質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第一二二号
  令和五年十二月二十六日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員川田龍平君提出裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「財務大臣へ仲介を求める制度」が、仮に、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)による改正前の証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号。以下「旧証券取引法」という。)第七章の制度に関する御質問であるとすれば、同制度は、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律により廃止され、平成十年十二月一日以降は存在しないため、お尋ねの「当該制度が平成十九年に廃止されるまでの過去五年間の活用の実態」についてお答えすることはできない。

二について

 前段のお尋ね及び後段のお尋ねのうち「取り扱い対象案件の業種、内容」の差異については、「取り扱い対象案件の業種、内容」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第五章の五の制度は、指定紛争解決機関(同法第百五十六条の三十八第一項に規定する指定紛争解決機関をいう。以下二について及び三についてにおいて同じ。)が、金融商品取引業等業務(同条第八項に規定する金融商品取引業等業務をいう。以下同じ。)を対象として、当該業務に関連する苦情処理手続及び紛争解決手続に関する業務並びにこれに付随する業務(以下「紛争解決等業務」という。)を行う制度である。一方、旧証券取引法第七章の制度は、証券会社の行う有価証券の売買等について争いがある場合に、当該争いの当事者が当該争いの解決を図るため、内閣総理大臣に申し立て、仲介を求めることができる制度である。

 後段のお尋ねのうち「紛争解決機関の権限、運営などの差異」については、その具体的な範囲が明らかではないため網羅的にお答えすることは困難であるが、金融商品取引法第五章の五の制度は、指定紛争解決機関が、同法及び紛争解決等業務の実施に関する規程(以下「業務規程」という。)の定めるところにより、紛争解決等業務を行う制度であり、金融商品取引業等業務に関する紛争の当事者の申立てを受けて、指定紛争解決機関により選任された紛争解決委員は、当該紛争の当事者に対し、参考となるべき帳簿書類その他の物件の提出を求めることができるほか、当該紛争の解決に必要な和解案を作成し、当該紛争の当事者に対し、その受諾を勧告すること、同法第百五十六条の四十四第六項に規定する特別調停案を作成し、当該紛争の当事者に対し、それを提示すること等ができる。一方、旧証券取引法第七章の制度は、証券会社の行う有価証券の売買等につき争いがある場合において、当該争いの当事者から当該争いの仲介を求める申立てを受けて、内閣総理大臣が、当該申立てを受理し、仲介を行うことを適当と認めたときに当該職員に当該争いの仲介を行わせる制度であり、内閣総理大臣は、当該職員に当該争いの解決に必要な協定案を作成させ、当該争いの当事者に当該協定案の受諾を勧告すること等ができる。

三について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第五章第五節の制度については、同法第二百四十五条の規定に基づき主務大臣の認可を受けた日本商品先物取引協会(以下「協会」という。)に、同法第二百六十条の規定に基づき置かれるあっせん・調停委員会は、協会の紛争処理規程において、協会の会長が指名したあっせん・調停委員により、あっせん又は調停を行うこととされており、同法第二百四十一条に規定する商品デリバティブ取引等に関する紛争について、協会員若しくは商品先物取引仲介業者又はその顧客(以下「商品デリバティブ取引等に係る紛争の当事者」という。)からあっせん又は調停の申出があったときは、あっせん・調停委員は当該紛争に係る商品デリバティブ取引等に係る紛争の当事者又は利害関係を有しない者から意見を聴取し、当該紛争の解決に必要な調停案を作成し、当該紛争に係る商品デリバティブ取引等に係る紛争の当事者に対し、その受諾を勧告すること等ができる。

 一方、御指摘の「金融商品取引法の定める指定紛争解決制度」については、指定紛争解決機関である特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(以下「センター」という。)が、二についてで述べたとおり、「運営」を行い、「権限」を有する。

四について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、センター及び協会の別に、お尋ねの「過去五年間」の各年度における①苦情処理手続等の受付件数、②苦情処理手続等の解決件数、③紛争解決手続等の受付件数及び④紛争解決手続等の和解件数をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

1 センター

 平成三十年度 ①千五百六件 ②六百六十七件 ③七百四件 ④三百七十八件

 令和元年度 ①九百八十二件 ②六百六十八件 ③四百件 ④五百八十三件

 令和二年度 ①八百一件 ②六百七十件 ③百五十四件 ④百十一件

 令和三年度 ①七百六十六件 ②六百九十件 ③百十三件 ④八十件

 令和四年度 ①千十四件 ②七百八十四件 ③百七十三件 ④八十五件

2 協会

 平成三十年度 ①七件 ②三件 ③十一件 ④六件

 令和元年度 ①三件 ②一件 ③十二件 ④十件

 令和二年度 ①四件 ②零件 ③十七件 ④十一件

 令和三年度 ①零件 ②零件 ③五件 ④四件

 令和四年度 ①零件 ②零件 ③一件 ④一件

 また、お尋ねの「過去五年間」における当該期間内に終結した紛争解決手続等に係る面談等の所要回数について、センターでは九割以上の手続が、協会では七割以上の手続が、それぞれ一回の面談等をもって終結していると承知している。

