質問主意書

第213回国会(常会)

質問主意書

質問第一号

当選無効となった国会議員に対する国による不当利得返還請求権に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年一月二十六日

西田 実仁


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   当選無効となった国会議員に対する国による不当利得返還請求権に関する質問主意書

 昨年十二月十二日の最高裁判決によれば、「(公職選挙法第二百五十一条の)規定により遡って市会議員の職を失った当選人が市会議員として活動を行っていたとしても、それは上告人(大阪市)との関係で価値を有しない」とされ、「上記当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない」と断じている。

 これまでの行政実例(昭和四十一年五月二十日自治行第六十五号鳥取県総務部長宛行政課長回答)では、「当選無効により失職した議員が提供した勤務により受けた地方公共団体の利益と、地方公共団体が支給した報酬その他の給付を受けた当該失職議員の利益との間に差があると認められる場合には、その限度において、不当利得返還請求権を有することになる。しかし、一般的には、その勤務と給付は均衡しているとみられるのが通常であり、不当利得返還請求権も生じない」としており、一般的には、地方公共団体は支給した報酬等について返還請求をしてこなかったと見られる。

 今回の最高裁判決では、この行政実例が覆ったことになる。

 財政法第八条では、「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」、また、国の債権の管理等に関する法律(以下「債権管理法」という。)第十条でも、「債権の管理に関する事務は、法令の定めるところに従い、債権の発生原因及び内容に応じて、財政上もつとも国の利益に適合するように処理しなければならない。」と定めている。地方議員に関する今回の最高裁判決を踏まえれば、国は当選無効となった国会議員に対して、歳費の相当額の不当利得返還請求権を有するか。

 ただし、国会議員の歳費については、地方議員の報酬とは異なり、憲法第四十九条の規定により、「相当額」の受給権が保障されており、果たして、国会議員の活動も、最高裁判決のごとく、地方議員と同様、「価値を有しない」といえるかどうか。

 以上を踏まえて質問する。

一 債権管理法第十条は、「債権の管理に関する事務は、法令の定めるところに従い、債権の発生原因及び内容に応じて、財政上もつとも国の利益に適合するように処理しなければならない。」と規定している。この規定の趣旨は何か。また、この規定により各省各庁の長は、債権の管理に関する事務に関してどのようなことが求められるのか。

二 一般論として、国に不当利得返還請求権がある場合(その債務者が国に対して不当利得返還請求権を有している場合は、それらを相殺してもなお国からの請求分がある場合)、国は、会計法及び債権管理法の規定により、債権管理法第二十一条に規定する徴収停止等に該当しない限り、その債務者に対して履行の請求及び督促を行うことが求められることとなるか。

三 一般論として、前記二において債務者が履行しない場合は、債権管理法の規定により、同法第十五条ただし書に該当しない限り、同条各号に掲げる措置をとることが求められることとなるか。

四 債権管理法第九条第二項は、「財務大臣は、債権の管理の適正を期するため必要があると認めるときは、各省各庁の長に対し、当該各省各庁の所掌事務に係る債権の内容及び当該債権の管理に関する事務の状況に関する報告を求め、又は当該事務について、当該職員をして実地監査を行わせ、若しくは閣議の決定を経て、必要な措置を求めることができる。」と規定している。一般論として、各省各庁の長が前記三の措置をとっていない場合、財務大臣は同項に基づいて各省各庁の長に対して何らかの措置を求めることとなるか。

五 令和五年十二月十二日最高裁判所第三小法廷判決を踏まえると、当選人が公職選挙法第二百五十一条の規定により遡って国会議員の身分を失った場合には、国は、不当利得返還請求権に基づき、前記二から四の手続を行うことが求められるか。

  右質問する。