平成17年度外国議会との交流:参議院

国際関係

外国議会との交流

トルコ共和国大国民議会議長の招待による同国公式訪問及び
各国の政治経済事情等視察参議院議員団報告書

    団長 参議院議員  片山 虎之助
           同     国井  正幸
           同     佐藤  昭郎
           同     池口  修次
           同     岡崎 トミ子
           同     浜田  昌良
    同行 庶務部文書課      
        情報化推進室長    笹嶋   正
        参事            鎌野  慎一

一 はじめに

  本議員団は、トルコ共和国アルンチ大国民議会議長の招待により同国を公式訪問し、両国国会議員の交流を通じて両国の友好の絆を深め、相互の理解と親善関係を一層緊密にする目的をもって派遣されたものである。

 両国の議会間交流は四十年を超える歴史を有しており、二〇〇三年にはアルンチ議長が日本を、本岡参議院副議長がトルコ共和国をそれぞれ公式訪問している。

 本議員団は、十一月八日に日本を出発して同十一日までトルコ共和国を公式訪問し、議会要人等との会談を精力的に行った。また、帰途ギリシャ共和国に立ち寄り、当地の政治経済事情等の視察を行った。以下、その詳細について報告する。

二 訪問日程

 十一月 八日(火) 東京発
              イスタンブール着

 十一月 九日(水) イスタンブール市内視察
              イスタンブール日本人会との懇談
             ボスポラス海峡横断鉄道トンネル整備状況等視察

 十一月 十日(木) イスタンブール発
              アンカラ着
              チャヴシュオール土日友好議員連盟会長主催昼食会・懇談
              クズー憲法委員会委員長との会談
              アルンチ議長表敬訪問
              本会議傍聴(参議院議員団の紹介あり)
              議事堂視察
              片山団長主催夕食会

 十一月十一日(金) 土日基金文化センター視察
              アンカラ市内視察
              アンカラ発(イスタンブール経由)
              アテネ着

 十一月十二日(土) オリンピック施設跡地利用状況視察
              アテネ市内視察
              アテネ日本人会との懇談
              アテネ発(フランクフルト経由)

 十一月十三日(日) 東京着

三 議会要人等との会談要旨

 1 チャヴシュオール土日友好議員連盟会長との懇談

 チャヴシュオール会長のあいさつ、片山団長のあいさつ及び議員団の紹介に続き、チャヴシュオール会長から、「日本・トルコ関係は大変良好であり、日本とは技術協力を始めとして様々なプロジェクトを実施中である。また、今年は愛知万博が開催され、多数の日本の方がトルコ館に来館し、我が国の文化に親しんだと聞いている。トルコ館がパビリオン・コンテスト中規模館カテゴリーで金賞を受賞したという知らせも喜ばしい。日本からトルコへの観光客は一時期、SARS(重症急性呼吸器症候群)や不安定な中東情勢の影響で減少し、二〇〇三年のイスタンブールのテロ事件は観光業界に深刻な影響を及ぼした。私は土日友好議連会長としてJATA(日本旅行業協会)等に働きかけ、トルコのイメージ回復に努めた。日本外務省の出したトルコに対する渡航情報のレベルも下げられ、再び日本人観光客が増加し始めている。これは歓迎すべきことである」との発言があった。

 片山団長は、「土日友好議連登録人数は、トルコ議会における議連の中で最大であると伺っている。日本もこれに負けないように親トルコ家を増やし議連を盛り立てていきたい。今回トルコを初めて訪れ、トルコが目覚ましい経済発展を遂げている、ヨーロッパとアジアを結ぶ大国であることを実感した。二〇〇三年の「日本におけるトルコ年」関連イベントや今年の愛知万博で日本国民のトルコに対する認識は高まっており、これはトルコへの投資につながっていくと考えられる。滞在の印象として、イスタンブールではビルの立ち並ぶ近代都市と古代より伝わる優れた遺跡が共存している様子に目を見張り、アンカラでは大都市の活力に驚きを覚えている。経済関係においては、イスタンブールを視察した際、ボスポラス海峡横断鉄道建設工事が遺跡調査の関係で大幅に遅れているという話を聞いたが、日本としては迅速な調査の終了及び横断鉄道の早期完成を願う。トルコはこれからも大きく伸びていくと確信しており、アジア地域の両端に位置する国として、互いに連携を強めていきたい。このためには、政府間の交流のみでなく、国民の代表である議員同士が活発な交流を結ぶことが重要である」旨述べた。

