質問主意書

第213回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一三第四号
  令和六年二月六日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出歴史認識に関わる我が国の政策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものであり、また、慰安婦問題及び旧朝鮮半島出身労働者問題を含め、御指摘の「判決」を始めとした大韓民国との間における請求権の問題については、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号)第二条1において、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が・・・完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。

 いわゆる「南京事件」に関する政府の見解は、衆議院議員鈴木貴子君提出いわゆる南京事件や従軍慰安婦を世界記憶遺産とすることを中国が申請した件に関する質問に対する答弁書(平成二十六年六月二十四日内閣衆質一八六第二二二号)二についてにおいて、「昭和十二年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為があったことは否定できないと考えているが、その具体的な数については、様々な議論があることもあり、政府として断定することは困難である。」と述べたとおりである。

一の2及び3について

 御指摘の「日本のイメージ」、「日本の国際的な評価」及び「我が国の国際的イメージ」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねの「どのような影響を及ぼしていると考えているか」、「どのような影響を与える可能性があるか」及び「改善にどのように寄与しているか」についてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、積極的かつ戦略的に対外発信に取り組んできている。

 具体的には、歴史認識を始めとした幅広い分野に関する我が国の立場や考え方について、内閣総理大臣や外務大臣を始めとした政府関係者による記者会見、インタビュー、寄稿、外国訪問先及び国際会議でのスピーチ等を通じて発信するとともに、在外公館において各国の政府、国民及び報道機関に対して発信している。また、事実誤認に基づく報道が外国報道機関によって行われた場合には、正確な事実関係と理解に基づく報道がなされるよう、速やかに在外公館や外務本省から当該外国報道機関等に対して客観的な事実に基づく申入れ等を実施している。加えて、動画などの広報用の資料を作成して様々な場面で活用しているほか、外務省のウェブサイトやソーシャルメディアを通じたオンラインでの情報発信にも取り組んでいる。

 このような取組の効果については、その対象となった者の反応、世論調査の結果等を踏まえて総合的に検証しているところであり、その検証の結果を踏まえながら、引き続き、このような取組を積極的かつ戦略的に推進していく考えである。

二について

 御指摘の「誤解」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「外務省ホームページの記載内容」は、衆議院議員西村真悟君提出歪曲された歴史的事実の是正に関する質問に対する答弁書(平成十九年四月二十四日内閣衆質一六六第一七九号)二についてで述べた見解を記載したものであって、この見解は、御指摘の「戦史叢書」に限らず、それまでに公になっていた文献等から総合的に判断したものであり、御指摘のように「根拠となる資料が欠けて」いるとは考えていない。