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共生社会に関する調査会

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共生社会に関する調査報告(中間報告)(平成14年6月12日)

第一 調査会の調査の経過

 参議院共生社会に関する調査会は、共生社会に関し長期的かつ総合的な調査を行うため、第百五十二回国会の平成十三年八月七日に設置された。本調査会は、第一期の共生社会に関する調査会(第百四十三回国会、平成十年八月三十一日に設置)を引き継ぐ形で設置されたものであり、共生社会に関する調査会としては第二期目となる。

 本調査会における調査テーマについては、前期調査会の設置目的等を踏まえつつ、社会環境が大きく変化する中で、社会を構成している様々な人々が互いにその存在を認め合い共生していく社会の構築を目指していくために、より広い視野から問題を取り上げられるよう、第百五十三回国会において、「共生社会の構築に向けて」とすることとした。

 この調査テーマの下、本調査会が具体的な調査を行うに当たっては、調査範囲が広範にわたっており、共生社会についてのイメージも多様であることから、調査テーマの決定を調査会に報告した平成十三年十一月五日に、具体的な調査事項について委員間で自由討議を行った。そこでは、子どもの生命の危機にもつながりかねない児童虐待を調査会として取り上げるべきである、だれもが住みやすく自立できる生活環境及び生活習慣を構築するため障害者と健常者の共生を課題とすべきである、生涯にわたる女性の健康支援について多方面から調査を行うべきであるなどの意見が出された。また、本調査会が第一期に提出し、成立している「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下「配偶者暴力防止法」という。)のフォローアップを定期的に行っていく必要があるとの意見も出された。これらの意見を踏まえつつ、理事懇談会において協議を行った結果、とりわけ緊急の対応が求められている「児童虐待防止に関する件」を当面の調査事項として取り上げるとともに、平成十三年十月十三日から施行されている配偶者暴力防止法についてもフォローアップ調査を行っていくこととなった。

 まず、第百五十三回国会(臨時会)においては、平成十三年十一月十九日に松下内閣府副大臣、岸田文部科学副大臣及び南野厚生労働副大臣から、二十一日には横内法務副大臣、警察庁及び最高裁判所から、児童虐待についての政府等の取組状況についてそれぞれ説明を聴取し、質疑を行った。また、十二月三日には、日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士磯谷文明君、国立小児病院・小児医療研究センター小児生態研究部長谷村雅子君及び大阪府中央子ども家庭センター所長萩原總一郎君を参考人として招き、意見を聴取した後、質疑を行った。

 第百五十四回国会(常会)においては、児童虐待についての知見を更に深めるため、平成十四年二月十三日には駿河台大学法学部教授吉田恒雄君、筑波大学心身障害学系教授宮本信也君及びエンパワメント・センター主宰森田ゆり君を、四月三日には東京大学大学院教育学研究科教授汐見稔幸君、徳永家族問題相談室室長・保健師徳永雅子君及び日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士坪井節子君をそれぞれ参考人として招き、意見聴取した後、質疑を行った。

 平成十四年四月十日には、これら参考人からの意見聴取及び質疑を通じて得られた児童虐待防止に向けての諸課題についての政府等の取組状況や採るべき諸施策について、狩野厚生労働副大臣、岸田文部科学副大臣、横内法務副大臣、内閣府、警察庁及び最高裁判所に対し質疑を行った。

 このような児童虐待防止に関しての参考人からの意見聴取や政府等の取組状況についての説明を踏まえ、平成十四年五月八日、本件に対する調査会委員の認識の共有化を図るとともに、今後の取組の方向性を見いだすために委員間の自由討議を行った。この自由討議においては、児童虐待問題への取組として、予防、早期発見・早期対応のための体制整備、児童相談所を始めとする関係機関の充実・強化、また被虐待児及び虐待を行った親等に対する心のケアに関する施策充実の必要性、虐待防止に向けての法的整備を更に進める必要性等が指摘された。

 以上のような議論を踏まえ、理事懇談会で協議を行った結果、児童虐待についての当面する課題について意見を集約し、「児童虐待の発生予防対策の充実」を始めとする五項目の提言を取りまとめた。

 また、平成十四年二月二十七日、配偶者暴力防止法施行後の状況についてのフォローアップ調査を行い、松下内閣府副大臣、横内法務副大臣、狩野厚生労働副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明を聴取した後、質疑を行った。

 このほか、平成十四年二月十八日から二十日までの三日間、地方における共生社会に関する実情調査のため、香川県及び岡山県において委員派遣を行った。

第二 調査会の調査の概要

一 共生社会に関する自由討議

 平成十三年十一月五日、共生社会に関する委員間の自由討議において調査事項、運営等について述べられた意見の概要は次のとおりである。

(調査事項)

(1)児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)が平成十二年に成立したが、法施行後も児童虐待事件は多発しており、命までもが奪われているという事実がある。多省庁にまたがる問題についての調査が可能な本調査会において、地域社会、少子化、男女共同参画、教育など複合的要因を持つ児童虐待に焦点を当てるべきである。

(2)障害者だけではなく高齢者等だれもが住みやすく、いつまでも自立した生活が送れるような社会の在り方について、調査会で取り組むべきである。

(3)理事会等において児童虐待問題、障害者と健常者との共生、女性の健康が調査事項として挙げられており、一つに集約することは難しいが、少子高齢化社会の中での共生という観点から調査会の活動が進められるべきである。

(4)健常者と障害者との共生に関し、「障害者対策に関する新長期計画」と「障害者プラン(ノーマライゼーション七か年戦略)」の最終年度が平成十四年度となっていることから、これらの目標達成の進ちょく状況を把握し、十五年度を起点とする新たな障害者施策に関する新長期計画策定に向けて、提言等をまとめることを当面の調査事項として提案する。

(5)国会には女性問題を集中して論議する常任委員会が存在しないので、男女の共生という視点から引き続き調査をすることが重要である。

(6)男女共生社会構築の最大の障害となっている女性差別の解消について調査を行うべきである。女性差別がなくなることであらゆる差別も少なくなる。

(7)本調査会が提出した配偶者暴力防止法の成立は、参議院の独自性や存在価値を高めるという意味でも大きな成果であり、同法については三年後の見直しもあるので、定期的にフォローアップを行う必要がある。

(8)リプロダクティブ・ヘルス/ライツについては、国内での集中的な論議は前期の本調査会が初めてである。更に多方面にわたる調査が必要であり、立法府としてこの論議を深めていくべきである。

(9)リプロダクティブ・ヘルス/ライツは男女共同参画、男女共生にとって基本的な問題であるが、妊娠、出産等の問題を個々に取り上げていくと限りなく各論となり、ジェンダーフリーという言葉と拮抗してしまうので、これらを調査の中でどのように調整していくかが問題となる。

(10)内なる国際化ということが言われて久しいが、日本社会においては制度の壁、言葉の壁、心の壁が依然として残っており、外国人と共生できる社会をつくる取組を進めるべきである。

(11)女性、子ども、高齢者等を社会構造の中で歴史的、制度的に挑戦を強いられている人ととらえるなど、二項対立ではない新しいパラダイムについて議論が必要である。

(12)男女が共生する社会の構築のためには、皇位継承や皇族の身分離脱に際しての男女差異等を解消すべきであり、そのためにも皇室典範の規定について検討したい。

(運営その他)

(1)調査事項を一つに絞るのではなく、複数の事項についてプロジェクトチームを作り調査を行うという方法も考えられる。

(2)我が国では様々な課題について外国から入ってきた概念を日本流に解釈してきた経緯があるので、共生の概念についても改めて議論する必要がある。

(3)調査会の成果は法律という形で結実させることが望ましく、そのことが国民の負託にこたえる最大の方法論である。

二 児童虐待防止に関する件

1 政府等からの説明聴取及び主な質疑

 児童虐待防止に関する件について、平成十三年十一月十九日に松下内閣府副大臣、岸田文部科学副大臣及び南野厚生労働副大臣から、十一月二十一日に横内法務副大臣、警察庁及び最高裁判所からそれぞれ説明を聴取し、質疑を行った。また、平成十四年四月十日に狩野厚生労働副大臣、岸田文部科学副大臣、横内法務副大臣、内閣府、警察庁及び最高裁判所に対し質疑を行った。その概要は次のとおりである。

(平成十三年十一月十九日)
内閣府

 児童虐待問題の背景としては、近年、都市化、家族形態の変容等によって地域社会のつながりが弱まり、家庭の内外において人間関係が希薄になってきた結果、家庭や地域社会における子育て機能が低下していることが挙げられる。

 政府においては、青少年行政の基本方針等を盛り込んだ青少年育成推進要綱を策定し、児童虐待問題等への対応の推進を当面特に取り組む課題の一つとして位置付けている。

 この中では、予防対策及び早期発見等が重要であり、そのためには地域ぐるみの緊急な体制整備が必要であることを踏まえ、(1)国及び地方レベルでの関係機関等の連携強化、児童虐待市町村ネットワーク事業の推進、乳幼児健診時の育児不安相談の充実等各種児童虐待防止施策の一層の充実、(2)主任児童委員の増員による地域での積極的な活動の推進、(3)児童虐待事件の解明及び適正な対処等を盛り込んでいる。

 また、家庭への支援の充実においては、(1)親等を対象とする学習・相談機会等の充実、(2)子育て支援ネットワークづくりの推進、(3)家庭の育成機能に対する支援・補完を盛り込んでいる。