2 クズー憲法委員会委員長との会談

 クズー委員長のあいさつ、片山団長のあいさつと議員団の紹介の後、本議員団から、トルコにおける憲法改正に関して、(1)改正の経緯、(2)国民投票制度の仕組み等について質問がなされ、クズー委員長から(1)一八七六年以来、大きく分けて五度の憲法制定を行った。国民投票制度が導入されたのは一九六一年と一九八二年の二つの憲法で、実質的に憲法改正手続として国民投票を行ったのは一九八二年憲法になってからである。この二つの憲法は、クーデターの結果作られた新たな憲法であるため、そもそもでき方自体に問題があるとの批判もある。なお、トルコでは、国民投票は憲法の改正時のみに行われ、法律については行われない。憲法改正案は、議会定数の三分の二の賛成を得ると大統領がこれを国民投票にかけるか、承認するか、若しくは国会へ差し戻すこととなる。三分の二未満であった場合、大統領は承認することはない。しかし、トルコでは、憲法改正の頻度に比べ国民投票があまり実施されてこなかった。その理由には、コストがかかること、また国民投票によって政治的均衡が崩れる恐れがあることが挙げられる。国民投票に関する法律は一九八七年に施行された。国民投票の有権者は選挙権と同じである。投票の過半数の賛成によって可決とされる。(2)一括して投票に付すか、それとも各条文・項目毎に行われるかについては議会に決定権限があると憲法に記されている。また、国民投票にどのような形で付されるのかは、憲法改正案の最終項に記載される、との回答があった。

3 アルンチ大国民議会議長表敬訪問

 アルンチ議長から、「片山団長を始め参議院議員団の訪問を心から歓迎する。土日関係は一九世紀にさかのぼり、以降良好な関係が続いており、議員間、政府間関係も良好である。私自身、議長に選ばれてから最も早い外国公式訪問の一つとして、二〇〇三年六月に日本を訪れ、当時の倉田参議院議長及び本岡副議長にお世話になり、同年九月には本岡副議長がトルコを訪問されている。その後も様々な方とお会いする機会があったが、この度皆様をお迎えできたのは更なる喜びである」旨のあいさつがあった。

 片山団長は、アルンチ議長の御招待に心から感謝申し上げる旨を述べ、本議員団の紹介を行った。

 その後の意見交換において、本議員団から、(1)日本の円借款で建設中のボスポラス海峡横断鉄道の遺跡調査と工期短縮について、(2)トルコの社会保障政策における女性の位置付けについて、(3)国会会期中の大臣の海外出張について等の質問が出され、アルンチ議長から、(1)本件はイスタンブール市が中心となって進めているので、国会議長として正確なことは承知していない。チャヴシュオール土日議連会長がフォローし、後日お伝えできればと思う。日本の最先端技術、資本はトルコの発展に大変役立っており感謝している。しかしながら、我々としては日本からより多くの投資を期待していきたい。そのためには、国家間、政府や議会間のより良い関係が重要であると信じている。(2)トルコにおいて女性へ選挙権が与えられたのは七十五年前で、現在では国会に二十四名の女性議員がいる。地方自治体においても女性は市長、議員として選出されており、現在の憲法裁判所長官も女性である。このように、トルコでは政治家、技術者、医者など、女性の社会進出が目覚ましい。現政権では、特に社会保障に関連して改革を進めている。出産前後の休暇取得が法律によって認められているのは女性にとっても大きい。また、貧困者、年金生活者の医療負担はすべて国が賄うという法律も現政権下で整備された。今後とも健康で豊かな生活を送り、成長を続けることを目指していきたい。(3)トルコは日本と違い、一院制である。一九六〇年代は二院制であったが八〇年代に一院制に改められた。五年に一度選挙が行われ、通常国会は十月一日から始まり、七月一日まで休みなく開会する。審議は火、水、木曜日に行われるが、他の曜日に審議を続けることも可能である。また、決議によって臨時会を開くこともできる。原則として大臣が外国出張中は他大臣が臨時代理を務めるので出張は可能である、との回答があった。

4 土日基金文化センター理事長との会談

 サドゥクラル理事長と片山団長のあいさつに続き、同理事長から、「土日基金は一九九三年に活動を開始し、同文化センターについては、トルコ政府の供与による一万平方メートルの土地の上に、一九九八年五月、三笠宮寬仁親王殿下同妃殿下の御出席も賜り開館した。それ以来、日本語講座、折り紙講座の開設、二百を超える文化行事を実施してきている。日本語講座については現在約七十名を超える受講生がいる。このセンターは、トルコが自ら日本と日本の文化などを紹介する目的で建設されたものであり、世界でも類を見ない二国間の友好の象徴となるセンターである。センター開設に際しては、半分以上がトルコ政府及びトルコ企業による資金援助を受けた。もちろん、日本企業からも資金援助を頂いている。日本政府からも二回の文化無償資金協力を実施していただいたほか、文部科学省関係者、NHKによる図書・ビデオの寄贈に加え、国会議員の皆様からも図書や囲碁盤などを頂いている」旨の説明を受けた。

