参議院共生社会に関する調査会は、共生社会に関し長期的かつ総合的な調査を行うため、第百五十二回国会の平成十三年八月七日に設置された。
本調査会における調査テーマについては、前期調査会の設置目的等を踏まえつつ、社会環境が大きく変化する中で、社会を構成している様々な人々が互いにその存在を認め合い共生していく社会の構築を目指していくため、より広い視野から問題を取り上げられるよう、第百五十三回国会において、「共生社会の構築に向けて」とすることとした。
この調査テーマの下、調査の一年目においては、とりわけ緊急の対応が求められていた「児童虐待防止に関する件」を当面の調査事項として取り上げるとともに、平成十三年十月十三日から施行されている「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」についてもフォローアップ調査を行い、第百五十四回国会の十四年六月十二日、「児童虐待の発生予防対策の充実」等を内容とする「児童虐待防止についての提言」を含む中間報告を議長に提出した。
調査の二年目においては、一年目に行われた調査事項についての調査会委員間の自由討議において提案された「だれもが住みやすく自立できる生活環境及び生活習慣を構築するため障害者と健常者の共生を課題とすべきである」との意見に基づき、「障害者の自立と社会参加に関する件」を調査事項として取り上げるとともに、「児童虐待防止に関する件」及び「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件」についてもフォローアップ調査を行った。第百五十六回国会の平成十五年六月十六日、「児童虐待の防止に関する決議」を行い、「バリアフリー社会の一層の推進」等を内容とする「障害者の自立と社会参加についての提言」を含む中間報告を議長に提出した。
調査の最終年となる三年目においては、二年目に引き続き「障害者の自立と社会参加に関する件」を調査事項として取り上げ、特に「共生の感覚の育成」及び「地域生活支援」の両面から具体的な調査を行った。また、平成十六年三月二十五日に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案」を提出し、五月二十七日、成立に至った。
第百五十九回国会においては、平成十六年二月十八日、障害者の自立と社会参加に関する件(共生の感覚の育成)について、奈良教育大学助教授玉村公二彦氏、佐倉市立根郷中学校教諭永長徹氏、NPOわかくさ大東地域リハビリテーション研究所所長・帝京平成大学健康メディカル学部教授山本和儀氏及び中部学院大学人間福祉学部助教授別府悦子氏を、二月二十五日には障害者の自立と社会参加に関する件(地域生活支援)について、花園大学社会福祉学部福祉心理学科専任講師三田優子氏、伊達市長菊谷秀吉氏及び社会福祉法人桑友理事長武田牧子氏をそれぞれ参考人として招き、意見を聴取した後、質疑を行った。また、三月三日、障害者の自立と社会参加に関する件について、中島内閣府副大臣、原田文部科学副大臣、谷畑厚生労働副大臣及び佐藤国土交通副大臣から説明を聴取し、質疑を行った。
このような障害者の自立と社会参加に関しての参考人からの意見聴取や政府の取組状況についての説明を踏まえ、平成十六年五月十二日、本件について、報告書の取りまとめに向けて、調査会委員間の自由討議を行った。この自由討議においては、障害のある子とない子が地域で共に学び合う機会の必要性、学習障害、注意欠陥/多動性障害等により特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応、障害のある人の施設から地域生活への移行の円滑な推進等が指摘された。
以上のような議論を踏まえ、理事懇談会で協議を行った結果、障害者の自立と社会参加について、「共生の感覚の育成」を始めとする四項目の提言を取りまとめた。
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しについては、その附則にある施行後三年を目途とする検討の時期を待たず、平成十五年二月十二日、本調査会理事会の下に各会派の調査会委員を構成員とする「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しに関するプロジェクトチームを設置し、二十四回にわたり調査、検討を重ねた結果、改正案草案を取りまとめるに至った。十六年三月二十五日の調査会においては、まず「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の見直しに関する件」について、野沢法務大臣、小野国家公安委員会委員長、坂口厚生労働大臣、内閣府及び総務省に対し質疑を行った。次いで「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案」の草案について提案者南野知惠子君から説明を聴取した後、調査会提出の法律案として提出することを決定した。
本法律案は、平成十六年三月二十六日の参議院本会議において可決された後、五月二十六日の衆議院法務委員会の審査を経て、五月二十七日の衆議院本会議において全会一致をもって可決、成立した。
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(平成十三年法律第三十一号、以下「配偶者暴力防止法」という。)は、平成十三年四月二日に本調査会が提出し、四月六日に成立、十月十三日から(配偶者暴力相談支援センター等に係る規定については十四年四月一日から)施行されている。
配偶者暴力防止法は、被害者が更なる配偶者からの暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、裁判所が当該配偶者に対し、被害者への接近禁止や住居からの退去を命じ、その命令の違反に刑罰が科されるという保護命令制度を創設し、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制の整備について定めている。同法施行後平成十五年十二月末までの期間に、同法が規定した配偶者暴力相談支援センターに六万八千二百七十八件の相談が寄せられ、保護命令については三千四百二十二件申し立てられ二千七百十九件が発令されるなど、同法は配偶者からの暴力の防止と被害者保護に効果を上げてきた。
配偶者暴力防止法には、その附則に法律施行後三年を目途とする検討規定が設けられていたことから、平成十五年二月十二日、本調査会理事会の下に、各会派から推薦された調査会委員一名で構成する、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しに関するプロジェクトチーム(以下「プロジェクトチーム」という。)を設置した。プロジェクトチームには、調査会長及び理事は随時出席、発言することができることとした。
プロジェクトチームは、学識経験者、関係者等から意見を聴取し、内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省及び最高裁判所から説明を聴取し、メンバー間で討議を重ねるなど、法改正に向けて、合計二十四回にわたる調査、検討を行った。
平成十六年二月十日に、本調査会においてプロジェクトチーム座長の南野知惠子君から改正案骨子の概要の報告を行った。三月十二日、法律案の草案についてプロジェクトチームとしての合意を得、三月二十二日の本調査会理事懇談会において、調査会として法律案を提出することで合意した。
平成十六年三月二十五日、法律案の起草に先立ち、本調査会において、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の見直しに関する件について、野沢法務大臣、小野国家公安委員会委員長、坂口厚生労働大臣、内閣府及び総務省に対し、本調査会を代表して狩野調査会長から質疑を行った。次いで「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案」の草案の趣旨について提案者南野知惠子君から説明を聴取した後、全会一致で調査会提出の法律案として提出することを決定した。その際、男女共同参画担当大臣である福田内閣官房長官から新たな配偶者暴力防止法の効果的な運用に努力する旨の発言があった。
本調査会が提出した同法律案は、平成十六年三月二十六日の参議院本会議で可決され、衆議院に送付された。衆議院においては、法務委員会に付託され、五月二十六日、委員会審査の後、全会一致で可決され、五月二十七日、衆議院本会議で全会一致をもって可決、成立した。
平成十六年六月二日、本法律は公布された。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成十三年四月十三日法律第三十一号)
改正 平成十六年六月二日法律第六十四号(平成十六年十二月二日施行)
目次
前文
第一章 総則(第一条・第二条)
第一章の二 基本方針及び基本計画(第二条の二・第二条の三)
第二章 配偶者暴力相談支援センター等(第三条―第五条)
第三章 被害者の保護(第六条―第九条の二)
第四章 保護命令(第十条―第二十二条)
第五章 雑則(第二十三条―第二十八条)
第六章 罰則(第二十九条・第三十条)
附則
我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
ところが、配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている。
このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは、女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
ここに、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する。
第一章 総則
(定義)
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力を防止するとともに、被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有する。
第一章の二 基本方針及び基本計画
(基本方針)
第二条の二 内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣(以下この条及び次条第四項において「主務大臣」という。)は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下この条及び次条第一項において「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(基本計画)
第二条の三 都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 都道府県は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 主務大臣は、都道府県に対し、基本計画の作成のために必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。
第二章 配偶者暴力相談支援センター等
(配偶者暴力相談支援センター)
第三条 都道府県は、当該都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするものとする。
2 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることができる。
3 配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のため、次に掲げる業務を行うものとする。
一 被害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は婦人相談員若しくは相談を行う機関を紹介すること。
二 被害者の心身の健康を回復させるため、医学的又は心理学的な指導その他の必要な指導を行うこと。
三 被害者(被害者がその家族を同伴する場合にあっては、被害者及びその同伴する家族。次号、第六号、第五条及び第八条の三において同じ。)の一時保護を行うこと。
四 被害者が自立して生活することを促進するため、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
五 第四章に定める保護命令の制度の利用について、情報の提供、助言、関係機関への連絡その他の援助を行うこと。
六 被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
4 前項第三号の一時保護は、婦人相談所が、自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。
5 配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとする。
(婦人相談員による相談等)
第四条 婦人相談員は、被害者の相談に応じ、必要な指導を行うことができる。
(婦人保護施設における保護)
第五条 都道府県は、婦人保護施設において被害者の保護を行うことができる。
第三章 被害者の保護
(配偶者からの暴力の発見者による通報等)
第六条 配偶者からの暴力(配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限る。以下この章において同じ。)を受けている者を発見した者は、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない。
2 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報することができる。この場合において、その者の意思を尊重するよう努めるものとする。
3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定により通報することを妨げるものと解釈してはならない。
4 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その者に対し、配偶者暴力相談支援センター等の利用について、その有する情報を提供するよう努めなければならない。
(配偶者暴力相談支援センターによる保護についての説明等)
第七条 配偶者暴力相談支援センターは、被害者に関する通報又は相談を受けた場合には、必要に応じ、被害者に対し、第三条第三項の規定により配偶者暴力相談支援センターが行う業務の内容について説明及び助言を行うとともに、必要な保護を受けることを勧奨するものとする。
(警察官による被害の防止)
第八条 警察官は、通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法令の定めるところにより、暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(警察本部長等の援助)
第八条の二 警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。第十五条第三項において同じ。)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとする。
(福祉事務所による自立支援)
第八条の三 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所(次条において「福祉事務所」という。)は、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)、母子及び寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)その他の法令の定めるところにより、被害者の自立を支援するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(被害者の保護のための関係機関の連携協力)
