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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 輝かしい国モンゴルを目指して

モンゴル国  新モンゴル高等学校 3年

バトムンフ・ハンガイ

皆さんはモンゴルについてどのくらい知っていますか?ほとんどの人がモンゴルと聞くとチンギスハーンやモンゴル人力士、草原やゲルなどを思い浮かべると思います。

モンゴルは日本の4倍ほどの国土に300万人ほどが暮らす発展途上国です。モンゴルは1990年代初頭ソ連の崩壊とともにソ連の傘下から離れ社会主義体制から民主主義体制に移行し、諸外国の支援もあり急速に市場経済を発展させました。ですがこの影響で様々な問題が起きています。その問題というのは首都ウランバートルの大気汚染や土壌汚染、ウランバートルに人口が過密し、それによる交通渋滞、貧富の差の拡大などの問題です。これらの問題が起こった原因は僕が思うに1990年初頭に民主主義に移行したことによって皆が仕事を求めウランバートルに集中したことにあると思います。今ウランバートルにはモンゴルの人口の約半分にあたる130万人ほどが暮らしていますが、その6割の人はゲル地区とよばれる木柵などで囲まれた土地に小さな家やゲルなどで暮らしたりしています。この地区に住む人々の生活は貧しくその日をしのぐのがやっとな人たちもいます。この地区のほとんどの家には暖房設備がなく、冬には-30~-40度にもなる冬を越すため、中で石炭や木材、家畜の糞を燃やして家を暖める石炭ストーブを置いている家がほとんどです。

ですがこのストーブから出る煙のせいでウランバートルの大気汚染が深刻になっています。冬の間に限って言えば、中国の北京などよりも汚染物質の数値が高くなっています。これ以外の主な原因に輸入されてくる中古車の排気ガス、石炭火力発電所などから出る煙などがほとんどの割合を占めます。なぜこんなにも石炭が使われているかというとモンゴルは地下資源が豊富で一番発展している産業が鉱山などの重工業なので石炭はすごく安価で手に入るからです。

このウランバートルの大気汚染は非常に深刻で、国民の健康に大変な悪影響を及ぼしており、病院には大気汚染による頭痛や目や喉の痛み、呼吸のし辛さなどの症状を訴える患者が年々増えてきており、特に子供達には特に影響しているようで病院にはこういう症状の子供が多く見られます。その中でも特にゲル地区の人たちがこういう症状に悩まされています。最近ではさらに土壌汚染も深刻になってきていると言われています。土壌汚染もやはり飲み水などで人の体に入り健康に悪影響を及ぼしていろいろな症状を訴える人が増えてきています。

これ以外の問題に、人口の約半数が集中していることによる交通渋滞や幼稚園、学校などの教育機関の不足、これが不足していることによる裏口入学や政治やビジネスでの賄賂などの発展途上国でよく起こる問題なども深刻な問題になってきています。

そこで僕は(もし僕が国会議員になったら)、これらの問題をどう解決するか、これらの問題が起こっている詳しい原因はなんなのか、これらの問題以外にモンゴル発展のために何をどうしたらいいか、などを詳しく書いていきたいと思います。



まず初めに

1.大気汚染や土壌汚染などの環境問題について

まずこの問題が起こっている原因は先ほども書いた通り、1990年代初頭に民主化になったことによって社会や文化が変わったことによるものが大きいです。様々な国の文化が入ってきたことによって移動手段は馬やラクダから車やバイクに変わり、仕事などを求め都会に人が集中しました。それ以降20年も経たずにウランバートルは大気汚染が深刻な都市ランキングで常に上位に入るようになりました。ウランバートルの大気汚染物質を排出している物の割合は、ゲル地区からの煙が60%、自動車の排気ガスが20%、大きな工場から出る煙が10%、火力発電所などが6%、小さな工場で4%、というふうに言われています。

この問題は、11月から3月までの冬の時期に特に深刻で、この時期の天気予報には煙や煙霧などの天気も珍しくありません。それを揶揄してウランバートルはウターンバートル(ウターとはモンゴル語で煙という意味です)だよね、などと言われるほどです。

それ以外にもあまり話題にはなっていませんでしたが最近では土壌汚染の方も深刻になってきているとニュースなどでやっています。調査報告では基準値の10〜16倍ほどの数値が出ていると言われています。この問題が起こっている原因には、やはりゲル地区が影響しています。ゲル地区の多くの世帯では下水管などがなく敷地内に穴を掘りその上にトイレを作っている世帯がほとんどです。ですからゲル地区の土壌の破壊は特にひどくなってきています。その他の原因に工場から流れ出た汚染物質が川や土壌に流れ込んだりし、地下資源採掘の鉱山も大きな原因になっています。