 さらに、内閣府においては、毎年十一月を全国青少年健全育成強調月間として定めており、集中的に各種広報啓発活動などの取組を行っているが、その実施に当たっては、児童虐待問題への対応の観点も含め、家庭への支援の充実にも重点を置くこととしている。

文部科学省

 児童虐待については、従前からの取組に加え、平成十二年十一月二十日の児童虐待防止法施行後は、学校教育関係者等に、(1)児童虐待の早期発見・早期対応に努めなければならないこと、(2)児童虐待を発見した者は速やかに福祉事務所又は児童相談所へ通告すること、(3)被害を受けた児童等の適切な保護が行われるようにすること、(4)児童相談所等の関係機関等との連携強化に努めることなどについて周知を図っている。

 主な児童虐待関係の施策については、家庭・地域社会における取組として、家庭教育の向上のための社会教育行政の体制整備等を図るため、社会教育法の改正を行った。このほか、(1)就学時健診や乳幼児健診の機会等を活用した子育て講座の実施に加え、妊娠期にある親を対象とした子育て講座の開設等子育て学習の全国展開、(2)子育てサポーターの市町村への配置等子育て支援ネットワークの充実、(3)家庭教育手帳・ノート等の作成・配布、(4)子どもや親のための二十四時間電話相談に関する調査研究、(5)人権教育総合推進事業、(6)人権感覚育成事業を行っている。

 学校における取組として、幼稚園が地域の幼児教育のセンターとして子育て支援の機能を発揮するための調査研究を実施する。また、小中高等学校等における社会奉仕体験活動等の体験活動を充実させることを内容とする学校教育法の改正を踏まえ、平成十四年度から「豊かな体験活動推進事業」の展開を図る。

厚生労働省

 平成十二年度の児童相談所における児童虐待相談件数は、統計を取り始めた二年度の十六倍に増加し、前年度と比較しても一・五倍の一万七千七百二十五件であった。これは、児童虐待防止法が成立、施行され、広報啓発などの対策に積極的に取り組んだことによるものと考える。主たる虐待者については、実母による虐待の割合が大きくなっており六一・一%であった。被虐待児の年齢構成については、就学前児童の占める割合が約五割となっている。このほか、児童福祉法第二十九条及び児童虐待防止法第九条に基づく立入調査件数が九十六件、児童福祉法第三十三条による一時保護件数が六千百六十八件、保護者の意に反して施設入所をするための家庭裁判所への申立件数は百二十七件等となっている。

 児童虐待への対応については、発生予防から早期発見、早期対応、保護・指導、アフターケアのそれぞれの段階において、児童相談所を始めとする保健、医療、福祉、教育、警察などの公的機関や民間団体などが数多く関係している。

 施策の流れとしては、(1)発生予防については母子保健分野が大きな役割を果たし、(2)早期発見については市町村の関係機関等のネットワークづくり、乳幼児健診のフォロー等があり、(3)早期対応については児童相談所が警察等の協力・援助を得ながら調査、診断などを行った上で保護・指導の方針を立案し、(4)保護・指導からアフターケアについては在宅指導のほか、親子分離による指導ケアを行う場合でも、最終的には家族が共に暮らせる状態とすることを目指す。

 平成十四年度予算の概算要求においては、各段階の施策として、(1)つどいの広場事業の創設等、(2)家庭訪問支援事業の創設、児童家庭支援センターの拡充等、(3)児童福祉司の増員、児童相談所の精神科医の常勤配置等、(4)専門里親制度の創設、児童養護施設への被虐待児個別対応職員の配置拡充等の費用として、総額約三十四億円を要求している。

 このような政府からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)現在の若い親たちの間では虐待としつけの違いが必ずしも明確ではない。自信を持ってしつけ・子育てを行うことができない、あるいは積極的にしつけをしようと思っている親に対して、不安や混乱を与えるという状況も想定されるので、両者の定義が明確にされる必要がある。

(2)虐待が生じる要因を明確に分析することが、今後の対策を立てる上で不可欠の要素になる。

(3)緊急避難的措置として親子分離を行う必要性は理解できるが、荒廃した親の心を回復する施策を同時並行して行うことが重要である。特に、母性の欠如が児童の虐待を招いているので、我が子を無償の愛で慈しむ母性の回復についての施策を考えるべきである。

(4)児童虐待は、周囲が注意深く見ていないと虐待に気付かないことが多い。したがって、教職員や養護教諭の役割、さらには子どもの心を開かせ、いやすようなカウンセラーの派遣なども重要である。

(5)児童相談所が関与した虐待児童死亡例について、通報後の初期対応が不適切であった、複数の機関が関係しており責任の所在が明らかでなかった、適切な援助計画が立てられなかったという厚生労働省のコメントは、第三者的、評論家的な印象を受ける。

(6)児童相談所における児童虐待相談件数の伸びに比較して、児童相談所の児童福祉司や心理担当職員等専門職の人員の伸びが少ないので、その養成に努めるべきである。

(7)児童虐待への対応の遅れの原因の一つには、児童相談所相談員のバーンアウトという問題があり、この状況を改善するためには国レベルの施策が必要である。

(8)児童相談所は子どもを虐待した親の七六・五%に面接指導を行っているが、親自身に子どもを虐待したという認識がなければ指導の効果は望めない。

(9)被虐待児の健全育成のために、専門里親制度の創設等、里親制度の拡充が求められる。

(10)民法第八百二十二条の懲戒権の規定によれば、親は子に対して暴行や傷害を加えてもよほどのことがない限り刑法上の処罰を受けないと解することができるが、この懲戒権が児童虐待を深刻なものにしていると推測される。

(11)日本では子どもが一個の独立した人格というよりは親の附属物で、親がある程度自由にできるというような考え方があり、親といえども子どもの人権を尊重して教育に当たらねばならないという思想は確立していない。

(12)あらゆる差別を認めないこと、すなわち個人の尊厳と基本的人権の尊重の精神は、人類普遍の原則であり共生社会の精神そのものである。家庭における暴力の問題を含め多くの社会問題が、この憲法の精神に反した社会制度に端を発したものである。

(平成十三年十一月二十一日)
警察庁

 警察庁は、児童虐待問題を少年保護対策の最重要課題の一つと位置付けて取り組んでいる。

 児童虐待事件の状況については、平成十三年上半期における児童虐待事件の検挙者数は百八人で、虐待による死亡児童者数は前年同時期と比較して十一人増加の三十一人である。加害者と被害児童の関係は実母が約四〇%と最も多く、実母の内縁関係者が二〇%、養・継父が一九%、実父が一三%と続いている。被害児童の年齢は六歳までが約六五%となっている。また、十二年の児童虐待に関する相談件数は千三百四十二件で、統計を取り始めた六年の約十一倍となっている。

児童虐待対策についてはこれまでも取組を強化してきたが、法施行後は、(1)虐待及びその疑いのある事案の早期発見・早期通告の徹底、(2)児童相談所職員等による児童の安全確保、立入調査、一時保護に際しての児童虐待防止法第十条に基づく援助要請への対応、(3)被害児童へのカウンセリング、保護者に対する助言・指導等、(4)被害児童の保護体制の充実及び同法第四条第一項に基づく民間団体等を含む関係機関との連携強化、(5)警察職員に対する指導・教育の徹底等を留意して努力している。今後とも同法の目的・趣旨を踏まえ、児童虐待問題への適切な対応に努めたい。

法務省

 法務省の人権擁護機関における児童虐待に関する人権侵犯事件の受理件数は、平成十二年は六百三十四件で年々増加しており、刑事事件として扱われる児童虐待事件も多発している。

 法務省の児童虐待問題に対する取組は、まず、児童虐待の事案が刑法上の刑罰法規に当たる場合は、事案に応じた適切な処理及び量刑の実現に努めている。

 人権擁護機関においては、人権擁護委員の中から「子どもの人権専門委員」を六百名選任し、これらの委員を中心に「子どもの人権一一〇番」などの電話相談窓口の設置、「子どもの人権相談所」の設置などにより、早期発見に努めている。また、具体的な児童虐待事案を認知した場合には児童相談所等の関係機関と連携協力してその解決に努めている。さらに、ポスターや映画による人権啓発活動も行っている。なお、平成十三年五月の人権擁護推進審議会の答申に基づき、新たな人権救済制度を確立するための法案の提出を準備している。

 児童虐待に関する調査研究については、平成十二年度に実施した少年院在院者を対象とした被虐待経験の有無等についての調査において、在院者の半数以上が虐待を受けているとの結果を得ており、今後、一般の人々を対象とした調査を予定し、被虐待経験と非行との関係など虐待が被害者に及ぼす影響について分析していく。

最高裁判所

 家庭裁判所における児童虐待への取組については、事件処理と取組態勢の整備という二本の柱がある。

 事件処理については、まず、離婚、親権者の変更、面接交渉などの家事調停事件において虐待が明らかになる場合は、家裁調査官による調査を実施し、実情に即した解決を図るとともに、児童相談所との連携が必要な場合は所要の措置を採ることとしている。

 次に、児童福祉法二十八条事件については、家裁調査官の調査の上、裁判官が関係者から事情を聴取し、これらを総合して施設入所の承認の是非を決定している。新受件数は、平成元年には十四件であったものが十二年には百四十二件となっており、児童虐待防止法施行後、十三年十月末までの速報値で百五十九件となっている。審理の結果は、十二年の既済件数が百四十二件で、内訳は認容百一件、却下六件、取下げ三十五件である。