第九条 配偶者暴力相談支援センター、都道府県警察、福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は、被害者の保護を行うに当たっては、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(苦情の適切かつ迅速な処理)
第九条の二 前条の関係機関は、被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは、適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。
第四章 保護命令
(保護命令)
第十条 被害者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条、同項第三号及び第十八条第一項において同じ。)に対し、次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし、第二号に掲げる事項については、申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二 命令の効力が生じた日から起算して二月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。
2 前項本文に規定する場合において、被害者がその成年に達しない子(以下この項及び第十二条第一項第三号において単に「子」という。)と同居しているときであって、配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは、前項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間、当該子の住居(被害者及び当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)、就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし、当該子が十五歳以上であるときは、その同意がある場合に限る。
(管轄裁判所)
第十一条 前条第一項の規定による命令の申立てに係る事件は、相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 前条第一項の規定による命令の申立ては、次の各号に掲げる地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
一 申立人の住所又は居所の所在地
二 当該申立てに係る配偶者からの身体に対する暴力が行われた地
(保護命令の申立て)
第十二条 第十条の規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 配偶者からの身体に対する暴力を受けた状況
二 配偶者からの更なる身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情
三 第十条第二項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
四 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し、配偶者からの身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力を含む。)に関して前三号に掲げる事項について相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは、次に掲げる事項
イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称
ロ 相談し、又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
ハ 相談又は求めた援助若しくは保護の内容
ニ 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
2 前項の書面(以下「申立書」という。)に同項第四号イからニまでに掲げる事項の記載がない場合には、申立書には、同項第一号から第三号までに掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第五十八条ノ二第一項の認証を受けたものを添付しなければならない。
(迅速な裁判)
第十三条 裁判所は、保護命令の申立てに係る事件については、速やかに裁判をするものとする。
(保護命令事件の審理の方法)
第十四条 保護命令は、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
2 申立書に第十二条第一項第四号イからニまでに掲げる事項の記載がある場合には、裁判所は、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し、申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は、これに速やかに応ずるものとする。
3 裁判所は、必要があると認める場合には、前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け、若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し、同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。
(保護命令の申立てについての決定等)
第十五条 保護命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
2 保護命令は、相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって、その効力を生ずる。
3 保護命令を発したときは、裁判所書記官は、速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。
4 保護命令は、執行力を有しない。
(即時抗告)
第十六条 保護命令の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
2 前項の即時抗告は、保護命令の効力に影響を及ぼさない。
3 即時抗告があった場合において、保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、保護命令の効力の停止を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、この処分を命ずることができる。
4 前項の規定により第十条第一項第一号の規定による命令の効力の停止を命ずる場合において、同条第二項の規定による命令が発せられているときは、裁判所は、当該命令の効力の停止をも命じなければならない。
5 前二項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
6 抗告裁判所が第十条第一項第一号の規定による命令を取り消す場合において、同条第二項の規定による命令が発せられているときは、抗告裁判所は、当該命令をも取り消さなければならない。
7 前条第三項の規定は、第三項及び第四項の場合並びに抗告裁判所が保護命令を取り消した場合について準用する。
(保護命令の取消し)
第十七条 保護命令を発した裁判所は、当該保護命令の申立てをした者の申立てがあった場合には、当該保護命令を取り消さなければならない。第十条第一項第一号又は第二項の規定による命令にあっては同号の規定による命令が効力を生じた日から起算して三月を経過した後において、同条第一項第二号の規定による命令にあっては当該命令が効力を生じた日から起算して二週間を経過した後において、これらの命令を受けた者が申し立て、当該裁判所がこれらの命令の申立てをした者に異議がないことを確認したときも、同様とする。
2 前条第六項の規定は、第十条第一項第一号の規定による命令を発した裁判所が前項の規定により当該命令を取り消す場合について準用する。
3 第十五条第三項の規定は、前二項の場合について準用する。
(第十条第一項第二号の規定による命令の再度の申立て)
第十八条 第十条第一項第二号の規定による命令が発せられた後に当該発せられた命令の申立ての理由となった身体に対する暴力と同一の事実を理由とする同号の規定による命令の再度の申立てがあったときは、裁判所は、配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して二月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り、当該命令を発するものとする。ただし、当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、当該命令を発しないことができる。
2 前項の申立てをする場合における第十二条の規定の適用については、同条第一項各号列記以外の部分中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号、第二号及び第四号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と、同項第四号中「前三号に掲げる事項」とあるのは「第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と、同条第二項中「同項第一号から第三号までに掲げる事項」とあるのは「同項第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」とする。
(事件の記録の閲覧等)
第十九条 保護命令に関する手続について、当事者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、相手方にあっては、保護命令の申立てに関し口頭弁論若しくは相手方を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は相手方に対する保護命令の送達があるまでの間は、この限りでない。
(法務事務官による宣誓認証)
第二十条 法務局若しくは地方法務局又はその支局の管轄区域内に公証人がいない場合又は公証人がその職務を行うことができない場合には、法務大臣は、当該法務局若しくは地方法務局又はその支局に勤務する法務事務官に第十二条第二項(第十八条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の認証を行わせることができる。
(民事訴訟法の準用)
第二十一条 この法律に特別の定めがある場合を除き、保護命令に関する手続に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第二十二条 この法律に定めるもののほか、保護命令に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第五章 雑則
(職務関係者による配慮等)
第二十三条 配偶者からの暴力に係る被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。
2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、被害者の人権、配偶者からの暴力の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。
(教育及び啓発)
第二十四条 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
(調査研究の推進等)
第二十五条 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に資するため、加害者の更生のための指導の方法、被害者の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進並びに被害者の保護に係る人材の養成及び資質の向上に努めるものとする。
(民間の団体に対する援助)
第二十六条 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体に対し、必要な援助を行うよう努めるものとする。
(都道府県及び市の支弁)
第二十七条 都道府県は、次の各号に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 第三条第三項の規定に基づき同項に掲げる業務を行う婦人相談所の運営に要する費用(次号に掲げる費用を除く。)
二 第三条第三項第三号の規定に基づき婦人相談所が行う一時保護(同条第四項に規定する厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行う場合を含む。)に要する費用
三 第四条の規定に基づき都道府県知事の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用
四 第五条の規定に基づき都道府県が行う保護(市町村、社会福祉法人その他適当と認める者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用
2 市は、第四条の規定に基づきその長の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用を支弁しなければならない。
(国の負担及び補助)
第二十八条 国は、政令の定めるところにより、都道府県が前条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第一号及び第二号に掲げるものについては、その十分の五を負担するものとする。
2 国は、予算の範囲内において、次の各号に掲げる費用の十分の五以内を補助することができる。
一 都道府県が前条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第三号及び第四号に掲げるもの
二 市が前条第二項の規定により支弁した費用
第六章 罰則
第二十九条 保護命令に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第三十条 第十二条第一項(第十八条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により記載すべき事項について虚偽の記載のある申立書により保護命令の申立てをした者は、十万円以下の過料に処する。
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。ただし、第二章、第六条(配偶者暴力相談支援センターに係る部分に限る。)、第七条、第九条(配偶者暴力相談支援センターに係る部分に限る。)、第二十七条及び第二十八条の規定は、平成十四年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 平成十四年三月三十一日までに婦人相談所に対し被害者が配偶者からの身体に対する暴力に関して相談し、又は援助若しくは保護を求めた場合における当該被害者からの保護命令の申立てに係る事件に関する第十二条第一項第四号並びに第十四条第二項及び第三項の規定の適用については、これらの規定中「配偶者暴力相談支援センター」とあるのは、「婦人相談所」とする。
(検討)
