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国際関係

国際会議

第112回IPU会議派遣報告

 第112回IPU会議は、2005年4月3日(日)から8日(金)までの6日間、マニラ(フィリピン共和国)のフィリピン国際会議場において、116のIPU加盟国、5準加盟国際議会、26国際機関等から1,127名(うち、議員614名)が参加して開催された。

 日本国会代表団(団長・瓦力衆議院議員、副団長・有村治子参議院議員)は、参議院議員3名、衆議院議員7名、衆参事務局職員及び同時通訳員から成る30名をもって構成された。

 第112回IPU会議の詳細については「第112回IPU(列国議会同盟)会議概要」に譲ることとするが、本報告書では、参加参議院議員の活動に重点を置きつつ、開会式、評議員会、本会議、参議院担当の「持続可能な開発、金融及び貿易委員会」等についてその概要を報告する。

1.開会式

 開会式は4月3日(日)、フィリピン文化センターにおいて、グロリア・マカパガル・アロヨ・フィリピン共和国大統領臨席の下、開催された。式においては、フランクリン・M・ドリロン同国上院議長、ホセ・デ・ヴェネシア同国下院議長及びセルヒオ・パエス・ヴェルドゥーゴIPU議長による演説、ロバート・オア国連事務総長補によるアナン国連事務総長のあいさつの代読が行われ、アロヨ大統領より開会が宣言された。

2.第176回評議員会

 第176回評議員会は、4月4日(月)及び8日(金)に開催され、参議院から有村議員が評議員として参加した。審議の主な内容については、以下のとおりである。

イ IPU加盟資格の問題について、グルジアの再加盟が承認され、その結果、IPU加盟国数は141か国となった。


ロ 2004年度会計結果について、内部監査委員の勧告に従い、同年度決算が承認された。また、剰余金18万9千スイスフラン余の運営基金への繰入れについても了承された。


ハ IPU規約及び規則の改正については、分担金の滞納を理由に資格停止となった加盟国の再加盟に際し、酌量すべき特別の事情がある場合には、個別に検討して滞納金の一部又は全部の免除を可能とする規定を追加することを内容とするIPU財政規則改正案について、おおむね了承が得られた。正式な改正案については、次回第177回評議員会に提出されることとなっている。


ニ 今後の会議予定について、第2回世界議長会議を2005年9月7日(水)から9日(金)までニューヨーク(米国)において、WTOに関する議員会議・第10回運営委員会を同年9月22日(木)及び23日(金)にジュネーブ(スイス)において、第113回IPU会議を同年10月17日(月)から19日(水)までジュネーブにおいて、第60回国連総会の際のIPU議会人会合を同年10月にニューヨークにおいて、WTOに関する議員会議・香港会合を同年12月12日(月)及び15日(木)に香港(中国)において、第114回IPU会議を2006年5月7日(日)から12日(金)までナイロビ(ケニア)において開催すること等が承認された。


3.本会議

 本会議は、4月4日(月)、5日(火)、7日(木)及び8日(金)に開催され、以下の議題について、審議が行われた。

 議題1 今次会議の議長の選挙

 4日の本会議において、ドリロン・フィリピン共和国上院議長が今次会議の議長に選任された。

 議題2 会議議事日程への緊急追加議題挿入要請の審議

 本議題については、日本、スリランカ、アルジェリア、チリ、ハンガリー、トルコ、インドネシア及びイランの8か国からそれぞれ緊急追加議題案が事前に提出されていたが、現地における関係国間の調整の結果、これらが一本化され、議題案「自然災害:防災、復旧、復興及び弱者の保護における議会の役割」が提案された。同議題案は、4日の本会議において、全会一致で今次会議の緊急追加議題として採択され、本会議議事日程に議題8として追加された。

 議題3 「女性の地位に関する国内及び国際政策の効果」をテーマとした世界の政治、経済及び社会情勢に関する一般討議

 本議題については、4月4日、5日及び7日の3日間にわたり討議が行われ、120名の各国代表等による演説が行われた。7日の本会議において、有村議員が日本代表の一人として演説し、国際社会において男女共同参画社会を促進する際には、各国で異なる歴史、風習、文化、価値観等を尊重するとともに、横糸に当たる「同世代人の連携」と縦糸に当たる「親から子、孫へと世代間で流れる知恵・文化」を編み合わせてこそ、強く根の張った男女共同参画社会を築くことができるとの考えを示した上で、男女が互いの特性を尊重し、すべての人が人間としての能力を十分発揮できる社会となるよう努力していく旨を表明した。
 また、同じく7日の本会議において、日本代表は韓国代表から竹島問題及び日本の歴史教科書検定に関する発言がなされたことに対し、IPU会議規則第22条第3項に基づく反論権を行使し発言を行った。発言の中で日本代表は、竹島は日本の領土であり、このような2国間の問題をIPUで議論することは適切でないこと、教科書検定は適切に実施されていること、日韓両国は、未来志向の友好協力関係の一層の発展のために努力する責任を担っているとの見解を示し、議会人相互間の結び付きの重要性を強調した。

 議題4 免罪を回避するために戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド及びテロリズムの裁判及び刑の宣告を行うメカニズムの設置及び機能のための議会の役割

 本議題について、平和及び安全保障委員会において起草された決議案が8日の最終本会議に提出され、同決議案は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。

 議題5 債務問題に取り組み、ミレニアム開発目標を達成するための革新的な国際的資金調達及び貿易メカニズムの確立のための議会の役割

 本議題について、持続可能な開発、金融及び貿易委員会において起草された決議案が8日の最終本会議に提出され、同決議案は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。

 議題6 HIV/エイズの予防、管理及び治療のための戦略において、人権の擁護を唱道し、実施するための議会の役割

 本議題について、民主主義及び人権委員会において起草された決議案が8日の最終本会議に提出され、同決議案は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。

 議題7 第114回IPU会議の議題の採択と報告委員の指名

 第114回IPU会議の議題のうち、参議院が担当する「持続可能な開発、金融及び貿易委員会」所管の議題として、「環境管理及び地球環境悪化との闘いにおける議会の役割」が承認され、同委員会の共同報告委員として、加藤議員及びJ・ノーノ議員(ブラジル)の2名が指名された。

