国際会議 WTOに関する議員会議:参議院
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○WTOに関する議員会議・第10回運営委員会派遣報告

 WTOに関する議員会議・第10回運営委員会は、2005年9月22日(木)及び23日(金)、スイス・ジュネーブのIPU(列国議会同盟)本部において、IPU及び欧州議会の共催の下で開催された。同運営委員会は、WTOの最近の動きについてWTO事務局から報告を受け、意見交換を行うとともに、本年12月に香港で開催される第6回WTO閣僚会議に併せて開催するWTO議員会議香港会合の最終準備をするために開かれたもので、運営委員国22か国のうち18か国・5国際組織から61名(うち議員28名)が参加した。我が国からは若林正俊参議院議員が参議院代表団団長として参加したほか、松岡利勝衆議院議員が個人の資格で参加した。
 同運営委員会の詳細については、後日配付予定の「WTOに関する議員会議・第10回運営委員会概要」に譲ることとし、本報告書では、参議院代表団の活動を中心にその概要を報告する。

1.第10回運営委員会

(1)WTOに関する最近の動きに関する最新情報

 アミナ・C・モハメドWTO一般理事会議長(ケニア)及び9月1日に新たに就任したパスカル・ラミーWTO事務局長から最近の多角的貿易交渉の状況について報告を受けた。

○モハメドWTO一般理事会議長
 農業分野の交渉は今注目を浴びているが、ドーハ開発アジェンダはもう少し幅広い視野から見る必要がある。2001年にドーハ開発アジェンダは開発に焦点を当てたラウンドとして合意された。ラウンドを成功させるためには開発の側面が非常に重要である。
 ドーハ開発アジェンダにおいてマイルストーンとなる非常に重要な合意が2004年の7月に行われた。香港会議はこれを成功させることによって2006年、このラウンドの最終段階の土台を作ることであり、非常に重要である。非常に難しい政治的参加が現段階では必要とされており、ここに皆様方が関与してくる。この交渉のエンジンはしばしば言われるように農業である。農業が動けば、全てが動く。農業で進歩がなければ、他の問題でも進歩は起きない。
 その他、非農産品市場アクセスもあり、国内支持削減、輸出補助金撤廃、輸出信用、食料援助、輸出国家貿易等をパラレルで取り組んでいく問題がある。国際貿易における大きなプレーヤーは将来の進捗に対して疑問を持っているようであるが、大きな責任も持っている。議員として皆様には御理解いただけると思うが、国内政治を優先してしまうのはしばしば誘惑的である。しかし、ドーハ開発アジェンダにおいては先進国、途上国を問わず、すべての国に恩恵がもたらされる可能性がある。非農産品市場アクセスの改善について進歩が見られるためには、やはり農業に進歩がなくてはならない。
 香港会議は重要であり、そこで成功することによって我々参加国全員が5年間の大変な作業の成果を享受することができるようにしなければならない。ドーハ開発アジェンダが合意され、誰もがそこから恩恵を享受することを望んでいる。途上国にとってはこれが本当に前向きの実質的な開発と発展のニーズに合う成果でなければならない。