 さらに、親権喪失宣告事件については、審判官の審問や家裁調査官の調査を経て親権喪失の適否を決定している。審理の結果は、平成十二年は既済件数百九件中認容十三件、却下十一件、取下げ八十二件、その他三件である。

 取組態勢の整備については、(1)手続進行の基本方針についての申合せを行うなどの迅速かつ適切な処理態勢の整備、(2)裁判官や家裁調査官に対する研修、(3)関係機関との連絡協議会の開催及び虐待防止ネットワークへの家裁調査官などの派遣等の取組を行っている。

 このような政府等からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)児童虐待に対応するため、警察は中央省庁レベルだけでなく、現場においても、児童相談所、医療機関、教育機関等の関係機関とのネットワークによる連携が必要であり、特に夜間・休日の対応については緊密な連絡系統の構築が重要である。

(2)児童虐待問題において警察の果たす役割は重要であり、民事不介入という姿勢を払拭し、国民の生命・身体・財産を守る立場から、積極的な役割を果たすべきである。

(3)被虐待体験と非行には著しい関連性があるという法務省の調査研究結果を受け止め、警察は問題行動の防止という観点に立って、児童虐待への取組を強化する必要がある。

(4)警察の生活安全部局は、児童相談所等と連携して児童虐待に取り組んできたが、事件処理を行う刑事部局は情報を児童相談所にフィードバックしない等の問題があるので、生活安全部局と刑事部局は連携を密にする必要がある。

(5)児童虐待防止法第四条の「近隣社会の連帯」のためには人権擁護委員の活用が不可欠であるが、現状では名誉職化しており十分に機能していない面があるので、人権擁護委員制度を基本的に見直すことが必要である。

(6)人権擁護委員制度の改革に関するパブリックコメントを踏まえ、人権擁護委員の年齢層の多様化、女性委員の増加について、法務省は積極的に対応する必要がある。また、子どもの人権専門委員は、教育・人権問題に関心を持ち、子どもからの発信を受け取れることが重要である。

(7)法務省で設置している「子どもの人権一一〇番」において、電話、ファクシミリに加えて電子メールによる相談も可能とすべきである。また、子どもが利用しやすくするため、リーフレットや電話のカードを広く配布するとともに、約六百名の相談担当者の専門能力の向上が求められる。

(8)児童虐待防止法を検討した衆議院での審議において、民法第八百二十二条の親の懲戒権は、児童虐待を助長するものであるから廃止すべきであるという意見が出されており、法務省の懲戒権の行使と児童虐待は区別すべきものであるという見解は納得し難い。

(9)児童福祉法二十八条事件について、家庭裁判所に申し立ててから児童相談所が措置できるまでに平均二か月を要しているが、緊急性の高い場合はより迅速に決定できるよう体制を整備する必要がある。

(10)児童虐待事件における殺人件数の増加は問題であり、虐待の進行を未然に防ぐためのカウンセリング、指導等を行っていかなければならない。

(11)児童虐待は、子どもが安全かつ自由に自信を持って生きる権利の侵害であり、すべての政策を児童の権利条約に照らし合わせて見る必要がある。

(12)児童虐待防止市町村ネットワークは、現在全国で約五百あるが、日頃から子どもに接している学校、保育所、小児科医などの教育・医療関係施設を取り込む必要がある。特に無認可保育所やNPOが加入することが重要であり、警察や法務省はそのような団体とも連携を深めていく必要がある。

(13)虐待された子どもに関しては、自己評価が低い、自尊心が低い等の問題があり、従来のカウンセリングでは役に立たない。新しいカウンセリングであるRC(リエバリュエーションカウンセリング)を実施すべきである。

(平成十四年四月十日)

 政府等に対する質疑の概要は、次のとおりである。

(1)虐待予防のためには、母子保健施策の視点を子供の成育を中心とした育児指導から母親の育児に対するケアを含んだものへと変えていく必要がある。そのためにも、乳幼児健診の場への保育士や心理士の派遣を拡充していくことが求められる。

(2)子どもの出生前に虐待のハイリスク群を把握し対応する超早期予防が重要であり、母子保健の具体的取組の中で対策を講じていくべきである。

(3)虐待した親の養育能力を回復させるための治療的プログラムの開発・研究、専門機関の創設は急務の課題である。

(4)保健師は虐待のハイリスク家庭と早期に信頼関係を築いていくことなどが要請されるが、現在の配置状況では限界があり、増員が不可欠である。

(5)乳幼児健診の受診率は約九〇%だが、健診に来ない親子への対応が虐待防止の観点から重要である。そのためには、保健師の家庭訪問や地域の関係者の連携により早期対応に努めるとともに、子育て支援ネットワークの整備・育成も進めていくことが求められる。

(6)人口五十万人に一か所程度という基準で設置されている児童相談所は、実際は自治体によって管轄する地域の人口に格差があり、身近に児童相談所がない場合もあるので、地域の実情を勘案して整備、増設していくことが求められる。

(7)平成十二年度までの十年間で、児童虐待の相談件数は十六倍に増えたが、児童福祉司の人数は一・四倍に増えただけである。実態に合わなくなっている児童福祉法施行令の児童福祉司の配置基準を改正し、児童福祉司を増員していく必要がある。

(8)児童養護施設については、児童一人当たりの居室面積の改善や居室の個室化によって、居住性を高める努力をすべきである。

(9)子育て協力者がいない母親は、いる母親に比べ児童虐待の比率が高いとの調査結果がある。一人だけで育児をすることは精神的な負担感が大きいので、父親も育児にかかわることが必要であり、そのためには子育て期の男性の長時間労働を是正することも求められる。

(10)被虐待児の保護のため親子を分離した場合の面接の制限や許可の場面などで、家庭裁判所が関与し判断する機会を増やすことにより、児童相談所の職員の負担を軽減できると考えられる。

(11)民法上の親権に含まれる職業許可権、居所指定権、懲戒権は、子どもの人権を侵している可能性がある。また、責任を負う側の親にとっても重荷になり、ストレスを生じさせてしまうことになる。親権と子どもの権利の関係については子どもの権利を重視すべきである。

(12)多くの母親は出産までに赤ちゃんを抱いた経験がない。子どもをどう扱ってよいのかわからないことが虐待につながることも指摘されており、学校教育において育児体験教育を行っていくことが重要である。

(13)男女共同参画に関する世論調査では、男性が子育て等に参画するために必要なこととして、夫婦間の家事分担についての話合いを挙げた者が多かったが、男女が対等に話し合える家族は少ない。男女が対等な関係に立つためには、幼児期からのジェンダーフリー教育が必要である。

(14)裁判官や家裁調査官は、研修、実証的研究、関係機関との協議会等を通じて、児童虐待問題に対する理解を更に深めるよう努めるべきである。

(15)児童の権利条約の精神をいかした条例が一部の市町村で制定されているが、子どもの権利についての基本法を国レベルで法制化することが重要である。

(16)虐待する母親がドメスティック・バイオレンス(以下「DV」という。)被害者であるケースがある。暴力の連鎖を断ち切るためにも、児童虐待とDVとの関連を調査研究することが重要である。

2 参考人からの意見聴取及び主な意見交換

 児童虐待防止に関する件について、平成十三年十二月三日、十四年二月十三日及び四月三日にそれぞれ参考人から意見を聴取し、意見交換を行った。その概要は次のとおりである。

(平成十三年十二月三日)
日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士  磯谷 文明 氏

 児童虐待防止法の制定は評価できるが、法律実務家としての経験を踏まえて、改正を希望する点がある。

 児童相談所を中心とした対応については、第一に、十八歳以上二十歳未満の子どもを保護するため、現在十八歳未満とされている児童福祉法や児童虐待防止法の対象児童の年齢を、二十歳未満にまで引き上げることが必要である。第二に、虐待の通告を促進するため、誤って通告をした場合には法的責任を免除する規定を置くことが求められる。第三に、通告を受けた児童相談所の安全確認努力義務の実効性確保のため、時間制限を設けることが必要である。第四に、児童相談所が十分な情報収集を行えるようにするため、児童相談所の調査権限と関係機関の協力義務を明文化することが必要である。第五に、児童の安全確認等のため立入りが必要な場合は、児童相談所は裁判所の許可を得て立ち入ることができるものとする必要がある。第六に、児童の福祉に反するとき児童相談所長又は児童福祉施設の長は、児童と保護者との面会通信を制限できるものとする必要がある。

 親権制度については、(1)子の親族、検察官、児童相談所長に限定されている親権喪失宣告の申立権者に、子及び弁護士会長を加えること、(2)親権の機動的な一時停止や一部停止の制度を導入すること、(3)民法の懲戒権の規定を廃止することが求められる。

 このほか、児童相談所・児童福祉施設のスタッフ不足や施設の貧弱さを改善する必要がある。

国立小児病院・小児医療研究センター小児生態研究部長  谷村 雅子 氏

 児童虐待は、昔から世界各国でみられ、人間社会の普遍的な課題である。

 我が国の児童虐待の実態は、平成十二・十三年度厚生科学研究「児童虐待および対策の実態把握に関する研究」の中間報告によると、社会的介入を要する児童虐待は年間約三万例あると推計された。事例のほとんどが治療やケアを要する状態であり、八割に発達の遅れや行動問題等があった。虐待の背景には地域差があり、各地域の実情に応じた対応システムの構築が必要であることが示された。

 小児科で発見される事例は比較的重症例であり、全国小児科調査によると、調査対象児の六割は医学的問題や親から見た育てにくさを持つ。十五年間の動向を見ると、若年の親、望まない妊娠、育児能力欠如など親自身が問題を抱える例が増加してきた。