 議題8 自然災害:防災、復旧、復興及び弱者の保護における議会の役割

 本議題について、起草委員会において起草された決議案が8日の最終本会議に提出され、同決議案は全会一致で採択された(決議の全文は別添参照)。


4.持続可能な開発、金融及び貿易委員会

 持続可能な開発、金融及び貿易委員会は、4月5日(火)、6日(水)及び7日(木)に開催され、本会議の議題5について審議が行われた。日本からは、犬塚議員及び加藤議員が参加した。審議に当たっては、前回の第111回IPUジュネーブ会議の際に指名された2名の共同報告委員(キューバ及びフランス)が作成した報告書案及び決議案について、各加盟国より、報告書案に対しては提案や批評を、決議案に対しては修正案を会議に先立ち提出することとされており、これらを反映した最終報告書及び各国提出修正案に基づく討議が進められた。日本は、共同報告委員作成決議案に対する修正案を事前に提出し、審議に臨んだ。
 5日の委員会においては、47か国及び世界銀行の代表者計48名の演説が行われた。日本代表として加藤議員が演説し、ミレニアム開発目標達成に向けて、革新的な国際的資金調達メカニズムの構築等、国際的支援の必要性を主張するとともに、武器取引制限条約の早期締結の必要性、関連する国連のハイレベル協議へのNGOの関与について検討する必要性、気候変動・自然災害が目標達成に与える影響に留意し「地球憲章」について再認識する必要性を訴えた。
 また同日、日本、ベルギー、エジプト、フランス、グアテマラ、ケニア、フィリピン、韓国、スウェーデン及びウルグアイの10か国の代表により構成される起草委員会を設置することが決定された。
 これを受け、翌6日に開催された起草委員会には、犬塚議員が参加した。同委員会の冒頭、L・ロサレス議員(フィリピン)が委員長に、J・L・フォンセア議員(グアテマラ)が委員会全体会合への報告者に選任された後、共同報告委員作成決議案に対し日本を始めとする各加盟国から提出された120を超える修正案について、逐条審議の形での検討が行われた。犬塚議員は日本が提出した8件の修正案、すなわち、(1)前文パラグラフ4について、想起すべきものの一つとして「2005年1月17日に公表された国連ミレニアム・プロジェクトの最終報告書」を加えること、(2)決議案前文として、「ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に当たり、環境の持続可能性の確保の重要性を認識し、2005年から始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」及び「『命のための水』国際の10年」が持つ役割を強調し、また、一つの大きな前進として、京都議定書が2005年2月16日に発効したことを歓迎し、」との新たなパラグラフを挿入すること、(3)前文パラグラフ12について、「現行の国際貿易・投資体制が明らかに先進国に有利な形で歪められており」との一節から「歪められて」との表現を削除すること、(4)決議案前文として、「7月のG8先進国首脳会議、9月の国連ミレニアム宣言の履行を検討するための第60回国連総会の際の首脳会合、12月の第6回WTO閣僚会議などのハイレベル会合が開かれる2005年が、ミレニアム開発目標の達成に向けて各国政府が行動する極めて重要な年となることを強く信じて、」との新たなパラグラフを挿入すること、(5)本文パラグラフ3について、開発途上国の議会が自国政府の取組に関し留意すべき点として、「新たな世界人権教育プログラムの実施に特別な注意を払いつつ、」との一節を加えること、(6)本文パラグラフ6について、援助提供国に対し要求すべき点として、「国連諸機関、国際金融機関、他の援助国、NGO及び民間部門との連携を進めるとともに、」との一節を加えること、(7)本文パラグラフ8について、債務免除手続が迅速化される対象国を具体化するため、「良き統治を追求し、自助努力を怠らない被援助国に対する」との文言を追加すること、(8)本文パラグラフ18について、国際税の性格を明らかにするため、「創造的かつ現実的な」との文言を追加すること、についてその趣旨を説明し、決議案に盛り込まれるよう訴えた。協議の結果、(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)については了承が得られた((6)については、同じ内容の新たなパラグラフを挿入することとされた)ものの、(3)及び(7)については、各国の共通認識とはならなかったことから、採用には至らなかった。なお、(8)については、パラグラフ中に「国際税」を明記するか否かをめぐって議論となった後、結局パラグラフ全体を置き換えるとの英国提案等をベースとして、日本提案の表現を加え、「開発のための、創造的かつ現実的な追加的資金提供手段としての国際的資金調達メカニズムの提案に関する更なる研究を支持する。」とすることとなった。これらを含め、起草委員会の協議の結果、各国提出修正案全124件のうち40件について、案文どおり、又はその一部が採用された。
 7日の委員会全体会合において、起草委員会作成決議案が提出され、前文については一括審議、本文については、逐条審議が行われた。同決議案については、文言上若干の修正が加えられたものの、決議案全体としての反対はなく、委員会が本会議に提出する決議案としてコンセンサスで採択された。
 その後、委員会役員の選任が行われ、新しい委員長として、A・フォメンコ議員(ロシア)が選任された。


5.第10回女性議員会議会

 第10回女性議員会議は4月3日(日)、79か国から120名の女性議員が参加して開催された。参議院からは有村議員が出席した。
 会議は冒頭、女性議員会議調整委員会委員長であるJ・フレイザー議員(カナダ)が議長として開会を宣言した後、P・カエタノ議員(フィリピン)が今次会議の議長に選出された。
 その後、本会議の議題6についての決議案に関連して、「HIV/エイズの予防、管理及び治療のための戦略において、女性及び女児の人権に確実に注意が払われるようにするための議会の役割」及び「HIV/エイズと闘うための2国間・多国間援助の取組において、女性及び女児の人権が確実に認識されるようにするための国際社会の役割」の二つのテーマについて討議が行われた。
 なお、今次会議は女性議員会議20周年を迎える会議であったため、祝賀行事が行われた。


6.ASEAN+3会合

 ASEAN+3会合は4月3日(日)午前、シンガポールを議長国として開催された。同会合においては、緊急追加議題挿入要請の審議、IPU「ASEAN+3」東京会議の説明、起草委員候補者選挙等が行われた。緊急追加議題挿入要請の審議については、日本及びインドネシアから自国の提出議題案について説明がなされた後、両議題案をアジア・太平洋地域グループ内での一本化に向けて支持するとの確認がなされた。IPU「ASEAN+3」東京会議については、日本から同会議の開催趣旨、日程の概要が説明され、日本及びシンガポールが共同議長国となることが確認された。起草委員候補者選挙については、持続可能な開発、金融及び貿易に関する委員会の起草委員に関し、アジア・太平洋地域からの候補者として、犬塚議員及び韓国の代表が立候補を表明し、議長が両者を推薦することとなった。


7.アジア・太平洋地域グループ会合

 アジア・太平洋地域グループ会合は4月3日(日)、ASEAN+3会合終了後に、スリランカを議長国として開催された。同会合においては、緊急追加議題挿入要請の審議、起草委員候補者選挙等が行われた。緊急追加議題挿入要請の審議については日本から、アジア・太平洋地域の各国が提出した地震・津波関連の議題案を一本化し、同地域グループの共同提案とすることを提案したところ、支持が得られた。起草委員候補者選挙については、持続可能な開発、金融及び貿易に関する委員会の起草委員候補者として、犬塚議員並びに韓国及びフィリピンの各代表の3名が選出されることとなった。


8、その他

 参議院代表団は、会議期間中、現地において、ドリロン・フィリピン共和国上院議長への表敬訪問を行ったほか、ASEAN+3各国代表団の団長及び女性議員、韓国代表団等との懇談の機会を持ち、相互理解及び友好親善の促進に努めた。




【別添】第112回IPU会議採択決議

免罪を回避するために戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド及びテロリズムの
裁判及び刑の宣告を行うメカニズムの設置及び機能のための議会の役割

(2005年4月8日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第112回IPU会議は、

(1) 今日の世界において多くの地域及び社会全体が一向になくならない戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズム(これらはすべて国際社会全体にとって重要性を有する深刻な犯罪である)によって情け容赦のない打撃を受けていることを深く憂慮し、

(2) これらの憎むべき犯罪を正当化し得る理由は一切ないことを確信し、

(3) 国連憲章、国際人権法、国際人道法、国際刑事法に記されている原則に沿って適切な条約などが整備されていること、また、それらの規定が、各国が負っている国際的な義務に従って、確実に執行されるようにすることが極めて重要であることを考慮し、

(4) この点で、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、1949年8月12日の戦争被害者保護のためのジュネーブ条約及びその追加議定書、ジェノサイド条約、並びに、人間の尊厳の尊重及び国家慣行に反映されている国際慣習法の人権規準を確保するその他の法律文書、条約、取り決めなどに記されている権利及び基本的自由の尊重を確保することが特に重要であることを想起し、

(5) 国際法により、いかなる消滅時効も戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムには適用されないこと、また、かかる犯罪は大赦、減刑、恩赦の対象とされないこと、並びに、このことは国家的・国際的裁判所の判決によって確認されていることを考慮し、

