平成17年度外国議会との交流:参議院

国際関係

外国議会との交流

チェコ共和国上院の招待による同国公式訪問
及び各国の政治経済事情等視察参議院議院運営委員長一行報告書

            団長 参議院議院
                運営委員長   溝手  顕正
                参議院議員   小斉平 敏文
                  同       平田  健二
                  同       弘友  和夫
            同行 委員部副部長
                 議院運営課長
                事務取扱     中村   剛
                参事        伊藤  文靖

 本議員団は、チェコ共和国上院の招待による同国公式訪問及び各国の政治経済事情等視察のため、平成十七年十一月五日から十二日の八日間、オーストリア共和国、チェコ共和国及びハンガリー共和国の中欧三か国を訪問した。

 日程は、次のとおりである。

   十一月五日  東京発 ウィーン着(二泊)

       六日  ウィーン視察

       七日  オーストリア共和国連邦議会訪問
            アンナ・エリザベス・ハーゼルバッハ・オーストリア共和国連邦議会副議長
            との会談
            ウィーン発 プラハ着(二泊)

       八日  チェコ共和国上院訪問
            ヤロスラフ・クベラ・チェコ共和国上院憲法法律委員長主催ワーキングランチ
            昭和アルミニウムチェコ視察

       九日  プラハ発 ブダペスト着(二泊)
            ブダペスト視察

       十日  ハンガリー共和国国民議会訪問
            マンドゥル・ラースロー・ハンガリー共和国国民議会副議長との会談

      十一日  ブダペスト発 フランクフルト経由(機中泊)

      十二日  東京着

はじめに

 発足以来統合の深化と拡大を続けてきた欧州連合(EU)は、二○○四年五月の中・東欧十か国の正式加盟によって、二十五か国体制に拡大を遂げた。

 新規加盟国の多くは旧共産圏であるが、ベルリンの壁崩壊後の民主化と市場経済化を目指した改革によってEU加盟基準を達成し、安定的発展の基礎を築くとともに、EU全体としては総人口四・五億人の単一市場を形成するに至っている。チェコやハンガリーにおいては、欧州通貨同盟(EMU)への加盟すなわち、統一通貨ユーロの導入が今後の目標となっている。

 オーストリアは、一九九五年、EUに加盟し、本年加盟十周年を迎えた。西欧の最東端として旧共産圏諸国との関係が深かったが、今や首都ウィーンは、拡大EUの地理的中心に位置することとなった。来る二○○六年前半にはEU議長国を務める予定であり、フランス、オランダでの国民投票否決によって足踏み状態の欧州憲法条約批准に向け、どのような役割を果たしていくのか注目される。

 また、本年は、日・EU市民交流年であり、EU諸国においても日本をテーマとした様々なイベントが開催され、日・EU間の交流と相互理解が一層深まることが期待されている。

 我が国国会とEUの議会である欧州議会との議員交流としては、一九七八年以来の歴史を有する、日・EU議員会議があり、双方の議員が隔年で相互訪問と日・EU間や国際社会における諸問題についての定期協議を続けている。

 参議院と各EU加盟国との議会間交流も活発で、オーストリア連邦議会(上院)、チェコ上院、ハンガリー国民議会のいずれとも、交流の歴史を重ねてきた。本年四月には、チェコ上院憲法法律委員会のクベラ委員長一行が訪日し、参議院の法務委員長、憲法調査会と会談し、クベラ委員長から本議員団が招待を受ける契機となった。また、十一月には、扇参議院議長の招待によるシリ・ハンガリー国民議会議長の訪日も実現を見るなど、着実に議会間交流が行われている。

 今回、EU加盟後間もないチェコ、ハンガリーを含む中欧三か国を歴訪し、議会関係者との懇談や意見交換を通じて交流を促進できたことは、我が国と中欧三か国との相互理解・友好関係の発展にとって、極めて有意義であった。さらに、現地の日系企業訪問など拡大EUの現状への理解を深められたことは、我が国の対EU政策の在り方に関し、様々な示唆を得る機会となった。

 以下、チェコ共和国上院の招待による同国公式訪問及び各国の政治経済事情等視察について、その概要を報告する。

一、オーストリア共和国

(一)議会制度
 オーストリア共和国の議会は、連邦議会(上院)と国民議会(下院)から構成される二院制を採っている。

 連邦議会は、連邦を構成する九つの州議会から人口比で選出される六十四名の議員で構成され、任期は出身州議会での任期(一つの州のみ六年、他の州は五年)による。主たる権能としては、国民議会への法案提出、国民議会で可決された法案への異議申立て(国民議会で再議決されれば法案成立)、憲法改正を国民投票に付する旨の決議、憲法裁判事の一部の指名が挙げられる。