 現代の日本の児童虐待は、少子、核家族、地域の人間関係の希薄さを背景に、育児の伝承の途絶、孤立化から、育児不安・育児負担が高じて虐待に至る例が多い。リスク因子を重ね持つ家庭に対する予防的援助が効果的であり、虐待の進行段階に応じた対応が求められる。

 児童虐待の対策としては、児童虐待防止法の周知、虐待の各段階における関係機関の役割の明確化と機能強化が必要である。被虐待児の治療と健全育成のための養育環境の充実が急務である。

 児童虐待防止法では虐待の発生を減らすことは余り期待できないので、発生予防のための体制を構築する必要がある。ハイリスク家庭の周産期からの把握と地域の育児支援体制の構築、養育者や養育環境の変化時の支援体制、行政サービスの対象外の子どもの健全育成の見守り方の検討が必要である。

大阪府中央子ども家庭センター所長  萩原 總一郎 氏

 児童相談所における虐待対応では、保護者と対立してでも子どもの安全を確保しなければならない一方、将来子どもを家庭に復帰させるために保護者との対立をできるだけ避けて家庭調整を円滑に行う必要があり、両方の取組を進めることのジレンマがある。このため大阪府では、各児童相談所に立入調査等を中心に行う虐待対応課を新設して家庭調整部署との機能分担を図った。

 児童虐待防止法施行後の現状と課題を概観すると、第一に、広報啓発活動を行っているにもかかわらず児童虐待についての理解がまだ行き渡っていない。第二に、児童相談所とともに通告受理機関となった市町村福祉事務所の相談体制の整備を図る必要がある。第三に、介入型ケースワークでは、援助技法を確立していくことが大きな課題となる。第四に、子どもの心のケアと保護者の指導について、職員の専門性の向上、治療プログラムの開発が急務である。第五に、児童養護施設等について、ハード、ソフト両面において整備充実する必要がある。

 関係機関との連携強化については、地域の虐待防止ネットワーク作りが重要であり、また保護及び家庭復帰のリスクアセスメント指標の共有化を進めていく必要がある。

 発生予防の視点からは、地域における子育て支援や母子保健施策の充実が重要である。例えば、地域の子育て支援センターの機能を有効活用して、育児不安を軽減し、地域からの孤立化を防止することや、市町村保健センターで乳幼児健診時にきめ細かく対応することなどが考えられる。また、広報や地域フォーラムなどによる啓発活動を継続的に実施していくことも重要な取組となる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)十八歳以上二十歳未満の子供に対する虐待も存在しているが、現在は保護する手だてがない。児童福祉法や児童虐待防止法の対象年齢を二十歳未満とするか、成年に達する年齢を十八歳とすることにより、親権に服する時期と虐待から保護する時期を合わせることが考えられる。

(2)子どもは親権に服するという現行の民法に基づく親権制度を、子どもの人権を中心とした親子関係法に再構築することが重要である。

(3)虐待を受けた子どもが気軽に相談できる仕組みを、身近な所につくっていくことが必要である。

(4)虐待を受けた子どもの心の傷は深く、長期的にケアしていく必要があるので、心理療法等の専門家の養成が求められる。

(5)親自身が子どもの頃に虐待を受けた体験が、子育て期に再現する場合がある。親が子育ての悩みを相談できるような場を提供するなどの支援の普及が望まれる。

(6)虐待する親に対しては、刑罰を与えるだけでは解決につながらない。児童虐待は家族病理だという見方もあり、治療的なアプローチを組み込んでいくことが求められる。

(7)親が自信を持つことができれば、虐待という否定的な方向に感情が進まず、健全な育成が行われていく。例えば思春期の頃から、乳児や育児中の親子等とのふれあいを経験するという試みは、親になる心の準備として有効である。

(8)虐待を受けて施設入所した子どもを家庭に戻すことは非常に困難になっている。親の生活環境の改善、子どものトラウマの回復などが必須条件となり、親子が生活する地域で見守り体制があることが重要になる。

(9)医療機関などが周産期におけるハイリスク家庭を把握することは可能だが、家庭のプライバシーに配慮しつつ相談機関といかに連携していくか検討する必要がある。

(10)児童虐待による死亡事例等については、国が中立的な調査機関を設置して十分な調査を行い、詳しく検証することが求められる。

(11)虐待の通告を促進するため、全国共通ダイヤルの児童虐待ホットラインを創設することを検討する必要がある。また、NPOなどが実施するホットラインを有機的にネットワーク化していく方向も考えられる。

(12)虐待に気付いた医師等の専門家が通告しなかった場合には、子どもの人権を侵害したという観点から罰則を科すことを検討すべきである。その際には、専門家が虐待を見逃さないような研修受講の義務付けも必要である。

(13)時間外や休日に虐待の通告を受けた児童相談所が速やかに児童の安全確認を行うための体制は不十分であり、職員の増員などにより十分対応できるようなシステムを構築する必要がある。

(14)児童虐待の要因の一つに望まない出産がある。望まない妊娠を防ぐためにも、思春期からの性教育が必要である。

(平成十四年二月十三日)
駿河台大学法学部教授  吉田 恒雄 氏

 児童虐待防止法制定は、今まで行政通知等に基づき行ってきた対応が法的根拠を得て明確になったこと、関係機関の連携が法文化され確実な連携が迅速に行われるようになったこと、児童虐待の禁止が規定され虐待に対する関心が大変高くなったことで意義があった。ただし、実効性の点で疑義が残り、また民法を始めとする他の法律との整合性が十分に図られておらず、法施行三年後の見直しに対する期待が大きい。

 法施行後は、通告件数が増加し、児童福祉司等がバーンアウトするなど児童相談所の機能が限界に近づくという状況の変化がある。現在児童相談所に権限が集中しているが、今後の制度を考える上では市町村の役割を重視する必要がある。児童相談所における対応について、保護者からの加害行為及び不服申立て等の法的主張が増えてきており、保護者の権利主張への対応を考える必要がある。そのほか、児童福祉施設は収容の限界に近づいている、社会全体が児童虐待について過敏になっているなど状況の変化が見られる。

 児童虐待防止法制度の在り方を考えるには、(1)児童の権利条約の趣旨をいかすこと、(2)児童虐待施策の児童福祉施策の一環としての位置付け、(3)総合的な虐待対策の必要性、(4)虐待の内容・程度に応じた制度及び対応の必要性、(5)急増する児童虐待事件対応のための体制整備という短期的課題及び児童虐待の撲滅という中長期的課題の双方を視野に入れた施策の構築、(6)短期的課題では強制的介入における司法的関与の在り方、中長期的課題では親権・未成年後見法制の見直しを含めた法制度の構築の六項目を念頭に置く必要がある。

 現行法改正の前提として人的・物的資源の質的・量的充実が必要である。児童虐待防止法の具体的課題には、通告対象事案の拡大、誤通告の免責、児童福祉司指導の実効化、民間機関との連携がある。

筑波大学心身障害学系教授  宮本 信也 氏

 虐待が子どもに与える影響は、身体面では大きな問題として死亡、障害があり、心理面では問題行動、精神障害、反社会的行動となって現れる。このほか、虐待を受けた子どもは心の不安定さなど必ず何らかの問題を持つ。

 虐待への対応は、虐待状況への対応と予防の二つに分けられる。虐待状況への対応は初期対応と長期対応に分けることができ、初期対応は子どもの心身の安全の確保、長期対応は子どもの心のケア、子どもの健全な成長・発達の保証、親のケア、家庭への復帰、子ども自身の自立の各段階がある。我が国の緊急検討課題は、子どもの心のケアと親への対応、さらに、予防である。

 子どもの心のケアに関する問題は、第一に、養育の場に治療機関の役割が求められてしまうという対応機関の役割の混乱、第二に、治療機関の絶対的不足、第三に、虐待という幅広い問題へ対応する方法論の未確立という三点にまとめられる。第一の問題には、治療機関と養育機関の役割を明確にした上で有機的連携体制を作ることが、第二の問題には、教育領域の積極的活用、カウンセラーや養護施設職員等への研修体制の強化などを通じて既存の人的資源を活用することが、第三の問題には、対応方法の適応と限界を明確にした手引を作成することがそれぞれ必要である。また、心のケアをいつから始めるかについては、知能面からみれば就学前までの介入が重要である。

 虐待の予防に関しては、妊婦健診、周産期診療、乳幼児健診の場が虐待のハイリスク群の発見、対応に適しており、母子保健活動の一環となる。虐待の対応は日常の子育て支援の一つであると認識し、虐待予防を考慮した母子保健の方法論の開発が必要である。

エンパワメント・センター主宰  森田 ゆり 氏

 当センターでは平成十三年から、虐待をしている若しくは虐待をしそうな親のグループ治療プログラムの開発・実施を行っており、十五年から、治療プログラムの実施者の養成を始める予定である。親へのケアへの取組は現在児童相談所に求められているが、福祉事務所の家庭児童相談室、保健所、保健センターなどが行うべきであり、児童相談所は虐待された子どもの立場を維持すべきである。このほか、人権感覚を育てることを基本に様々な暴力から身を守る方法を教える参加型プログラムCAP(Child Assault Prevention)を学校の授業時間に行っており、過去六年間に三十五万人の子ども、四十万人の教師及び親が当プログラムを受講している。