五について

 前段のお尋ねについては、「金融商品などの販売や融資に関する苦情は、それぞれ各省のどの部署が担当」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融機関等の利用者から寄せられる苦情を含めた相談等を受け付ける部署として、金融庁では総合政策局リスク分析総括課金融サービス利用者相談室を、経済産業省では商務情報政策局消費・流通政策課消費者相談室を、それぞれ設置している。

 また、後段のお尋ねについては、お尋ねの「金融機関」及び「先物商品会社」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではなく、また、調査に膨大な作業を要することから、同庁に「寄せられた」「苦情」に関するお尋ねについて網羅的かつ正確にお答えすることは困難であるが、同庁総合政策局リスク分析総括課金融サービス利用者相談室に対する「各苦情の件数」については、平成三十年度から令和四年度までの間に同室で受け付けた相談等の件数は二十一万二千九百三十六件であり、また、これらの相談等の「主たる内容」は、預金、融資等、保険商品等及び投資商品等に関するものである。また、同省商務情報政策局消費・流通政策課消費者相談室に対する「各苦情の件数」については、平成三十年度から令和四年度までの間の苦情件数は十三件であり、また、これらの苦情の「主たる内容」は、顧客対応等に関するものである。

六及び七について

 お尋ねの「金融庁、経産省に寄せられた苦情のうち、同庁、同省が、それぞれ指定紛争解決機関に紹介する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融庁及び経済産業省は、金融機関等の利用者から受け付けた個別取引に関する苦情等について、センター及び協会に対して、紹介を行っていない。

八について

 お尋ねの「指定紛争解決機関に斡旋調整を申し立てた事例」、「業態」及び「件数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、各指定紛争解決機関(金融庁設置法(平成十年法律第百三十号)第四条第一項第三号コに規定する指定紛争解決機関をいう。)及び協会の別に、お尋ねの「過去五年間」の各年度における①紛争解決手続等の受付件数及び②紛争解決手続等の和解件数をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

1 一般社団法人全国銀行協会

 平成三十年度 ①百七十八件 ②五十三件

 令和元年度 ①百七十一件 ②八十七件

 令和二年度 ①百四十八件 ②八十二件

 令和三年度 ①九十五件 ②六十二件

 令和四年度 ①八十八件 ②三十八件

2 一般社団法人信託協会

 平成三十年度 ①一件 ②一件

 令和元年度 ①三件 ②零件

 令和二年度 ①一件 ②一件

 令和三年度 ①零件 ②零件

 令和四年度 ①一件 ②一件

3 一般社団法人生命保険協会

 平成三十年度 ①三百二十四件 ②百十一件

 令和元年度 ①三百四十五件 ②百十六件

 令和二年度 ①三百七十七件 ②百四件

 令和三年度 ①三百四十一件 ②百九件

 令和四年度 ①三百四十五件 ②九十七件

4 一般社団法人日本損害保険協会

 平成三十年度 ①三百九十七件 ②百五十六件

 令和元年度 ①四百十一件 ②百八十二件

 令和二年度 ①四百十三件 ②百六十七件

 令和三年度 ①四百七十八件 ②百六十四件

 令和四年度 ①五百二件 ②百六十二件

5 一般社団法人保険オンブズマン

 平成三十年度 ①二十五件 ②十三件

 令和元年度 ①二十四件 ②九件

 令和二年度 ①二十五件 ②十二件

 令和三年度 ①二十八件 ②十一件

 令和四年度 ①十八件 ②十五件

6 一般社団法人日本少額短期保険協会

 平成三十年度 ①二十六件 ②十件

 令和元年度 ①十四件 ②七件

 令和二年度 ①二十四件 ②十二件

 令和三年度 ①十九件 ②十一件

 令和四年度 ①十一件 ②八件

7 センター

 平成三十年度 ①七百四件 ②三百七十八件

 令和元年度 ①四百件 ②五百八十三件

 令和二年度 ①百五十四件 ②百十一件

 令和三年度 ①百十三件 ②八十件

 令和四年度 ①百七十三件 ②八十五件

8 日本貸金業協会

 平成三十年度 ①十件 ②五件

 令和元年度 ①四件 ②三件

 令和二年度 ①六件 ②三件

 令和三年度 ①一件 ②二件

 令和四年度 ①五件 ②二件

9 協会

 平成三十年度 ①十一件 ②六件

 令和元年度 ①十二件 ②十件

 令和二年度 ①十七件 ②十一件

 令和三年度 ①五件 ②四件

 令和四年度 ①一件 ②一件

九について

 前段のお尋ねについては、お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、センター及び協会は、それぞれの業務規程又は紛争処理規程において他の機関との連携について定めており、直ちに、両者における裁判外紛争解決手続を統合する必要はないと考えている。

 また、後段のお尋ねについては、裁判外紛争解決制度の導入時等、必要に応じて、諸外国の関連制度に係る調査は行われている。