(6) IPUが1990年以降採択してきた平和、安全保障、軍縮に関する決議を想起し、

(7) 戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪を防止する上で国際刑事裁判所(ICC)が重要であることを強調するとともに、この点で、ICCローマ規程の当事国にはかかる犯罪を自ら訴追するか、かかる犯罪の容疑者をICCの裁判管轄権に委ねる義務があること、また、国際人道法も、1949年8月12日の戦争被害者保護のためのジュネーブ条約及びその追加議定書に記されているように、各国に対し、自ら重大な違反を犯したか、他人に犯すよう命じたとされる者を、その者の国籍や違反が犯された場所を問わず、捜索し、裁くよう義務付けていることを想起し、

(8) ICCの裁判管轄権は2002年7月1日以後に犯された犯罪に限定されていること、また、それ以前に犯された戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドを処理するメカニズムが必要とされていることを認識し、

(9) 戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドを撲滅するためにローマ規程が当事国にICCと協力するよう義務付けていることを考慮し、また、テロリズムに関連した12本の国際条約及び議定書を考慮し、

(10) ICCローマ規程の当事国がローマ規程の支援に必要とされるメカニズムを実行する面でも、全ての国がこれらの犯罪を撲滅するために国連その他の機関によって採択された規定の支援に必要とされるメカニズムを実行する面でも、進展が見られないことを憂慮し、

(11) 人種差別、外国人嫌い、不寛容に反対する政治的意思が処罰を免れている状態に終止符を打つ上で極めて重要な要素であることを認識し、

(12) 戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムの訴追に関する取り決めの実行が一部の国により先送りされたり、放置されたり、等閑にされたりしているため、これらの取り決めが異なって解釈されたり、効果が薄れたりしていることを憂慮し、この結果として、処罰を免れていることが黙認されていると看做されかねないことを警戒するともに、多くの国がまだローマ規程を批准・加入していないことを憂慮し、

(13) 戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムを防止し、処罰し、処罰を免れることがないようにする上では議会が第一義的な責任を負い、かつ、必要な法整備を行うことにより中心的な役割を果たさなければならないこと、また、議会間の多国間アプローチがこれらの憎むべき犯罪を裁き、処罰するために必要とされるメカニズムの実行を促進する適切な方法であることを確信し、

(14) 各国には、犯罪が犯された場所や犯罪の実行者または犠牲者の国籍を問わず、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド犯罪、テロ犯罪の実行者を訴追するか引き渡す責務及び義務があることを想起し、

(15) 戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムの犠牲者には真実、正義、賠償を求める権利があることを想起し、

1. 例外なく、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドのあらゆる行為、方法、実践を強く非難する。

2. 国家が直接的または間接的に関与し、諸国民間の友好関係を脅かし、罪のない人を危険にさらすかその人命を奪い、国際関係に有害な影響を及ぼし、国家の安全保障と領土保全を危うくする可能性のあるテロリズムを含め、それがどこで犯されたか、誰によって犯されたかを問わず、あらゆる形態と表示によるテロリズムのあらゆる行為、方法、実践を強く非難する。

3. 全てのIPU加盟国議会に対し、自国とその市民より先に、自国の国内法および国際的義務に従い、国家的なルールの制定を通じて、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムを処罰し、防止するために締結されている国際的取り決めを実行・執行する責任を負うよう強く勧告する。

4. これらの目標を追求するために必要とされるメカニズムを整備するとともに、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムを犯す個人、組織、国家が処罰を免れないようにするために、IPU加盟国の議会間活動を通じて、努力を結集し、経験を共有するよう勧告する。

5. 加盟国議会に対し、国際法、特に国際人道法、人権、難民法に沿ってこれらの憎むべき犯罪を国内刑法に適切に成文化するとともに、処罰を免れないようにするための罰則及びメカニズムを整備するよう促す。

6. ローマ規程の未批准国及び未加入国、国際刑事裁判所(ICC)の特権及び免責に関する取り決めの未批准国に対し、批准・加入するよう促すとともに、ローマ規程の当事国となっている全ての加盟国議会に対し、自国がICCと協力できるようにするための国内法を可決するよう求める。

7. 全ての議会(ローマ規程未批准国の議会も含める)に対し、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムを防止し、処罰するための法律を制定するよう勧告する。

8. 全ての議会に対し、ICCその他の所管機関(人道に対する罪を調査するための国家的・国際的委員会や国家的・国際的裁判所など)への支援と協力により、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムを撲滅するための議会活動を強化するよう勧告する。

9. 各国に対し、各国内及び国際社会において平和と人権尊重を実現するための必要条件である正義及び合法性の枠組みの中で、ローマ規程発効前に犯された戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドの問題を特別に処理するよう勧告する。

10. 加盟国議会に対し、何らかの国の国民についてICCその他による調査や訴追を免れることを規定する2国間取り決めを拒否するよう促す。

11. 全ての議会に対し、引き渡しの促進などにより、国際刑事警察機構(インターポール)の捜索対象となっている人物の刑事訴追支援に全力を挙げて取り組むよう勧告する。

12. 各国議会に対し、テロリズムに関する12本の国際条約及び関連の地域条約などをまだ批准していない場合にはそうした条約などの批准について検討し、それらの規定を国内法に編入し、その適切な実行に責任を持つよう求める。

13. 全ての議会に対し、国際テロリズムとの闘いをより効果的に進めるため、テロリズムに関する世界的な条約を締結して、国際テロリズムの脅威に関する国際的な共通認識を表明するとともに、この現象の性質と実際的な特徴に関する正確な定義を提供するための努力の強化を自国政府に働きかけるよう勧告する。

14. 12本のテロ防止関連諸条約の締結に向けた意思があるにもかかわらず、条約の締結・履行のために必要な技術的資源が不足している国々に対し、キャパシティ・ビルディング支援を強化することが必要不可欠であることを確認するよう要請する。

15. 全ての議会に対し、国際法に沿って、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド犯罪、テロリズム犯罪向けの補償について規定する民事手続きを創設する法律を整備するよう勧告する。

16. 各国議会に対し、これらの目標を達成するためにその能力と役割を最大限活用するよう促す。

17. 各国議会に対し、これらの問題に関する国際的宣言・取り決め及び国連、ICC、関連する全ての国際的、地域的な機関や当局などの事情を考慮するよう勧告する。

18. 各国議会に対し、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、テロリズムが処罰を免れないようにするとともに、これらの犯罪の犠牲者の正当な賠償を求める権利を確保するために、これらの犯罪を訴追し、裁くのに資する可能性のあるあらゆるメカニズムの実行に必要とされる活動を優先事項として議題に盛り込むよう求める。

19. 国連及び各国議会に対し、ICC犠牲者信託基金への自主的な拠出を促進するよう求める。



債務問題に取り組み、ミレニアム開発目標を達成するための
革新的な国際的資金調達及び貿易メカニズムの確立と議会の役割

(2005年4月8日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第112回IPU会議は、

(1) 2000年9月1日、各国議会議長により採択された「第三千年紀の幕開けに際しての国際協力に関する議会の提言(ビジョン)」と題する宣言を想起し、

(2) また、国際社会によって共同策定された貧困撲滅のための基準である「ミレニアム開発目標」としてまとめて知られている、期限を定めた、かつ測定可能な8つの目標を打ち出した2000年9月8日のミレニアム宣言、及び国連開発計画(UNDP)によって作成された人間開発報告書を想起し、

(3) 国連特別会議、特に2002年メキシコのモンテレーで開催された開発資金国際会議、2002年南アフリカのヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議、及び2001年ベルギーのブリュッセルで開催された第3回国連後発開発途上国会議の最終宣言を想起し、

