質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四一号

障害年金の障害等級に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十一月八日

舩後 靖彦


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   障害年金の障害等級に関する質問主意書

 「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和三年度)」によると、令和三年度末における障害年金(旧法年金・共済年金を含む)の受給権者数は約二百五十一万人、うち障害基礎年金一級は約七十三万人、障害基礎年金二級は約百四十八万人、障害厚生年金一級は約八万人、障害厚生年金二級は約三十万人、障害厚生年金三級は約二十九万人となっており、障害基礎年金、障害厚生年金ともに受給権者数は増加傾向にある。こうした状況を踏まえ、以下質問する。

一 不支給・却下件数、不支給・却下の理由別件数などの公表

 従来、障害年金の支給・不支給の決定にはばらつきが指摘されているほか、判断理由も明示されないため「不透明だ」との批判があった。

 平成三十一年四月十一日、大阪地方裁判所で、一型糖尿病にり患し、国民年金法に基づく障害基礎年金の支給を受けていた方に対してされた同法三十六条二項本文に基づく支給停止処分が、行政手続法十四条一項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法であるとの判決(平成二十九(行ウ)二百二十号等、判例時報二四三〇号十七頁等)が言い渡されたことを契機に、令和元年九月二十六日、厚生労働省年金局事業管理課長から「障害年金の不利益処分等に係る理由記載の充実について」の事務取扱通知が発出された。これに伴い、同月三十日付で、日本年金機構年金給付部から各関係部署宛てに「障害年金の不利益処分等に係る理由記載」の文書が発出され、令和二年四月一日以降に認定する対象処分のすべてに理由付記文書が添付されるようになった。

 ただ、現時点でも、「障害年金業務統計」では、新規裁定については、決定数のうち、支給件数(一級・二級・三級・手当金)と非該当件数の内訳は分かるものの、裁定件数、不支給・却下件数、不支給・却下の理由別件数などは公表されていない。

 データが公表されていないので、古いデータであるが、「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門検討会」第一回(平成二十七年二月十九日開催)に配付された参考資料四「障害基礎年金の支給決定等に関するデータ」(日本年金機構)の「新規裁定に関するデータ」によると、平成二十二年度から平成二十五年度の全都道府県の裁定件数は三十四万千八百九十八件、うち不支給・却下件数は五万六百二十八件、うち等級非該当件数は四万三千百三十七件で、裁定件数に対する不支給・却下件数の割合は十四・八%、不支給・却下件数に対する等級非該当件数の割合は八十五・二%となっている。つまり、これは「障害基礎年金の支給決定等に関するデータ」であるので、障害等級二級以上に該当しないとして、不支給・却下となっている案件が大部分ということになる。

 そこで、障害年金の障害等級の認定について、

1 裁定件数、不支給・却下件数、不支給・却下の理由別件数などのデータは日本年金機構にあるということか。政府として、毎年、公表する予定はあるのか。公表するとすれば、いつから公表するのか。公表しないとすれば、なぜ公表しないのか。

2 この傾向は、つまり、不支給・却下か否かは、障害等級二級以上に該当するかどうかという点が問題になっている案件が大部分であるという傾向は、その後も変わっていないか。

二 障害年金受給者の生活実態

 厚生労働省のウェブページで公開されている「統計表一覧」のうち、障害年金受給者実態調査のうち最新の統計である「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年」(調査年月二〇一九年)の「表番号十六」の「性別・制度別・障害等級別・傷病名別・仕事の状況別 受給者数/受給者割合」の「計」(=男女計)のタブを見ると、「厚生年金二級」受給者で「傷病名」「精神障害」のうち、二十四・八%の人が何らかの仕事に従事していることが分かる。うち、「常勤の会社員・公務員等」(「仕事一」に区分)として仕事に従事している人は一・七%、「臨時・パート等」(「仕事二」に区分)として仕事に従事している人は七%となっている。

 同じく、「国民年金二級」受給者で「傷病名」「精神障害」のうち、三十・六%の人が何らかの仕事に従事していることが分かる。うち、「常勤の会社員・公務員等」(「仕事一」に区分)として仕事に従事している人は一・八%、「臨時・パート等」(「仕事二」に区分)として仕事に従事している人は九・七%となっている。

 同じく、「表番号九」の「制度別・障害等級別・傷病名別・日常生活の介助の状況別 受給者数/受給者割合」の「割合」のタブを見ると、「厚生年金二級」で「傷病名」「精神障害」のうち、約三分の二(六十六%)の人が「移動」について「一人で出来る」となっている。

 同じく、「国民年金二級」受給者で「傷病名」「精神障害」のうち、七十・二%の人が「移動」について「一人で出来る」となっている。

 また、「年齢階級別の就業率について、平成二十一年と令和元年とを比較すると、全ての年代において就業率が上昇している」「障害種別・障害等級別の障害年金受給者の就業率を見ると、いずれの障害種別でも就労率は高まっている」とされている(「社会保障審議会年金部会」第五回(令和五年六月二十六日開催)配付資料二「障害年金制度の概要」の「二 障害年金受給権者の現状」)。

 このように、「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年」によると、障害等級二級の障害年金受給者の中には、厚生年金で二十四・八%、国民年金で三十・六%の人が何らかの「仕事」に従事し、厚生年金で約三分の二(六十六%)、国民年金で七十・二%の人が「移動」が「一人で出来る」ことが分かる。

 障害年金二級受給者のこの調査実態は、「障害者の権利に関する条約」、「障害者の雇用の促進等に関する法律」、同条約が前提とする「国際生活機能分類」(ICF)の趣旨と合致しているということでよろしいか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。