意見聴取、質疑
二月十七日
~二月十八日
少子高齢社会に関する実情調査のため、大阪府及び兵庫県に委員派遣
二月二十三日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人慶應義塾大学商学部教授樋口美雄氏、全国商工会議所女性会連合会副会長・横浜商工会議所女性会会長秋山桂子氏及びNPO法人びーのびーの理事長奥山千鶴子氏から意見聴取、質疑
三月二日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人白梅学園短期大学学長無藤隆氏、教育評論家・法政大学キャリアデザイン学部教授尾木直樹氏及び山口大学教育学部専任講師田中理絵氏から意見聴取、質疑
四月六日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人社団法人日本経済研究センター理事長八代尚宏氏、神奈川大学経済学部教授森泉陽子氏及び株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門上席主任研究員篠原二三夫氏から意見聴取、質疑
四月二十日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人早稲田大学法学部教授宮島洋氏、上智大学法学部教授堀勝洋氏及び国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官大日康史氏から意見聴取、質疑
五月十一日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、参考人赤枝六本木診療所院長赤枝恒雄氏、NPO法人円ブリオ基金センター理事長遠藤順子氏及び社団法人日本家族計画協会常務理事・クリニック所長北村邦夫氏から意見聴取、質疑
五月十三日 少子高齢社会に関する実情調査のため、東京都において視察
五月十八日 「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について、調査会委員間の自由討議
七月八日 少子高齢社会に関する調査報告書(中間報告)を議長に提出することを決定