○ラミーWTO事務局長
 ご存じのとおり香港での閣僚会議までわずかな時間しか残されていない。香港での閣僚会議でドーハ・ラウンドが終了するわけではなく、この交渉の締結に向けての一連のステップの一つである。しかし、これは非常に重要な一歩である。
 重要な鍵は、好むと好まざるとに関わらず農業である。しかしこれが政治的な現実である。148のWTO加盟国の人口の中で、どの分野で労働人口が一番多いかというと、それは農業である。アメリカ、EU、日本、その他の多くの豊かな国・市場においてはそうではないかもしれないが、途上国においては事実である。貿易全体量として小さいものであったとしても、国際的な貿易取引は行われている。農業においては、アメリカ、EU、日本、韓国、スイス、ノルウェーが「動き」をしなければならない。前回のラウンドで行われた国内支持の削減の何倍もの削減がなされなければならない。ウルグアイ・ラウンドでは一歩ステップを踏み出した。我々は、基本的にWTOの農業の取り込みの度合いを少なくとも2倍にしなければならない。
 もう一つの問題は関税についてである。輸入品に対する関税構造、関税率というものは国によって非常に多様であり異なる。148あるWTO加盟国の複雑さの中で関税の問題をどのように解決していくかということがある。より高い関税を持つ国は、低関税の国よりも割合として、より削減をしなければならないという考え方が出てきている。
 我々の活動は透明性のあるものでなければならない。WTOの事務局はキッチンである。そこで我々が調理をし、閣僚のテーブルにサーブをする。皆様もそのテーブルに座っていただくわけである。従来、キッチンというものは裏に隠れているものであった。しかし隠れたところで調理したものを召し上がっていただくというやり方は終結した。台所で何をしているのかということを議員の皆様がきちんと見たい、知りたいというのは当然のことである。皆様の考えが我々の活動のバロメーターと考えている。

 以上の報告を受けて日本議員団はパスカル・ラミーWTO事務局長に対して発言を行った。

(松岡利勝衆議院議員)
 ラミー氏に対しておめでとうございますと言うのと同時に、香港の成功のためにあなたの役割について、EUという巨大なプレーヤーから公平公正な審判役になられたわけであるから、話す方より聞く方に徹して欲しい。
 農業だけを強調することは危険であると思う。農業も進むから全体も進む、また他の分野も進むから農業も進む。全体がしっかりと進むことが大切であって事務局長としてそのような進め方をしていただきたい。
 農業の分野については、農業分野の成功のため、途上国への利益配分を多くするためには、市場アクセスも大事であるが、それ以上に、輸出競争や国内支持の解決が大切であると考える。

(ラミー事務局長)
 農業に焦点が当てられすぎているのではないかという御意見に対して、政治的現実を申し上げたいと思う。私も少し前まではこの交渉担当のポストにいた。農業に関する政治的現実はそれほどたやすいものではない。日本、韓国なども、国内支持、輸出競争、そして市場アクセスの分野でやらなければならないことがある。市場アクセスの分野においてもやはり日本がやらなければならないことがある。

(2)香港会合の日程

 運営委員会は会議の日程を協議し、香港会合を12月12日及び15日に香港ハーバープラザホテルで開くことを決定した。議事日程案は次のとおりである。

香港会合議事日程案

1,議事日程の採択
2,閣僚及びWTO役員との対話
3,ミレニアム開発目標達成のための貢献
(A)ドーハ開発アジェンダの達成
(報告委員)インド、ウルグアイ、英連邦議会連盟
(B)貿易政策と他の公共政策との首尾一貫性
(報告委員)日本、欧州議会、(モロッコ)
4,インターアクティブ・パネル・ディスカッション
「国際貿易分野における議会による監督の良き慣行」
5,国際機関、市民社会、ビジネス界、メディアなどの代表が参加する貿易と開発に関するハイレベル対話
6,宣言の採択

 (3)香港会合宣言案

 運営委員会は香港会合の報告者である南アフリカのベネディクト・アンソニー・マーティンンズ議員が作成した宣言草案について長時間にわたり意見交換を行った。宣言草案は宣言案準備プロセスのよいたたき台となることで意見が一致したものの、日本を含む多くの国からコメントや修正提案が出された。しかしながら、各国異なる立場からの修正意見を集約する時間が今次会合ではないため、9月30日までに修正意見を書面で提出することとなった。マーティンズ議員は提出された修正意見を取り入れた改正宣言草案を作成し、11月中旬までに各国に配付する。これを受けて各国は香港会合参加者による正式の修正案を提出することになる。
 日本議員団は宣言草案について若林正俊議員が以下のようなコメントを行い、修正案を文書で配付した。

