参議院は衆議院の解散と同時に閉会となりますが、この閉会中に国会の議決を要する緊急の問題が発生したときに、参議院が国会の権能を暫定的に代行する制度が参議院の緊急集会です。内閣は、衆議院の解散中に国に緊急の必要があるときは、参議院に対して緊急集会を求めることができます(憲法第54条第2項)。
内閣が緊急集会を求めるには、内閣総理大臣が、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長に請求します(国会法第99条第1項)。請求を受けた議長はその旨を各議員に通知し、通知を受けた各議員は指定された期日に参議院に集会しなければなりません(国会法第99条第2項)。
次に、緊急集会における審議及び議決の対象ですが、「国に緊急の必要があるとき」に内閣の請求により集会されることから、内閣が示した案件のみとなります。ただし、案件に関連のあるものに限り議員による議案の発議及び請願の受理が認められています(国会法第101条、第102条)。緊急集会において案件が可決された場合、議長から、公布を要するものは内閣を経由して奏上し、その他のものは内閣に送付します(国会法第102条の3)。
また、緊急集会の期間中は国会の会期中と同様と考えられるため、緊急集会中の参議院議員には、議員の有する不逮捕特権(憲法第50条、国会法第100条)や発言・表決に対する免責特権(憲法第51条)も認められています。なお、緊急集会は、通常の国会と異なり会期は存在しません。緊急集会は内閣の請求により開催され、緊急の案件がすべて議決されたときに終了します。
緊急集会において採られた措置は、参議院のみの議決を国会の議決とした臨時の措置であるため、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意を得る必要があります(憲法第54条第3項)。緊急集会で議決された案件は、内閣から衆議院に提出され(国会法第102条の4)、衆議院の同意が得られた場合に、国会で議決された場合と同様の効力を有することになります。衆議院の同意が得られなかった場合、または議決しないまま10日間を経過した場合、緊急集会において採られた措置は効力を失うことになります。ただし、効力を失うのは将来に向かってであり、遡及的に無効となるわけではないと解されています。
これまで緊急集会の会議が開かれたことは2回あります。
初例は第14回国会閉会後です。昭和27年8月28日、内閣は中央選挙管理会の委員の任命を目的として緊急集会を請求しました。参議院は同月31日に緊急集会の会議を開き、中央選挙管理会の委員及び予備委員を指名し、同日、緊急集会は終了しました。その後、第15回国会において衆議院の同意を得ました。
2例目は第15回国会閉会後です。昭和28年3月14日、内閣は、昭和28年度一般会計等の暫定予算及び法律案4件についての議決を求めることを目的として緊急集会を請求しました。参議院は同月18日に緊急集会の会議を開き、これらの議案をすべて可決し、同月20日、緊急集会は終了しました。その後、第16回国会において衆議院の同意を得ました。