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第59回国連総会の際のIPU議会人会合派遣報告

 第59回国連総会の際のIPU議会人会合は、2004年10月19日(火)及び20日(水)に、ニューヨーク(米国)の国連本部、経済社会理事会議場において、「軍縮から永続的平和へ:議会の役割の定義」をテーマに、58か国、183名の議員の参加を得て開催された。
 本議会人会合は、毎年国連総会の際にIPUが国連事務局の後援を得て開催する恒例行事となっており、その時々に国連が直面している主要な問題について、国連の幹部職員から説明を聴取し、意見交換を行う機会を議会人に提供することを目的に開催されている。今次会合はさらに、会議の概要や勧告等、より実質的かつ明確な形で国連側に成果をインプットできるよう、討議を1日半に拡大して開催され、日本国会として初めて参議院代表団が参加することとなったものである。
 なお、本代表団は、議会人会合への出席のほか、国連総会本会議において行われた国連とIPUを含む国際機関との協力に関する討議に出席するとともに、軍縮問題を扱う国連総会第1委員会の討議を傍聴した。
 本報告書では、代表団の活動を中心にその概要を報告する。

1.議会人会合

 会議は、軍縮・軍備管理、平和維持及び紛争終結後の復興という三つの議題を扱うセッションから構成され、国連の幹部職員、議会人、シンクタンク・学界の専門家、政府の国連常駐代表等をスピーカーとして、パネル・ディスカッション形式で進められた。なお、各議題の背景資料として、国連事務局が作成した文書が、事前に参加者に送付された。

開会式

 開会式は、10月19日(火)午前に開催され、セルヒオ・パエスIPU議長、ジャン・ピン国連総会議長及びルイズ・フレシェット国連副事務総長がそれぞれあいさつを行った。
 パエスIPU議長は、主権国家の代表である議会人は、軍備管理及び軍縮関連の国際文書の批准に向けた具体的行動をとり、そこに規定される義務を履行するとともにその透明性や不可逆性を確保しなければならないと述べた。また、和解と復興を一貫して実現していくことにより、平和と国際安全保障の前提となる安定した政治的環境を醸成することの必要性を強調し、利害関係を排し、平和のためのたゆまぬ努力を続けていきたいと発言した。ピン国連総会議長は、今次国連総会において国連とIPUを含む市民社会との関係が検討されていることに触れ、国連に議会の側面を持たせること及び行政・立法の権限分立について、国連加盟国が十分考慮することを希望する旨述べた。フレシェット国連副事務総長は、1年以内に国連総会のハイレベル会合が開催され、ミレニアム開発目標の履行状況の検討が行われることに触れ、IPUがこの目標の達成のために多国間の課題に焦点を当てて国民の啓蒙を行い、将来に向けたコンセンサス作りのための貢献を行うよう期待を表明した。また、国連平和維持活動は、世界の軍事支出と比較しても大変効果的な投資であることを強調し、国連に対する支援を自国政府に働きかけるよう要請した。

第1セッション「軍備管理及び軍縮に向けた国際体制の強化」

 阿部信泰国連軍縮局担当事務次長、ダグラス・ロッシェ元カナダ上院議員、エンリケ・ベルルーガ・国連メキシコ常駐代表・国連総会第1委員会委員長及び軍隊の民主的管理のためのジュネーブセンター理事長であるフィリップ・フルリ氏の4名のスピーカーの発言を聴取した後、一般討議として、参加者の意見交換が行われた。
 まず阿部国連事務次長から、大量破壊兵器の削減及び通常兵器の管理のための国際体制の現状について説明が行われた。阿部事務次長は、新兵器の開発、軍縮・不拡散コミットメントの非遵守、新たな形態のテロ、様々な援助の縮小等、軍備管理及び軍縮の目標の達成に立ちはだかる課題の解決に向けた議会の貢献を拡大する手段について、本討議において新たなアイデアが生まれることに期待を表明した。
 その他のスピーカーからは、核不拡散条約に関して、核兵器保有国が自らの核兵器の廃絶交渉を怠っていることに対する非加盟国の不満に加え、核兵器が非国家のテロリストの手に渡る危険も迫っているとして、2005年に予定される再検討会議を前に、同条約の存続が危機に陥っているとの懸念が示された。また、これに対処するため、核兵器の撤廃に熱心な国々の取組に協調していく必要性が訴えられるとともに、安全保障分野という政府の専門家が情報を握る分野においても、議会人が適切に情報を得て民主的な統制を行っていくことの重要性等が強調された。
 一般討議において、我が国からは広中和歌子議員が発言し、湾岸戦争の際にクウェートからの即時撤退と人質の解放を求めて国際的なレベルで女性議員の署名を集め、イラクに乗り込んだ経験を紹介して、軍縮問題にジェンダーの視点がより強く反映されるべきであると主張した。また、地球環境の視点の重要性についても強調し、ヨハネスブルグサミットでも認知された地球憲章の精神を広め、平和の文化を構築することが非常に大切であると述べた。広中議員は発言の締めくくりに、仮に世界の軍事予算の10%がミレニアム開発目標の達成のために使われるとしたら、世の中は本当に変わってくるのではないかとの願いを表明した。