それ以外にウランバートルが盆地になっているのも影響しています。盆地になっている所というのは汚染物質が外に離散されず蓄積されていくという問題があります。ですから冬の間の大気汚染物質がどんどん蓄積されていったというのも大きな原因なのです。土壌汚染は深刻になると様々な伝染病を発生させるので、できるだけ早く改善しなければいつこういう新たな問題が起こっても仕方ないのです。

なので、これらの問題の解決のため国は幾つもの政策を立てました。

  • 大気汚染物質を軽減するクリーンストーブを低価格販売
  • 電気自動車などのエコカーの導入
  • 植物などの緑を増やす緑化運動(モンゴルでは緑の革命と呼ばれている)など

これら以外にも環境庁が日本の中小企業と提携し煙があまり出ない石炭を開発しましたが、まだ導入されてはいません。これが導入されれば大気汚染撲滅の大きな一歩になると思います。


僕が国会議員になったらこれらの政策に加え、

  • 排気ガスを多く排出する自動車の税金を高くする
  • 加工されてない状態の煙を多く出す石炭などの廃止、罰金
  • ゲル地区のストーブなどを買えない貧しい暮らしの人々には国からの援助をする
  • 工場などの汚染物質を調査し、基準値より上なら罰金、罰則
  • ゲル地区に下水管を通して管理する
  • 重工業の分野を制限する など

これらの政策にはコストがすごくかかり、国に大きな負担になりますが、後々出てくるモンゴルの経済をよくする政策で補えると考えています。



2.人口過密、交通渋滞、教育機関不足

この問題もやはり社会主義から民主主義に移行したことによる問題です。いまウランバートルには全人口の40.6%が住んでいると言われています。これはアジアの他の都市(北京は1%、東京は6.4%、ソウルは20%)と比べてはるかにたかい一極集中型の都市というのがわかります。

ですから朝の通勤、通学ラッシュの時間やお昼の休み、帰宅ラッシュの時間にはどこもすごい渋滞が起こります。

ですから2年ほど前からは国から車のナンバーの最後の数字で走れない日(1、6は月曜日走ってはいけない、土日、祝日は関係ない)を決めています。この政策は正月時期や新学期が始まる時期など特にひどい渋滞が起こる時期には偶数と奇数で分けています。この政策のおかげでウランバートルの渋滞は20%ほど下がったそうです。

これ以外にも人口の集中は幼稚園や小中高大の学校などの教育機関の不足を招いています。僕の学校は私立なので1クラスには20人ほどですが、公立や国立の学校は1クラスに50~60人もいるので先生は一人一人に向き合えないため文字を覚えられずに小学校を卒業する子達も少なくないそうです。国はこの問題を解決するため少しずつこういう施設を増やしていますが(財政難などであまり多くは作れない)、それでも足りないのが現状です。

僕が国会議員ならこれらの問題の改善のためウランバートルから離れた郊外の町をウランバートルほどではなくても発展させ、ウランバートルの古くなった建設物を壊し新たに都市開発を進めたいと思います。やはりこれにも莫大なお金が必要になるためすぐには現実にするのは不可能ですが、そのことについては後の政策と合わせて話したいと思います。



3.モンゴルの経済を発展させるには

今モンゴルは不景気真っ只中です。2011年に17.9%を記録した経済成長率は今では2%台まで落ちました。それには様々な理由がありますが、一番はモンゴルから海外へ輸出されている鉱物資源や商品の相場が下がったこと、依存しきっていた中国やロシアの景気が下がったことなどが影響しています。

今モンゴルの経済にとって一番の問題は自国のブランドがカシミヤや鉱物資源しかないことです。これらの商品の相場が上がれば経済はまた上がるでしょうが、またいつ下がるかもわからないためすごく不安定です。それにモンゴルは鉱物資源が豊富でもそれを加工したりして物作りをする技術がありません。

  • そこで僕が国会議員なら両隣国に依存しきっている状態をやめ、これからは日本との貿易を発展させた方がいいと思います。モンゴルは日本の技術を日本はモンゴルの資源をという風に発展できればモンゴルも日本もどっちにも利益があるため、日本との結びつきをもっと強くします。
  • 郊外の町を発展させその道中の場所も発展させ観光客を増やします。これはウランバートルの人口過密などの問題も改善できます。
  • ビジネスをする上での法律の緩和を実行します。ビジネスのチャンスを増やすことで国の経済も上がると思います。


最後に僕は国会議員になったらモンゴル国発展のために今モンゴルで起こっている問題の改善に全力を尽くし、環境問題に対しては先に述べた政策を実行します。ウランバートルの人口集中の問題については郊外の町を発展させ、ウランバートル以外の場所での仕事先を増やします。これはモンゴルの経済に大変有益に働くと思います。それに加え日本との関係をもっと発展させ中国やロシアに依存した状態からぬけだします。

モンゴルはこれから大きく発展すると思っているので、未来のモンゴルを担う子供達を育てるため教育の分野に大変力を注ぎたいと思っています。