 国民議会は、連邦、九つの州及び四十三の地域の計五十三選挙区から比例代表制で選出される百八十三名の議員で構成され、任期は四年、選挙権は満十八歳以上、被選挙権は満二十五歳以上に与えられる。主たる機能・権限としては、連邦法の制定、内閣又は個別閣僚の不信任決議、憲法裁判事の一部の指名、閣僚の憲法裁への訴追が挙げられる。

 なお、両院議員によって構成される両院総会は、大統領の就任宣誓の受諾、大統領の憲法裁への訴追等の権限を有する。

 現在、国民議会では第一党の国民党(七十九議席)が自由党(十八議席)との保守連立によって過半数を占め、政権を担っているが、連邦議会では、欠員が二あることから、野党の社民党(二十八議席)と緑の党(四議席)で過半数を占め、両院間の「ねじれ」現象となっている。

(二)ハーゼルバッハ連邦議会副議長との会談
 一行は、十一月七日、オーストリア共和国連邦議会を訪問し、ハーゼルバッハ副議長(社民党)と会談した。会談には、墺日議連のヴィンター上院議員(社民党)等が同席した。

 冒頭、ハーゼルバッハ副議長から、オーストリアの政治制度について説明があった後、両国に共通する論点として、二院制と憲法改正について意見交換したいとの提案があった。

 ハーゼルバッハ副議長は、オーストリアにおいても二院制の必要性が議論されることがあるが、二院制はオーストリアの連邦制に配慮した制度であり、世界的にも二院制を採用する国が多い、上院が各州の権能を満たすとの観点から立法をチェックしている旨発言した。

 これに対し、溝手団長は、日本でも同様の議論があり、法案については両院の権能が同一であることから、重要法案が第二院の否定的判断により廃案に至るなど深刻な事態をもたらすこともある、オーストリアは州代表で上院を構成する点で二院制が合目的的と思われる旨発言した。

 また、憲法改正については、ハーゼルバッハ副議長より、オーストリアでも、議会の三分の二の賛成と国民投票が必要でハードルが高い旨説明があった。

 これに対し、弘友議員より、日本も同様にハードルが高いがオーストリアでは改正の例があるのか尋ねたところ、ハーゼルバッハ副議長は、EU加盟交渉開始の承認を国民投票にかけたが、原発推進の是非など憲法と同じ効力を持つ法律を制定するケースが増えている旨回答があった。また、溝手団長より、日本の二院制も、占領下の現行憲法制定という事情によるところもあり、現在の憲法改正論議の論点の一つとなっている旨述べた。

 今次会談を通じ、双方は、二院制をめぐって問題意識を共有し、一層の議会間交流が両国の関係強化の礎となるとの認識を再度確認した。

二、チェコ共和国

(一)議会制度
 チェコ共和国の議会は、上院と下院で構成される二院制を採っている。

 上院は、小選挙区制で定数は八十一名、任期は六年で、上院の機能が継続するよう、解散はなく二年ごとに三分の一が改選される。すなわち、二年ごとに二十七の選挙区で上院議員選挙が行われる。被選挙権は四十歳以上、選挙権は十八歳以上である。下院の解散中には、緊急事態に対し、上院のみで政府提案の法案を可決できる。主たる権能は、下院から送付された法案の審議(可決、否決、修正)、法案の起草、条約・宣戦布告の承認、憲法裁判事任命の承認、オンブズマン候補者の推薦等が挙げられる。なお、大統領の選挙は、上下両院合同会議において行われる。

 下院は、十四選挙区での比例代表制で、定数は二百名。任期は四年だが解散があり、被選挙権は二十一歳以上、選挙権は十八歳以上である。下院は、すべての法案の先議権を持ち、上院が下院の送付案を否決・修正した場合、総議員の過半数の賛成によって、下院の送付案を再議決することができる。

 現在、下院では、連立与党の社会民主党(左派、七十議席)、キリスト教民主連合・人民党(中道、二十一議席)、自由連合・民主連合(右派、十議席)が過半数の百一議席を占めている。一方、上院では、二○○四年十一月の選挙に敗北した与党が三十四議席にとどまって過半数を割り込み、野党の市民民主党(右派、三十七議席)等が優勢となっている。

(二)クベラ上院憲法法律委員長主催ワーキングランチ

 一行は、十一月八日、チェコ共和国上院を訪問し、クベラ憲法法律委員長(市民民主党)主催のワーキングランチに招かれた。先方からはフェベル、ヤナタ両副委員長を始め六名の上院議員、我が方からは当地出張中の金田勝年外務副大臣の同席を得た。

 席上、クベラ委員長から、本年四月の訪日について関係者への謝意が述べられるとともに、チェコには多くの日系企業が進出しクベラ委員長の地元のテプリツェ市近郊でも自動車用ガラスを製造している旨紹介があった。また、内政上、ロマ人政策、労働法改正などが課題となっていると述べるところがあった。