(4) 2004年9月20日ニューヨークで、貧困の克服と飢餓の撲滅に関する首脳会合終了時に120か国によって採択された宣言、革新的な資金調達メカニズムに関するテクニカル・グループによる2004年9月の報告書、及び2005年1月17日に公表された国連ミレニアム・プロジェクトの最終報告書を想起し、

(5) 特に以下のIPU決議等を想起し、

・ 第73回IPU会議(1985年、ロメ)にて採択された、国際債務の負担軽減による貧困の除去に対する各国議会の役割と貢献に関する決議
・ 第74回IPU会議(1985年、オタワ)にて採択された、開発途上国を圧迫している対外債務の負担除去のための措置及び行動の追求に対する各国議会の貢献に関する決議
・ 第88回IPU会議(1992年、ストックホルム)にて採択された、開発途上世界における債務問題の抜本的な解決の必要性に関する決議
・ 第102回IPU会議(1999年、ベルリン)にて採択された、現行のグローバルな金融・経済システムを改変する必要性に関する決議
・ IPUが1993年にオタワで開催したIPU会議「世界規模の繁栄のための南北対話」の最終文書 ・ 第107回IPU会議(2002年、マラケシュ)にて採択された、グローバリゼーション、多国間機構、国際通商協定における政策展開で果たすべき議会の役割に関する決議
・ 持続可能な開発に関する世界首脳会議の際に開催された議会人会合(2002年、ヨハネスブルグ)にて採択された決議
・ 第108回IPU会議(2003年、サンティアゴ)にて採択された、モザイク模様の世界で民主主義の諸制度及び人間開発を強化するための議会の役割に関する決議
・ 第109回IPU会議(2003年、ジュネーブ)にて採択された地球公共財:議会にとっての新たな課題に関する決議


(6) 12億の人々、すなわち世界で5人に1人が1日当たり1ドルに設定された国際的な貧困水準を下回り、1人当たりの購買力平価で1日当たり1ドル未満の生活を強いられていること、また1990年代にはアフリカ35か国を含む54か国で貧困状態が悪化し、これらの人々が1990年代末には1990年よりも更に貧しくなっていることを大いに憂慮し、

(7) たとえ2015年までに極貧層の比率を1990年レベルの半分に減らしたとしても、開発途上諸国の数億もの人々が赤貧生活を送り続けることは明らかであるという事実を憂慮し、

(8) 8つのミレニアム開発目標(MDGs)を擁護する議会の役割が重要であること、及び対応する法律の採択と適切な予算配分が必要不可欠であることを認識し、

(9) 開発途上国の議会の制度的能力を向上させ、それらの議会がミレニアム開発目標(MDGs)に関連する立法・監視・予算機能を実効的に果たせるようにするための援助・支援の必要性を強調し、

(10) ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に当たり、環境の持続可能性の確保の重要性を認識し、2005年から始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」及び「『命のための水』国際の10年」が持つ役割を強調し、また、1つの大きな前進として、京都議定書が2005年2月16日に発効したことを歓迎し、

(11) 現状においては、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するための取組の資金調達、ひいては同目標の履行が保証されていないことを深く憂慮し、

(12) 経済成長、債務救済及び公的開発援助(3つの主要な開発資金源)が、現状においては、ミレニアム開発目標(MDGs)達成に毎年必要とされる、500億ドルから1,000億ドルの追加資金を生み出し得ないことに留意し、

(13) 多くの国で、政府開発援助(ODA)の公約(国内総生産(GDP)の0.7%を提供)が依然として達成されていないことに留意し、しかし、今後10年以内に同公約を達成するための複数の国による取組を満足の意をもって留意し、

(14) ブレトンウッズ機関の枠組みの中で二国間及び多国間で行われる債務免除・救済・繰延べに関する前進にもかかわらず、債務負担が依然として大きな足枷であり、経済成長及び人間開発の障害になっていることに留意し、

(15) 開発援助資金の増額は、被援助国が民主主義と良い統治を促進する場合にのみ有益なものとなり得ることを確信し、

(16) グローバル化が、あらゆる国にとってチャンスの源であると同時に課題の源泉でもあること、また、それが人々の日常生活に影響を及ぼしていることを確信し、

(17) 多くの開発途上国が国際貿易・資金フローからますます締め出され、その結果、貧困を招いていることに留意し、

(18) 国際貿易及び国際投資、並びにそれらが全世界の国々の開発・福利に及ぼす直接的影響の重要性が増大していることに留意し、また、現行の国際貿易・投資体制が多くの部門で先進国に有利な形で歪められており、多くの開発途上国に支障を与えていることを憂慮し、

(19) ドーハで開催され、開発途上国のニーズ・利害が国際貿易交渉の中心に据えられるよう模索され、ドーハ開発アジェンダが作成された第4回WTO閣僚会議以来、各国の開発促進にとっての貿易・投資の重要性に対する認識が高まってきていることに留意し、

(20) カンクン会合の失敗を踏まえて、WTOにより実施されている交渉における事態打開となった、2004年7月のジュネーブ枠組み合意を歓迎し、

(21) それでもなお、特に開発途上国にとって非常に重要な諸問題に関し、WTO交渉にいまだ残っている多くの不確定要素について憂慮し、

(22) 2015年までにミレニアム開発目標(MDGs)の大半を達成するために現在利用可能な資金が著しく不足していることに留意し、また各国政府の責任及び2000年のミレニアム・サミットでなされた公約を遵守するよう政府の監視を行う各国議会の責任を強調し、

(23) 7月に開催されるG8先進国首脳会議、9月に開催される国連ミレニアム宣言の履行を検討するための第60回国連総会の際の首脳会議、12月に開催される第6回WTO閣僚会議などのハイレベル会合が開かれる2005年が、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けて各国政府が行動する極めて重要な年となることを強く信じて、

(24) 来る2005年9月14日から16日までニューヨークで開催されるミレニアム+5・サミットを待望し、同サミットがミレニアム開発目標(MDGs)達成のためのグローバル・パートナーシップを新たに活性化させるよう強く希望し、

1. 自国政府がミレニアム宣言を採択したIPU加盟国に対し、自国の予算においてミレニアム開発目標(MDGs)のための資金の配分を行うことによって、各国におけるミレニアム開発目標(MDGs)の実現を支援するよう強く要求する。

2. 先進国の議会に対し、自国政府がミレニアム宣言及びモンテレー合意においてなされた、GDPの0.7%をODAに充てるとした公約を履行するよう要求することを奨励する。

3. 開発途上国の議会に対し、自国政府が開発に必要な資源を結集し、不正と戦い、制度改革を続行し、成長を刺激するために適切な経済・社会政策を導入し、ミレニアム開発目標(MDGs)を政策の中心に据えた国家戦略を策定し、新たな世界人権教育プログラムの実施に特別な注意を払いつつ、民主主義・人権を促進し、良い統治の原則に依拠することを確保するよう強く要求する。

4. 開発途上国の議会に対し、WTO交渉において自国民の利益を擁護し、開発途上国間の協力体制を強化するよう奨励する。

5. 先進国・開発途上国の政府に対し、上記戦略の適用・実施に関する年次報告書を自国議会に提供するよう強く要求する。

6. 年次報告書が国内レベル及び可能であれば地域レベルで議会における討論をもたらすよう提案する。

7. 地域レベルにおいても、戦略及び報告書に関して、同種のアプローチの対策がなされるよう提案する。

8. 援助提供国、とりわけ経済協力開発機構(OECD)加盟国に対し、ミレニアム開発目標(MDGs)の目標8(開発のためのグローバル・パートナーシップの推進)の履行に関する報告書を作成し、量的かつ質的に同目標を達成するためにとった行動を具体的に示すよう強く要求する。