第2セッション「21世紀の平和維持:ニーズと目的」

 まず、4名のスピーカーとして、へディ・アンナビ国連PKO局担当事務次長補、オリビア・カミタトゥ・コンゴ民主共和国下院議長、アダム・トムソン国連英国次席常駐代表及びブルッキングス研究所のウィリアム・オネイル氏が発言した。この中で、現在17のPKOが実施され6万人以上の人々が従事しているが、人材及び財政の両面で限界に達しており、加盟国からの一層の支援が必要であること、特に近年は、平和の定着や紛争予防のための取組の重要性が認識され、PKOの任務が停戦監視のみならず選挙監視、司法の整備、戦闘員の社会復帰、児童の保護等にまで及ぶようになっているため、専門家の派遣が必要とされていること、国連機関と現地機関との調整を行うとともに、現地の一般国民からの理解を獲得することが非常に重要であること、今日のように複雑化したPKOには、中立性ではなく、同じ基準やルールを同じような方法で適用する無差別性が必要であること等が強調された。
 その後一般討議に移り、我が国からは、仁比聡平議員が発言した。仁比議員は、今日の平和維持活動の上で、その非軍事的側面、とりわけ法の支配の要素が極めて重要であるとの提言に強い関心を持ったことを述べた上で、それぞれの社会の歴史と文化の多様性、その社会の選択と経験を尊重してこそ法の支配を生かすことができるのではないかと訴えた。また、来年が第二次世界大戦終結及び国連創設・国連憲章制定60周年であり、核兵器不拡散条約の再検討会議を迎えることからも、世界の平和とその規範にとって重要な意味を持つ年であるとして、国籍や言語の違いを超えて、戦乱や紛争に苦しむすべての人々に思いを寄せ、この議会人会合の成果を我が国に生かすために努力したいと述べた。

第3セッション「平和構築に向けた統合的アプローチ」

 ダニロ・テュルク国連政治局担当事務次長補、グイ・ヌゾウバ・ヌダマ・ガボン下院議長、ホセ・ルイス・グテレス国連チモール・レソト常駐代表、ネクラ・チルギ国際平和アカデミー副理事長及びジョージ・ワード大使・米国平和研究所専門教育プログラム理事の5名のスピーカーからの発言を聴取した後、参加者の意見交換が行われた。
 スピーカーからは、停戦協定が結ばれてもそのうち約44%が5年以内に紛争状態に戻るという実態から分かるように、紛争直後の取組が極めて重要であること、特に小国に対しては、国際社会の関心が薄れがちになるものの、平和構築のためには、国際的な支援を10年程度継続して行うことが必要であり、国際社会がより長期間高い政策レベルでかかわっていくことを可能にするため、国連内部に何らかの機関を設けるべきであること、紛争処理には対話、寛容性、人道性、恩赦といった要素が不可欠であり、議会は平和の文化の構築に向けた政策のために影響力を行使すべきであること、紛争の犠牲となる女性の役割が重要であり、平和構築の意思決定過程に女性を積極的に参画させる必要があること、あらゆる要素を認識し統合的かつ効果的な取組を行う上で、国連の各機関、外部の関係者と現地関係者、軍隊と文民、NGO等すべての関係者の間で、お互いの役割をよく認識し、調整が行われなければならないこと等について発言があった。
 一般討議において、我が国からは加納時男団長が発言した。加納団長は、平和構築に向けた統合的アプローチとして、紛争の未然防止、紛争への対処と終結への和平プロセス、紛争終結後の復興支援、これらについての当該国の強い意志と国際協力が重要であり、その中でも、スピーカーから指摘されたように、紛争直後の平和構築こそ再発防止に極めて効果的であるという点が重要であると考えると述べた。また、これらに取り組むに当たっての視点として、人間の基本的ニーズの充足、民主主義及び国連改革の3点を提案し、この中で、平和構築の前提は貧困の克服と最低生活の保証であり、ミレニアム開発目標の達成が重要であること、現在の対立や紛争の根元には不寛容性があり、自己の信念や信条に純化する余り、異なる意見や宗教の存在を認めず、異端として排除することが数多く見受けられるが、寛容こそが民主主義の神髄であること、国連は来年60周年を迎え、加盟国が創設時の4倍近くに急増しているのにもかかわらず5か国のままである安全保障理事会の常任理事国について、人口、GDP、財政基盤、PKO、国連活動への貢献度等を考慮して拡大し、その代表性を高めることが急務であること等について主張した。加納団長は、発言の締めくくりに、日本を含め国連を支える国の常任理事国入りを強く訴えた。