 児童虐待防止法施行に伴い通告件数が増加し、これまで以上に児童相談所の役割が重要になってきていることにより、児童福祉司やケースワーカーへ過度な負担が掛かっている。親子分離が必要な状況にもかかわらず親の同意が得られない場合の対応は、制度が整備されておらず困難を極めており、児童福祉司やケースワーカーがバーンアウトする大きな理由の一つとなっている。そのためにも、裁判所が関与する制度が必要である。

 児童虐待防止法の改正に当たっては数点にわたって見直しの必要性を感じているが、何よりもまず、子どもの人権を擁護するという文言を法律に明記することによって、子どもの人権を守るというビジョンが明確になると現場での対応が変わってくる。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)児童虐待防止法の改正に際しては、子どもを中心に据えた視点を持ち、親子分離、親へのケア、家族の再統合等節目ごとの基準設定及び状況判断に裁判所を関与させる制度をつくる必要がある。

(2)子どもの人権保障の観点から、児童虐待の加害者を保護者に限定せず対象を広げる必要がある。

(3)児童の権利条約を具体化する国内法が存在しないが、親権と子どもの権利を調整するため、児童虐待に限って親権を制限する法制度を整えることは現実的である。

(4)児童福祉法施行令第七条に規定される児童福祉司の配置基準が現状に合わず、改正する必要がある。

(5)被虐待児の治療は診療報酬上点数が定められていないことから、医師はボランティアで診療しているのが現状であり、公的負担の方策を検討する必要がある。

(6)家庭の経済的困難、親類や近隣からの孤立化が虐待を生んでいるという東京都の児童虐待白書の分析があり、児童虐待予防のため、社会保障制度の充実や育児への社会的支援体制が求められる。

(7)現在の制度下で虐待対応を効果的に行うには、予防に重点を置き、周産期から対応を始めることが重要である。

(8)児童虐待防止法制定後も増え続ける児童虐待に有効な対応策が見いだせない現状において、国としては母子保健施策に重点を置くことが必要である。

(9)児童虐待とDVが密接な関係を持つことから、児童虐待防止法改正の際にDV環境下で育った子どものPTSD(外傷後ストレス障害)を考慮する必要がある。

(10)児童虐待としつけとの相違を明確に把握できない親へは、医療面からの対応が必要である。

(11)子どもの健全な成長・発達を保証するため、保育所、幼稚園及び小学校の体制を児童虐待への対応という視点を取り入れて整備する必要がある。

(12)親のケアプログラムについてはその方法論が確立されておらず、かつ実効性が明らかでないため、調査研究が早急に求められる。

(13)児童虐待における対応においては、子どもが権利や義務にとらわれず無条件に安心できる環境をつくるという視点が重要である。

(平成十四年四月三日)
東京大学大学院教育学研究科教授  汐見 稔幸 氏

 我が国の児童虐待の防止対策は、既に起きてしまったケース、あるいはそのおそれが極めて高いケースへの対応が中心であったが、虐待が起きる前の段階からしっかりとした防波堤をつくるという考え方が求められる。虐待防止には、予防的教育、育児支援における虐待防止策及び虐待が起きた場合の支援の三つに分け、それぞれに対応する方法が必要である。

 予防的教育においては、虐待の要因を三つのレベルに分け、個人的要因に対しては学校での育児体験教育、家庭・夫婦要因に対しては結婚前のカップルへの教育(プレマリッジクラス)、社会的要因に対しては企業等による構成員への家庭人教育を実施する。

 育児支援における虐待防止策においては、(1)子育て支援センターを拡充し、親のたまり場・相談の場とするとともに、保健所の母子保健行政を拡充する、(2)専門的知識を持つ育児支援士(仮称)を養成する、(3)自分から悩みを訴えにくい人へのアウトリーチ的支援を行う、(4)子ども家庭支援センターを拡充する、(5)企業における育児支援の社会的機運を形成する、の五点を提案したい。

 虐待が起きた場合の支援においては、虐待した親・保護者へのフォローのほか、虐待を受けた子どもを家庭内で養護する非養子型里親制度が必要である。

 虐待は個別のケースへの対応だけでなく、虐待が起こり得る過程における防止のための教育プログラムの充実が基本である。

徳永家族問題相談室室長・保健師  徳永 雅子 氏

 日本の母子保健は世界に例のない優れたシステムを持っている。また、乳幼児保健システムも整備されている。しかしながら、これまでの母子保健システムでは、子どもの発育・発達の促進に重点が置かれ、子どもを育てる親の支援については目が向けられてこなかった。したがって、虐待を有効に早期発見できる体制の整備が急務である。

 子どもの虐待予防のための早期発見と対応に関しては、(1)望まない妊娠・ハイリスク妊産婦を早期に把握するための各自治体担当者の連携体制を構築する、(2)産後うつ病を早期発見するため、保健師、助産師、看護師等関係者が正しい知識を持ち適切な対応策を採るとともに、保健師の家庭訪問や面接等のフォローを行う、(3)生後一か月前後の育児不安に対応するため、新生児訪問指導の位置付けを強化する、(4)乳幼児健診において虐待予備軍を早期発見し介入する、ことが必要である。

 虐待家族への支援に関しては、保健師の家庭訪問、保育所が中心となる在宅の被虐待児に対する育児支援、育児困難・虐待母のグループセラピーの実施が有効である。

 虐待予防には、発生予防、進行予防、再発予防、連鎖予防の四段階があるが、このような予防活動は保健師の関与なしには不可能である。現在の早期発見・対応の体制は不十分であり、保健師の増員や予算の拡充、親と子の心のケアプログラムの開発、家族調整等をどの機関が行うかのケアマネジメントの明確化、関係各機関の連携が今後の課題である。

日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士  坪井 節子 氏

 少年犯罪と虐待を関連させてとらえる視点が必要である。少年犯罪の背景に虐待があることが多く、再発防止の観点から犯罪少年の処遇に被虐待児ケアの視点を取り入れる必要がある。このためには、子どもの対策が縦割り行政の中で分断されている現状を改め、核となる省庁をつくり、縦断的な形で問題に対応していく必要がある。

 虐待を受けた子どもの救済という視点では、司法手続上、虐待された子どもの人権保障が確立されていないことが問題である。被虐待児にとって事情聴取に際して記憶を整理し、供述することは大変重要であり困難を伴うが、虐待の事実をしっかりと語れるための司法手続上の準備がなされていない。また、聴取側の被虐待児の心理状態への無理解等の問題もある。したがって、運用面では子どもの人権等についての研修の充実、虐待を受けた子どもへのインタビューの専門家の育成、制度面では事情聴取の回数を減らすなどの子どもに優しい刑事司法制度の実現が望まれる。また、子どもへの法的支援のための弁護士の育成と財政的支援についても配慮が必要である。

 性虐待に関しては、被害発見、立証、回復への道のり、再統合のそれぞれに困難が伴うことを実感している。教師等による性虐待も潜在化しており、その深刻さを調査の上、立法等にも反映する必要がある。また、子どもに対する商業的性的搾取は、性虐待の一態様として位置付けられるべきであり、児童買春、児童ポルノ禁止法の見直しと連動させた形での議論が必要である。

 このような参考人の意見を踏まえ、調査会委員と参考人との意見交換を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)共働き主婦と比較して専業主婦の方が育児ストレスが大きいと言われている。そのような親のストレス解消の場を地域につくる必要があり、その場に行くことができない親のためにはアウトリーチ的支援による負担軽減が必要となる。

(2)児童虐待における関係機関の有機的な連携のためには、司法関係者も交えたネットワーク会議を機会あるごとに開催し、情報の共有化を図ることが有効である。

(3)「よい」か「わるい」かの二分法的発想による子育てが結果的に親自身を苦しめ、子どもの虐待へとつながりかねない。そのため、子どもに対する素直な気持ちを表現し合える親同士のコミュニケーションの場の確保が求められる。

(4)児童虐待防止のためには、産婦人科医及び小児科医の果たす役割は大きく、医師の側から親をケアしていくという意識の改革が必要である。

(5)乳幼児健診を受診しない親子については、保健師が電話や家庭訪問等で状況を把握する必要がある。特に現在の保健師業務の中で母子保健は軽視される傾向にあるが、その地域保健活動の重要性を再認識し、新人が母子保健を担当しがちな現状を改め、親の育児不安に十分対応できるような配置を考えるべきである。

(6)これから親になる世代に、擬似的でも育児体験が必要である。そのためにも、保育所が若い世代と子どもの交流する場として機能していくことが重要であるという認識を広める必要がある。

(7)学校の週五日制や総合学習の時間を活用した異年齢交流を図ることにより、子どもがお互いの能力の違いを遊びを通じて学ぶことが、人間の豊かさをはぐくみ、児童虐待防止にもつながる。

(8)我が国の教育は画一的で正しい答えを早期に求めるあまりそのプロセスが軽視されがちであり、そのことが虐待等の問題を助長する結果ともなっている。したがって、教育の方法は多様にあることを認識し、プロセスを重視する方向に変えていくことが重要となる。

(9)我が国の里親制度は養子縁組が前提となっていることから発達してこなかったと考えられる。今後家庭での養護を推進するためにも、短期の非養子型里親制度を発展させていく必要がある。

(10)被虐待児のケアを養護施設入所前に情緒障害児短期治療施設内で行うことも考えられる。また、児童福祉施設内での虐待解決のためには、第三者的機関の設置や電話相談等の方法が考えられる。

(11)児童虐待に関して、厳罰化だけでは必ずしも犯罪を減らすことにはならない。加害者のケアやフォロー・アップを重視し、虐待した事実を認め、客観的に自分自身を見つめ直すことができるようにすべきである。