第三条 この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
第四条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
別表第一の一六の項中「非訟事件手続法の規定により裁判を求める申立て」の下に「、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第十条の規定による申立て」を加え、同表の一七の項ホ中「第二十七条第八項の規定による申立て」の下に「、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第十六条第三項若しくは第十七条第一項の規定による申立て」を加える。
附則(平成十六年六月二日法律第六十四号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行前にしたこの法律による改正前の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(次項において「旧法」という。)第十条の規定による命令の申立てに係る同条の規定による命令に関する事件については、なお従前の例による。
2 旧法第十条第二号の規定による命令が発せられた後に当該命令の申立ての理由となった身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものと同一の事実を理由とするこの法律による改正後の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下「新法」という。)第十条第一項第二号の規定による命令の申立て(この法律の施行後最初にされるものに限る。)があった場合における新法第十八条第一項の規定の適用については、同項中「二月」とあるのは、「二週間」とする。
(検討)
第三条 新法の規定については、この法律の施行後三年を目途として、新法の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
第一 「配偶者からの暴力」の定義の改正等
一 この法律における「配偶者からの暴力」の定義を、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとすることに改めること。なお、配偶者からの暴力の発見者による通報等、警察官による被害の防止及び第五の警察本部長等の援助に関する規定においては、配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限るものとすること。(第一条第一項等関係)
二 一に伴い、前文について、「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為である」とあるのを「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である」に改める等の改正を行うこと。(前文関係)
第二 保護命令制度の拡充
一 配偶者であった者に対する被害者への接近禁止命令及び退去命令
被害者への接近禁止命令及び退去命令について、現行法と同様に被害者が配偶者からの更なる身体に対する暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに発せられるものとして規定を整理するとともに、配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合においても、被害者が当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、当該配偶者であった者に対し、これらの命令を発するものとすること。(第十条第一項関係)
二 被害者の子への接近禁止命令
(一) 被害者がその成年に達しない子(以下単に「子」という。)と同居しているときであって、配偶者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下(一)及び五(一)において同じ。)が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは、被害者への接近禁止命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、被害者への接近禁止命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間、当該子の住居(被害者及び当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下(一)において同じ。)、就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとすること。ただし、当該子が十五歳以上であるときは、その同意がある場合に限るものとすること。(第十条第二項関係)
(二) (一)に伴い、被害者の子への接近禁止命令に係る申立書の記載事項、即時抗告及び命令の取消しに関して、所要の規定の整備を行うこと。(第十二条第一項第三号、第十六条第四項及び第六項並びに第十七条関係)
三 被害者と共に生活の本拠としている住居付近のはいかいの禁止
退去命令において、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去することに加え、当該住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとすること。(第十条第一項第二号関係)
四 退去命令の期間の拡大
(一) 退去命令の期間を、命令の効力が生じた日から起算して二月間に拡大すること。(第十条第一項第二号関係)
(二) (一)に伴い、退去命令の取消しに関して、所要の規定の整備を行うこと。(第十七条第一項関係)
五 退去命令の再度の申立て
(一) 退去命令が発せられた後に当該発せられた退去命令の申立ての理由となった身体に対する暴力と同一の事実を理由とする退去命令の再度の申立てがあったときは、裁判所は、配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた退去命令の効力が生ずる日から起算して二月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の退去命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り、退去命令を発するものとすること。ただし、当該退去命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、当該退去命令を発しないことができるものとすること。(第十八条第一項関係)
(二) (一)に伴い、退去命令の再度の申立てに係る申立書の記載事項に関して、所要の規定の整備を行うこと。(第十八条第二項関係)
六 再度の申立ての手続の改善
保護命令が発せられた後に当該保護命令の申立ての理由となった身体に対する暴力と同一の事由を理由とする保護命令の再度の申立てをする場合において、配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し、申立ての時における所定の事情等について相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実に係る所定の事項が申立書に記載されているときは、当該事情等についての申立人の供述を記載した書面で公証人法第五十八条ノ二第一項の認証を受けたものを添付することを不要とするものとすること。(第十二条関係)
第三 市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の実施
市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることができるものとすること。(第三条第二項関係)
第四 被害者の自立支援の明確化等
一 国及び地方公共団体の責務
国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力を防止するとともに、被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有するものとすること。(第二条関係)
二 基本方針及び基本計画
(一) 基本方針
1 内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣(以下「主務大臣」という。)は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならないものとすること。(第二条の二第一項関係)
2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、(二)1の基本計画の指針となるべきものを定めるものとすること。(第二条の二第二項関係)
(1) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項
(2) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項
(3) その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならないものとすること。(第二条の二第三項関係)
4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。(第二条の二第四項関係)
(二) 基本計画
1 都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならないものとすること。(第二条の三第一項関係)
2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。(第二条の三第二項関係)
(1) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針
(2) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項
(3) その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 都道府県は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。(第二条の三第三項関係)
4 主務大臣は、都道府県に対し、基本計画の作成のために必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならないものとすること。(第二条の三第四項関係)
三 配偶者暴力相談支援センターによる自立支援の明確化及び調整機能の発揮等
(一) 配偶者暴力相談支援センターは、被害者が自立して生活することを促進するため、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うものとすること。(第三条第三項第四号関係)
(二) 配偶者暴力相談支援センターは、保護命令の制度の利用について、情報の提供、助言、関係機関への連絡その他の援助を行うものとすること。(第三条第三項第五号関係)
(三) 配偶者暴力相談支援センターは、被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うものとすること。(第三条第三項第六号関係)
四 民間団体との連携
配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとすること。(第三条第五項関係)
五 福祉事務所による自立の支援
福祉事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法その他の法令の定めるところにより、被害者の自立を支援するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。(第八条の三関係)
六 関係機関の連携協力
配偶者暴力相談支援センター、都道府県警察、福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は、被害者の保護を行うに当たっては、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとすること。(第九条関係)
第五 警察本部長等の援助
警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとすること。(第八条の二関係)
第六 苦情の適切かつ迅速な処理
被害者の保護のための関係機関は、被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは、適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとすること。(第九条の二関係)
第七 外国人、障害者等への対応
職務関係者は、その職務を行うに当たり、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重しなければならないことを規定すること。(第二十三条第一項関係)
第八 施行期日等
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
二 検討
この法律による改正後の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下「新法」という。)の規定については、この法律の施行後三年を目途として、新法の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。(附則第三条関係)
三 その他
経過措置その他所要の規定の整備を行うこと。
ただいま議題となりました「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、共生社会に関する調査会を代表して、その提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
本法律案は、平成十三年に本調査会が提出し、成立に至った「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」において、法施行後三年を目途として検討する旨の規定が設けられていることから、各会派の本調査会委員を構成員とするプロジェクトチームにおいて法改正に向けての検討を重ねた結果を踏まえ、三月二十五日、各会派の総意をもちまして、起草、提出したものであります。
平成十三年十月の配偶者暴力防止法の施行以降、各相談機関において配偶者からの暴力に関する相談件数が増加するなど、配偶者からの暴力が重大な人権侵害であるとの認識が高まる一方、悲惨な暴力事件は後を絶ちません。
これらの状況にかんがみ、本法律案は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を推進するため、「配偶者からの暴力」の定義を拡大するとともに、保護命令制度の拡充、国の基本方針及び都道府県の基本計画の策定、市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の実施等の措置を講ずるほか、被害者の自立支援等について定めることとしております。
以下、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一は、「配偶者からの暴力」の定義の拡大であります。
「配偶者からの暴力」の定義を、保護命令に関する部分等を除き、身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいうものとすることとしております。なお、これに伴いまして、法律前文について所要の改正を行うこととしております。
