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参議院60周年記念論文入賞者



私が夢見るこれからの日本

兵庫県 神戸山手女子高等学校 1年
野中 麻実恵

 私には東京ディズニーランドで働くという夢があります。ディズニーランドには、2歳のころから両親が連れて行ってくれました。初めのうちは、ミッキーに会ったり乗り物に乗ったりするのが楽しみだった私ですが、小学校6年生のころからは、そこで働いている人に憧れを持つようになりました。きっかけは、ある従業員の人が、困っているお客さんに対して話しかけ、日本語が通じないようだったのですぐに英語を使い、コミュニケーションをとっているところを見たときでした。「すごいなぁ。」ととても感心しました。彼らは、困っている人を笑顔で助け、食べ物をこぼしてしまっても、嫌な顔をせずに明るく対応しています。私たちがディズニーランドで遊ぶときに笑顔が溢れ、幸せな気持ちになれるのは、彼らが陰で支えているおかげなのです。私は今まで夢や希望を与えてもらったので、今度は私が与える側になりたいと思いました。
 その夢を叶えるためには、英語を一生懸命勉強しないといけないと思いました。だから、私は中学受験をすることに決めました。その学校は英語に力を入れていて、英語検定にも積極的に取り組んでいると知ったからです。受験は大変でしたが、ディズニーランドに就職するという目標があったので苦にはなりませんでした。面接の時に、「この学校にどうして入ろうと思いましたか。」と聞かれ、「私はディズニーランドに就職するために、英語の勉強をたくさんしたいから、この学校は英語に力を入れていると聞いたので決めました。」と答えました。試験官の先生は、「そのためにはどういう大学に行けばいいのですか。」と聞きました。私は、「わかりません。」と答えました。そうすると、先生は、「困りましたね。一緒に考えていきましょうね。」と答えてくれました。後でわかりましたが、この先生が厳しい英語の先生でした。
 入学後は毎日英語の授業があるので予習復習がかかせません。そういう生活を送っているうちに、自然に英語が身についていきました。毎日ある小テストも、単語力が身につくので苦になりません。中学2年生の終わりに、カナダに語学研修に行きました。当たり前ですが、外国での英語漬けの日々は私にとっては貴重な経験となりました。カナダの人達の大らかさ、自然の豊さに触れ、日本にはないスケールの大きさに驚き、また、英語が初めて通じた時の喜びも感じました。日本に帰ってきてからは、ますます英語が話せるようになりたいと思いました。
 授業とは別に、英語検定の試験にも積極的に取り組み、結果、順調に準二級に合格し、今は当初の目標の二級受験に向けて努力しています。
 一方、公立中学校に進んだ友人に話を聞くと、ゆとり教育のために英語の授業数も極端に少なくなっており、とても自然には英語に親しめる環境ではないようです。授業時間数が少ないのに、高校受験もあるので結局塾に行かねばならず、夜遅くまで塾に通っていました。その負担が勉強嫌いにさせてしまっている感がなくはないです。
 私が公立に行っていたら、今のように楽しく英語が勉強できていたかわかりません。きっといやいや受験のためだけに受験英語を勉強していたと思います。
 高校生になった今、今度は具体的にディズニーランドの就職に向けて、進路を考え始めています。受験資格が4年制大学卒業となっているので、大学について真剣に考えています。希望が具体化してくると、目標となり、自然に受験までの自分に対するスケジュールが出来てきます。やらなければいけないことがあまりにも多すぎて、少々めげることもありますが、そうなれば夢が遠くなってしまうので、自分のやる気を奮い立たせます。夢というのは生きる活力になるんだなぁと実感したりします。
 授業も、さらに厳しくなり、前述の英語の先生は小テストが満点でないと合格させてくれません。どんな日でも小テストはあります。眠たくて勉強するのが嫌になり泣けてくることもあります。でもそのおかげで語彙力がついたと思います。
 私達が小学校へ入学した頃からゆとり教育が始まり、5年生の時から総合学習が本格化しました。どんどん授業時間数が減り、私にとっては授業がとてもつまらなくなりました。自由に何でも好きなことをしてもいいよと言われても、何をしていいかわからず、何もしなくても終わってしまうので、何もしませんでした。
 運動会も練習時間が減り、大作のダンスや組体操は、危険なことを省き、簡単なものになり、見ている親達は、つまらないと言います。実際私達の5年生でのダンスはフォークダンスでした。これはほとんど練習しなくて済むからでした。競争競技は特定の子だけが目立たないよう全員リレーで、しかも速さを一定にするためにタイムをはかって決めていました。先生は気付かなかったでしょうが、このために実は足の遅い子がいじめられていたようです。
 ゆとり教育の渦中にいた私がなんのゆとりも、魅力も感じませんでした。
 私が自分で選んだ今の学校は、授業時間数は多く、土曜日もありますが、とても楽しい学校なので、長時間いることが苦にならないし、充実した日々を送っています。また、授業の多さがゆとりを生み、私のやりたいことのヒントをもらったり、応援してもらったりで、小学校の時のように退屈したりすることはありません。
 最近、取り沙汰された未履修問題も、全く関係がなく、どこへ出ても恥ずかしくない教育を受けています。
 ある新聞の記事で東大生にアンケートをとっているものがあり、そこには「東大生の3割が就職に不安を感じている」と書いてありました。現在国内で最もレベルが高いといわれている大学の学生でさえそう感じているのです。この記事を見て私はとてもショックを受けました。ただ大学に入るだけではなく、ただ受験するだけでなく、そこに夢や目標がなければ、終わってしまいます。もっと若者たちが、夢や希望を持てる、そういう社会にして欲しいです。