9. 各種手続の更なる擦り合わせ及び援助提供国間の調整の改善を通じて、国際・地域レベルでの援助の実効性を強化する取組を要求する。

10. 援助提供国に対し、国連諸機関、国際金融機関、他の援助国、NGO及び民間部門との連携を進めるよう強く要求する。

11. 大多数の開発途上国にとって債務が耐え難い性格のものであることを強調し、開発途上国において新たな過剰債務を発生させないための措置が講じられる一方で、効果的な債務免除及び実現可能な繰延べ手続が迅速化されるよう至急要求する。

12. 債務免除と、それにより使途が自由となった資金を、特に各国の貧困削減戦略に示されている、保健・教育・ジェンダーの平等の分野におけるミレニアム開発目標(MDGs)関連の投資に割り当てることの間に重要なつながりが確立されるよう提案する。

13. 深刻な債務危機に瀕しているものの、1人当たり国民所得が高い国であるために、重債務貧困国(HIPCs)に提供される援助の対象とならない諸国を支援するための異なるメカニズムを検討するよう勧告する。

14. 特に貧困軽減・食料安全保障・持続可能な収入に関する開発途上国のニーズが、WTOの枠組みの下で現在進行中の国際貿易交渉において体系的に考慮に入れられるよう、希望を表明する。

15. 国際フォーラムにおいて国民の意思を表明するに当たり、国民主権の体現者として議会が中心的役割を担っていることを強調する。

16. 国際貿易交渉及び国際金融機関の行動のフォローアップを行い、政府の行動の監視を行うための特別委員会をIPU加盟議会によって設置するよう勧告する。

17. 各国政府に対し、関連する国際交渉の状況及び同交渉にかかわる利害関係について、自国議会に十分な情報提供を行うよう要請する。

18. IPUに対し、WTOと協力して、当該分野における議会の能力の強化を支援するよう要請する。

19. 各国政府がWTO閣僚会議への参加に向けて派遣する代表団に議会人を含めるよう提案する。

20. 2004年9月20日に国連本部において、ミレニアム開発目標(MDGs)のための新たな国際的資金調達手段の創設の支持等を目的とする飢餓と貧困への行動に関する宣言を120か国が採択したことを歓迎する。

21. 既存のメカニズムに加えて、新たな資金源が創設されること、そして同資金源は予測可能かつ安定したものとすることを勧告する。

22. 開発のための、創造的かつ現実的な追加的資金提供手段としての国際的資金調達メカニズムの提案に関する更なる研究を支持する。

23. 2005年に国連で開催される第2回世界議長会議において、この問題に関するフォローアップがなされるよう要請する。



HIV/エイズの予防、管理及び治療のための戦略において、
人権の擁護を唱道し、実施するための議会の役割

(2005年4月8日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第112回IPU会議は、

(1) IPUの関連決議、特に1998年にヴィントックで採択された「甚大な人的、経済的及び社会的悪影響に鑑み、エイズと闘うための行動」決議を想起するとともに、HIV/エイズは単なる健康問題にとどまらず、むしろ発展への網羅的な脅威であると確信し、

(2) さらに、1998年に国連エイズ計画(UNAIDS)及び国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によって発行された「HIV/エイズ及び人権に関する国際指針」、並びに2001年の国連エイズ特別総会により採択されたHIV/エイズに関するコミットメント宣言「グローバルな危機-グローバルな行動」を想起し、

(3) UNAIDSの「2004年世界エイズ報告」に留意し、

(4) UNAIDS/WHOの文書「倫理並びにHIVの治療及び介護への公平なアクセスに関する指針」に盛り込まれている勧告を確認し、

(5) 1999年にIPU及びUNAIDSにより合同で公表された「HIV/エイズ、法律、人権に関する議会人のためのハンドブック」に言及し、

(6) 2015年までにHIV/エイズの蔓延を阻止し、減少に転じさせるという「国連ミレニアム宣言」に盛り込まれたミレニアム開発目標(MDG)を再確認し、

(7) 教育及び食糧安全保障に関する目標を含め、すべてのミレニアム開発目標の実現は、エイズその他の伝染病という難題への対処において進展が見られない限り、達成されないことを認識し、

(8) HIV感染者数が毎年増え続けていることを深く憂慮するとともに、HIV/エイズに冒されている女性、若者、子供の数が幾何級数的に増えていることも深く憂慮し、

(9) 女性は法的な女性差別によっても事実上の女性差別によっても特にHIV/エイズに感染し易くなっていることを認識し、

(10) HIV/エイズにより親を失い、その結果、非常に弱い立場に立たされるとともに、飢えにさらされたり、教育・保健・社会的サービスを受けにくくなったり、暴力や虐待、搾取を受けたり、子供兵として重用されたりする可能性が非常に高くなっている世界の子供たちが未曾有の数に達していることを危惧するとともに、これらの要因がHIV/エイズに感染する可能性そのものを高めていることを認識し、

(11) さらに、HIV/エイズの存在とその重大性を認識しようとせず、特に女性のHIV感染者/エイズ患者が偏見と差別に直面していることもなかなか認めようとしない一部の国の政府の姿勢がHIV/エイズ対策の実効性を阻害していることも憂慮し、

(12) 偏見と差別により人々は依然としてHIV/エイズの予防と治療において非常に重要なHIV検査/カウンセリング・サービスを受けられないでいることを認識し、

(13) HIV/エイズは人間の生命と尊厳及び人権の完全な享受にとって最も恐るべき脅威の一つであるとともに、HIV/エイズに冒されている人々の人権及び基本的自由の完全な実現はグローバルなHIV/エイズ対策の必要不可欠な要素であることを認識し、

(14) 女性及び少女の人権の尊重と保護・実現はHIV/エイズ対策の必要かつ基本的な要素であることを確認し、

(15) 労働、教育その他の社会的サービスを受けるHIV感染者/エイズ患者の人権の否定に伴う経済的、社会的な悪影響を憂慮し、さらに、HIV/エイズの結果最も大きな経済的、社会的影響を被っているのはしばしば女性と子供であることも憂慮し、

(16) HIV/エイズとの闘いは、主に女性と子供に影響を及ぼし、労働力の減少を招き、経済的、社会的発展を阻害する貧困との闘いと切り離すことができないことを強調し、

(17) 無知と非寛容は依然としてHIV/エイズに冒されているか冒されていると看做されている人々が社会的に取り残される一因となっており、それが医療援助、就職の機会、教育、住宅の分野や一般にその社会的厚生のあらゆる側面における差別的行為を引き起こしていることを憂慮し、

(18) 抗レトロウイルス治療と適切な治療を併用すればHIV/エイズの進行を遅らせることができるとはいえ、開発途上国、特にアフリカの膨大な数に上る感染者はこれらの治療を受けられないことを考慮し、

(19) 世界貿易機関(WTO)の知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)により、WTO加盟国は健康上の緊急事態に際しては特許薬の生産を許容することができることを考慮するとともに、世界保健会議(WHA)が抗レトロウイルスその他の必須医薬品へのアクセスを促進するためWHO加盟国に対しTRIPS協定に盛り込まれている柔軟性を十分に活用するよう働きかける決議を採択したことを想起し、

(20) HIV感染者/エイズ患者の権利を実現するには、彼らが支援的な社会環境の中で差別なしにヘルスケア・治療サービス、社会的サービス、法律的サービスなどのサービスを利用できるようにする必要があることを認め、

(21) 各国のHIV/エイズの感染レベルがどの程度かを認識することは、それぞれの国の政府が自国のニーズに合った予防・治療プログラムを立案することに資すると確信し、

