質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一〇号

女性用トイレの運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年一月三十一日

須藤 元気


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   女性用トイレの運用に関する質問主意書

 二〇二三年六月にLGBT理解増進法が成立・施行された。LGBT当事者の権利もしっかりと守っていくことが重要であると同時に、社会で同じように生きづらい思いを抱く女性と子供の権利も同等に扱われることが望ましい。

 本法が成立してから、トランスジェンダーを装う「成りすましトランスジェンダー」が身体的な特徴を女性に合わせず女性浴場や女性用トイレに侵入し、本人は「心は女性です」と言って罪を免れようとするようになった。そういった事件によって、事情をよく知らない人たちの憎悪がトランスジェンダーに向けられるようになり、本当のトランスジェンダーの方たちが肩身の狭い思いをするようになったという側面がある。

 本法成立ごろに、女性浴場は「公衆衛生法」で七歳以上の男女は身体的特徴に沿って別々に利用するように厚生労働省から通知が出たので、外形的な性転換手術を受けていない方は遠慮いただく運用方針が明らかとなった。

 問題は、政府から利用に関する通知も指針も出ていない女性用トイレの運用方針が曖昧である点である。日本の女性用トイレは世界的に見ても性犯罪が起こりやすいとの指摘があり、男性よりも身体的に弱い立場の女性と子供たちを性犯罪被害から守るべき対策が積極的に取られている様子はない。特に、身体の小さな女児は、性犯罪被害に遭うことで内臓損傷などの肉体的な損害も大きいところから、一層の配慮が必要だとされる。

 ところが、トイレは、一つの省庁で一括で管轄されているわけでなく、事業所であれば厚生労働省、公衆トイレであれば地方自治体と管轄が分かれている。

 公衆浴場のように一括で運用に関する通知を出せるわけではないことは承知しているが、社会的混乱を防ぐために政府ができることがあるはずである。

 たとえば、先日、ある公衆トイレで男性が侵入し、それを発見した女性が警察官に相談したところ「LGBT法が成立してしまったため、本人が男性のようですが、心は女性だとおっしゃるので追い出すことができません」と対応してもらえなかった事例がある。事件化されなかったため報道もされていない状態だが相談を受けた。それをもって内閣府に問い合わせたところ、内閣府から警視庁に対して、「心が女性だとする身体的特徴が男性の方に侵入罪を適用してはならない」という通達や通知は一切出していないにも関わらず警察は本法を根拠に建造物侵入罪の適用ができないと現場で判断を行なっていた。

 そこで、警視庁に問い合わせたところ、建造物侵入罪に該当するかどうかは、個別の事案の具体的事実関係に基づくため一概に回答することは難しいとこのことだが、これらの経緯を踏まえて質問する。

一 政府におけるトランスジェンダーの定義とはなにか。例を挙げると、本人の性自認だけで決定するのか、女装している男性や男装している女性など伝統的に本来の性別とは異なる衣装を着用することを指すのか、医師による性同一性障害の診断が必要なのか、性器摘出と外形的な性転換手術を要するのか。政府見解を示されたい。

二 生物学的に男性かつ性自認が男性の方が女装している場合はトランスジェンダーに該当するのか。政府見解を示されたい。

三 憲法第十三条によると、個人の幸福を追求する権利は、公共の福祉に反しない限り保障されるとある。一般的に、「公共の福祉に反しない」とは個人間の権利の調整機能であると理解されている。女性用トイレなどの女性専用空間において、女性や女児とトランスジェンダー当事者との間で権利が対立した際には、政府がどのような「個人の権利」の調整を行えるのか。例えば、女性や女児が「生存権を侵害される」と主張し、トランスジェンダー当事者側が「表現の自由を侵害された」と主張した場合には、どのような権利調整が可能なのか。政府見解を示されたい。

四 公衆浴場は厚生労働省から明確な指針があったため、女性浴場に侵入する身体的特徴が男性の方を取り締まることが可能である。今後、女性と子供を性犯罪被害から守る対策として、内閣府から、「LGBT法施行後も、七歳以上の男女は身体的特徴にのっとって公衆トイレを利用すること」と各地方自治体に通知をするのは可能ではないか。

五 本法成立後から、警察の現場でも混乱が起こり、取り締まれるはずの事案を取り締まれないと勘違いする混乱が起こっている。内閣府から、「LGBT法施行後も、七歳以上の男女は身体的特徴にのっとってトイレを利用すること」と警察庁又は都道府県警察に通知をするのは可能か。

六 また、地方自治体によっては、女性の気持ちを無視して一方的に公衆トイレから女性用トイレを削減する措置を取っている地域もあり、女性から「男性優位の政治的な意思決定が、男性専用のトイレを残し、女性用のトイレを排除した。性被害に遭いやすい女性と子供たちの身の安全に対する配慮を欠いており不便である。政治が男性目線である限り、女性を性被害から守ることが難しい」と相談を受けている。女性理解増進法の制定など、女性の気持ちを理解し、女性の権利を守る法が必要ではないか。

  右質問する。