第二は、保護命令制度の拡充であります。
元配偶者に対する保護命令及び被害者の子への接近禁止命令を可能とするとともに、退去命令の期間を二週間から二か月間に拡大し、退去命令の再度の申立てを認めるほか、保護命令の再度の申立手続の改善等を行うこととしております。
第三は、市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の実施であります。
市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることができることとしております。
第四は、被害者の自立支援の明確化等であります。
国及び地方公共団体の責務を規定し、主務大臣は配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本方針を、都道府県は基本方針に即して基本計画を定めなければならないこととするとともに、配偶者暴力相談支援センターの業務として被害者の自立支援及び関係機関との調整を明記するほか、配偶者暴力相談支援センターが業務を行うに当たっては、必要に応じ、民間団体との連携に努めるものとしております。
このほか、警察本部長等の援助、苦情の適切かつ迅速な処理及び外国人・障害者等への対応について規定しております。
なお、改正後の法律の規定につきましては、本法律の施行後三年を目途にその施行状況等を勘案し、検討する旨の規定を設けております。
以上が、本法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
何とぞ、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
狩野調査会長から法律案の提案理由の説明の後、南野知惠子君、山本香苗君、神本美恵子君、福島瑞穂君及び吉川春子君並びに野沢法務大臣、警察庁、総務省、国土交通省、厚生労働省、内閣府及び最高裁判所が質疑に対する答弁を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決された。
主な質疑の概要は次のとおりである。
(1)「配偶者からの暴力」の定義を精神的暴力及び性的暴力にまで拡大する趣旨は、配偶者暴力防止法において問題とされるべき「配偶者からの暴力」は、身体に対する暴力のほか精神的暴力・性的暴力も含むものであることを宣言して、これらを含む「配偶者からの暴力」の防止及び被害者の保護について一層の推進を図ろうとするものである。
精神的暴力とは、例えば、人格を否定するような暴言を吐く、何を言っても無視する、交友関係を事細かく監視するなどをいうものと考える。
(2)元配偶者に対しても保護命令の発令を可能としたのは、配偶者からの身体に対する暴力を受けて離婚した場合には、離婚直後の時期が暴力の危険が最も高まっているといわれていること、婚姻中の暴力と離婚後の暴力とは一体的なものとして評価すべきものと考えられることからである。
(3)被害者の子への接近禁止命令の発令を可能としたのは、配偶者が被害者の子を連れ戻してしまうと、被害者がその子の身上を監護するために配偶者との面会を余儀なくされる場合もあり、そのような場合は、被害者への接近禁止命令の効果が減殺されることになるので、これを防止するためである。
(4)退去命令の期間を現行の二週間から二か月間に拡大する改正は、二週間という期間では、被害者は住居から転居せざるを得ず、かつ、身辺整理、転居先の確保等を行うための期間として十分ではない、との指摘を踏まえたものである。
(5)退去命令の再度の申立てについての規定のただし書で、命令を発しないことができるとされた「配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるとき」とは、配偶者の生活の基盤が破壊されてしまうような限定的なケースを想定しており、ただし書の規定によって退去命令の再度の発令が不当に限定的になることはないと考える。
(6)配偶者暴力相談支援センターについて、都道府県のほか市町村においてもその業務を行えるようにしたのは、被害者の利便性を考えた場合、配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たす、より身近な施設が存在することが望ましいからである。
(7)配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策については、都道府県によって対応がまちまちであるとの指摘があるが、国に施策に関する基本方針の策定を、都道府県に基本計画の策定を義務付けたところであり、都道府県の一層積極的な取組を期待している。
(8)被害者の自立支援は現行法においても「被害者の保護」の一つとしてとらえられているが、そのことを明確にするため、今回の改正で、国及び地方公共団体は「被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有する」ことを規定することとした。また、配偶者暴力相談支援センターの業務について、被害者が自立して生活することを促進するための援助を具体的な例示を含めて規定することによって明確化を図った。
(9)配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護については民間団体も大きな役割を担っており、民間団体と配偶者暴力相談支援センターとが適宜連携を取りながら対応することが重要であることから、配偶者暴力相談支援センターが民間団体との連携に努めるべきことを規定した。
(10)外国人である被害者や障害者である被害者の人権を尊重した対応が必ずしも徹底されていないことから、職務関係者が被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重しなければならないことを確認的に規定した。
(11)加害者更生プログラムについては、内閣府において、諸外国の実態の調査研究を踏まえ、加害者更生プログラムの内容や方法等の調査研究を行っているが、今後は、プログラムの有効性、具体的な実施方法等を含めて更に検討していく必要がある。
(12)ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)の適切かつ迅速な活用は、配偶者暴力防止法の対象とならない親族・支援者等の保護のために重要である。警察庁においては、平成十六年一月、配偶者からの暴力事案におけるストーカー規制法の積極的な活用について各都道府県警察に対して通達を発出したところであり、今後とも親族・支援者等の保護についてストーカー規制法により積極的に対応していく。
(13)子どもを連れた配偶者からの暴力被害者の支援のため、平成十六年度から新たに、婦人相談所の一時保護所に同伴乳幼児の対応を行う指導員が配置される予定である。
(14)総務省の「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー被害者保護のための住民基本台帳閲覧、写しの交付に係るガイドライン研究会」が平成十六年三月に取りまとめた報告書に基づき、総務省においては、被害者の申出により、住民基本台帳の閲覧等について、加害者から請求があった場合に、不当な目的があるものとして応じないこととするための省令及び事務処理要領の改正を近日中に行う予定である。これらに基づいて、各市区町村において統一的な支援措置が講じられ、もってドメスティック・バイオレンス(DV)被害者の保護が推進されるよう努めていきたい。
(15)DV被害者の公営住宅への入居については、国土交通省において、平成十六年三月、事業主体の判断により、DV被害者を優先入居させることが可能であること、目的外使用として単身入居が可能であること等を通知したところであり、DV被害者の自立支援のために公営住宅の入居について弾力的運用が図られることが期待される。
平成十六年三月二十五日、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案の起草に先立ち、野沢法務大臣、小野国家公安委員会委員長、坂口厚生労働大臣、内閣府及び総務省に対し質疑を行った。その概要は次のとおりである。
(1)刑法上の「脅迫」を保護命令の発令の要件となる行為に含めることは、夫婦間の感情的な発言も脅迫に含まれ得ることになり、このような場合に、現に暴行を加えている場合と同様に刑罰で担保されている保護命令を発することは問題がある。
また、加害者の行為が脅迫にとどまっている場合に、被害者の生命又は身体を守るために保護命令を発することができるようにすることについては、これまで身体的暴力を振るっていない加害者が今後はそのような行為に及ぶという予測的な判断を適正かつ簡易迅速に行うことが制度的に困難であるという問題がある。
法務省としては、以上の問題点を踏まえながら、保護命令制度の保護法益の在り方を含めて、必要な検討を行っていく。
(2)被害者の同居の子どもへの接近禁止命令と離婚調停等に基づく子どもへの面接交渉権との関係は、後に出された判断の方が優先されることになる。例えば、家事審判等により面接交渉が認められた後に子どもへの接近禁止命令が出された場合は、面接交渉が認められた後の事情の変更等を考慮した上での発令であるので、先に認められた面接交渉権に従った態様での面接交渉であっても正当な理由に基づくものとはいえず、接近禁止命令の方が優先する。
(3)ストーカー規制法においては、恋人のみならず、親族、支援者等の社会生活において密接な関係を有する者へのつきまとい等も規制の対象になり、また連続電話、連続ファックス等の行為もつきまとい等として規制される。今後ともDV被害者や関係者の保護のために、ストーカー規制法を迅速、的確に運用することが必要である。
(4)被害者への二次的被害を防ぐためには、職務関係者への更なる研修の徹底が必要である。配偶者暴力相談支援センターの職員、都道府県警察・警察庁の職員、検察官、検察事務官、法務局・地方法務局の人権擁護担当者・人権擁護委員、婦人相談所の職員等に対して、被害者の立場に立った適切な対応を行うことができるよう、様々な研修を実施していくことが重要である。
(5)総務省の「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー被害者保護のための住民基本台帳閲覧、写しの交付に係るガイドライン研究会」では、被害者の申出により、住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票の写し等の交付及び戸籍の附票の写しの交付について、加害者から請求があった場合に、不当な目的があるものとして応じないこととする内容の報告書を平成十六年三月中にまとめる予定である。総務省においては、同報告書に基づき、事務処理要領の改正等の所要の措置を講じ、地方公共団体において統一的な運用が行われ、もってドメスティック・バイオレンス、ストーカーの被害者の保護が図られるように努める。
(6)DV被害を社会から根絶していくためには、加害者が二度と暴力を振るうことがないよう、加害者更生のためのプログラムの研究や開発が重要である。内閣府においては、諸外国の実態の調査研究を踏まえ、加害者更生プログラムの内容や方法等の調査研究を行っているが、更に検討を進めていく必要がある。
障害者の自立と社会参加に関する件について、平成十六年二月十八日及び二月二十五日にそれぞれ参考人から意見を聴取し、意見交換を行った。その概要は次のとおりである。
共生の感覚の育成のためには、主権者として生きているという実感が必要であり、その前提として、障害児(者)教育の確立が必要となる。障害児教育は、盲・聾・養護学校、障害児学級、通級指導によって成り立っているが、障害者の社会参加と自立のため、生涯にわたる教育的支援の在り方を考える場合、社会教育等の学校外教育も重要である。学校教育については、昭和五十四年の養護学校教育義務制度の実施まで、就学猶予や免除という形で障害の重い人は疎外されていたが、義務制度の実施以降、徐々に障害児教育の枠が拡大され、現在、通級指導の実施によって通常学級に在籍する障害児にも障害児教育が提供されてきている。しかし、学校教育が未確立であった時期が長かったため、学校外教育は十分成立してこなかった経緯がある。
障害児教育の課題は、(1)障害児学級・障害児学校の適正規模での地域配置を行うなどの現行の障害児教育制度の充実、(2)学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症等の通常学級に在籍する特別な教育的ニーズを持つ児童生徒への障害児教育対象の拡大及びそれに伴う教員配置を行うなどの教育条件の整備、(3)子どもの発達の力量を確実にするため、養護学校高等部等の充実、自立と職業準備を視野に入れた専攻科の設置、希望者への二十歳までの教育年限延長等の後期中等教育の充実、(4)思春期・青年期において寄宿舎やグループホーム等の活用により自立した生活の中で教育を受ける機会の充実、(5)障害者の社会参加と自立のための生涯学習体制の構築である。
千葉県佐倉市立根郷中学校は、視覚障害者施設と隣接していることもあり、開校以来福祉教育に取り組み、福祉教育を広い意味での進路指導の一環としてとらえている。その具体的内容は、一年生は「障害を知る」をテーマとして、障害についての講話、車いす介助やガイドヘルプの体験、障害のある人の視点からの街の体験及び隣接する視覚障害者施設の利用者との交流を行っている。二年生は「共に生きている人たちと語り合う」をテーマとして、障害のある人を支えているボランティアとの交流、点字・手話の講習及び養護学校・聾学校との交流を行っている。三年生は「共生社会の実現に向けて」をテーマとして、障害のある人の視点からの住んでいる街の点検、福祉施設の訪問及び三年間のまとめとして意見の発表を行っている。このほか、福祉関係をテーマとした保護者に対する啓発行事、小学校との連携行事等を行っている。
福祉教育の実践の中で子どもにつかんでほしいことは、「対等の意識」である。子どもの変容は遅く、手ごたえを感じないときもあるが、十年、二十年先に何かが芽生えてくれることを期待して、福祉学習の機会を提供し続けたい。
NPOわかくさ大東地域リハビリテーション研究所所長・帝京平成大学健康メディカル学部教授 山本 和儀 氏
共生の前提となるノーマライゼーションの実現には、障害当事者が生き方を選択し自己決定することが重要であり、社会的・人的バリアの除去が必要である。これまで専門家といわれる人たちがその知識や技術、哲学を障害を持つ子どもや保護者に押し付けてきたという歴史が今日的課題を残している。共に育ち合う機会である統合教育こそがノーマライゼーションを進めていく上で必要であり、それを理解するために地域全体が変わっていく必要がある。
大阪府大東市は昭和四十八年から統合保育・統合教育を推進してきた。障害のある子どもをできるだけ早く保育所に送り出すため市立療育センターを設置し、保育所において専門家が保育士と共に療育を継続するシステムを構築した。また、子どもの小学校入学前に、各校の手すり、スロープ、トイレ等の整備、給食の供給体制等のハード面の整備を行う一方、教職員の体制、通学の保障、医療的な側面等のソフト面の整備も行った。
昭和六十年には、市に理学療法課を設置し、地域住民の協力と参画、関係機関との連携を重視してきた。障害者を支える町づくりのためには、障害者を囲い込むことなく専門家が連携することが求められ、啓発事業を展開し、一般企業への就労のための条件整備の施策化及び実践をしていく必要がある。