(22) さらに、公衆衛生分野の能力強化がHIV/エイズの効果的な予防と治療にとっては極めて重要であることも確信し、

(23) また、HIV/エイズにひどく冒されている国々はその公約を守るために国際社会から特別支援を受けるべきであることも確信し、

(24) HIV/エイズにかかっている人が抗レトロウイルス治療を受け易くするなど、手頃な価格で薬物治療を受け易くすることが、到達可能な最高水準の健康を享受する万人の権利の完全な実現を徐々に達成していく上で基本的に重要であることを考慮し、

(25) 特にアフリカにおける紛争状況がHIV/エイズの罹患率上昇につながっていることを考慮するとともに、HIV/エイズを放置しておくと安定と安全保障が危険にさらされる可能性があると述べた国連安全保障理事会決議1308(2000年)及び国際的安全保障への経済的、社会的脅威の1つとして感染症を挙げた「脅威、挑戦、変革に関するハイレベルパネル」の報告書を想起し、

(26) いかなるHIV/エイズ対策も、人身売買(特に女性及び少女の人身売買)、薬物乱用、違法薬物売買、ジェンダーに基づく暴力など、HIV/エイズが蔓延している原因に十分に対処した場合にのみ効果を発揮することを認識するとともに、この文脈において、家族、宗教、長い年月をかけて確立されてきた基本的な倫理的原則及び価値観の果たす極めて重要な役割を強調する必要があることを考慮し、

(27) HIV/エイズは同時に医学的、社会的、経済的な緊急事態でもあることを強調し、

1. 各国政府及び議会に対し、自国の法律、政策、慣行がHIV/エイズとの関連で人権、特に教育、労働、プライバシー、保護、介護・治療・社会的サービスへのアクセスなどの権利を尊重するよう求める。また、公的セクターでも民間セクターでもHIV感染者/エイズ患者をあらゆる形態の差別から守り、男女平等を促進し、被験者が係わる研究でプライバシー及び秘密保持を確保し、HIV感染者/エイズ患者の権利が侵害された場合には迅速かつ効果的な司法、行政、民事上の救済措置を講じるよう求める。

2. 各国に対し、世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約及びその選択議定書、児童の権利に関する条約、拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を禁止する条約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、労働における基本的権利及び原則に関するILO(国際労働機関)宣言などの人権尊重に関する条約などを促進・奨励するために各国が行っているコミットメントを想起させるとともに、これらの国際条約などの未批准国・未実行国に対し、その批准・実行に必要な措置を講じるよう求める。

3. 2015年までにHIV/エイズの蔓延を食い止め、減少に転じさせるという目標を自国のミレニアム開発目標報告に盛り込んでいない国に対し、そうするよう求める。さらに、各国議会に対し、これらの報告書の議事堂からの正式発表を後押しするよう求める。また、特にHIV/エイズ対策の領域におけるMDGの達成度を点検する国家的・地域的報告書を定期的に作成するよう促す。

4. 先進各国政府に対し、開発途上国及び特に後発開発途上国向けの財政・技術援助を継続・増強するとともに、HIV/エイズ分野におけるその専門知識を、自国の人権機関を創設・強化しようとする国々に伝えるよう促す。

5. さらに、各国政府に対し、予防と介護向けの資源を含め、十分な資源を自国の保健制度に配分するよう促す。

6. 各国政府に対し、資源が限られている状況の中でHIV介護の公平な分配を促進するため、UNAIDS/WHOの文書「倫理並びにHIVの治療及び介護への公平なアクセスに関する指針」で勧告されている措置を実行するよう強く促す。

7. さらに、各国政府及び議会に対し、HIV/エイズに冒されている全ての人々(社会的地位、法的な状況、ジェンダー、年齢、性的指向を問わない)が持続的に、HIV/エイズの予防、管理、治療、介護、支援に関する良質のサービス及び情報(男性用及び女性用コンドーム、安全な注射針、殺菌剤、基礎的な予防介護パッケージ、また、貧困国向けの手頃な価格の抗レトロウイルス薬その他の安全で効果的な薬剤、特に女性や子供などの社会的弱者に配慮した万人向けの心理的サポートや診断及び関連技術などの提供を含む)を利用・入手できるようにするために必要な措置を採用し、そのための資金を投入するよう促す。

8. また、各国議会及び政府に対し、主にヘルスケアや健康関連のサービス(性と生殖に関する健康(リプロダクティブヘルス)関連のサービスを含む)の提供を通じて、HIV感染リスクから自らを守る女性及び少女の能力を高めるための措置を実行するよう促す。

9. 各国政府及び議会に対し、HIV/エイズを撲滅するための新たな治療、新たな予防手段、新たな診断ツール及び検査(ワクチンや殺菌剤などの女性がコントロールする予防法を含む)などの開発を目的とする国家的及び多国間の研究開発努力を継続し、強化し、組み合わせ、互恵化し、調和化するために必要な措置を採用するよう求める。

10. 各国政府及び議会に対し、HIV/エイズが個人、家族、社会、国民に及ぼす健康上、社会経済上及びその他の影響を認識し、その蔓延を阻止するための適切な立法的・行政的な社会的措置を講じるよう求める。 11. 各国政府に対し、肺炎、結核、日和見感染などしばしばHIV/エイズと関連している他の感染症の予防及び治療を含めることにより、HIV感染者/エイズ患者向けの治療、介護、支援に係わるサービスを包括的なものとするよう求める。

12. 全ての政府及び議会に対し、HIV感染者/エイズ患者の人権を尊重する政策を採用・実施するとともに、あらゆる利用可能なメディアを通じて、彼らの権利を擁護し、彼らの権利に対する認識を高めるよう求める。

13. 各国議会及び政府に対し、増加する一方の、HIV/エイズによって親を失い、弱い立場に立たされている子供たちのニーズ及び人権に対処する国内の法律と政策を整備・補強するよう求める。

14. 各国議会に対し以下を求める。


(a) HIV/エイズにより近親者を失って苦しんでいる人々の状況に特に配慮しつつ、HIV/エイズにかかっている人々、特に女性や子供などの社会的弱者の国家的保護基準を定める法律を整備するか、既存の法律を改正する。

(b) HIV/エイズ及び人権に関する国際指針に合致するよう法律を見直し、改正する。

(c) 故意にHIV/エイズをうつすリスクを犯したり、意図的にそうしたリスクを犯したりする者を処罰する法律を制定する。


15. さらに、IPU加盟国議会の議会人に対し、HIV/エイズに冒されている人々に対する差別を解消するための適切な立法措置を講じるとともに、この恐るべき病気の予防とそれに冒されている人々への支援に欠かせない寛容と人間的連帯の社会環境づくりに貢献するよう求める。

16. また、各国議会及び政府並びに国際社会に対し、誰でも無料でHIV検査を受けられるようにするよう求める。

17. 各国議会に対し、国家機関及びそのパートナー向けの指導原則であるUNAIDSの「3つの統一」を考慮した国家レベルの調整などにより、HIV/エイズ対策向け資源の効果的かつ効率的な利用を促進するよう求める。

18. 各国議会に対し、HIV/エイズの地域及び国内における-究極的にはグローバルな-蔓延を阻止し、減少に転じさせるという問題に特別に取り組む議会委員会や議会と正式にリンクしているその他の議会組織を新設し、経験、情報、ベストプラクティスを共有するとともに、連携プログラムを通じて社会のあらゆるセクターをハイレベルの意思決定プロセスに関与させるよう促す。

19. 国連システム内の組織、機関、団体、基金、プログラムに対し、公衆衛生をその開発活動及びプログラムに取り込むとともに、HIV/エイズの予防及び治療に関連した加盟国の公衆衛生制度の能力強化を積極的にサポートするよう求める。