(若林正俊議員)
 宣言草案全体を通じて重要な点を4つ意見として申し上げる。
 第一点は、WTOは、先進国と途上国、輸入国と輸出国、あるいはその中間の国など様々な国々から構成され、WTOに関する議員会議も様々な国の議会の代表者で構成されている。このため、香港会合の宣言は、先進国と途上国、輸入国と輸出国各々の視点のバランスを十分考慮したものとすべきである。
 第二点は、宣言の実効性の問題である。現時点では、昨年7月の枠組み合意と本年7月の各交渉グループ議長の交渉の現状評価を十分踏まえたものとする必要がある。今後香港会合までにいろいろな展開が出てくる。我々の宣言が実効性のない非現実的なものとなって閣僚や交渉官に対するメッセージの役割を果たすことができなくなってしまう恐れがある。今月から交渉が再開されており、これから12月の閣僚会議までの交渉の進捗具合を十分加味する必要がある。
 第三点は、農業交渉については、国ごとに異なる自然・国土条件の下で育まれた、各国の多様な農業の共存が可能となるよう、農業のもつ食料安全保障、国土保全、農村地域の活性化、農村雇用などの非貿易的関心事項、及び持続的な林業・漁業の問題について適切に対処しなければならないことである。この点は、これまでの昨年11月のブラッセル会合及び2003年9月のカンクン会合の宣言でも言及されており、香港会合の宣言でもこのことをきちっと位置付けておくべきである。
 第四点は、今回の香港会合の第一次草案は、これまでの2回の宣言と比べて途上国の視点に偏っているように見受けられるので、全体のバランスを取らなければならないと思う。また、交渉結果の2006年11月までの実施、輸出補助金のみならず、国内補助金を含めたあらゆる形態の農業補助金の段階的撤廃など、必ずしも交渉の状況に即したものとは言えないのではないか。
 最後に、WTO交渉では、昨年7月の枠組み合意以降に合意された文書はなく、その意味で、現在のWTO議員会議としての基礎は、昨年11月のブラッセル会合での宣言にあると考えているので、ブラッセル会合の宣言及びマーティンズ議員の第一次草案、そして本日出されるいろいろな意見を基本的に踏まえて新たな修正宣言案を作成する必要がある。報告委員を中心に事務局がサポートしてできるだけ早く第二次草案を作成して各国に送付していただくよう希望する。

2.要人との会談

 代表団は、運営委員会に先立ち、ジュネーブにおいてワセシャ・スイス国際貿易大使、バティア・インド大使、グレン・ノルウェー大使、ファルコナーWTO農業交渉議長、ヨークサWTO事務局次長と個別に会談した。

 代表団の先方に対する発言概要は次のとおりである。

 市場アクセス、国内支持、輸出競争の三分野をバランスがとれた形で解決すべきである。我が国は、昨年の枠組み合意で思い切って階層方式を受け入れるという政治決断を行ったところであり、一般品目の階層方式と重要品目の扱いは同時並行で議論・解決されるべきである。上限関税は、昨年の枠組み合意で表現が後退し過去のものになったと理解している。すべての交渉は積み重ねが重要であり、今蒸し返せば交渉全体がつぶれる。輸入国との相互調整なしに、G4(米、EU、伯、印)のような特定の国によって重要事項が決定されても、それを受け入れることは困難であり、透明でバランスのとれたプロセスを確保すべきである。林水産物については、有限天然資源の持続的利用、地球環境保全の観点から適切な配慮が必要である。関税削減フォーミュラにおいて全加盟国に柔軟性が認められるべきであり、林水産物を分野別関税撤廃・調和の対象とすべきでない。