LD、ADHD、高機能自閉症等の軽度発達障害と呼ばれる児童生徒、すなわち特別な支援を必要とする子どもにとって必要な教育は、周囲の子どもにとっても必要なユニバーサルな教育であるとともに、人権や思いやりの意識を育てるという点で、真の意味での心の教育と考えられる。このように発達障害児をクラスの中で位置付けることの意義は大きいが、通常学級の中では理解、対応及び支援体制が十分ではないため、種々の混乱や誤った対応が行われていることが研究者等の間で問題視されている。また、このような軽度発達障害児への支援等が十分でないため不登校率が高いこと、非行・反社会的行動に一定数が移行すること等の二次的な問題が生じていることが指摘されている。
岐阜市における教師に対する調査では、教師が指導困難ととらえている児童は小学校で二・七%存在し、教師と学校現場に対するサポートが必要になっている。具体的には、(1)発達障害に対応できる児童精神科医師、臨床心理士等による、学校現場における援助及び教師の研修体制強化、(2)特別支援の必要な児童に個別指導等が可能となるような加配教員及び指導場所の確保、(3)学級規模の縮小、という支援及び対策が必要である。
また、発達障害児等への特別支援教育については、現在の障害児教育を充実させた上で行うことが重要であり、現場の混乱や負担を招くことのないよう希望する。さらに、幼児期から成人期までの継続した支援は非常に重要であり、十分な予算を投じることが必要である。
このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。
(1)障害のある人が普通に生活するための基礎学力を身に付けるためには特別の配慮が必要であるとともに、障害当事者に選択肢が確保される必要がある。
(2)統合教育の基本は共に学び合う機会があることであり、障害のある子とない子を一緒に学ばせるという形態のほかに、交流教育を位置付けたより緩やかな形態で全体として社会的な統合を目指していくことも検討すべきである。
(3)インクルーシブ教育を実現するためには、地域で共に生活することが重要であり、必要な制度の創設や予算の確保について専門家が責任を持つ必要がある。
(4)障害のある子とない子が共に学ぶ教育の実を上げるためには、学級規模や個別指導等の条件整備のほか、児童精神科医師等の専門家による、教員の研修及び相談体制の構築等が求められる。
(5)障害のある人の就学先を行政機関が決定するのでなく、当事者の選択を周囲が支えることが重要である。
(6)LD、ADHD、高機能自閉症により特別な教育的支援を必要とする児童生徒は六%強の割合で通常学級に在籍している可能性が報告されており、教師を支える条件整備として専門家の活用、教員免許取得の際の発達障害に関する知識の習得及び障害児学級等の充実が必要である。
(7)LD、ADHD等の児童生徒への適切な対応のためにも、学級規模を三十人以下とすることが望まれる。
(8)LD、ADHD等の理解及び支援に関しては早期発見・早期対応が求められるが、LD等の診断が差別につながらない社会をつくり、行政がそれを支えるシステムを構築することが必要である。
(9)通常学級に在籍する発達障害児が不登校となる事例が報告されており、教師の発達障害に対する正しい理解が不登校の予防において必要である。
(10)福祉教育の必要性を保護者に理解させるためには、教師がその必要性を訴えるだけでなく、子どもが学び、気付いたことを大人に発信していくことが必要である。
(11)障害のある子とない子が同じ学級で学ぶ場合に、障害のない子に対しては子どもの発達段階を踏まえ、福祉教育等による障害についての理解の促進及び実際の事例に即した指導が求められる。
(12)福祉教育をより多くの学校へ浸透させるべきであるが、外部講師の手配、予算、教職員の意識上の格差等の克服すべき課題は多い。
(13)盲・聾・養護学校を統合して特別支援学校(仮称)とするためには、それぞれの障害の特性、障害の範囲を理解した上で慎重に検討を進めるべきである。
(14)知的障害のある子どもは発達がゆっくりであったり、アンバランスである傾向があるため、十八歳以上でも教育的支援の継続が可能となるよう、養護学校の専攻科の充実等により十分に時間をかけた教育を行うことが必要である。
(15)選挙において点字投票制度は導入されているが、選挙公報の点訳が十分でない等の問題があり、障害のある人が権利主体となれるよう障壁を除去することが共生社会の実現のために必要である。
(16)手話を聴覚障害者のコミュニケーションの手段として確立させる必要があり、聾教育における手話の導入について検討すべきである。
先進諸国において知的障害者入所施設数は減少し、スウェーデンを始め幾つかの国では既にゼロとなっている。このような国際的流れを受け、我が国では新障害者基本計画において、入所施設は真に必要なものに限定することが掲げられている。しかし、現実には入所施設は増え続け、障害者の地域生活を支えるホームヘルプサービスやショートステイ等の在宅サービスは十分とはいえない。
三障害の中で最も施設入所率の高い知的障害者について、全国の入所施設を対象に実施した調査結果では、入所者数は約六万三千人で長期入所者が多く、過去一年の退所者数はごくわずかである。退所先は他の施設、病院、家庭等であり、地域生活に移行する例は約四分の一である。この点については、施設側が本人から意向を聴くことが十分にできていないという実態がある。施設入所者数は知的障害者全体の三分の一であるにもかかわらず、知的障害者福祉予算の七、八割を入所施設関係が占めており、この状況は支援費制度の導入後も変わっていない。施設に長期に入所している理由については、作業能力と社会生活上の適応問題が挙げられているが、施設に在所している者の多くを占める中軽度者は、配膳や重度の障害者の身辺介護等を行っている。訓練の一環という名目で中軽度者を施設内で使役し、労働力確保のため施設内にとどめるという構造は大きな問題であり、人権侵害といえる。
施設入所者は、自分の住みたい所に住めない、予算の配分に問題があると感じており、(1)入所施設の削減、(2)グループホームやホームヘルプへの予算の重点配分、(3)施設内の人権侵害への対応等の要望を行っている。障害者の自立と社会参加を推進するためには、権利擁護を阻む専門家による人権侵害の是正、専門職としての技能の見直しが必要であり、入所施設に係る義務的経費に手を付けなければノーマライゼーションはあり得ない。自立は障害者本人が自ら選び決めていくものであり、入所、収容は廃止されるべきである。
北海道伊達市は人口約三万六千人であり、退職後の居住地となることが多いため高齢化率が高く、平成十六年一月末で、二四・八五%となっている。昭和四十三年に全国に先駆けて知的障害者総合援護施設「北海道立太陽の園」が設立されて以降、入所者の社会自立の受皿として市が通勤寮、援助付き住宅、地域生活支援センター等の整備を行った結果、現在多くの知的障害者がまちで暮らしている。
知的障害者がまちで暮らすには五つの条件整備が必要である。第一は生活の場である。地域生活実習ホーム、グループホーム、生活寮、ケア付きホーム等様々なタイプの住宅環境が必要である。第二は就労の場である。福祉的就労だけでなく企業就労も重要であることから、障害者が就労する企業の会が発足し、様々な取組を行っている。また、就労の場は生活する場の周辺にあることが必要である。このほか、第三に所得の保障、第四に余暇活動の充実、第五に適切な援助の保証が条件整備として必要である。施設に閉じ込めることは差別を助長するという観点から、地域で暮らす仕組みをつくる必要があり、以上の条件に地域としてどうこたえていくかが重要である。
今後の課題は、支援費制度や介護保険制度の導入等で、市の財政負担が増加している状況において、(1)無認可のグループホーム入所における負担の主体の在り方、(2)介護保険制度における要支援・要介護の認定率が高いこと、(3)国と地方の財政改革である三位一体改革の影響により市の一般財源の不足を招いていること等である。国は地方の痛みを十分理解して今後の社会保障政策を進めるとともに、自立できる人には自立を促す仕組みを構築する必要がある。
日本の医療水準は世界最先端にありながら、精神医療分野だけは先進諸国の中で最も立ち後れている。
これまで精神障害者の地域生活を支援してきた中で感じることは、精神障害者が地域で暮らす基盤として、生活就労支援システム及びそれを支える良質の医療が必要ということである。他の医療と同様に、生活を考慮した適切な医療及び休日・夜間でも受診できる総合病院の精神科救急システムの整備が喫緊の課題である。
就労支援については、町なかで実際に仕事を行うことこそが職業リハビリテーションであると考える。また、生活支援については、福祉ホーム、グループホーム、在宅支援等、地域住民の支援を受けた暮らしの中で生活リハビリテーションを行うことが基本であり、就労支援と生活支援を二つの柱として一体的に取り組む必要がある。これらのバランスを見極めるのは医療の専門家でなく、地域で生活をする支援者である。
精神障害者の拠点となっている地域生活支援センターは、リハビリテーションの入口でもあり、デイケアセンターとしての役割も担っている。寄せられる相談内容は多様であるため、一人一人の回復過程に応じた支援を行い、本人の力を引き出してエンパワーメントしていくことが重要である。
精神障害者も一人の国民、地域生活者として、本人の選択と自己決定により、豊かに暮らせる社会を構築すべきである。
このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。
(1)共生社会を目指すには、障害のある子とない子が共に学ぶ完全に統合された学校教育体制に変えていく必要がある。
(2)健常者に近づける訓練とは異なる障害者教育の在り方を考え、教職員の専門性について問い直す必要がある。
(3)知的障害者や精神障害者が施設を退所し、地域で自立した生活を送る際に、成年後見制度を活用することを検討する必要がある。
(4)地方公共団体のみならず、国においても脱施設化の方向を打ち出すべきであり、障害のある人の地域生活移行に当たっては、その責任を家族に押し付けるのでなく、地域社会で支えていくような体制をつくる必要がある。
(5)精神障害者の地域生活への移行を推進するためには、訪問診療、訪問介護、ピアカウンセリング等の支援を充実させるとともに、精神障害者を介護保険制度の対象とすることを検討することも考えられる。
(6)知的障害者、精神障害者の就労支援は身体障害者に比べ十分とはいえず、精神障害者に対する障害者雇用率制度の適用、職場適応援助者(ジョブコーチ)制度の充実、事業主への啓発等が必要である。
(7)障害のある人の雇用については、健常者と同様の働き方を求めるのではなく、障害特性をいかした働き方を認めることがノーマライゼーションにつながる。
(8)障害のある人の就労の場として農業に着目すべきである。
(9)地方公共団体の裁量によって効率的な福祉サービスが提供できるよう、三位一体改革の在り方を見直す必要がある。
(10)支援費制度が発足したが、障害のある人の権利侵害を防ぐ体制が整備されていないこと、ケアマネジメントが確立されていないことが問題である。
(11)障害のある人の権利を保障するためには、障害特性に配慮した権利擁護体制を整備する必要がある。
(12)障害のある人が地域で生活することこそが、障害に対する市民の理解を促し、偏見の解消につながる。
(13)自らの選択で自己実現したい障害のある人のニーズと安心・安全な街づくりを進めたい社会のニーズとの調和を図る必要がある。
(14)障害のある人が自らの障害に向き合い、希望する活動に取り組めるよう、社会全体で支えていくことが重要である。
(15)共生社会を実現するためには、まず障害のある人とない人との間にある意識上の障壁を取り去ることが重要である。
障害者の自立と社会参加に関する件について、平成十六年三月三日、中島内閣府副大臣、原田文部科学副大臣、谷畑厚生労働副大臣及び佐藤国土交通副大臣から説明を聴取し、質疑を行った。その概要は次のとおりである。
内閣府は、障害者基本計画の策定・推進に関する事務、内閣総理大臣を本部長とする障害者施策推進本部の事務を担当しており、関係省庁との連携の下に障害者施策の推進を図っている。政府としての取組は、平成十四年十二月に閣議決定された障害者基本計画及びその数値目標を定めた重点施策実施五か年計画に基づき進められている。障害者基本計画においては、施策を推進する上での横断的な視点として、(1)社会のバリアフリー化の推進、(2)利用者本位の支援、(3)障害の特性を踏まえた施策の展開、(4)総合的かつ効果的な施策の推進を掲げ、障害者の活動し参加する力の向上等の重点課題を踏まえ、啓発・広報、生活支援、生活環境、教育・育成、雇用・就業、保健・医療、情報・コミュニケーション及び国際協力の八分野について、それぞれの施策の基本的方向を示している。
重点施策実施五か年計画においては、障害者の社会参加を支援するため、広範囲にわたり施策自体の整備目標、施策の実施効果の目標等を定めている。
内閣府は、障害者に対する国民理解の促進に努めるとともに、バリアフリー化推進功労者表彰を制度化したほか、マスメディアを活用した啓発・広報に取り組んでいる。
平成十四年度末の地方公共団体における障害者計画の策定等の状況をみると、すべての都道府県及び指定都市においては策定済みであり、指定都市を除く市町村においては策定率が九一・四%と年々上昇しているが、人口規模の小さな町村を中心に計画未策定の市町村も一割弱残っている。国として、計画未策定の市町村に対し、専門家をアドバイザーとして派遣するなど計画策定に向けた指導、支援を行っている。
文部科学省は、障害のある児童生徒が可能な限り能力を伸ばし、自立し社会参加するための力を培うため、一人一人の障害の状態に応じたきめ細かな教育を行っている。平成十五年五月現在、盲・聾・養護学校、特殊学級等で教育を受ける児童生徒は義務教育段階で約十七万二千人であり、全体の約一・六%である。障害の種類、程度に関係なく教育の機会を確保しており、就学猶予・免除を受けている子どもは百三十人で、義務教育段階の児童生徒数の〇・〇〇一%である。
平成十五年三月に取りまとめた「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」において、従来の特殊教育から、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う特別支援教育への転換を図るという基本的な考え方の下に、学校における特別支援教育体制の整備、教育委員会における体制の整備、特別支援教育に関する制度的な見直しを提言している。この提言を受け、障害のある児童生徒への総合的な教育支援体制の整備を図るため、十五年度から全都道府県の教育委員会にモデル事業を委嘱している。また、十六年一月に、小・中学校におけるLD、ADHD、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドラインを策定し、全教育委員会、小・中学校等に配布した。
盲・聾・養護学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化への対応として、厚生労働省との連携の下、養護学校における医療的ケア体制整備事業を行っている。
このほか、障害のある児童生徒に対する教育に関する研究・研修の充実、特別支援教育の改善充実のため、施設・設備の整備に努めるとともに、保護者の負担を軽減し就学を奨励するため必要な交通費等を補助する特殊教育就学奨励費を設けている。
厚生労働省は、障害の有無にかかわらず、だれもが人格と個性を尊重して相互に支え合う共生社会の実現を目指し、特に保健・福祉と雇用・就業の両面から、障害者の自立と社会参加を支援している。
障害者保健福祉施策においては、自立と社会参加の基礎である地域生活支援がキーワードであり、施設等から退所する障害のある人の受皿の整備、在宅サービスの充実が極めて重要である。また、成人の障害者にとっては、雇用・就業と福祉が連携し、福祉的就労から一般就労への移行を推進することが重要である。
