質問主意書

第212回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一二第二号
  令和五年十月三十一日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出再生可能エネルギー事業に伴う森林開発に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出再生可能エネルギー事業に伴う森林開発に関する質問に対する答弁書

一の前段について

 お尋ねの「数値的な「貢献度」の目標」及び「どのような戦略課題を展望しているのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「二○五○年カーボンニュートラル」の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するとともに、これと二酸化炭素の吸収等の地球環境保全機能を始めとする森林の有する公益的機能の維持との調和を図ることについては、「森林・林業基本計画」(令和三年六月十五日閣議決定)に基づき、同機能の発揮と地域の合意形成に十分留意しつつ、林地の適正な利用を促進しているところであり、また、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号)第九条第四項に規定する再生可能エネルギー発電事業計画の認定に当たっては、当該認定の申請に係る発電事業者が森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)等の関係法令を遵守することを確認しており、当該関係法令を遵守していない等の場合には、認定を取り消す等の対応を講ずることとしているところである。

一の後段及び二について

 お尋ねの「太陽光パネル設置や風力発電によって減らされる森林について、どのような形で補うのか」及び「保安林転用」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、保安林の指定を解除する場合においては、「森林法に基づく保安林及び保安施設地区関係事務に係る処理基準について」(平成十二年四月二十七日付け一二林野治第七九○号農林水産事務次官通知)により、その対象範囲を必要最小限度の面積とすること、森林の公益的機能を確保し、当該保安林の指定の目的の達成に支障を生じさせないために、指定を解除する面積以上の代替保安林が原則として確保されること、えん提や排水施設等の代替施設が設置されること等を要件としているところであり、このことは、御指摘の「再生可能エネルギー事業において、保安林の指定解除」を行う場合も同様である。

三について

 御指摘の「岩手県知事」の「意見」については、発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成十年通商産業省令第五十四号)第十四条第三項の規定に基づき、岩手県知事から株式会社グリーンパワーインベストメントに対して述べられたものであると承知しており、政府として、これに対する評価や御指摘の「回答」は行っていないが、いずれにせよ、一の前段についてで述べたとおり、引き続き、再生可能エネルギーの導入の拡大と森林の有する公益的機能の維持との調和が図られるように必要な取組を進めてまいりたい。

四について

 お尋ねについては、例えば、再生可能エネルギー事業の事業者が再生可能エネルギー発電設備の設置箇所として国有林野のうちお尋ねの「緑の回廊」内のものを選定する場合において、当該事業者へ国有林野の貸付けを通常の貸付けよりも慎重に行う必要があると考えており、「緑の回廊の区域内への再生可能エネルギー施設の設置等に係る手続について」(令和三年三月三十一日付け二林国経第一八三号林野庁経営企画課長通知)により、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づく環境影響評価手続の結果等に基づき、林野庁において、当該「緑の回廊」の機能の維持保全等に支障がないよう適切な環境配慮のための措置が講じられることを確認した場合に限り、当該貸付けを行うこととしているところである。

五について

 御指摘の「大規模な道路開設や風況調査のための設備設置等」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、御指摘のような「事例」については把握していない。

 また、森林法第三十四条第二項の規定及び「森林法に基づく保安林及び保安施設地区関係事務に係る処理基準について」等により、当該保安林の指定の目的の達成に支障のない、小規模又は一時的なもの等である場合において、保安林の指定の解除を行わず、保安林において土地の形質の変更を行うことを都道府県知事が許可をすることができるとされているところであり、お尋ねの「保安林作業許可で再生可能エネルギー事業が実施される」ことについては、当該保安林の指定の目的の達成に支障のない、小規模又は一時的なもの等である場合に限られるものであることから、お尋ねの「保安林指定の趣旨」に反するものではないと考えている。

六について

 お尋ねの「数値的な計画」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、再生可能エネルギー発電事業に係る国有林野の貸付けの面積、件数等に関する具体的な計画は有していない。また、当該貸付けについては、国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第三条及び第七条第一項の規定に基づき、公用、公共用又は公益事業の用に供するとき等であって、対象地が所在する市町村長の同意が得られていること等により国有林野の用途又は目的を妨げない限度であることを確認した上で、行っているところである。