 これに対する各人の発言概要は以下のとおりである。

○ワセシャ・スイス国際貿易大使
 G10として最も重視しているのは、上限関税の問題である。議論は排除しないが決して妥協はできず、提案側が撤回すべきと主張していくべきである。G10としてここ数か月間が決定的に重要であり、すべての問題について否定的と見られないよう積極的な姿勢を示す必要がある。特に輸出競争や国内支持では建設的になる必要がある。交渉プロセスの問題は、今週の拡大FIPs会合(日本、米国、EU、ブラジル、インド、豪州、カナダ、スイス、アルゼンチン、中国、マレーシア)や来週の日本主催SOM(高級実務者会合)に日本とスイスが参加するので、我々の立場をしっかり説明する必要がある。

○バティア在ジュネーブ・インド大使
 インドの主な関心は、零細な農家を守り、生計のための農業を維持していくことである。先進国による多額の補助金による貿易の歪曲の是正が中心的課題であり、市場アクセスの問題は補助金の問題が解決して初めて解決できる。G20提案は、議論のよいベースであり、交渉の結果、すべての加盟国が満足できる形で合意に至ることを期待している。関税削減方式は、G20内の合意達成のためにUR方式より累進性が高い方式(定率削減方式)で妥協。上限関税は、非農産品市場アクセス(NAMA)交渉とのバランスも視野に入れている。少数国グループの問題は、インドはG20の代表として参加しているが、拡大FIPsやバイ会合など、より大きなグループで補っている。G20は、アフリカ・LDC・ACPの各グループと積極的に協議しているが、G10とも協議を強化したい。

○グレン在ジュネーブ・ノルウェー大使
 上限関税の問題はG10をまとめる糊の役目を果たしており、戦略的にも強く反対していく必要がある。交渉プロセスは、透明かつ包括的なものであるべきであり、日本が来週SOMを主催することを歓迎する。G10は、小さな見解の相違があっても主要な点で意見が一致していることが重要であり、上限関税は引き続き共に協力し、その他の問題でも共通のポジションをつくっていくべきである。NAMA交渉や漁業補助金に関する日本の見解はオスロに伝えたい。ノルウェーも北方諸国との漁業戦争の中、いかに持続可能な資源利用を行っていくかが基本にあり、総論では日本と同じ立場である。漁業補助金の問題は、時間をかけて補助金を減らしていき、過剰漁獲とならないよう資源を維持していく方向であるが、正しい政策、持続可能な活動にインセンティブを与える補助金は残るであろう。

○ファルコナーWTO農業交渉議長
 三分野のバランスがとれて初めて交渉が進展することに同意する。輸出競争については輸出補助金の撤廃期限とパラレリズムの確保が課題である。国内支持については米国が現行だけでなく将来のレベルについてもコミットすることができるか否かが課題である。市場アクセスについては、最も多くの課題を残しているが、この分野の進展のためには国内支持分野での進展が必要である。交渉はすべての国に政治的な痛みが伴うものであるが、その国の農業をなくすことはできない。UR合意より多く、米国、ケアンズ、G20の要求より少ない政治的な着地点を見いだす必要がある。上限関税は、日本が受入れ不可能であることや、枠組み合意時の政治的バランスは承知している。他の問題のために上限関税で圧力をかけている国もあり、おそらく交渉の最終局面で解決される問題である。交渉プロセスについては、実質的に利害関係がある国がいない場で決めることは絶対にすべきでなく、問題に対処する責任を持った人が決定に加わるべきである。

○ヨークサWTO事務局次長
 農業の三分野だけでなく、非農産品、サービス等のすべての交渉分野のバランスが必要である。日本が農業や林水産物で困難を抱えていることは理解するが、農業支持が削減されれば、日本、米国等の先進国は全体として利益が得られる。農業保護の削減は、最終パッケージにおいて、すべての国が負担と利益をシェアすることが重要である。急激な変化ではなく、漸進的な変化となるようにすべきである。上限関税の問題は、事務局として具体的に答えることはできず、加盟国間の交渉の問題と考える。交渉プロセスの透明性の問題は、ラミー事務局長も全ての加盟国が参加できるよう、できる限りの努力を行うとしている。