(12)性的虐待を受けた子どものケアについては、弁護士による法的なケアと医師による治療的なケアの両面があり、相互の連携の下に有効なケアの方法を検討していくことが大切である。

(13)児童買春、児童ポルノ禁止法の見直しに当たっては、処罰規定の見直しより、被害者である子どもの保護や教育及びケアシステムの確立が求められる。

(14)性的虐待に関する二次的被害を軽減するため、専門教育を受けた女性捜査官を配置する必要がある。また、司法改革において、公判での証言を重視する裁判に変えていくことによって詳細な調書を必要とする現状を改めることが求められる。

(15)司法制度を子どもが勇気を持って訴えられるような優しい制度に変えていくことによって、真の子どもの救済が可能となる。

3 調査会委員間の自由討議

 政府等からの説明及び参考人からの意見聴取を踏まえ、児童虐待防止に関する件について、調査会委員の認識の共有化を図り、今後の取組の方向性を見いだすため、平成十四年五月八日、調査会委員間における自由討議を行った。そこで述べられた意見の概要は次のとおりである。

(1)児童虐待防止に向けての対応能力の向上のため、現在児童相談所に集中している権限を見直し、関係機関の役割を明確にする必要がある。

(2)児童虐待への対応における市町村の虐待防止ネットワークについては、市町村保健センター、保健所、福祉事務所、保育所、学校、医療機関、児童委員、警察、民間団体等の関係機関による連携を全国的に充実させる努力が一層必要である。

(3)児童相談所については、職員の増員、資質の向上とともに、児童虐待事案について親権を調整し児童相談所の法律上の権限を明確にするなど体制の充実・強化が急務である。また、市町村児童相談室、医療機関、民間団体等との連携を強化する必要がある。

(4)虐待予防には育児支援が有効であるとの認識の下、保育所、児童館、学校等の社会資源を活用し子育て支援センターを拡充することが必要であり、参考人の提案である育児支援士(仮称)の実現に向けて検討を行うべきである。

(5)児童相談所設置主体の中核市までの拡大、在宅支援体制の整備、里親と施設の連携による週末・学校休暇期間里親などの里親制度の充実等、地域における相談支援体制を強化する必要がある。

(6)子どもの安全確認のため、住居への立入りが裁判所の令状により可能となるよう児童相談所の権限を強化する必要がある。

(7)親が安心して子育てができるよう社会全体で支援する体制を整備する必要がある。

(8)児童虐待に対応するNPO等に対し、税・財制上の優遇措置を受けやすい体制をつくる必要がある。

(9)児童虐待の予防・早期発見に資するため、母子保健を担う保健師について、増員、資質の向上を図るとともに、児童委員、人権擁護委員、民間団体等との連携を深める必要がある。

(10)児童虐待予防のため保健所、保健センター等における周産期からのきめ細かい対応が必要であり、ハイリスク家庭の把握及び育児支援、産後うつ病の予防・早期発見・早期治療のための体制整備が必要である。

(11)被虐待児への適切な対応については、情緒障害児短期治療施設等の治療機関の整備、こころのケア担当職員の質的・量的な確保が急務であることに加え、安全確保のため施設退所時のガイドライン作成等に取り組むべきである。

(12)虐待した親については、児童福祉司の指導の実効性を担保するような制度を工夫するほか、こころのケアに関し調査研究のうえ、早急にケアモデルを提示する必要がある。

(13)虐待される子どもの側の要因としては、発達の遅れ、問題行動等の育てにくさが指摘されており、中でも現在対応が遅れている学習障害児に対し、教育の立場から育児支援を行う必要がある。

(14)虐待予防教育の一環として、学校教育の場を活用した育児体験活動を行っていく必要がある。

(15)結婚前のカップルが子ども、家事等結婚後の生活について話し合う機会として、プレマリッジクラスを社会教育として位置付け、普及させていく必要がある。

(16)児童買春、児童ポルノ禁止法には、被害者の保護及びケア、司法手続における子どもの人権保障の点で問題があり、商業的性的搾取を性的虐待の一つの形態と考え、本調査会が積極的な役割を果たす必要がある。

(17)親権は子どもの人権を前提にするとの観点から、親権喪失宣告の申立権者に子を加えるよう民法を改正すべきである。

(18)児童虐待防止法の改正に際しては、虐待対応の中心概念となり得る「子どもの人権擁護」という文言を明記する必要がある。

(19)児童虐待防止法の見直しに向けて、虐待の定義、加害者の範囲について、一般に虐待と称される事案の実態を調査した上で検討する必要がある。

(20)DVと児童虐待の関連性が指摘される中、暴力の連鎖を断ち切るためには、男女の上下関係や性別役割分担が内在する社会制度を見直す必要がある。

三 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件

 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件について、平成十四年二月二十七日、松下内閣府副大臣、横内法務副大臣、狩野厚生労働副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明を聴取し、質疑を行った。その概要は次のとおりである。

(平成十四年二月二十七日)
内閣府

 男女共同参画会議は、同会議の下に設置した「女性に対する暴力に関する専門調査会」の検討・報告を受けて、平成十三年十月に、配偶者暴力防止法の円滑な施行に向けた意見を決定し、その意見を関係各大臣に述べた。その内容は、保護命令制度により被害者の救済が速やかに実現するための関係機関等の取組の必要性、十四年四月一日から施行される配偶者暴力相談支援センター(以下「支援センター」という。)の機能を果たす施設の早急な指定、職務関係者に対する研修の重要性などである。

 都道府県の支援センターの準備については、各都道府県に対して、支援センター取りまとめ部局の早期決定、支援センターの機能を果たす施設の早期決定、複数の施設で支援センター機能を果たす場合の中心となる施設の決定等をお願いするとともに、各都道府県の支援センター業務が適切に行われるよう適宜必要な助言を行っていくこととしている。

 広報啓発活動については、配偶者からの暴力の現状、法律に規定されている支援センターの機能や保護命令制度などを中心に、ホームページやテレビなどの政府広報番組等を活用して法律内容等の周知徹底に努めている。

 職務関係者への研修については、全国の婦人相談所や女性センター等の相談員を集めて三日間にわたり研修を実施した。また、この研修で使用した基礎的な教材が必要な人に広く行き渡るよう、その方法等について検討中である。

 調査研究の推進については、平成十一年度は男女間における暴力に関する調査を、十二年度は配偶者からの暴力に関する事例調査をそれぞれ委託調査として実施した。今後も引き続き、被害者や加害者に関する有意義な調査を実施したいと考えている。

 民間団体への援助の在り方については、「女性に対する暴力に関する専門調査会」において現在検討を行っている。援助の一つとして平成十四年度からインターネットを通じた情報提供事業を開始することとしている。

警察庁

 平成十一年十二月に「女性・子どもを守る施策実施要綱」を制定し、ストーカー事案及び夫から妻への暴力事案に対する基本的方針を定めている。その後、配偶者暴力防止法の施行に向けて、法の趣旨、内容等を通達等により各都道府県警察に徹底し、適切な対応に努めている。

 DV事案に係る相談への適切な対応については、保護命令に係る裁判所からの照会への回答を迅速に行うため、全国斉一の「配偶者からの暴力相談等対応票」を用いた適正な記録及び保管を行っている。この対応票を各都道府県警察に示すとともに、二次的被害の防止等被害者の立場に立った配慮を行うよう、当対応票作成に当たっての留意事項も指示している。

 平成十三年十月十三日の配偶者暴力防止法施行から十四年一月三十一日までに警察において作成した対応票の件数は四千八百四十一件である。同期間に配偶者暴力防止法第十四条第二項に基づく書面の提出要求を受けた件数は百九十三件である。

 保護命令に係る被害者対策及び保護命令違反の厳正な取締りについては、地方裁判所との緊密な連絡体制を構築するとともに、関係職員への情報の周知を行っている。被害者である申立人に対しては、防犯上の留意事項を教示するなどの措置を講じている。同期間の保護命令違反事件検挙数は五件である。

 職員教育の充実については、全警察職員の意識改革を図り、事案の特性や被害者への対応の在り方等について周知徹底を図るため、随時、指導・教育を行っている。特にDV事案を担当する職員に対しては、より専門的な知見を習得させる研修等を行っている。

 関係機関との連携については、すべての都道府県に設置された被害者支援連絡協議会等を活用するなどして、婦人相談所等との定期的な会合を開催しており、今後とも連携を強化していく。

法務省

 配偶者暴力防止法施行から平成十四年一月までに検察庁で受理した保護命令違反事件の件数は五件で、いずれも被疑者を起訴している。

 保護命令申立手続における公証人による宣誓供述書の認証については、公証人のいない地域の法務局の支局を指定し、関係職員に対する周知を図っている。

 職務関係者への研修については、検察官、検察事務官、矯正施設・更生保護官署の職員に対して重点的に行っている。

 人権擁護機関においては、従来から女性の人権問題に関し積極的な啓発活動を行っている。全国の法務局及び地方法務局の本局に女性専用の相談電話「女性の人権ホットライン」を設置し、DVを始めとする女性の人権問題をめぐる相談体制の強化を図った。このホットラインには相当数のDV事案を始めとした相談が寄せられ、月平均で四百五十件程度、最近では約千件の相談が寄せられている。このような人権相談を通じて女性に対する暴力の情報を得た場合は、婦人相談所や警察と連携し問題の解決に当たるとともに、自らも人権侵犯事件として調査を行い、説諭や勧告などを行うことにより暴力行為の中止や再発防止を図り、被害者の救済に努めている。

