質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第九六号

わいせつ物頒布等罪といわゆるアダルトビデオのモザイク処理の関係に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十二日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   わいせつ物頒布等罪といわゆるアダルトビデオのモザイク処理の関係に関する質問主意書

 刑法第百七十五条では「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。」と定めており、我が国ではわいせつな電磁的な記録の頒布が禁じられている。

 これを踏まえ性行為映像物の制作、販売を生業とするアダルトビデオ(AV)業界では、刑法第百七十五条に基づく処罰を避けるため、従来から性器を映像的にぼかす、いわゆる「モザイク処理」を施すことで対策を講じている。

 他方で刑法第百七十五条の構成要件はそもそも非常に曖昧で、「何がわいせつに当たるのか」が不明確であるため、こうした対策がどの程度の効果があるかもまた不明確である。

 例えば、ある女優の写真集の出版を契機に事実上ヘアヌードがわいせつ物陳列罪で処罰されなくなったことは、その曖昧さの代表例と言えよう。

 そこで以下質問する。

一 令和三年九月十日の法務大臣閣議後記者会見において上川陽子法務大臣(当時)は「一般に、刑罰の在り方の検討には、処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されるようにすべきとの要請と、処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性等の刑事法の諸原則との調和をどのように実現するかという課題があり」と述べている。

 同発言からは「処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性」が「刑事法の諸原則」の一つであると政府が認識しているように読み取れるが、政府としてこのような認識に相違ないか。

二 刑法第百七十五条において「処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されるようにすべきとの要請」と「処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性」との調和はどのように実現されているのか。政府としての見解を問う。

三 アダルトビデオの編集過程において、性器を映像的にぼかす、いわゆる「モザイク処理」を施すことによって、当該アダルトビデオは「わいせつな電磁的記録」に当たらなくなり、アダルトビデオを制作、配信する事業は刑法第百七十五条に基づく処罰を免れることができるのか。また、免れないとしたらそれはどのような理由によるものか。政府の見解如何。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。