質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第八八号

避難退域時検査のためのゲートモニタの実効性及び検査の処理試算に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年三月二十九日

山本 太郎


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   避難退域時検査のためのゲートモニタの実効性及び検査の処理試算に関する質問主意書

一 車両用ゲートモニタの実用性(実効性)について

 原子力災害時に三十キロ付近で行われる「避難退域時検査」において、車両の放射能汚染を測定する「車両用ゲートモニタ」は、交通渋滞を引き起こさない迅速な避難と、OIL4(四万cpm)を超える汚染を検出して汚染拡大防止の両立を図る上で重要な設備である。これは令和六年三月二十一日の参議院環境委員会において、伊藤太郎・原子力防災担当相も認めた見解である。

 内閣府原子力防災担当が令和四年五月に作成し、各道府県に送付した「避難退域時検査等における資機材の展開及び運用の手引き」によると、車両用ゲート型モニタが機能する上限の空間線量率、いわゆるバックグラウンド線量は、日立製作所製(MODEL五二―一―一)で毎時〇・三三マイクロシーベルト、千代田テクノル製(ガンマ・ポール)で毎時〇・四五マイクロシーベルトとなっている。福島第一原発事故発生直後の空間線量率を踏まえれば、原子力災害時に検査場のバックグラウンド線量が車両用ゲートモニタの機能する上限値を超えることは容易に想定される。

 原子力規制庁と内閣府原子力防災担当が作成した「原子力災害時における避難退域時検査及び簡易除染マニュアル」によると、避難退域時検査で用いる資機材として「車両用ゲートモニタ」の記述があり、また検査場において定期的にバックグラウンドを測定するよう求めている。ところが検査場のバックグラウンド線量が車両用ゲート型モニタの機能する上限値を超えた場合の対応策、いわば代替策の記述はない。一方、前述した「手引き」には、「ゲートモニタのバックグラウンド計数率の上限を超えた場合は、…使用を中止し、表面汚染検査用測定器によるタイヤ部の測定に切り替える」と短く記されている。

1 原発事故発生直後、「ゲートモニタのバックグラウンド計数率の上限を超える場合」は高い確率で生じると考えるか。

2 「ゲートモニタのバックグラウンド計数率の上限を超える場合」がほぼ確実に起きることを前提に避難退域時検査の詳細を定めるべく、マニュアル及び手引きを改定するべきと考えるが、その考えはあるか。

3 「バックグラウンド計数率の上限を超える場合」に使用中止となる車両用ゲートモニタが機能する前提で策定された、これまでの原発避難計画(緊急時対応)を撤回して、改めて策定をやり直させる考えはあるか。

二 避難退域時検査の処理試算について

 内閣府政策統括官(原子力防災担当)が令和三年四月二十七日に発した事務連絡「令和三年度における避難退域時検査等の資機材整備について」は、車両用ゲートモニタについて、「令和二年度原子力防災研究事業」においてごく軽微な汚染でも発報する可能性が指摘されたことから令和三年度の原子力発電施設等緊急時安全対策交付金による新規購入を見合わせるよう関係道府県に求めていた。その後、「令和三年度避難退域時検査等における車両用ゲートモニタによる指定箇所検査のための測定マニュアルの作成業務」で、適切に設定することによりOIL4(四万cpm)の検出が可能になったとして、交付金申請の再開を通知している(令和四年一月十七日「今後の避難退域時検査等の資機材整備について」)。

 この通知(令和四年一月十七日)によると、仮にUPZ内全域でOILを超過し、UPZ内の全住民が一時移転等の対象になったとしても一週間程度で検査できることを想定した試算に基づき、避難退域時検査二会場分(一会場当たり二レーン)の資機材を最低限整備し、UPZ内の人口に応じて増やすよう道府県に求めている。

 この通知の別紙「避難退域時検査等の資機材数(内閣府試算)」には、一会場(二レーン)で一日八千人の検査が可能と見込み、原発立地地域ごとにUPZ内の全人口が七日以内で検査できる資機材数を明記している。例えば日本原子力発電東海第二原発のある茨城県は十六会場分、中部電力浜岡原発のある静岡県は十四会場分などとなっている。

1 この算定の基礎となる、一会場(二レーン)の検査可能人数「一日八千人」については、出典が「内閣府委託事業」とだけ記載されている。この事業名及び一日八千人の算定式について車両用ゲートモニタ使用の有無に触れた上で明示されたい。

2 内閣府及び日本原子力研究開発機構から開示された「実務人材研修(避難退域時検査等)」の配布資料(日本原子力研究開発機構原子力緊急時支援・研修センター作成)には検査可能台数の試算が記されている。平成三十一年二月十三日の研修資料によると、車両の指定箇所検査でタイヤ部とワイパー部の両方をゲートモニタで測定した場合に検査時間は一台あたり六十秒(タイヤ部五秒、ワイパー部十五秒、通過証交付十秒、裕度三十秒)。一方、令和四年度第三回の研修資料によると、タイヤ部をゲートモニタで測定し、ワイパー部を職員がサーベイメータで測定した場合も検査時間は一台あたり六十秒(ワイパー部二十五秒、タイヤ部五秒、裕度三十秒)となっている。この試算は実証に基づき出されたものか。もし実証に基づき出されたものであるのならば、当該実証の内容が記載された出典を明示されたい。

  右質問する。