厚生労働省

 支援センターとしての婦人相談所の機能強化を図るため、従来からの取組に加え、(1)民間シェルター等への一時保護委託制度の創設、(2)非常勤の電話相談員の配置による休日夜間の相談体制の強化、(3)被害者の保護支援について婦人相談所と福祉事務所等との連絡会議や事例検討会議など、ネットワークの整備の推進、(4)被害者の心理的回復の支援のため、婦人相談所の一時保護所及び婦人保護施設への心理療法担当職員の配置、(5)世帯部屋や個室の設置が可能な施設整備基準面積の改善、等を行うための費用を平成十四年度予算に計上している。

 医師その他の医療関係者による適切な通報・情報提供の促進については、医療関係団体に対し法の周知等の協力を依頼した。

 保護命令については、その手続が円滑に行われるよう、裁判所へ提出する書面の様式等について配偶者暴力防止法施行に先立って都道府県に通知した。同通知の写しは最高裁判所事務総局から地方裁判所等に送付された。法施行から三か月間の書面提出件数は八十三件である。

 職務関係者に対する研修については、本省職員に対しては婦人相談所等の関係者や有識者による研修を、都道府県等の職員に対しては全国会議等の積極的な活用を図って実施している。外部の専門家による講義については講義録も作成し、会議に参加できなかった職務関係者も広く活用できるよう都道府県に対し送付した。

 被害者保護に関する研究については、平成十三年度から三年計画で厚生科学研究費補助金により被害者の精神保健の観点を中心とした研究を実施する。

最高裁判所

 DV被害者の保護と安全の確保を最重要課題として、警察庁や厚生労働省等の関係機関と連携を図りつつ、適切かつ迅速な保護命令手続の審理に努めている。

 保護命令手続において、約六割が申立人に弁護士が付いていない事案であり、裁判所は申立てに先立って窓口で保護命令手続に関する相談に応じることが少なくない。相談時には被害者の保護やプライバシーに配慮するよう努めている。申立前に警察等に相談等をした事実がある場合には、裁判所は受理後速やかに書面の提出を警察署等に求め、保護命令を発した場合は、取締りの実効性を確保するために、速やかに警察にその旨を連絡することとしている。

 保護命令の処理状況については、配偶者暴力防止法施行から平成十三年十二月末日までに、申立てが百七十一件、終了した事件が百五十三件、未済が十八件であった。終了した百五十三件のうち保護命令が発せられたものが百二十三件、そのうち接近禁止命令のみ発せられたものが九十一件、接近禁止命令と退去命令の双方が発せられたものが三十二件である。保護命令が発せられた事案について申立てから発令までに掛かった平均日数は九・〇日である。

 保護命令制度は法律上、速やかな裁判、被害者の人権尊重、秘密の保持が求められており、事件の性質上被害者の安全確保にも配慮することが大切である。適切な処理のため、法の趣旨を正確に理解して的確な運用ができるように法施行以前から検討を重ねている。例えば、東京地方裁判所と大阪地方裁判所は法施行以前から共同して協議を重ね、被害者に対する裁判所職員の言動配慮、両当事者の入退庁経路に対する配慮等、運用上の留意点についてまとめている。

 職務関係者への教育及び啓発については、裁判官の研究会のカリキュラムに女性に対する暴力の問題を取り入れている。司法修習の段階においても同様の講義を実施している。裁判官以外の裁判所職員についても書記官研修所や家庭裁判所調査官研修所の研修の中で、保護命令制度の留意点及び夫婦間暴力の問題に関する講義等を実施している。

 このような政府等からの説明を踏まえ質疑を行ったが、その概要は次のとおりである。

(1)保護命令の申立てに際して、公証人による宣誓供述書添付に基づく申立件数が少ないのは、この申立方法が広く認知されないため又は供述書作成費用が高いからと考えられる。本制度による申立てがより利用しやすいものとなるよう努める必要がある。

(2)保護命令申立てに際し、警察や婦人相談所に相談した事実のない場合に、公証人面前宣誓供述書以外の添付書類の可能性についても検討すべきである。

(3)保護命令が発出されている間に被害者が更なる被害を受けないよう、被害者とその子どもの一時保護施設に関する情報管理に引き続き慎重に取り組んでいくべきである。

(4)一時保護委託制度創設に伴って、これまで自治体等が独自に行ってきた民間シェルターへの助成が打ち切られるのではないかという懸念がある。民間シェルターの多くは厳しい財政運営を強いられており、行政は十分な財政支援を行うべきである。

(5)相談機能を果たす施設と一時保護施設とが併設している場合、周知しなければならない部分と一時保護施設として安全確保のため秘匿すべき部分があり対応に苦慮している。国としてどのような援助、対応ができるのか積極的にフォローすべきである。

(6)相談施設と一時保護施設が離れている場合の移動に際しては、警察の関与等被害者の安全確保への対応が必要である。

(7)警察、婦人相談所の現場におけるDV被害者への不適切な対応例が報告されている。現場職員へのDVに対する研修を十分に行い、制度の適切な運用に努めるべきである。

(8)被害者の中には、精神的ダメージを受けている場合も少なくない。三年後の配偶者暴力防止法の見直しに当たって、身体的暴力だけではなく、精神的暴力も対象とすべきである。

(9)心理担当職員の配置に積極的に取り組むとともに、資質の向上確保に力を入れるべきである。

(10)都道府県をまたがって被害者に対応する広域措置に関しては、関係機関の連携を十分にとり柔軟に運用すべきである。

(11)婦人相談員は、DV加害者側から脅迫、嫌がらせ等個人攻撃を受けており、婦人相談員へのカウンセリングの実施等組織を挙げて守る必要がある。

(12)被害者が暴力被害から立ち直り、自立していくための幅広い支援が必要である。

(13)暴力の連鎖を断ち切る視点からも、暴力を加えることについての防止、暴力を受けないようにするための自衛的姿勢及び心構え等について、実効性の高い教育的な防止策を積極的に開拓すべきである。

(14)DVの事後的な社会的コストの大きさを考えると、防止的プログラムにも力を入れることが大切である。加害者の更生を支援するため、実効性のある体験学習や双方向的な研修プログラムを受けられるような体制を整えていくべきである。

(15)配偶者の暴力からの救済を求めている被害者に対して、着実、正確に情報を伝えられるような多様なメディアによる広報活動を推進すべきである。

(16)夫婦間の暴力の背後には、妻が夫に経済的に依存していること、夫婦間に昔ながらの男尊女卑の考え方があることなどが考えられる。

四 派遣委員の報告

 平成十四年二月十八日から二十日までの三日間、香川県及び岡山県において、共生社会に関する実情調査を行った。

 香川県では、児童虐待に関しては、平成十二年末に「かがわ虐待防止アクションプラン」を策定し、県西部に児童相談所を新設した。今後は、短期間のホームステイ等多様なメニューによって被虐待児童を受け入れるファミリーホーム制度や、虐待原因の調査分析を実施する予定となっている。さらに、「新香川子育て支援計画(かがわエンゼルプラン21)」においても、児童虐待防止を主要事業として位置付け、社会全体で子育てを支援する「みんな子育て応援団」プロジェクト等各種施策を実施している。現在、相談件数の増加、通報経路の多様化、学校からの通報の増加という傾向がみられるが、施設入所ではなく在宅指導中心のケアを実施している。また、DVに関しては、配偶者暴力防止法施行後の平成十三年十・十一月は相談件数が前年度比で三倍以上になっている。説明聴取の後、児童虐待やDV相談における電子メールの活用、児童虐待防止における保健師の役割の重要性、ファミリーホーム制度の数値目標及びその有効性、家庭内の問題への行政の関わり方、児童委員の役割と配置等について質疑が行われた。

 このほか、白鳥町にある児童養護施設恵愛学園を視察し、その運営の概況等について説明を聴取した。また、香川県子ども女性相談センターを視察後、県内で児童虐待問題に携わっているNPO団体からその活動状況等について説明を聴取した。派遣委員から、NPO法人としての資金面・認証手続きの問題点、NPO法人格取得の効果、NPO法人間の連携体制等について質疑が行われた。

 岡山県では、児童虐待問題に関して、児童相談所の体制強化、関係機関・地域との連携強化等により早期発見・早期対応に努めている。また、男女共同参画の推進に関しては、「おかやまウィズプラン21」を策定して共同参画を進めており、相談件数が平成八年の約三十倍になったDVに関しては、参画条例の中に、男女共同参画を阻害する行為の禁止として明確に規定されている。このほか、岡山県から婦人相談所及び児童相談所における実際のDV相談事例及び児童虐待に関する事例を、岡山市からDV条項を持つ参画条例の説明をそれぞれ聴取した後、DVに関する相談件数増加の原因、DV被害者の自立支援とウィズセンターにおける就業支援事業の関連性、加害者のフォローアップの必要性、役所の執務時間外のDV被害者に対する対応方法、虐待を行った夫婦ともにカウンセリングを受ける必要性、児童相談所の介入の在り方、児童相談所関係者の心のケア、DVと児童虐待の相関関係等について質疑が行われた。

 このほか、ノーマライゼーションの考え方の下に、障害者や高齢者用の機器の製造販売を行っているOG技研株式会社を視察し、製品の説明を聴取した。派遣委員から、製品開発の方法と大学との研究交流、福祉部門以外の市場の可能性等について質疑が行われた。また、岡山理科大学福祉システム工学科を視察し、ユニバーサルデザインについて説明を聴取した。派遣委員からは、福祉機器の研究に必要な医学・心理学の教育方法、産業界との連携、福祉機器の設計思想と女性の役割の特色等について質疑が行われた。