地域生活支援のための具体的施策として、平成十五年四月施行の支援費制度、精神障害者の社会復帰対策の推進の二つが挙げられる。支援費制度の施行状況をみると、地域差はあるものの在宅サービスの利用が伸びており、より安定的かつ効果的な制度としていくことが重要になっている。精神障害者施策については、入院医療中心から地域生活中心という観点に立ち、社会復帰対策を推進していくことが必要であり、国民各層による精神障害者への正しい理解と住民に最も身近な存在である市町村の役割が重要になっている。
雇用・就業施策については、障害者基本計画等を踏まえ、障害者の雇用の促進等に関する法律及び障害者雇用対策基本方針に基づき、障害者が能力を最大限に発揮し、働くことを通じて社会参加ができるようにすることを基本的な考え方としている。具体的には、(1)障害者雇用率の達成指導の強化、(2)試行雇用(トライアル雇用)や各種助成金の活用等による事業主に対する援助・指導の充実、(3)ジョブコーチの活用による重度障害者の雇用の場の確保、(4)職業リハビリテーションの的確な実施等精神障害者の雇用対策の推進、(5)ITを活用した重度障害者の職業自立の推進、(6)障害者職業能力開発校のほか一般の職業能力開発校、事業主、社会福祉法人等を活用した職業能力開発の実施等、各種施策を一体的に推進し、障害者の雇用の促進、職業の安定に努めている。
企業における障害者の実雇用率は平成十五年六月一日現在で一・四八%、五人以上規模の事業所に雇用されている障害者は十年十一月現在で五十一万六千人であるが、二十年度には六十万人にすることを目標としている。
国土交通省は、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、住宅・建築物、公共交通機関、歩行空間等についてバリアフリー化を積極的に推進している。平成十五年十月に閣議決定された社会資本整備重点計画等において施設ごとに成果目標を設定した上で、補助制度、融資制度、税制、規制等各種の施策を総合的に推進している。
公共交通機関については、交通バリアフリー法に基づき鉄道駅等の旅客施設の新設、新たなバス等の車両の導入の場合にバリアフリー化を義務付けている。
歩行空間については、平成十四年度に策定した道路の移動円滑化基準に関するガイドライン等に基づき、市街地の駅、商店街、病院等の主要ルートを中心に、バリアフリー化を推進している。
住宅については、新設されるすべての公共賃貸住宅についてバリアフリーを標準仕様とするとともに、住宅ストック全体についてもバリアフリー化を促進している。
建築物については、ハートビル法に基づき、百貨店、劇場等不特定かつ多数の者が利用する一定の建築物等の新築、増築等を行う場合にバリアフリー化を義務付けるとともに、技術的なガイドラインの作成・周知等により、バリアフリー化を推進している。
これら各種施設のバリアフリー化をより総合的に推進する観点から、交通バリアフリー法に基づき、旅客施設を中心とした整備地区について市町村が基本構想を作成しており、平成十六年二月現在百十五市町村で作成済みである。今後とも、関係省庁と連携の上、市町村による基本構想の作成を一層促進していきたい。
バリアフリー社会の実現には、ハード面のみならず、ソフト面の施策を併せて実施することが必要であり、バリアフリーに関する情報の提供を推進するとともに、普及・啓発活動を展開している。
このような政府からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。
(1)特別支援教育の基本的方向は、すべての子どもが地域の学校で学ぶことができる体制を整備することである。
(2)すべての児童生徒は教育を受ける権利を持っており、障害の有無にかかわらず、地域の学校に在籍することが理想である。障害のある児童生徒の特別な教育的ニーズを満たすため、様々な環境整備を行うことにより、包括的な教育体制を目指すべきである。
(3)LD、ADHD、高機能自閉症を含む障害のある児童生徒の教育的ニーズに応じて適切な支援を行うためには、予算、人員等の教育条件の整備が必要である。
(4)LD、ADHD、高機能自閉症を公的に位置付け、教育、雇用等を含めた総合的な施策を講じる必要がある。
(5)LD、ADHD、高機能自閉症への対応として、我が国における児童精神医学等の専門家の不足を解消する施策が必要である。
(6)障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに適切に対応するため、盲・聾・養護学校を特別支援学校(仮称)という制度に転換する方策の検討が求められており、一定地域における小・中学校等に対する教育的な支援を行うセンター的役割を持たせることが有益である。
(7)医療的ケアを必要とする児童生徒へ対応するためには、医療との連携が不可欠であり、養護教諭の活用を十分検討する必要がある。
(8)盲・聾・養護学校も含め学校の教職員の障害に対する専門性向上のための方策について、教員免許の在り方の見直しも視野に入れて検討する必要がある。
(9)精神障害者の社会復帰を推進するためには、精神障害に対する理解の促進とともに、地域における在宅サービスの充実及び医療体制の整備が必要であり、特に市町村の役割が重要である。
(10)障害者の自立と社会参加のためには、障害のある人が居住する身近な地域において職業訓練を受講できるよう訓練機会を大幅に拡充するなど、障害のある人、企業双方のニーズに沿った訓練を実施することが重要である。
(11)障害のある人の多様な雇用・就労形態の促進として、ITを活用した重度障害者在宅就労推進事業等の支援策を充実・強化する必要がある。
(12)支援費制度において、ホームヘルプサービスの実施数にみられるように地方公共団体間で実施状況に大きな格差が生じており、利用者が必要な福祉サービスを地域格差なく全国で受けられるようにするための施策が必要である。
(13)支援費制度と介護保険制度の統合についての検討が始められているが、障害者施策は保険ではなく福祉の枠組みで行うべきとの意見もあり、障害のある人の意見を反映させた慎重な検討が必要である。
(14)支援費制度において在宅サービスが裁量的経費となっているため、厳しい財政状況の下、サービスの伸びに応じて予算を確保することが困難となっており、財源確保の方策について検討する必要がある。
(15)鉄道駅におけるバリアフリー化の基準を利用者の視点から見直す必要がある。
(16)交通バリアフリー法に、移動の権利を明記する必要がある。
(17)障害のある人が、自己選択と自己決定の下に社会の様々な活動に参加、参画できる社会とするためには、審議会等で障害のある人が意見を表明できる機会を確保する仕組みが必要である。
(18)聴覚障害者のコミュニケーション手段として手話を位置付けるため、聾学校の教員養成課程を見直し、聾学校において手話を第一言語として扱う教育が必要である。
(19)障害者の自立と社会参加を推進するためには、障害のある人にとっての自立とは何かを問い直す必要がある。
参考人からの意見聴取及び政府からの説明を踏まえ、障害者の自立と社会参加に関する件について、報告書の取りまとめに向けて、平成十六年五月十二日、調査会委員間における自由討議を行った。そこで述べられた意見の概要は次のとおりである。
(1)共生社会の実現のためには、障害の有無にかかわらず、当事者の希望に基づき地域の幼稚園、保育所及び小・中学校に通うことができるような教育的環境の整備が必要である。
(2)行き過ぎた効率主義、能力主義に基づく教育観を早急に是正し、分離教育ではなく統合を原則とした教育制度に変えていくことが必要である。
(3)障害のある児童生徒への適切な対応のため、通常学級における特別支援と障害児学校・学級の拡充を併せて推進していく必要がある。
(4)共生の感覚の育成のためには、障害児学級に在籍する児童が通常学級の学習に参加するなどの教育上の交流を明確に位置付けた上で推進するとともに、通常学級においても障害者福祉にかかわる総合的な教育を行うべきである。
(5)LD、ADHD、高機能自閉症により特別な教育的支援を必要とする児童生徒への適切な対応のため、精神科医師等の専門家による教育現場への援助のみならず、教職員の援助技術の向上等の対策を講ずる必要がある。
(6)LD、ADHD、高機能自閉症等の発達障害については法律上の支援の位置付けが明確でないため、福祉と教育の分野の連携を深めるなどの支援体制を整備していく必要があり、早期発見、教育、生活、就労に至る総合的支援の柱となる「発達障害者支援法」の制定を検討する必要がある。
(7)精神障害者の自立と社会参加を阻む最大の障壁は、障害に対する偏見と無理解であることから、障害特性に関する正しい知識を育成するため、意識啓発のための教育的対応を行う必要がある。
(8)教育の場において、障害のない子どもが障害者の権利について学ぶ機会を設ける必要がある。
(9)障害のある人が施設から地域社会での生活へ円滑に移行するためには、施設管理者の理解と退所にかかわる支援に加え、地域に根付いた生活の場の確保及び日常生活に対する行政サービスの提供が必要である。
(10)先進諸国においては精神障害者の地域生活への移行が進んでおり、我が国でも具体的施策を検討する必要がある。
(11)先進諸国において知的障害者施設は減少傾向にあるが、我が国では知的障害者福祉の中心として知的障害者施設の機能を活用するなど、その在り方を検討する必要がある。
(12)障害のある人が地域生活の基盤を確立するためには、福祉的就労ではなく地域社会における恒常的就労が不可欠であり、地方公共団体は地域の企業と連携するとともに、在宅就業、農業等の一次産業等による就労の促進について検討する必要がある。
(13)政府は障害のある人の自立支援の場として重要な小規模作業所に対する国庫補助制度を後退させるのではなく、予算の拡充を図るべきである。
(14)支援費制度の予算不足解消のため介護保険制度との統合が検討されているが、財源及び仕組みの異なる二つの制度の統合は更に矛盾を深めることになる。
(15)ユニバーサルデザインの社会の形成は国が画一的に行うのではなく、地方公共団体が地域の実情に合わせて施策を推進できる体制とすることが重要である。
(16)障害の有無にかかわらず、だれもが自由に安心して暮らすことができるユニバーサル社会の実現のためには、あらゆる場面において障害者の差別を禁止する法律が必要である。
(17)ユニバーサル社会の構築に当たっては、制度や施設の設計段階から利用者である障害当事者が参画する必要がある。
(18)五%から七%の聾学校で手話がまったく使われていない結果として、自由に自己表現するための母語がない障害のある人が存在していることを踏まえ、聴覚口話法以外の教授法の導入を検討すべきである。
(19)障害の有無にかかわらず、すべての人が自己選択と自己決定によって社会のあらゆる活動に参画し、社会の一員としてその責任を分担できるような共生社会の構築を目指すべきである。
障害のある人の意向を尊重し、できる限り施設や病院から出て地域で生活すること、またその適性、能力に応じた就労を通じて社会参加していくことは、ノーマライゼーションの推進や共生社会の実現の観点からも大きな政策課題となっている。しかしながら、現実には財源不足や受皿の未整備に加えて、障害についての無理解、偏見・差別が依然として存在しており、障害者の自立と社会参加のためには、障害のある人の人権が尊重され、あらゆる分野で機会の平等が確保されることが求められている。具体的には、グループホーム等の地域での受皿の整備のほか、障害者の就労を通じた自立支援、在宅サービス、医療サービス等の整備とともに、学校教育段階からの交流教育・福祉教育等を通じた共生の感覚の育成、障害特性等に関する正しい知識の普及と理解の促進が不可欠である。
昨年、本調査会は、障害のある人とない人が同じ社会の構成員として相互に尊重され、充実した生活を送ることができる共生社会の実現に向けて議論を行い、「バリアフリー社会の一層の推進」を始めとする五項目の提言を含む報告書を議長に提出した。本年は、特に知的・精神障害者の地域生活への移行を念頭に置き、自立のための地域生活支援策の在り方や地域生活への円滑な移行のために必要となる共生の感覚の育成の方策について、参考人からの意見聴取、政府からの説明聴取、調査会委員間の自由討議を行うなど鋭意検討を進めてきた。
このような取組を経て、本調査会として当面する課題について、次のとおり提言する。
1 子どもの頃から共生の感覚を育成するためには、障害のある子とない子が地域で共に学び合う機会が何より必要であり、そのためには本人の意思を尊重した通常学級での教育の機会を充実するとともに、障害のある子どもに対する通学・給食・医療等の支援体制を一層充実すべきである。
2 学校における福祉教育については、より多くの学校でより多くの実践を行うことが可能となるよう、地域の関係機関との連携を図るとともに、教育現場のみならず学校外における支援体制の整備を図るべきである。
3 知的障害者等については、発達の進度において個人差が見られるなどの障害特性に配慮し、教育の効果を確実にするためにも養護学校高等部等後期中等教育の充実を図る必要がある。また、生涯を通じた学習体制の整備・充実を図るべきである。
1 LD、ADHD、高機能自閉症により特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応のため、(1)乳幼児健診等での早期発見のための体制整備、(2)教員免許の在り方の見直しも視野に入れた教員の専門性の向上、(3)必要な教員の確保、学級規模の適正化等教育条件の整備、(4)児童精神科医師等の専門家による教師や学校現場への援助等が必要であり、そのための予算措置等を講じるとともに、幼児期から成人期までの継続した支援体制の構築を検討すべきである。
2 軽度発達障害のある児童生徒の健全育成のため、不登校等との関係性の有無等について、国として早急に専門的な調査研究を実施すべきである。
1 知的障害者の施設から地域生活への移行を円滑に推進するため、当事者の意思を尊重した移行決定に際しての手続を整備するとともに、移行後の責任を家族に押し付けることのないよう、支援費制度の充実を図り、在宅サービス体制等地域住民との連携の下に一人一人のニーズに応じた支援体制を構築する必要がある。
2 精神障害者の地域生活への移行を推進するため、地域生活支援センター等の生活就労支援システムの機能強化及び精神科救急システム等の医療体制の整備を図るとともに、在宅サービスの実施における地方公共団体間の格差を是正し、精神障害者本人の選択と自己決定により豊かな生活が可能となる社会を構築すべきである。
3 地域において障害のある人が経済的に自立した生活基盤を確立するためには、小規模作業所等福祉的就労への更なる支援と同時に、企業における雇用の確保や在宅就業の推進が必要であり、国及び地方公共団体は障害のある人の地域における雇用・就業確保等を重点施策として推進すべきである。また、農業等の分野における障害のある人の営農等の可能性についても検討すべきである。
三位一体改革の推進に当たっては、国の保障すべき行政水準に対する明確な方針を提示するとともに、地方公共団体間の財源格差の是正についても配意し、障害者に係る保健福祉政策の推進に遺漏なきよう努めるべきである。
会長 | 狩野 安 | (自由民主党) | 理事 | 有馬 朗人 | (自由民主党) |
理事 | 大野 つや子 | (自由民主党) | 理事 | 中原 爽 | (自由民主党) |
理事 | 神本 美恵子 | (民主党・新緑風会) | 理事 | 羽田 雄一郎 | (民主党・新緑風会) |
理事 | 山本 香苗 | (公明党) | 理事 | 林 紀子 | (日本共産党) |
有村 治子 | (自由民主党) | ||||
大仁田 厚 | (自由民主党) | ||||
小泉 顕雄 | (自由民主党) | ||||
後藤 博子 | (自由民主党) | ||||