討議の総括:結論及び勧告

 各セッションにおいて、議会人代表としてそれぞれスピーカーを務めた、ロッシェ・元カナダ議員、カミタトゥ・コンゴ下院議長及びヌダマ・ガボン下院議長が議論の概要を総括した。
 軍縮及び軍備管理については、議会と議会人を関与させる必要性が強調された。例えば、各国の国際的なコミットメントを監視するために、IPUが作成した議会人のためのハンドブック及びワークショップの開催等の手段を用いて、よい経験や実践例の共有等を行うことにより、議会人の能力開発を図ることに関する提案がなされた。さらに、大量破壊兵器の問題に関し、特に核兵器不拡散条約の維持及び核実験停止条約の早期実施のために、国連の決議の強化にも取り組んでいくべきであるとされた。このほか、テロに対する闘いの時代に、人権及び基本的な自由が安全保障や警備の名の下に侵害されるおそれがあるという問題も取り上げられ、議会として民主主義的なコントロールを行うことの重要性が強調された。
 平和維持については、21世紀のPKOがあらゆる要素が複雑に絡み合って進められ、その中心が停戦から紛争の予防へと移ってきていることに留意し、軍事支出と比較して非常に少額にとどまっているPKOのための拠出を増加させていくことにより、世界的に恩恵が得られることが再度指摘された。その他、PKOを進めるに当たり、現地の一般国民、特に女性のニーズに敏感であるべきこと、信頼関係の構築のために、PKO軍が一般国民を保護するという明確な任務を持ち、公平でなければならないこと、IPUとしては、現地における法の支配の確保のために役割を果たし、選挙実施前の暫定議会と協力するなど、議会間の対話を促進していくべきであること、PKOのための拠出を増加する価値を自国の一般国民に理解してもらうことの重要性等が強調された。
 平和構築については、対話を重視し、内部及び外部双方の関係者を取り込んで、紛争の予防を図っていかなければならないことが訴えられた。また、各国議会において、平和維持に関する問題、特に核兵器の拡散防止等についての議論を行うとともに市民との対話を図るため、特別の日を設定してこれらを実行することに関する提案が行われた。
 最後に、IPU事務総長より、今次議会人会合の議論のまとめと勧告は、この3名の報告を基にIPU事務局により作成され、後日国連に提出される旨の報告があり、今次議会人会合は閉会した。