 片山団長からの運営予算についての照会に対して、同理事長から、「通常の運営資金は別棟の賃貸料で賄っている。ただし、これだけの大きなセンターを運営することは大変困難であり、経営状況は厳しい。そのため、結婚式やサッカー中継などでホールを貸し出すなど、様々なアイデアで何とか資金繰りを付けている。自分はこのセンターの運営のために、過去に大臣、中央銀行総裁であった頃の人脈を駆使しているほか、私費もなげうっている。本センターには日本から多くのハイレベルの方々に訪問していただいているが、皆一様にトルコ側のイニシアティブで作られたこのセンターの重要性を指摘いただくとともに、もっと積極的な活動をしていくべきことが示唆されてきている。日本政府にもできることが限られていることは十分承知しているが、トルコの日本に対する愛情の表れでもあるこのセンターに対する支援は、未だ十分とは言えないのではないかと思っている。ついては、どのような形でも構わないので、今後とも日本からの支援を頂ければ幸いである」旨の発言があった。

 この後、日本研究センター、囲碁教室、遠山図書館、各ホールを視察した後、大ホールにて土日基金紹介ビデオを鑑賞した。

5 ギリシャ文化省次官との会談

 オリンピック施設跡地利用状況視察においては、アテネ五輪メインスポーツセンターを見学した後、クラダス文化省次官からオリンピック施設の今後の利用計画について説明を聴取した。

 クラダス次官及び片山団長のあいさつの後、同次官より、オリンピック後の施設の利用計画について世界各地から官僚や技術者が説明を聴きに来るが、オリンピックを開催することが大きな課題だったために、その後の利用計画については経済的・技術的な困難が伴っている旨の発言があった。

 本議員団から、(1)利用計画の作成経緯、(2)スポーツ競技以外の利用目的、(3)メンテナンスのコスト、(4)地方自治体に存在する施設の利用予定等について質問が出され、クラダス次官から、(1)一九九七年の開催決定の際に、組織委員会を作ると同時に跡地利用の委員会も作るべきだった。今回のオリンピックは、EU統合に当たって透明性を求められるなど、予想以上の仕事が生じた。しかし、我々は短期間に一つの利用計画を戦略的に作ることに成功した。(2)「オリンピック不動産」という会社を設立し、頻繁に利用される施設のコストパフォーマンスを計算して、利用が少ない施設の維持費に充てる計画を立てた。これまでは運動競技場のみの利用であったが、法改正を行って商業目的にも使えるようにした。「オリンピック不動産」では、現在五つの施設の入札を行っており、今後三~五年の間に三億ユーロ以上の収益と一万四千人余りの雇用を生み出す予定である。多くの競技場は公有地の上に作られているので、その不動産価値を見ながら貸し出すという方法を考えている。アテネはインフラも整っていない問題の多い街であったが、公有地に多額の費用を使って施設を作ったことから、今後はアテネ市民の役に立てたいと考えている。オリンピックの利益を考えるときには、金銭的な単純計算ではなく、イメージアップなど、それ以外の利益も考えるべきである。(3)年間八千七百万ユーロ程度と考えているが、予想どおりになるかどうかは不確定である。(4)地方にある三つのサッカースタジアムについても、すべて「オリンピック不動産」で取り扱う。地方にはこのような施設がなかったので、主にプロスポーツなどへの利用価値はある、との回答があった。

6 その他

○イスタンブール日本人会との懇談においては、三菱商事トルコ総代表菅野洋一氏、トルコ三井物産社長青木雄一氏、トルコ住友商事社長岸本和也氏及び大成建設株式会社ボスポラス海峡横断鉄道建設工事(作)工事長吉田明氏より御意見を伺い、日本とトルコとの経済関係の現状等について意見交換を行った。

○ボスポラス海峡横断鉄道トンネル整備状況視察においては、大成建設の現地事務所において、日本の円借款による建設工事の進捗状況について説明を聴取した。同事業は日本国際協力銀行から資金を調達し、大成建設を中心とする共同企業体が施工を請け負っている。契約金額は約千二十三億円、契約工期は五十六か月であるが、これには遺跡調査を含んでいないため工期に遅れが出ているとのことであった。

○アテネ日本人会との懇談においては、三井物産株式会社アテネ事務所所長工藤匠氏、伊藤忠ギリシャ会社社長瀬尾健氏、ジャパン・エア・バケーションズ社長水田敏夫氏、丸紅株式会社アテネ事務所所長岩波賀男氏及びアテネ日本人学校長菊池修氏より御意見を伺い、日本とギリシャの貿易関係、日本人観光客の状況等について意見交換を行った。

四 おわりに

  本議員団は、トルコ共和国大国民議会の周到な準備と誠意ある接伴により、無事かつ有意義に各種会談等を行うことができた。今回の訪問が日本とトルコ共和国との友好関係を一層促進することにつながるものと確信する。

 本報告を終えるに当たり、アルンチ議長を始めとするトルコ共和国大国民議会の御厚情に深く感謝申し上げる。また、在イスタンブール総領事館、在トルコ大使館、在ギリシャ大使館及び在フランクフルト総領事館の行き届いたサポートについても、ここに特記し、厚く御礼申し上げる。