清水 嘉与子 | (自由民主党) | ||||
段本 幸男 | (自由民主党) | ||||
南野 知惠子 | (自由民主党) | ||||
橋本 聖子 | (自由民主党) | ||||
岡崎 トミ子 | (民主党・新緑風会) | ||||
郡司 彰 | (民主党・新緑風会) | ||||
千葉 景子 | (民主党・新緑風会) | ||||
松岡 滿壽男 | (民主党・新緑風会) | ||||
森 ゆうこ | (民主党・新緑風会) | ||||
弘友 和夫 | (公明党) | ||||
吉川 春子 | (日本共産党) | ||||
福島 瑞穂 | (社会民主党・護憲連合) | ||||
高橋 紀世子 | (みどりの会議) |
平成十二年十一月の児童虐待の防止等に関する法律の施行に伴い、相談件数の急激な増大などに見られるように児童虐待に対する国民の関心が高まる一方で、虐待に伴う悲惨な事件は後を絶たず、児童相談所の体制も相談件数の増大に十分対応できないなど、児童虐待を取り巻く環境は極めて深刻な状況にあるといえる。
このような中で、本調査会は、二十一世紀の日本を担う子どもの人権が侵害され、生命の危機にもつながりかねない児童への虐待を防止し、その対応を図っていくことは、児童の権利に関する条約の趣旨に照らしても喫緊の課題であるとの認識の下、虐待の発生原因・予防、虐待の早期発見・早期対応、被虐待児の保護や虐待者への指導、さらにはケア対策などについて広範な論議を行い、その課題を明らかにするとともに、解決のために採り得る諸施策について鋭意検討を進めてきた。
このような取組を経て、本調査会として当面する課題について、次のとおり提言する。
1 虐待を防止するための予防的な教育の一環として、総合学習の中で育児体験活動を行うなど、学校教育における異年齢交流の場の確保に努めるとともに、子ども自らが自分自身の身を守るような教育の推進に努力していく必要がある。
2 育児における親の孤立化が虐待を招く例も多いことから、地域子育て支援センターの拡充や子育て支援ネットワークの充実等により、子育て中の親同士が交流・情報交換ができるような場の確保に努めるとともに、父親も子育てに対する責任を果たし、特に子育て世代の親がゆとりを持って育児にいそしめるよう、労働時間の短縮等の労働環境の整備を図っていく必要がある。
3 母子保健施策の視点を子どもの成育を中心とした育児指導から親の育児に対するケアを含んだものへと変えていくとともに、重要な役割を担う保健師に対する教育・研修等の実施による資質の向上を図り、併せてその人員の確保に努めるべきである。
4 虐待の予防には早期にハイリスク群の把握や対応を行うことが重要であり、そのためには妊産婦健診、周産期診療や乳幼児健診の場を通じて、個人のプライバシーに配慮しつつ望まない妊娠等ハイリスク妊産婦及び養育者を把握する体制の構築を図るべきである。
5 児童虐待対策予算の増額に引き続き努めるとともに、育児支援を始めとする虐待予防対策へのより一層の配分が必要である。
1 乳幼児健診の場は虐待の早期発見に有効であるが、特に健診を受けに来ない家庭への対応が重要であり、保健師等が積極的に訪問するなど当該家庭の育児状況の把握に努める必要がある。
2 学校教育、保育及び医療関係者など職務上、虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある者が、虐待発見時に適切に対応できるよう通告義務の周知徹底を図るとともに、各機関において対応要領を作成するなど早期発見・早期対応のための体制の整備に引き続き努めていく必要がある。
3 虐待を受けている子どもが相談しやすい環境をつくるための体制の整備を図り、相談先の周知など広報活動にも力を入れる必要がある。
4 虐待への早期対応を行うため、虐待の通告を受けた場合における児童相談所の速やかな安全確認について、通告から安全確認までの期間を明確にすることを検討すべきである。また、児童虐待に迅速かつ的確に対応するためには、福祉事務所が通告受理機関として機能するよう人員・予算を増加し、相談体制の充実・強化を図る必要がある。
5 児童虐待相談件数の増加等により、児童福祉司、児童相談所職員等の心身への負担が増加しており、その軽減を図るため、児童福祉司の配置基準の見直し等関係職員の増員について検討を行うべきである。また、関係職員の専門性向上のため各種研修を充実させるほか、保護者から職員への加害行為への対応についても検討すべきである。
6 児童虐待のおそれのある家庭への児童相談所職員の立入りについては、子どもの安全確認を優先できるよう児童相談所の立入権限の強化に向け、司法手続上の整備を含めて検討していく必要がある。
7 児童相談所を中心とした広域的なネットワークに加えて、市町村における虐待防止ネットワークの構築をより一層推進するとともに、早期発見・早期対応のノウ・ハウの共有等各ネットワーク間における連携強化を図る必要がある。
1 子どもの心の健全な発育には通常の集団生活、学校生活を送ることが極めて有効であり、そのためには保育所、幼稚園、小学校等において被虐待児への適切な対応ができるようその方策を検討する必要がある。
2 被虐待児のケアのため、ケア担当職員の質的・量的な確保に努め、情緒障害児短期治療施設等の治療機関の整備・充実を図るとともに、治療機関と養育機関の役割分担の在り方について検討していく必要がある。
3 子どもの安全を守るため、施設からの一時帰宅や入所措置解除に際しての客観的な基準と手続に関するガイドラインの策定を促進するとともに、再発防止に向けた地域の見守り体制を更に整備していく必要がある。
4 児童養護施設等の職員・予算の一層の充実を図るとともに、居住環境を整備していく必要がある。
5 被虐待児の養護については、家庭的養護の比率を高めていくべきであり、期間に弾力性を持たせた里親や心理ケアを行う里親等非養子型里親制度の拡充・多様化を更に進めていく必要がある。
6 虐待する親に対しては、治療的なアプローチが不可欠であり、親の養育能力を回復させるための治療・指導プログラムを早期に確立する必要がある。
性的虐待を受けた子どもについては、その心身のケアを特に充実させる必要がある。また、刑事司法手続については、子どもからの事情聴取が困難であることを配慮したものとなるよう検討するとともに、被害者の二次的被害防止に向けた関係職員の教育・研修の充実に努める必要がある。
児童虐待の防止等に関する法律の見直しに当たっては、子どもの人権尊重の理念の明文化を始め、児童虐待の発生予防、早期発見・早期対応、被虐待児への支援等が適切に図られるよう十分検討がなされる必要がある。
なお、子どもに対する性的虐待への適切な対応については、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の見直しに際しても十分な検討がなされる必要がある。
障害のある人がない人と同じように生活し、活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念が誕生して半世紀が経過した。
我が国においては、昭和五十六年の国際障害者年を一つの契機として「完全参加と平等」を目標に各種施策が推進されてきており、平成五年に改正された障害者基本法では、障害者の自立と社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動への参加を推進することが目的として規定された。また、同年から始まった「障害者対策に関する新長期計画」においては、物理的な障壁、制度的な障壁、文化・情報面の障壁、意識上の障壁の四つの障壁という考え方が打ち出され、ノーマライゼーションの理念の下、その除去に向けて各種施策が展開されるとともに、平成十五年を初年度とする新たな障害者基本計画も策定されたところである。
しかし、社会においてはいまだ障害のある人を保護の対象として考え、障害のある人が権利の主体として活動できる状況には至っていない。そのために障害者の差別を禁止する法律の制定を求める声も高まっている。さらに、今後の高齢社会の進展を踏まえ、障壁の除去にとどまらず、社会全体をユニバーサルデザイン化していくことも求められている。
このような中、本調査会は、障害のある人とない人が同じ社会の構成員として相互に尊重され、充実した生活を送ることができる共生社会の実現に向けて議論を行い、その課題を明らかにするとともに、解決への採り得る諸施策について鋭意検討を進めてきた。
このような取組を経て、本調査会として当面の課題について、次のとおり提言する。
1 障害の種類を問わず、障害のある人が安心して暮らすことのできる住まいの不足、道路やまちにおける各種障壁の存在、教育や雇用における機会が十分に確保されていないなど、障害のある人が社会において自立した生活を営むための環境がいまだ十分に整備されていない現状にある。障害のある人が地域で暮らすことができるよう、バリアフリー、ユニバーサルデザインを基調とするまちづくりを推進し、ユニバーサルデザインの考え方を社会全体に浸透させる必要がある。
2 既存の公共的建築物のバリアフリー対応の促進を図るため、改修方法等の技術的な助言等積極的な支援に努めるとともに、新たに建築する公共的建築物については、ハートビル法の施行状況を踏まえつつ、バリアフリー対応の一層の強化を検討すべきである。
3 高齢者・障害者にとって利便性・安全性の高い移動手段の確保は、活動や社会参加の前提条件となるものであり、都市部だけでなく鉄道やバスの使えない地域に居住している人を含めすべての人の移動を保障するため、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)等による外出支援サービスの充実を図る必要がある。また、移動の連続性を保障するため、一体的、連続的な空間の整備を一層推進すべきである。
4 知的活動を補助するIT(情報技術)の進歩は、障害のある人の自立・社会参加に大きな役割を果たす可能性がある。障害のある人にとって利用しやすい機器やソフトウエア等の開発・普及、及びこれらの機器等の活用を促進するための施策を一層推進するとともに、IT教育についても、内容の充実と対象者の拡大を図るべきである。
5 障害のある人等の選挙権の保障については、投票所等に行くことも自書することも不可能な人に投票の機会を保障するための制度を速やかに創設する必要がある。
1 ノーマライゼーションの理念の下、障害のある子どもとない子どもが幼少時から地域において共に活動することにより、障害の有無にかかわらず共に助け合いながら生きていくという共生の感覚を育てるとともに、障害のある子どもにとっては将来社会の中で生活していくための力を付けていくことにもつながる。学校施設等のバリアフリー化を始め、障害のある子どもとない子どもが交流・理解し合うための環境整備及び障害のある子どもの教育の保障に努めるべきである。
2 在宅医療技術が進歩してきている現在、重度のあるいは重複した障害のある児童生徒でも、可能な限り地域における学校教育が受けられるよう、適切な医療的配慮等が求められる。また、長期療養のため通学が困難な児童生徒に対する病院等の施設における学習機会の確保のため、当該施設等における学習の場の確保や、子どものニーズに応じた授業が提供できるよう、訪問教育の充実を図るべきである。
3 深刻な不況により就労の場を狭められている障害のある人の働く場を確保するため、障害者の法定雇用率遵守の徹底化を図るとともに、障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業を顕彰するなどにより企業の意識を変えていく必要がある。また、精神障害者に対する障害者雇用率制度の適用については、人権に配慮した対象者の把握・確認方法の確立等の課題を解決することにより、早期に実施されるよう努めるべきである。さらに、ITの進展を踏まえ、ITの活用による障害のある人の多様な就業機会の可能性を広げる方策について推進すべきである。
4 近年、安価な製品の輸入が増えているため、障害者の活動の場である授産施設や小規模作業所等で作られる製品との間に競合が生じ、仕事の受注の減少を余儀なくされている。障害のある人の地域生活を支える上で重要な役割を果たしている小規模作業所への補助を行うとともに、調達の拡大等により障害者の授産施設等の製品の販路拡大を図る必要がある。
1 障害のある人が、生涯を通じてあらゆる分野で機会の平等が確保され、障害のない人と同等の権利が保障されるよう、障害を理由とする不当な差別を禁止するための法制の整備に努める必要がある。その際、障害のある人の能力に差があることに留意するとともに、社会福祉制度を充実する必要がある。
2 措置制度から支援費制度への移行に伴い利用者本位のサービスの確保に努めるとともに、障害のある人を権利の主体と位置付け、差別解消のためには法律や制度の整備のみならず、合理的配慮が必要であることに留意しつつ、総合的な障害者施策の推進に努めるべきである。
近年、障害のある人等の生活環境の改善に資する、新たな福祉機器等が開発されている。このような製品の開発に当たっては障害のある人等のニーズを踏まえるとともに、その普及、流通を一層促進するため、政府調達の見直し等を図るべきである。
障害のある人のニーズや要望を的確に把握し、それらを踏まえて障害者施策を推進するためには、障害のある人を中心に、障害者施設や障害者団体の関係者など、障害のある人等の政策決定過程への参画が不可欠であり、その一層の推進を図る必要がある。
親等の保護者からの虐待により、心身の健全な育成が阻害されることはもとより子どもの生命までが危険にさらされる児童虐待については、平成十二年十一月の「児童虐待の防止等に関する法律」施行によって、その防止に向けた対応に一定の前進が見られるものの、悲惨な事件は後を絶たない。
児童虐待が発生する背景としては、家族の抱える経済的要因のみならず、近年の都市化に伴う核家族化、家庭の内外における人間関係の希薄化等の社会的要因も指摘されるところである。これらは現代の家族の在り方や地域社会の在り方とも密接に関係する問題であり、児童虐待の根本的解決のため、世代間の暴力の連鎖を断ち切るとともに、次世代を担う子どもを、社会全体としてどのように育成していくかという観点に立った幅広い検討が求められるところである。
同時に、児童への虐待が子どもの人権を侵害する行為であることに留意するとともに、児童の権利に関する条約の趣旨を踏まえ、児童が人権の享有主体として尊重され、その心身の健全な成長が図られるような社会環境の実現をも視野に入れつつ、虐待防止に向けた取組を進めていくことは、我々立法府並びに政府の責務でもある。
このような観点に立ち、本調査会は昨年一年間児童虐待の防止に関する調査を行い、その結果を中間報告として取りまとめ、虐待の発生原因・予防、虐待の早期発見・早期対応、被虐待児への支援体制の確立等について提言を行ったところであり、本年においても引き続き、児童虐待の防止に向けた更なる調査を行った。
立法府は、本問題の早期解決に向け、懲戒権を含む親権の在り方や児童の人権尊重の理念の明文化を始めとして、児童虐待の防止等に関する法律の見直しとともに、性的虐待に対する刑事法的介入の在り方を含め、関係法律の検討を早急に行うこととする。
また、政府においては、本調査会の提言の諸施策を含め、次に掲げる事項について予算上の措置を含め、万全の措置を講ずるべきである。
一 虐待の原因の一つとなる育児における親の孤立化を防ぐため、地域子育て支援センター・子育て支援ネットワークの周知及び拡充に努めるとともに、父親も子育てに対する参加と責任が果たせるよう労働時間の短縮を始め、父親の育児教室の推進等子育て支援策の充実に努めること。
二 虐待の予防には早期の把握や対応が重要なことから、妊産婦健診、周産期診療、乳幼児健診等の充実・強化に努めるとともに、これらの時期に母親等と接触する機会の多い保健師、助産師等の役割の重要性を踏まえ、教育・研修等の実施により保健師、助産師等の資質の向上を図ること。
