質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第一一五号
  令和五年十二月二十六日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出貸与型奨学金の返済負担の軽減に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出貸与型奨学金の返済負担の軽減に関する質問に対する答弁書

一の前段について

 奨学金の返還については、これまでも、経済的理由から独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)における奨学金の返還が困難となった者に返還の期限を猶予したり、将来の収入に応じて返還できる制度を導入したりするなど、きめ細かな救済措置を講じてきたところ、さらに、「こども未来戦略」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において「貸与型奨学金について、奨学金の返済が負担となって、結婚・出産・子育てをためらわないよう、減額返還制度を利用可能な年収上限について、三百二十五万円から四百万円に引き上げるとともに、子育て時期の経済的負担に配慮する観点から、こども二人世帯については五百万円以下まで、こども三人以上世帯について六百万円以下まで更に引き上げる。また、所得連動方式を利用している者について、返還額の算定のための所得計算においてこども一人につき三十三万円の所得控除を上乗せする」としており、政府としては、同閣議決定に基づき、奨学金の返還負担を一層軽減することとしている。

一の後段について

 お尋ねの「現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策」の指すところが必ずしも明らかではないが、「こども未来戦略」においては、「教育費の負担が理想のこども数を持てない大きな理由の一つとなっているとの声があることから、特にその負担軽減が喫緊の課題とされる高等教育については、教育の機会均等を図る観点からも、着実に取組を進めていく必要がある」として、高等教育費の負担軽減について、一の前段についてで述べた奨学金の返還負担の軽減のほか、「授業料等減免及び給付型奨学金について、低所得世帯の高校生の大学進学率の向上を図るとともに、二千二十四年度から多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約六百万円)に拡大する。さらに、高等教育費により理想のこども数を持てない状況を払拭するため、二千二十五年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずることとし、対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図る」及び「授業料後払い制度について、まずは、二千二十四年度から修士段階の学生を対象として導入」するとしており、これらを着実に実施していくことにより、御指摘の「未婚率や少子化の改善」を進めていく考えである。

二について

 お尋ねの「現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策」の指すところが必ずしも明らかではないが、一の後段についてで述べた「こども未来戦略」における高等教育費の負担軽減については、現在その具体的な内容について検討を進めているところであり、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三について

 機構において、平成二十五年度以降の各年度において、要返還者(奨学金の貸与を受け、その奨学金を返還する義務を有する者をいう。以下同じ。)、要返還者の代理人又は裁判所からの連絡により、破産手続開始の申立て等が行われたものとして把握している件数は、平成二十五年度は二千九百八十八件、平成二十六年度は二千七百七十八件、平成二十七年度は二千七百八十九件、平成二十八年度は三千二百七十五件、平成二十九年度は三千八百九十件、平成三十年度は四千二百八十六件、令和元年度は四千五百三十三件、令和二年度は三千五百三十二件、令和三年度は五千百十九件、令和四年度は四千四百九十一件であると承知している。

四について

 奨学金制度に対する理解の促進については、機構において、例えば、各高等学校等が生徒、保護者、教員等を対象として開催する奨学金の説明会等に、奨学金制度の理解を促進するためのスカラシップ・アドバイザーを派遣して奨学金の返還等の資金計画を含めた適正な奨学金制度の利用等について説明する等して、奨学金制度に対する理解の促進を図っているものと承知しており、御指摘の「「学生ローン」等への名称変更」を行う必要はないと考えている。

五について

 お尋ねの「金利ゼロに戻すべき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、機構による有利子貸与事業については、限られた財源の中でより多くの学生等に奨学金を貸与することができるよう、民間借入金等を財源として低利で実施しているものと承知しており、これを取りやめることは考えていない。