20. 各国議会及び政府に対し、性と生殖に関する健康及び権利とHIV/エイズに対する闘いとの連携を考慮に入れるよう促す。

21. さらに、各国議会に対し、HIV/エイズに冒されている国々の食糧供給を改善するための包括的政策を整備するよう促す。

22. 各国議会及び政府に対し、所有権へのアクセス、女性の全人権の完全な享受の促進及び保護、あらゆる形態の差別の撤廃によるHIV/エイズへの感染し易さの低下、女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力(有害な伝統的・常習的慣行、虐待、レイプ、その他の形態の性的暴力を含む)など、女性の社会的地位の向上(エンパワーメント)を推進するための国家戦略の構築及び早期実行を確保するよう求める。

23. 各国政府に対し、HIV感染者/エイズ患者の人権が擁護・保護されるように、国連、非政府組織(NGO)、HIV/エイズ予防に関与するその他の機関・団体と協調し、その活動をサポートするよう強く促す。

24. 全ての政府及び議会に対し、HIV/エイズに感染し冒されている人々の人権を、自国内で、保護・実行・監視する委員会、裁判所、法律、調整戦略などの国家的メカニズムを強化するとともに、特に、HIV/エイズの負担を一身に背負い、病人の介護をしたり、罹患した結果、仕事、家族、所得、通学の機会を失ったりする可能性が最も高い女性や子供-少年及び少女-などの社会的弱者への、あらゆる形態の偏見及び差別を撤廃し、さらに、囚人などその他の社会的弱者にも平等に配慮するよう求める。

25. 各国議会及び政府に対し、特に女性のニーズを効果的に認識し、社会に存在する可能性のある文化や宗教の違いを意識したHIV/エイズに関する政策及びプログラムを立案するよう促す。

26. さらに、各国議会及び政府に対し、社会を脅かすHIV/エイズなどの感染症を撲滅するために必要とされる医薬品の加盟国による製造・輸出を認める2003年8月30日のWTO一般理事会決定により規定されている公衆衛生に関するセーフガードを考慮するとともに、許容されている柔軟性をWTOのTRIPS協定に準拠して制定される国内法に編入すべく努力するよう促す。

27. 各国議会及び政府に対し、旅行ビザ、大学入学、就職、保護施設入居などの申請者・志願者などに対する強制的なHIV/エイズ審査を禁止し、自主的な検査に代えるよう求める。

28. さらに、十分かつ対象を絞り込んだ情報の普及、あらゆる利用可能なメディアや効果を高める手段の活用、意識の向上、男性及び女性の教育-特に少年及び少女への-によるHIV/エイズ防止に特に注力するよう求める。また、予防手段として少年及び少女向けの学校カリキュラムに性教育を取り入れるよう求める。

29. 国及び地方の関係機関に対し、赤ん坊を感染から守るため、HIV/エイズにかかっている妊娠している女性や母乳を与えている女性への支援に優先的に取り組むよう促す。

30. 各国政府及び議会に対し、HIV/エイズに対応するための整合性のある、参加型の、透明性とアカウンタビリティを備えた国家的な政策及びプログラムを確立するとともに、これらの国家的な政策を、立案及び実行の全局面で、可能な場合には、非政府組織、地域社会ベースの組織、宗教組織、民間セクター、とりわけHIV感染者/エイズ患者(特に女性や子供などその中でも特に立場の弱い人々)が関与する、地方及び地域レベルの行動へと転換するよう求める。

31. 男性及び女性の議会人に対し、国家予算をジェンダーに配慮したもの、したがって効率的なものとするよう求める。

32. 国連合同エイズ計画(UNAIDS)に対する支援及び資源を強化するとともに、世界エイズ・結核・マラリア基金への拠出金を増やすよう求める。

33. 各国議会及び政府に対し、紛争状況を封じ込め、HIV/エイズに対するそのあり得る影響を減らすためのステップとして国際的な協調、成長、発展を促進するよう促す。

34. 各国に対し、女性、平和及び安全保障に関する国連安全保障理事会決議1325(2000年)に基づき、軍人や警察官、平和維持活動要員に対してHIV/エイズに関する十分な意識喚起研修を実施するよう促す。

35. 各国政府に対し、アフリカにおけるエイズ対策国際パートナーシップ(IPAA)を認め、アフリカにおけるエイズ対策への枠組みとして世界エイズ・結核・マラリア基金とともにIPAAを推進していくよう再度求める。

36. エイズ撲滅に用いられる戦略及びプログラムが、各地域の人口構成の特徴及びその住民の社会的、経済的状況をともに反映するよう、適用地域の自然、人間、文化の特徴を考慮に入れるようしつつ、先進国と開発途上国の経済的、文化的格差を縮小していくことの重要性を確認する。

37. 各国は公衆衛生分野の取り組みの整備を自国の経済的、社会的発展戦略に統合すべきであり、そうした発展戦略に効果的な公衆衛生メカニズム(特にHIV/エイズの監督、予防、治療及び情報交換のためのネットワーク)の確立及び改善を含めるべきであることを強調する。



自然災害:防災、復旧、復興及び弱者の保護における議会の役割

(2005年4月8日(金)、本会議にて全会一致で採択)

第112回IPU会議は、

(1) 地震、津波、豪雨、豪雪、暴風(台風、竜巻など)、洪水、土砂災害、火山噴火、森林火災、干ばつ、イナゴの来襲といった深刻な自然災害が、国境に関係なくあらゆる人にとって甚大な脅威であり、特に災害に脆弱な開発途上国においては、災害により脆弱な貧困層が大きな被害を受け、国内避難民及び難民となる場合が多く、衛生状態の悪化や食糧不足などの二次的影響が問題の長期的な原因となることを懸念し、

(2) 人災を含め、あらゆる災害は人間に対する直接的な脅威であり、個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点を踏まえて、援助が被災者の苦しみに真に対応すること及び災害に対して個人や地域社会が自ら行動する能力を高めることの重要性を認識し、

(3) 2004年12月26日のスマトラ島沖大地震及びインド洋津波災害の結果、インドネシア、スリランカ、インド、タイ、マレーシア、ミャンマー、モルディブ、バングラデシュ、ソマリア、ケニア、タンザニア等の国々において、27万人以上の罪のない市民が犠牲となり、未だに数万人が行方不明であること、そして3カ月後にインドネシアを襲った余震でさらに数百人が命を落としたことを深刻に受け止め、

(4) 津波災害及び余震による犠牲者、その遺族、並びに被災諸国の国民、議会及び政府に対し深く哀悼の意を表明し、

(5) この災害に対処する上での被災国が果たしている主導的役割を賞賛するとともに、国連の緊急支援アピールを受けた国際社会による迅速な救援活動への貢献に敬意を表し、

(6) 国連並びに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機構(WHO)、国連世界食糧計画(WFP)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国連専門機関及び国際赤十字・赤新月運動、アジア開発銀行(ADB)などの諸機関、さらに各国政府及び多数の国際的人道機関が、津波被災者の必要をみたすための緊急人道支援の提供及び緊急医療、避難施設、食料の被災国国民への供与を直ちに表明し、国連事務総長が現地調査を迅速に行ったことを高く評価するとともに、謝意を表明し、

(7) 地震及び津波被害後の2005年1月6日にジャカルタ(インドネシア)で開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)緊急首脳会議で採択された「2004年12月26日の地震及び津波被害後の緊急支援、復旧、復興及び予防を強化するための行動に関する宣言」並びにこの問題に関して国際レベルで行われている幾多の議論を想起し、

(8) 2003年にチリ・サンティアゴで開催された第108回IPU会議で採択された、国境を越える自然災害が関係地域に与える被害の予防及び対策のための国際協力に関する決議を想起し、

