質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一〇二号

日本が実施すべき半導体支援策に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年四月八日

須藤 元気


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   日本が実施すべき半導体支援策に関する再質問主意書

 私が令和六年三月十三日に提出した「日本が実施すべき半導体支援策に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第七一号、以下「質問主意書」という。)に対し三月二十六日付けで送付された政府の答弁書(内閣参質二一三第七一号、以下「答弁書」という。)は、質問に対して必ずしも的確かつ簡潔に回答するという真摯な対応が行われていない。

 半導体は、日本経済の盛衰を左右する重要な産業基盤であるとともに、経済安全保障上の戦略物資であるため、既存の日本国内の半導体企業を育成、発展させることが、日本の製造業の競争力を取り戻し、日本の国力を再興させる上で最重要の課題であるとの認識のもと、日本が実施すべき半導体支援策の妥当性を確認することは、極めて重要であることから、政府の真意を確認するために再質問を行うものである。国民からの負託に応えることが必要不可欠であることを十分に認識した上で、国民を裏切ることのないよう、政府においては再質問に真摯に回答されたい。

一 政府答弁書のあり方について

 冒頭で、政府答弁書のあり方についての質問を行う。答弁書においては、質問主意書に記載された用語の定義について、「具体的に意味するところが明らかではない」という常套句を使用することで論点をすり替えることが散見される。これは、質問主意書に対する政府の答弁方法として極めて不誠実であり、国民からは、国民の代表である国会議員が国民からの負託に応えるために行った質問主意書の問いに対して、真摯に向き合うことをせず、答弁を回避するか、論点をすり替えるための手段として利用しているとの疑いをかけられている。

 今後このような悪習を改め、質問主意書の問いに対して真摯に対応する答弁書の作成に努めるつもりがあるか、政府の見解を示されたい。

二 経済安全保障推進法による従来型半導体支援について

1 質問主意書の一の1及び2については、SiCパワー半導体に強気な投資を続けるロームの設備投資額も最大千七百億円との報道から、事業規模二千億円は一社では対応できる金額ではないことを確認したものであるが、それに対する明確な回答が示されていない。改めて、経済産業大臣が定めた「半導体に係る安定供給確保を図るための取組方針」に「原則として事業規模二千億円以上」とした具体的な数字の根拠を示されたい。

 また、業界再編を目的として過去に経済産業省が実行した業界再編政策は悉く失敗している具体的な証左として、破綻したエルピーダメモリを具体的に例示しているが、エルピーダメモリに関する政府の業界再編支援策は成功したものと理解しているのかどうか、政府の見解を示されたい。

 さらに、過去に経済産業省が実行した業界再編政策が悉く失敗しているという指摘に対してそれを否定するのであれば、経済産業省が実行した半導体業界の再編政策で成功した具体的な事例を示されたい。

2 質問主意書の一の3において、経済安全保障推進法に基づく支援では、マイコン・アナログでも事業規模が三百億円以上に限定されていることは中小の半導体企業を切り捨てる政策となり不適切ではないかと指摘したところであるが、答弁書では中小の半導体企業を除外しているわけではないと回答している。マイコン・アナログで事業規模が三百億円以上の中小企業が存在する事実があるのか、明確に回答されたい。

三 WTO協定等の国際ルールとの整合性について

1 質問主意書の二の1について、経済安全保障推進法に基づく従来型半導体への補助制度が、支援する事業規模を限定しているため、マラケシュ協定附属書―Aの補助金及び相殺措置に関する協定の第二条の特定性に抵触し、相殺可能な補助金とみなされる可能性を指摘したが、他の加盟国の利益に対する著しい害等の悪影響を及ぼすかどうかの判断は、当該加盟国が主体的に行うものであり、相殺可能な補助金とみなされる可能性があるとすれば、「WTO協定等の国際ルールとの整合性に十分留意するものとする」との取組方針が示されている以上、慎重な配慮が必要である。答弁書では、他の加盟国の利益に対する著しい害等の悪影響を及ぼすものであるとは考えていないと断じているが、このことについて、欧米各国、韓国、中国及び台湾等の関係利害各国との事前確認によって判断されたものか、政府の見解を示されたい。

 また、令和五年度の経済産業省の行政事業レビュー公開プロセスA日程で有識者に説明しているように、Step1のIoT用半導体生産基盤の強化において、日米が過剰投資とならないように補完的な関係となることを意識して、大臣レベルで半導体の協力原則を結んでいると説明しているが、これは、日本の中小の半導体企業を犠牲にした上で、米国の半導体戦略に協力するように押付けられたものではないか、政府の見解を明確に示されたい。

2 質問主意書の二の2及び3について、答弁書では、政府は、台湾政府の半導体企業への巨額な輸出補助金について十分認識し、相殺措置の利用も検討し、必要な対応をしてきていると回答しているが、過去において日本政府がWTO提訴を行わなかった理由については回答していない。過去の不対応の理由を開示することと、今後の対応に支障をきたすおそれがあることとの因果関係は極めて不明確である。過去の不対応の理由を開示することが今後の対応に支障をきたすおそれがある理由について、簡潔に政府の見解を示されたい。

  右質問する。