質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第四六号
  令和六年三月五日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員須藤元気君提出TSMC誘致に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤元気君提出TSMC誘致に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 御指摘の「TSMC誘致の決定」の具体的に意味するところが明らかではなく、「TSMC誘致の決定責任者は当時の経産大臣という理解でよろしいか」とのお尋ねについてお答えすることは困難であり、また、御指摘の「報道」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、政府としては、これまで、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)及びJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下「JASM」という。)に限らず、国内外の半導体の製造企業等と我が国における特定半導体生産施設整備等(特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等をいう。以下同じ。)に関して意見交換を行ってきているところ、御指摘の「TSMC及びJASMへの助成決定」については、TSMC及びJASMから提出された法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画(以下「特定半導体生産施設整備等計画」という。)に対して、経済産業大臣において、同条第三項の規定に基づく認定(以下「認定」という。)を行ったものである。

三について

 御指摘の「TSMC及びJASMに限定せずに広くあまねく企業から助成金に対する公募を求めるべき」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、特定半導体生産施設整備等計画の提出については、TSMC及びJASMに限らず、特定半導体生産施設整備等を行おうとするいずれの事業者も行うことが可能であり、また、経済産業省として、認定の要件等について、同省のウェブサイトを通じて周知しているところである。

四について

 御指摘の「本計画」については、認定の要件として、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針(令和二年総務省・財務省・経済産業省告示第一号)において、FinFET構造の演算を行う半導体を生産できると認められる技術水準を有することを定めているところ、この技術水準はTSMCのみが有するものではないため、「他の事業者を排除するに至った」との御指摘は当たらないものと考えている。

五について

 お尋ねの「政府とTSMC及びJASMの間に契約書が存在せず」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条において、食糧その他輸出締約国にとって不可欠な産品の危機的な不足を防止するために一時的に課すものであること等の例外的な場合を除き、他の締約国への輸出について、関税その他の課徴金以外の制限を課すことを原則として禁止していることから、法は、国内向けに優先的に出荷する義務を課してはいないものの、法第十一条第三項第四号において、特定半導体等(同項第二号に規定する特定半導体等をいう。以下同じ。)の需給がひっ迫した場合において増産すること等を認定の要件としており、また、同項第二号及び経済産業省関係特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律施行規則(令和二年経済産業省令第六十八号)第十条において、特定半導体生産施設整備等計画に基づく特定半導体等の生産が十年以上継続的に行われると見込まれることを認定の要件としているところ、TSMC及びJASMから提出された特定半導体生産施設整備等計画については、経済産業大臣において、当該特定半導体生産施設整備等計画に、「十年以上の継続生産を予定」、「JASMは、需給がひっ迫した場合には、緊急時対応として稼働率を向上させ、増産に取り組む」、「製品の納入先」は「日本の顧客が中心」、「TSMCは、日本政府からの要請に応じ、日本の顧客向けの供給拡大について誠実に協議に応じる」等といった旨の記載がなされていることも踏まえ、法第十一条第三項各号に掲げる要件を満たすものと判断し、認定を行ったものである。このことから、「日本国民に対して一切の見返りが契約もされないまま、外国の私企業が私的利益を稼ぐのに血税を注ぐことを決定」との御指摘は当たらないものと考えている。

 なお、認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)が認定に係る特定半導体生産施設整備等計画に従って特定半導体生産施設整備等を実施していない、又は同項各号のいずれかに適合しないものとなったと認められるときは、同大臣は、法第十二条第二項及び第三項の規定に基づき、当該特定半導体生産施設整備等計画の変更を指示し、又は当該認定を取り消すことができるとされており、これを踏まえ、助成金の交付を受けた認定事業者に対して当該認定に基づく助成金の返還を請求することが必要な場合においては、当該助成金の交付に係る業務を行う国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構において、特定半導体基金事業費助成金交付規程(令和四年四月三十日付け国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構作成)に基づき、請求する返還額については経済産業省からの指示に従い、適切に対応していくものと承知している。