第三 児童虐待防止についての提言

 平成十二年十一月の児童虐待の防止等に関する法律の施行に伴い、相談件数の急激な増大などに見られるように児童虐待に対する国民の関心が高まる一方で、虐待に伴う悲惨な事件は後を絶たず、児童相談所の体制も相談件数の増大に十分対応できないなど、児童虐待を取り巻く環境は極めて深刻な状況にあるといえる。

 このような中で、本調査会は、二十一世紀の日本を担う子どもの人権が侵害され、生命の危機にもつながりかねない児童への虐待を防止し、その対応を図っていくことは、児童の権利に関する条約の趣旨に照らしても喫緊の課題であるとの認識の下、虐待の発生原因・予防、虐待の早期発見・早期対応、被虐待児の保護や虐待者への指導、さらにはケア対策などについて広範な論議を行い、その課題を明らかにするとともに、解決のために採り得る諸施策について鋭意検討を進めてきた。

 このような取組を経て、本調査会として当面する課題について、次のとおり提言する。

一 児童虐待の発生予防対策の充実

1 虐待を防止するための予防的な教育の一環として、総合学習の中で育児体験活動を行うなど、学校教育における異年齢交流の場の確保に努めるとともに、子ども自らが自分自身の身を守るような教育の推進に努力していく必要がある。

2 育児における親の孤立化が虐待を招く例も多いことから、地域子育て支援センターの拡充や子育て支援ネットワークの充実等により、子育て中の親同士が交流・情報交換ができるような場の確保に努めるとともに、父親も子育てに対する責任を果たし、特に子育て世代の親がゆとりを持って育児にいそしめるよう、労働時間の短縮等の労働環境の整備を図っていく必要がある。

3 母子保健施策の視点を子どもの成育を中心とした育児指導から親の育児に対するケアを含んだものへと変えていくとともに、重要な役割を担う保健師に対する教育・研修等の実施による資質の向上を図り、併せてその人員の確保に努めるべきである。

4 虐待の予防には早期にハイリスク群の把握や対応を行うことが重要であり、そのためには妊産婦健診、周産期診療や乳幼児健診の場を通じて、個人のプライバシーに配慮しつつ望まない妊娠等ハイリスク妊産婦及び養育者を把握する体制の構築を図るべきである。

5 児童虐待対策予算の増額に引き続き努めるとともに、育児支援を始めとする虐待予防対策へのより一層の配分が必要である。

二 児童虐待を早期発見・早期対応できる体制の確立

1 乳幼児健診の場は虐待の早期発見に有効であるが、特に健診を受けに来ない家庭への対応が重要であり、保健師等が積極的に訪問するなど当該家庭の育児状況の把握に努める必要がある。

2 学校教育、保育及び医療関係者など職務上、虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある者が、虐待発見時に適切に対応できるよう通告義務の周知徹底を図るとともに、各機関において対応要領を作成するなど早期発見・早期対応のための体制の整備に引き続き努めていく必要がある。

3 虐待を受けている子どもが相談しやすい環境をつくるための体制の整備を図り、相談先の周知など広報活動にも力を入れる必要がある。

4 虐待への早期対応を行うため、虐待の通告を受けた場合における児童相談所の速やかな安全確認について、通告から安全確認までの期間を明確にすることを検討すべきである。また、児童虐待に迅速かつ的確に対応するためには、福祉事務所が通告受理機関として機能するよう人員・予算を増加し、相談体制の充実・強化を図る必要がある。

5 児童虐待相談件数の増加等により、児童福祉司、児童相談所職員等の心身への負担が増加しており、その軽減を図るため、児童福祉司の配置基準の見直し等関係職員の増員について検討を行うべきである。また、関係職員の専門性向上のため各種研修を充実させるほか、保護者から職員への加害行為への対応についても検討すべきである。

6 児童虐待のおそれのある家庭への児童相談所職員の立入りについては、子どもの安全確認を優先できるよう児童相談所の立入権限の強化に向け、司法手続上の整備を含めて検討していく必要がある。

7 児童相談所を中心とした広域的なネットワークに加えて、市町村における虐待防止ネットワークの構築をより一層推進するとともに、早期発見・早期対応のノウ・ハウの共有等各ネットワーク間における連携強化を図る必要がある。

三 被虐待児への支援体制の確立等

1 子どもの心の健全な発育には通常の集団生活、学校生活を送ることが極めて有効であり、そのためには保育所、幼稚園、小学校等において被虐待児への適切な対応ができるようその方策を検討する必要がある。

2 被虐待児のケアのため、ケア担当職員の質的・量的な確保に努め、情緒障害児短期治療施設等の治療機関の整備・充実を図るとともに、治療機関と養育機関の役割分担の在り方について検討していく必要がある。

3 子どもの安全を守るため、施設からの一時帰宅や入所措置解除に際しての客観的な基準と手続に関するガイドラインの策定を促進するとともに、再発防止に向けた地域の見守り体制を更に整備していく必要がある。

4 児童養護施設等の職員・予算の一層の充実を図るとともに、居住環境を整備していく必要がある。

5 被虐待児の養護については、家庭的養護の比率を高めていくべきであり、期間に弾力性を持たせた里親や心理ケアを行う里親等非養子型里親制度の拡充・多様化を更に進めていく必要がある。

6 虐待する親に対しては、治療的なアプローチが不可欠であり、親の養育能力を回復させるための治療・指導プログラムを早期に確立する必要がある。

四 性的虐待への適切な対応

 性的虐待を受けた子どもについては、その心身のケアを特に充実させる必要がある。また、刑事司法手続については、子どもからの事情聴取が困難であることを配慮したものとなるよう検討するとともに、被害者の二次的被害防止に向けた関係職員の教育・研修の充実に努める必要がある。

五 児童虐待の防止等に関する法律等の見直し

 児童虐待の防止等に関する法律の見直しに当たっては、子どもの人権尊重の理念の明文化を始め、児童虐待の発生予防、早期発見・早期対応、被虐待児への支援等が適切に図られるよう十分検討がなされる必要がある。

 なお、子どもに対する性的虐待への適切な対応については、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の見直しに際しても十分な検討がなされる必要がある。



○参議院共生社会に関する調査会委員(平成十四年六月十二日現在)

会長 小野 清子 (自由民主党・保守党) 理事 有馬 朗人 (自由民主党・保守党)
理事 清水 嘉与子 (自由民主党・保守党) 理事 田浦  直 (自由民主党・保守党)
理事 羽田 雄一郎 (民主党・新緑風会) 理事 風間  昶 (公明党)
理事 吉川 春子 (日本共産党) 理事 高橋 紀世子 (国会改革連絡会
(自由党・無所属の会))
有村 治子 (自由民主党・保守党) 大仁田 厚 (自由民主党・保守党)
大野 つや子 (自由民主党・保守党) 小泉 顕雄 (自由民主党・保守党)
後藤 博子 (自由民主党・保守党) 段本 幸男 (自由民主党・保守党)
中原  爽 (自由民主党・保守党) 山下 英利 (自由民主党・保守党)
岡崎 トミ子 (民主党・新緑風会) 郡司  彰 (民主党・新緑風会)
小宮山 洋子 (民主党・新緑風会) 鈴木  寛 (民主党・新緑風会)
平田 健二 (民主党・新緑風会) 弘友 和夫 (公明党)
山本 香苗 (公明党) 林  紀子 (日本共産党)
田嶋 陽子 (社会民主党・護憲連合)      


(参考)

三年間の主な活動経過

 (一年目)

第百五十二回国会  
平成十三年八月七日 共生社会に関する調査会設置
第百五十三回国会  
平成十三年十一月五日 調査テーマを「共生社会の構築に向けて」に決定
「共生社会の構築に向けて」のうち、共生社会について調査会委員間の自由討議
十一月十九日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、松下内閣府副大臣、岸田文部科学副大臣及び南野厚生労働副大臣から説明聴取、質疑
十一月二十一日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、横内法務副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明聴取、質疑
十二月三日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士磯谷文明氏、国立小児病院・小児医療研究センター小児生態研究部長谷村雅子氏及び大阪府中央子ども家庭センター所長萩原總一郎氏から意見聴取、質疑
第百五十四回国会  
平成十四年二月十三日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人駿河台大学法学部教授吉田恒雄氏、筑波大学心身障害学系教授宮本信也氏及びエンパワメント・センター主宰森田ゆり氏から意見聴取、質疑
二月十八日
~二十日
共生社会に関する実情調査のため、香川県及び岡山県に委員派遣
二月二十七日 「共生社会の構築に向けて」のうち、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律施行後の状況に関する件について、松下内閣府副大臣、横内法務副大臣、狩野厚生労働副大臣、警察庁及び最高裁判所から説明聴取、質疑
四月三日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、参考人東京大学大学院教育学研究科教授汐見稔幸氏、徳永家族問題相談室室長・保健師徳永雅子氏及び日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員・東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員・弁護士坪井節子氏から意見聴取、質疑
四月十日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、狩野厚生労働副大臣、岸田文部科学副大臣、横内法務副大臣、内閣府、警察庁及び最高裁判所に質疑
五月八日 「共生社会の構築に向けて」のうち、児童虐待防止に関する件について、調査会委員間の自由討議
六月十二日 共生社会に関する調査報告書(中間報告)を議長に提出することを決定