1. トップ >
  2. 参議院の動き >
  3. 平成29年の参議院の動き >
  4. 参議院70周年記念論文表彰式

参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

受賞論文一覧に戻る 


 科学技術を応援できる国、ニッポンへ

東京都  東京都立産業技術高等専門学校 3年

多田 有佑

日本は昔、技術大国として世界から注目される存在でした。ところが近年になって、日本はその地位を失いつつあります。世界中の国々が独自に技術を発展させ、今や日本のものづくりは、世界的に見るとその優位性を失いつつあります。

僕は、将来ものづくりに携わりたいと思う一人の学生として、日本のものづくりが、世界水準で優位に立てれば嬉しいと思います。そして、もっと多くの人が、自身を持ってものづくりに関する仕事に関心を持ち、将来それを志す若者が一人でも増えたらいいと思っています。

まず1つ目に、科学技術コンテストや各種イベントに対する投資を、国が積極的に行うようにしたいと思います。僕は、ロボットの競技大会で世界中のチームと交流する機会がありました。その時一番驚いたのは、マカオのチームと話をした時のことです。日本では、ロボット系のコンテストに出る場合は、自分たちで予算を確保するのが一般的で、僕達も資金は自分たちで調達していました。ところが、マカオのチームにそれを話すと「自分たちで資金を用意しているの?国の支援は無いの?」と言われました。マカオでは、科学技術系のコンテストに参加する学生のうち、国際競技等に参加する優秀なチームは、国が資金的なサポートをしてくれるのが一般的だそうです。僕は、それを本当に羨ましく思いましたが、同時に悔しくも思いました。日本は、昔技術大国と呼ばれながら、なぜ科学技術への支援が薄いのだろうと不満に思いました。僕が例に挙げたロボットは、科学技術系のコンテストの中でも特にお金がかかる競技です。しかし、現代の科学技術の根幹をなす重要な技術であることも間違いありません。もっと多くの支援があれば、もっと多くの学びを得られたかもしれないと思いました。

他にも、ワークショップ等のイベントも重要な支援の1つです。例えば東京では、日本科学未来館が定期で科学技術系のテーマのワークショップを開催しており、毎回多くの子供の参加者が集まります。僕は、このような体験ができる子供がもっと増えたらいいと思っています。そして、子供たちが科学技術への関心を持つきっかけになってくれればいいと思います。そして、子供たちが未来の技術を支える担い手になっていくのだと思います。

2つ目に、女性が科学技術系のテーマにより積極的に関わることができるような制度を、考えることです。日本では、男女共同参画基本法が制定されてから、男女があらゆる職業で平等に仕事ができるようになりました。ところが、理科・技術系、とりわけ工業系の分野では、その男女の比率が極端なのが現状です。このような分野内での男女比の偏りは、次の世代の男女比を留めるばかりでなく、結婚率の低下などを招き、近年の社会問題へとつながっていくのではないかと考えています。

この背景として、古くから日本では「工業は女性の仕事ではない」という固定概念が根付いてしまっていることが考えられます。事実として、女性が理系の分野に興味を持つ確率は男性に比べて低いですが、現状の職業内男女比はそれよりも明らかに極端です。

僕は将来「理系女子」という単語が使われなくなる事を期待しています。同時に、このような単語が使われているうちは、先に上げた問題が今存在している事になります。

最後に、義務教育についてです。義務教育では、理科と技術・家庭科の授業が導入されており、全ての子供は義務教育中で科学技術系の中でも基礎的な事を身につけることができます。しかし、昨今の技術分野の成長は目まぐるしく、例えばプログラミングは専門知識ではなく基礎知識と認識されるようになってきています。このように、技術の成長によって学ぶ内容が多くなってしまうのは当然のことで、それに従って学ぶ内容も量も増大していきます。従って、徐々にでも義務教育の内容を増やしていき、同時にその内容も効率化を図っていかないと、いずれ最先端技術を扱うだけの知識が賄えない可能性が出てくると思います。

以上、科学技術系のコンテスト及びイベントへの投資を増やすこと、女性が積極的に技術分野に携われるようになること、義務教育の内容を効率化し内容を増やすことについて述べました。