(9) 先般の大地震・津波災害が、インド洋地域における津波早期警報システムの不在と、当該地域における大地震と津波の因果関係に関する防災意識の欠如が被害を拡大したという点に留意し、

(10) 国連防災世界会議(2005年1月18日~22日、日本・神戸)における「インド洋津波災害に関する特別セッション」が、津波災害から得られたあらゆる教訓を包括的に評価するとともに、早期警戒システム構築のための国際的及び域内の対話と議論を引き続き行うことの重要性を強調する点に留意し、

(11) 先般の大地震・津波における死者の3分の1以上が子どもであるとのユニセフの推定に注目するとともに、この災害で被災した子どもが人身売買、感染症等の脅威にさらされているという現実を深く憂慮し、

(12) 今般の惨事の緊急人道支援において、ユニセフ、国際移住機関(IOM)、世界保健機関(WHO)等が進める「子どもの生存」や「子どもの保護」のための緊急人道支援の重要性を強調し、

(13) 各国議会及び議会人が、災害後の弱者である子どもや女性のための緊急人道支援に多角的な面で貢献する重要性を再認識し、

(14) この甚大な災害による何百万人もの罪のない犠牲者に対し、津波災害による心的外傷を解消するための精神面での支援及びカウンセリングの必要性を認識するとともに、非政府組織の活動によるあらゆる支援の有用性を再認識し、

(15) 国際協力、団結、パートナーシップ並びにあらゆるレベルでの良き統治が世界規模での防災活動の強化にとって重要であることを考慮し、

1. 国際社会に対し、地球上どこでも起こりうる自然災害に備え、甚大な被害とりわけ人命の損失を防ぐというすべての人類共通の願いを達成するために、過去の教訓を生かし可能な限り防災に努め、不可避の自然災害に対しては影響を最小限に食い止めることへの決意を新たにすることを要請する。

2. 世界の災害多発地域各国に対し、防災協力の更なる強化を喚起し、早期警戒システム構築のためのノウハウ、知見、技術等の情報提供・共有をするよう提案するとともに、関係政府に対し、ユネスコ国際海洋委員会(IOC)や国際防災戦略(ISDR)といった国連を通じた国際的な調整の下に、インド洋津波早期警戒システム構築のための具体的取組みを前進させるよう奨励する。

3. 各国議会に対し、国連との連携に基づき、国際赤十字・赤新月運動、ユニセフ、国際移住機関(IOM)、国連人間居住計画(UN-HABITAT)、世界保健機関(WHO)及び国連婦人開発基金(UNIFEM)等による、子どもや女性をはじめとする災害後の弱者を支援する国際機関による効果的なプロジェクトの推進を支援するよう政府に奨励することを要請する。

4. 被災国議会及び支援を実施する関係国際機関等に対し、「子どもの保護」及び「子どもの生存」のために、(1)人身取引防止対策、離散家族の再会促進支援 (2)子どもの保護施設、母子家庭用仮設居住等の整備 (3)トラウマ(精神的ショック)対策 (4)感染症対策 (5)子どもへの栄養補給、のための計画の実施を政府に要請することを提案する。

5. 被災国及び周辺国の議会に対し、災害により孤児あるいは身元不明となった子どもを人身売買や感染症といった二次的被害から守るために、社会の注意を喚起し政府や警察を啓発することで情報普及を促し、また、養子縁組の一時停止等適切かつ迅速な法整備を行うことで国家的な予防措置を推進するよう自国政府に働きかけることを要請する。

6. 関係当事者に対し、復興プロセスにおける関係国の主体性の重要性に特に配慮するよう要請し、あらゆるレベルで計画、意思決定、行動における弱者の関与の確保に努めることで復興活動をより効果的にし、地域の民主主義を強化するよう提案する。また、復興活動に関わるすべての当事者に対し、環境・生態系の持続可能性に配慮した社会・経済を作り上げるよう促す。

7. 国連及びその他の国際社会の組織、特に援助国及び国際金融機関に対して、被災諸国の復旧・復興活動に資金拠出などの援助を行うという公約を守るよう要請し、すでに自国の政府が公約をしているIPU加盟国議員に対しては、時宜を得た形で早急に実現するよう断固たる行動を取るよう促す。

8. プロセスに参画するすべての当事者に対し、すべてのプログラムが立案・運営される際に、不当利益行為などのあらゆる形の不正行為に厳しく立ち向かうよう強く促す。

9. 被災国に対し、責任を持ち、説明義務を持ち、透明性を保つとともに、被災状況に応じた適正な支援を得るために、死亡者数等被害に関するあらゆる情報をできる限り早急に国際社会へ提供するとともに、支援が被災者のために早急かつ直接的に利用され各国の慎重に利用されること等を確保するための努力を要請する。

10. 今回の津波災害に関する最新情報を提供し、国際社会に対して津波被災者への支援の提供を促し、今次災害のあらゆる関連情報を広める上で、活字・電子メディアの果たす役割の重要性を認識し、メディアに対して、あらゆる災害においても同様の役割を果たすよう促す。

11. すべての国々に対し、将来的にこのような自然災害に対応するための準備を整え、開発途上国による自然災害警報システム及び自然災害対策計画の整備を支援することを要請する。更に科学先進国に対し、このような災害に関する情報を世界の他の国々、国連、並びにしかるべき国際機関と共有することを要請する。

12. すべての国の議会に対し、各国政府、国際機関などによるあらゆる防災対策、人道援助を支援するよう要請するとともに、各国政府に対して、利用可能な資源を有効活用するために、国際援助協力体制に参画するよう促す。ただし、これは二国間援助及び個別の国、国際機関による被災諸国への援助を妨げるものではない。

13. 加盟国議会に対し、災害に見舞われやすい地域などあらゆる地域において、自然災害や人災の予測・準備・対策・予防のため、そして被害の影響に対処し、緩和させるため、さらに被災地域の救援・復旧・復興のための独自の災害対策チームの設立・訓練・支援に関して立法政策を策定、あるいは既存の政策を強化するよう自国政府に促すことを要請する。


(a) 早期警戒システム、ハザードマップの設置、避難ルートの決定、避難センターの設立、防災対策の策定による能力強化

(b) 迅速かつ効率の良い災害報告体制の構築、被害状況・被災世帯数・死亡者数・行方不明者数・負傷者数(ただしこれに限らない)の情報の提供、ニーズの優先付け、被害への対応と最小化、並びに食料、食料以外の物資、緊急収容施設の資材、資金・住宅・融資など復旧のための援助

(c) 緊急かつ中長期的な復興計画の策定、女性・子供・高齢者など災害のあらゆる面で影響を最も受けやすい市民への特別な配慮


14. 加盟国議会に対し、特に地域の災害対策チームの訓練、ノウハウ・知見・技術など防災・訓練・管理に関する情報の共有、迅速な輸送及び事前に災害に遭遇しやすい地域の情報を収集し、発生時に即座に被災地で対応する国際救援チームが使用する緊急設備の保管、並びに被災地域の災害対策チームとの協力・動員・連携を目的とした、地域災害訓練・後方支援・対策センターを戦略的に設置するよう要請する。更に、地域災害訓練・後方支援・対策センターが国連及びその関係機関、国際赤十字・赤新月運動などの国際的な人道支援機関との連携を図るよう要請する。ただし、これは二国間援助及び個別の国、国際機関による被災諸国への援助を妨げるものではない。

15. IPUのすべての加盟議会に対し、本決議に盛り込まれた勧告を実行に移すための緊急対策を取り、あらゆる取り組み、中でも極めて緊急性の高い事態が生じている際に、命の尊厳を守り、人的被害を軽減し、すべての人々の尊厳を高めるために根強い支援を提供するという決意を新たにするよう要請する。