質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四三号

放課後等デイサービスに係る報酬改定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十一月十日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   放課後等デイサービスに係る報酬改定に関する質問主意書

 岸田文雄内閣総理大臣は所信表明演説の中で、「現場で働く方々の給与に関わる公定価格の見直しを進め、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築いたします。」と発言した。

 ここでいう公定価格とは医療の診療報酬、介護報酬、そして、障害福祉サービスの報酬を指しているものと思われる。

 令和六年度はこの三つの報酬改定が同時に行われる年となる。

 障害福祉サービスの中で「高齢化等による事業者の収益増加等」とは無関係の放課後等デイサービスの報酬改定についても上記の考えに沿って行われるものと考える。

 さて、現行の放課後等デイサービスの報酬は区分一(サービス提供時間が三時間以上)の事業所で定員十人以下の場合、平日の基本報酬は六百四単位となる。ここに児童指導員等を加配したとして得られる加配加算は百二十三単位で合計すると七百二十七単位になる。地域区分を東京二十三区の一級地で考えると重症心身障害児以外の障害児の場合、一単位十一・二〇であるので、定員十名が利用した場合、一日の報酬額は八万四百二十四円になる。開所日を平日のみの二十一日間とするとその月の報酬総額は百七十万九千九百四円になる。

 ここで放課後等デイサービスの人員配置を最低限の人数である児童発達支援管理責任者一名、基本人員の児童指導員二名に加えて、加配を取っている児童指導員一名の計四名で考える。

 この四名に賃金構造基本統計調査による令和四年度の全産業平均賃金である三十一万千八百円を支払うと賃金総額は百二十四万七千二百円になる。四名全員が四十歳以上だと仮定すると社会保険料の合計額はひとり当たり五万三千二百四十一円、四名で二十一万二千九百六十四円になるので、人件費としてみると百四十六万百六十四円になる。

 また、介護職員の平均賃金である二十五万七千五百円で上記同様に算出すると賃金総額は百三万円になる。四名全員が四十歳以上だと仮定すると社会保険料の合計額はひとり当たり四万三千三百十円、四名で十七万三千二百四十円になるので、人件費全体では百二十万三千二百四十円になる。

 この数字から人件費率を割り出すと全産業平均だと八十五・四パーセントとなり、事業としてほぼ成り立たない数字になり、介護職員の平均でも七十・四パーセントである。

 もちろん、他の加算を取得することで収入を増やすことはできるが、一方で、ほとんどの事業所でこれ以上の人数を配置しており、加算を取得したとしても全産業平均賃金を支給すると人件費率が五十パーセントを下回ることはほぼないと考える。

 当然、事業を行う上では人件費以外に、事務所の家賃、光熱費、トイレットペーパーなどの消耗品、事務機器等のリース代などの経常経費が加わるので、これでは事業所が黒字を出すのが非常に難しく、人件費を抑えることになるのは止むを得ないと言わざるを得ない。

 また、上述の試算では処遇改善加算を加味していないが、処遇改善加算で得た報酬額を全て一時金で支給することにしたとすると児童発達支援管理責任者は加算の対象者ではないので処遇改善加算で得た報酬以外から一時金を支払う必要があり、現行の処遇改善加算は職員数の少ない法人にとっては事業所に過度な負担を課し、結果、賃金の抑制につながっている。

 以上踏まえて以下質問する。

一 放課後等デイサービスの報酬を決める際に事業所の人件費率は考慮されてきたのか。

 また、政府は放課後等デイサービスの運営が適切に行われる人件費率はどの程度だと考えているのか所見を伺う。

二 次回以降の報酬改定の際は人件費率が少なくとも五十パーセント以下になるように決定すべきだと考えるが所見を伺う。

三 児童発達支援管理責任者は利用者の個別支援計画を作成することが主要な業務となっていることを考えると管理者の業務に加えて利用者への支援を日常的に行わなければならない。それにもかかわらず処遇改善加算の対象としていないが、来年度以降、児童発達支援管理責任者についても処遇改善加算の対象とすべきだと考えるが所見を伺う。

四 放課後等デイサービス以外の障害福祉サービスについても報酬改定にあたっては事業所の人件費率を考慮して報酬額を決定すべきだと考えるが所見を伺う。

五 また、処遇改善加算についてもサービス管理責任者等の個別支援計画の作成が業務となっていて、利用者に対して支援を行っている役職者についても処遇改善加算の対象とすべきだと考えるが所見を伺う。

  右質問する。