また、虐待を防止する予防的な教育の一環として、学校教育において児童自らが自分自身の身を守るような教育の推進に努めるとともに、関係教職員の研修等を通じた資質向上により、学校における児童への適切な支援が行われるようにすること。
三 児童相談所に求められる役割の変化を踏まえ、その機能強化を図るとともに、児童虐待相談件数の急増に適切に対処するため、児童相談所職員の増員、児童福祉司の専門性の向上、児童養護に豊富な経験を持つ人材の児童相談所での活用等について検討を行うこと。また、一時保護所や児童養護施設等における居住性の向上、被虐待児への個別対応を図るため、これらの施設の充実、関係職員の資質の向上及び増員に努めること。
四 被虐待児の適切な保護等のため、裁判所の積極的関与が図られるよう、司法手続上の整備を含めて引き続き検討を行うこと。
五 国及び地方における虐待防止ネットワークの構築をより一層推進するとともに、住民に最も身近な市町村レベルのネットワークが地域の関係機関や住民との間で協力体制を取り、児童相談所と協同して虐待の予防、早期発見、さらには事後の虐待事例へのフォローにも対応できるようにすること。
六 児童福祉施設等における児童への虐待や二次的被害の防止のため、関係機関の職員の研修等を通じ、資質の向上を図るとともに、虐待を受けている児童が相談しやすい環境をつくるための体制の整備を図ること。
七 期間に弾力性を持たせた里親や専門的な心理ケアを行う里親制度の拡充・多様化を更に進めるとともに、里親の認定から委託後のフォローまでの各段階を通じて、里親への支援の充実に努めること。
八 虐待する親に対しては、治療的なアプローチが不可欠であり、親の養育能力を回復させるための治療・指導プログラムの開発・研究を進めるとともに、援助を受ける意欲のない親への動機付けの方途について、司法的関与の在り方を含め検討すること。また、分離された親子の再統合に向けてのプログラムの研究・開発についても検討を進めること。
右決議する。
(平成十五年二月十二日理事会合意)
一 名称
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しに関するプロジェクトチーム
二 目的
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しについて検討するため
三 位置付け
共生社会に関する調査会理事会の下に設置する
四 構成
各会派から推薦された委員一名で構成する
会長及び理事は、随時出席・発言することができる
(平成十五年二月二十六日現在)
座長 | 南野 知惠子 | (自由民主党・保守新党) | 会長 | 小野 清子 | (自由民主党・保守新党) |
副座長 | 小宮山 洋子 | (民主党・新緑風会) | 理事 | 有馬 朗人 | (自由民主党・保守新党) |
風間 昶 | (公明党) | 理事 | 清水 嘉与子 | (自由民主党・保守新党) | |
林 紀子 | (日本共産党) | 理事 | 橋本 聖子 | (自由民主党・保守新党) | |
福島 瑞穂 | (社会民主党・護憲連合) | 理事 | 羽田 雄一郎 | (民主党・新緑風会) | |
理事 | 山本 香苗 | (公明党) | |||
理事 | 吉川 春子 | (日本共産党) | |||
理事 | 高橋 紀世子 | (国会改革連絡会 (自由党・無所属の会)) |
(平成十六年三月二十五日現在)
座長 | 南野 知惠子 | (自由民主党) | 会長 | 狩野 安 | (自由民主党) |
副座長 | 神本 美恵子 | (民主党・新緑風会) | 理事 | 有馬 朗人 | (自由民主党) |
山本 香苗 | (公明党) | 理事 | 大野 つや子 | (自由民主党) | |
吉川 春子 | (日本共産党) | 理事 | 中原 爽 | (自由民主党) | |
福島 瑞穂 | (社会民主党・護憲連合) | 理事 | 神本 美恵子 | (民主党・新緑風会) | |
高橋 紀世子 | (みどりの会議) | 理事 | 羽田 雄一郎 | (民主党・新緑風会) | |
理事 | 山本 香苗 | (公明党) | |||
理事 | 林 紀子 | (日本共産党) |
平成十五年二月十二日 | 共生社会に関する調査会理事会の下にプロジェクトチーム設置 | |||||
一 | 二月二十六日 | 座長及び副座長の選任 今後の進め方について協議 |
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二 | 三月十一日 | 今後の進め方について協議 勉強会 長谷川 京子 氏(弁護士) 可児 康則 氏(弁護士) |
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三 | 三月三十一日 | 副座長の選任 今後の進め方について協議 |
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四 | 四月十六日 |
|
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五 | 五月七日 | 勉強会 内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、最高裁判所 | ||||
六 | 五月二十六日 | 勉強会 井口 博 氏(弁護士) 長谷川 京子 氏(弁護士) |
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七 | 六月二日 |
|
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八 | 六月二十五日 | 今後の進め方について協議 | ||||
九 | 七月四日 |
|
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七月九日 | 勉強会 内閣府、法務省、最高裁判所 | |||||
十一 | 七月十六日 | 勉強会 内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、最高裁判所 | ||||
十二 | 七月二十三日 | 勉強会 内閣府、警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省 | ||||
十三 | 七月三十日 | 勉強会 内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省 | ||||
十四 | 九月十六日 |
|
||||
十五 | 十一月二十七日 | 今後の進め方について協議 | ||||
十六 | 十二月二日 | 改正検討項目について討議 | ||||
十七 | 十二月十二日 | 改正検討項目について討議 | ||||
十八 | 十二月十七日 | 改正案骨子(案)について討議 | ||||
十九 | 平成十六年一月七日 | 改正案骨子(案)について討議 | ||||
二十 | 一月十九日 | 改正案骨子(案)について討議 | ||||
二十一 | 一月二十日 | 改正案骨子(案)について討議 | ||||
二十二 | 二月二十五日 | 改正案要綱(案)について討議 | ||||
二十三 | 二月二十七日 | 改正案要綱(案)について討議 | ||||
二十四 | 三月十二日 | 改正案要綱(案)及び改正案条文(案)について討議 |
(一年目)
第百五十二回国会 | |
平成十三年八月七日 | 共生社会に関する調査会設置 |
第百五十三回国会 | |
平成十三年十一月五日 | 調査テーマを「共生社会の構築に向けて」に決定 「共生社会の構築に向けて」のうち、共生社会について調査会委員間の自由討議 |
十一月十九日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、松下内閣府副大臣、岸田文部科学副大臣及び南野厚生労働副大臣から説明聴取、質疑 |
十一月二十一日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、横内法務副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明聴取、質疑 |
十二月三日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士磯谷文明氏、国立小児病院・小児医療研究センター小児生態研究部長谷村雅子氏及び大阪府中央子ども家庭センター所長萩原總一郎氏から意見聴取、質疑 |
第百五十四回国会 | |
平成十四年二月十三日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人駿河台大学法学部教授吉田恒雄氏、筑波大学心身障害学系教授宮本信也氏及びエンパワメント・センター主宰森田ゆり氏から意見聴取、質疑 |
二月十八日 ~二十日 |
共生社会に関する実情調査のため、香川県及び岡山県に委員派遣 |
二月二十七日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件について、松下内閣府副大臣、横内法務副大臣、狩野厚生労働副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明聴取、質疑 |
四月三日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人東京大学大学院教育学研究科教授汐見稔幸氏、徳永家族問題相談室室長・保健師徳永雅子氏及び日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士坪井節子氏から意見聴取、質疑 |
四月十日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、狩野厚生労働副大臣、岸田文部科学副大臣、横内法務副大臣、内閣府、警察庁及び最高裁判所に質疑 |
五月八日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、調査会委員間の自由討議 |
六月十二日 | 共生社会に関する調査報告書(中間報告)を議長に提出することを決定 |
(二年目)
第百五十三回国会閉会後 | |
平成十四年九月三日 ~九月十二日 |
共生社会の構築に関する実情調査のため、アメリカ及びカナダに海外派遣 |
第百五十五回国会 | |
平成十四年十一月十一日 | 海外派遣議員から報告聴取、調査会委員間の意見交換 |
十一月二十日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、米田内閣府副大臣、増田法務副大臣、鴨下厚生労働副大臣及び大野文部科学大臣政務官から説明聴取、質疑 |
十一月二十七日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、参考人日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科教授佐藤久夫氏、東洋英和女学院大学人間科学部人間福祉学科教授石渡和実氏及び全国自立生活センター協議会代表中西正司氏から意見聴取、質疑 |
十二月四日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、参考人桃山学院大学社会学部社会福祉学科教授北野誠一氏、明治学院大学社会学部社会福祉学科教授中野敏子氏及び社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長兒玉明氏から意見聴取、質疑 |
第百五十六回国会 |
|
平成十五年二月五日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件(バリアフリー社会の実現)について、加藤総務副大臣、木村厚生労働副大臣、西川経済産業副大臣及び吉村国土交通副大臣から説明聴取、質疑 |
二月十二日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件(バリアフリー社会の実現)について、参考人東京都立大学大学院都市科学研究科教授秋山哲男氏、株式会社ユーディット代表取締役社長関根千佳氏及び一級建築士事務所アクセスプロジェクト代表川内美彦氏から意見聴取、質疑 |
二月十八日 ~二十日 |
共生社会に関する実情調査のため、兵庫県及び京都府に委員派遣 |
二月二十六日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、鴨下厚生労働副大臣から説明聴取、参考人淑徳大学社会学部社会福祉学科教授柏女霊峰氏、朝日新聞論説委員川名紀美氏及び弁護士・日本子どもの虐待防止研究会理事平湯真人氏から意見聴取、質疑 |
四月二日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件(障害者の権利)について、参考人桃山学院大学法学部法律学科教授瀧澤仁唱氏、弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会障害のある人に対する差別を禁止する法律調査研究委員会事務局長野村茂樹氏及び障害者インターナショナル日本会議権利擁護センター所長金政玉氏から意見聴取、質疑 |
四月十六日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件について、鴨下厚生労働副大臣及び阿南内閣府大臣政務官から説明聴取、参考人お茶の水女子大学生活科学部人間生活学科教授戒能民江氏、全国婦人相談員連絡協議会会長原田恵理子氏及び女性の家HELPディレクター大津恵子氏から意見聴取、質疑 |
五月七日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、調査会委員間の自由討議 |
六月十六日 | 児童虐待の防止に関する決議 共生社会に関する調査報告書(中間報告)を議長に提出することを決定 |
(三年目)
第百五十九回国会 | |
平成十六年二月十八日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件(共生の感覚の育成)について、参考人奈良教育大学助教授玉村公二彦氏、佐倉市立根郷中学校教諭永長徹氏、NPOわかくさ大東地域リハビリテーション研究所所長・帝京平成大学健康メディカル学部教授山本和儀氏及び中部学院大学人間福祉学部助教授別府悦子氏から意見聴取、質疑 |
二月二十五日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件(地域生活支援)について、参考人花園大学社会福祉学部福祉心理学科専任講師三田優子氏、伊達市長菊谷秀吉氏及び社会福祉法人桑友理事長武田牧子氏から意見聴取、質疑 |
三月三日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、中島内閣府副大臣、原田文部科学副大臣、谷畑厚生労働副大臣及び佐藤国土交通副大臣から説明聴取、質疑 |
三月二十五日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の見直しに関する件について、野沢法務大臣、小野国家公安委員会委員長、坂口厚生労働大臣、内閣府及び総務省に質疑 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案の草案について、提案者南野知惠子君から説明聴取の後、調査会提出の法律案として提出することを決定 |
五月十二日 | 「共生社会の構築に向けて」のうち、障害者の自立と社会参加に関する件について、調査会委員間の自由討議 |
六月十六日 | 共生社会に関する調査報告書(最終報告)を議長に提出することを決定 |