 溝手団長からは、衆議院解散によって延期を余儀なくされたチェコ訪問がクベラ委員長の再度の招待で実現したことに謝意を表し、一九九○年にチェコを訪れた際には投資環境が整わず日系企業の進出が進んでいなかったがEU加盟などをきっかけとして中東欧への投資が盛んになっている旨述べたほか、チェコの労働法改正に関連して我が国の労働市場における終身雇用慣行について説明する等した。

 ワーキングランチにおいて、双方の出席議員は忌憚のない意見交換を行い、両国上院間の交流を大いに深めることができた。

(三)昭和アルミニウムチェコ視察

 チェコ共和国の主要産業は、機械工業や化学工業であり、一九八九年の民主化以降、順調な経済成長を続けた。一九九○年代後半には一時深刻な不況に陥ったが、これを克服し、二○○○年代には、欧州経済の低迷にもかかわらず、内需により比較的高い成長率を記録している。二○○四年にはEUに加盟し、二○一○年にはユーロが導入される見込みである。このような情勢を背景に、二○○○年以降、特に自動車分野を中心に日系製造業の進出が加速し、二○○五年十月現在での進出企業数は百五十八社と中東欧最大となり、三万人強のチェコ人の雇用を創出するに至っている。

 日系企業の一つである昭和アルミニウムチェコは、一九九七年八月プラハ近郊のクラドノ市に設立され、一九九九年二月に操業した、昭和電工株式会社の百パーセント出資の現地法人で、資本金は五億三千百八十三万チェコ・コルナ(約二十六億円)。主要製品はカーエアコン用コンデンサで、二○○四年の売上げは十七億二千四百万チェコ・コルナ(約八十五億円)となり、ドイツを中心とした欧州の自動車産業のコンデンサ需要に応じている。二○○五年九月末現在、四百七名の従業員のうち、社長を含む五名が日本人駐在員である。

 現地では、脇田直志社長より概況の説明を聴取した後、工場内を案内していただいた。チェコに立地することで、高速道路・エネルギー供給などの整備されたインフラを活用できること、熟練工や有能な技能者が得られること等の利点がある。一方、七パーセントに上る高い病休率、雇用者三十五パーセント・被用者十二・五パーセントの高い社会保障負担、管理者クラスの採用難など、問題も抱えているとのことであった。

 なお、当地出張中の金田勝年外務副大臣は、本視察に参加した。

三、ハンガリー共和国

(一)議会制度
 ハンガリー共和国の議会は、国民議会の一院からなり、任期は四年(解散あり)、定数三百八十六議席で、小選挙区から百七十六議席、二十区の地域比例代表から百五十二議席、全国比例代表から五十八議席が選出される。選挙権及び被選挙権は、いずれも十八歳以上でハンガリー国籍を有することとされている。本年五月現在の議席数は、社会党百七十八議席、自由民主連盟二十議席、青年民主連盟・ハンガリー市民連盟百六十九議席、ハンガリー民主フォーラム八議席、無所属十一議席となっており、社会党と自由民主連盟が中道左派連立政権を構成している。

 主な権限としては、憲法の制定・改正、法律の採択・改正、財政収支報告及び予算の承認、国際条約の承認、宣戦布告、緊急事態宣言、戒厳令布告、大統領・首相・憲法裁判事・最高裁長官等の選出、恩赦などがある。

(二)マンドゥル国民議会副議長との会談

 一行は、十一月十日、ハンガリー共和国国民議会を訪問し、マンドゥル副議長(社会党)と会談した。

 マンドゥル副議長からは、シリ議長(社会党)が参議院の招待で訪日している間に参議院の議員団をお迎えするのは活発な人的交流と両国の友好関係の反映で喜ばしい、両国は経済的にも良好な関係にありマジャール・スズキが製造する自動車は「私たちの車」というキャッチコピーを付される程である、高い技術力を持つ日本から体制転換後多額の投資を得て今日のハンガリーがあることに感謝する等述べるところがあった。

 溝手団長からは、歓迎に謝意を表するとともに、スズキの自動車がハンガリーに溶け込んでいるのは喜ばしい、日本の技術力を評価していただいているが中国・韓国・インド等アジア地域のライバルと競争していかなければならない状況にある、特に中国の成長と改革の動向を注視したい等述べた。

 会談は、終始友好裏に進行し、ハンガリー国民議会と参議院の関係を一層深めるものとなった。

終わりに

今回の訪問においては、梅津至駐オーストリア大使、熊沢英昭駐チェコ大使、稲川照芳駐ハンガリー大使を始め、各地において在外公館員等多くの方々にお世話になった。この場を借りて、関係各位に厚くお礼を申し上げるものである。