議会政治においては、政府が国政の基本方針を議会の場で明確にし、国民を代表する議員がこれに対する質疑を行うのが通例です。我が国でも毎会期の始めに衆・参両院本会議において、国務大臣の演説とこれに対する質疑が行われています。毎年1月に召集される常会(通常国会)においては、内閣総理大臣が向こう1年間の政府の国政全般に取り組む基本方針を示す施政方針演説を行うのを始め、外務大臣が外交演説を、財務大臣が財政演説を、経済財政政策担当大臣が経済演説を行います。これに対して各会派の代表者が質疑を行い、政府の国政に取り組む姿勢をただし、関係大臣に答弁を求めます。これは一般に「政府四演説」と「代表質問」と呼ばれます。
大臣演説の歴史は古く、第1回帝国議会までさかのぼることができます。また、内閣総理大臣、外務大臣、大蔵大臣(現在の財務大臣)及び経済担当大臣による四演説が行われるようになったのは、昭和27年の第15回国会からです。
なお、総理大臣が国務等について国会に報告する旨の規定は憲法第72条にありますが、現在のように政府四演説・代表質問という形式は、先例上確立されてきたものです。大臣演説及び質疑は時代背景を反映し、その時点における国政上の争点を国民に対して明らかにする機能を有しています。例えば第1回国会においては、片山内閣総理大臣が日本国憲法の基本精神である民主主義及び平和主義を政治行動の大目標とすることなどを内容とする施政方針演説を行い、これに対して各会派の代表者が各分野の法制度の民主化などについて質疑を行っています。
国会の召集が正式に決定されると、議院運営委員会理事会において大臣演説に対する質疑者数、時間及び順序が協議され、召集後、同委員会で協定されます。通例、大臣演説の前日に、国会法に基づき内閣総理大臣から両院議長あてに発言通告が提出され、これを受けて議院運営委員会で日程が正式に決定されます。大臣演説はまず衆議院で、同日続いて参議院で行われています。
政府四演説の場合、質疑は演説から1日おいて衆・参両院で3日間行われます(1日目は衆議院(午後)、2日目は参議院(午前)と衆議院(午後)、3日目は参議院(午前、午後))。通例、質疑の前日に議院規則に基づき各会派から議長あてに質疑通告が提出されます。質疑通告には質疑を行う案件(大臣演説の場合、国務大臣の演説に関する件)、質疑者、質疑時間及び答弁要求大臣が記されています。
参議院の最近の例では、質疑を行う人数は1会派1人から3人、質疑時間は1会派10分から80分程度となっています(所属議員数によって変動します)。質疑順序はおおむね大会派順ですが、最大会派が与党であるときは、最初の質疑者に限り野党の最大会派所属議員とする例が多いようです。
なお、委員会における質疑と異なり、本会議における質疑は一問一答をせずに質疑事項の全部を述べ、その後答弁を要求された大臣がそれぞれ答弁を行いますが、答弁が不十分として再質疑(2回まで)が行われることもあります。
大臣演説及び質疑が行われる本会議にはすべての国務大臣が出席し、議場の大臣席(いわゆるひな壇)に着席します。このときから実質的な国会審議が始まります。