2.国連総会本会議

 10月21日(木)に開催された第59回国連総会本会議において、国連とIPUを含む国際機関との協力に関する討議が行われた。日本を含む84か国が共同提案国となった「国連とIPUとの協力」に関する決議案について、チリの国連代表部大使より趣旨説明があった。我が国の北岡大使もその演説の中で同決議案に言及し、これに対する支持を表明した。
 なお、同決議案は、関係国との更なる調整の後、若干の修正を経て、11月8日(月)、国連総会本会議においてコンセンサスで採択された(決議の全文は別添参照)。
 IPUと国連の協力については、2000年の国連ミレニアム宣言において、各国議会と国連の協力をIPUを通じて行うことがうたわれ、また、2002年には、IPUに国連総会のオブザーバー・ステータスが与えられるなど、両者の関係が強化されてきている。しかし、国連が市民社会との関係を強めようとする中で、この問題に関して国連事務総長により設置された有識者パネル(カルドーゾ・パネル)が、今年6月に提出した報告書において、議会と国連の相互作用を強化するための実効的なメカニズムとして、国連の内部に議会人が討議を行う委員会を設けることを勧告した。この勧告については、当初、今年の国連総会で検討されることとなっていたが、IPUは、議会人の委員会を政府間機関である国連の下に置くことは、権力分立の原則に抵触し民主主義を損なうおそれがある上、この委員会の機能がIPUの機能と重複すること等に懸念を持っており、同勧告に関する決定を1年延期し、来年9月にIPUが国連本部で開催する予定の第2回世界議長会議において、議会レベルで協議を行った上で、その成果を国連側に反映することを希望している。今回採択された決議には、これらの要望の趣旨が盛り込まれた。

3.国連総会第1委員会

 10月21日(木)午前、参議院代表団は、軍縮及び国際安全保障問題を所管する国連総会第1委員会を傍聴した。同委員会においては、地雷禁止条約及び軽火器の不法取引等の問題に関する討議が行われ、我が国から美根軍縮会議代表部大使が演説を行った。この中で美根大使は、各国が小火器及び軽兵器に関する国連の行動計画を強化し、国内的、地域的及び国際的な取組の強化のための努力を行うよう訴えた。

4.その他

 参議院代表団は、会議への参加に加え、ニューヨーク滞在中に、2001年9月11日のテロの現場であるグラウンド・ゼロを視察し、献花を行った。また、国連事務局の邦人幹部及び職員との懇談の機会を持った。

【別添】

第59回国連総会採択決議

国連とIPUとの協力
(2004年11月8日(月)、コンセンサスにて採択)

総会は、

 過去2年間にわたる国連とIPUの間の幅広い協力を評価した2004年9月1日付けの事務総長の報告書を考慮した上で、

 IPUが採択し国連総会で配布された決議及びIPUによって行われた過去2年にわたる国連支持の活動に留意し、

 国連における年次議会人会合を、総会の際に国連本部で開催される定期的な主要行事プログラムとして歓迎し、

 国連とIPUとの間の協力の基礎を築いた1996年の協力協定を考慮に入れ、

 平和及び安全保障、経済・社会開発、国際法及び人権、並びに民主主義及びジェンダー問題を含む様々な分野における国連と各国議会との協力を、議会の世界組織であるIPUを通じて強化しようと各国元首及び政府が決意したミレニアム宣言を想起し、

 また、IPUがオブザーバーの資格で国連総会の活動への参加を招請された2002年11月19日の国連総会決議57/32及び2002年11月21日の国連総会決議57/47を想起し、

 国連の活動に議会人をより制度的に関与させることに関する国連と市民社会との関係に関する有識者パネルの報告書に含まれる勧告に留意し、

1.国連に対し、一層の議会の貢献及びよりよい支援を提供するために、IPUが行っている努力を歓迎する。

2.2000年に国連ミレニアム総会と関連してニューヨークで開催された第1回世界議長会議のフォローアップとして、2005年9月に国連本部において、第2回世界議長会議を開催するという決定を、満足の意をもって歓迎する。

3.第2回世界議長会議の受入国に対し、同会議への国連加盟国のすべての議会代表団の参加者に、通常の便宜を供するよう要求する。

4.国連の活動に議会人をより制度的に関与させることに関する有識者パネルの報告書においてなされた勧告について、各国議会と協議するためのIPUの努力に留意し、議会人に関連する同パネルの勧告について最終決定を下すのに先立って、総会の審議に対する貢献として、このプロセスの成果について報告を受けることを期待する。

5.国連及びIPUに対し、様々な分野、特に平和及び安全保障、経済・社会開発、国際法、人権、並びに民主主義及びジェンダー問題において、事務総長の報告書が証明している両機関間の協力の非常に大きな利益を心に留めながら、緊密に協力を継続するよう奨励する。

6.第61回国連総会の仮議事日程に、「国連とIPUとの協力」と題する小項目を含めることを決定する。