質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三九号

原子力災害からの防護におけるSPEEDIの積極的な利活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十一月七日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   原子力災害からの防護におけるSPEEDIの積極的な利活用に関する質問主意書

 日本学術会議の地球惑星科学委員会地球惑星科学社会貢献分科会は令和五年九月二十六日、「より強靭な原子力災害対策に向けたアカデミアからの提案」として、放射性物質拡散予測の積極的な利活用を推進すべきとの見解を発表した。

 大気中の放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」については、平成二十三年の東京電力福島第一原子力発電所の事故の際にその情報を被ばく等の防護措置に活用できなかったことを教訓とし、原子力規制委員会は平成二十六年に、「緊急時における避難や一時移転等の防護措置の判断にあたって、SPEEDIによる計算結果は使用しない」との考え方を示すとともに、平成二十八年には、原子力災害発生時にプルーム(放射性雲)の放出時期を「事前に予測することは不可能」であり、予測に基づいてプルームの方向を示すことは「かえって避難行動を混乱させ、被ばくの危険性を増大させる」としており、モニタリングポスト等のデータのみを活用することとしている。

 一方、原子力発電所の立地自治体からは予測情報の活用を求める声が上がったため、国は「自治体の責任で活用することは妨げない」として自治体の裁量で予測情報の使用を認めてはいる。しかしながら、各自治体において自力で拡散予測を行うことは経費的にも技術的にも困難であり、国の方針に沿って、原子力施設立地等の道府県に導入されていたSPEEDIシステムの端末機が撤去された状況では、立地道府県や地方自治体が拡散予測情報をリアルタイムで取得、利用を行うことは現実的には難しい。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故以降の十二年間に放射性物質の拡散を予測する数値モデルの高精度化により予測の信頼性は向上し、またその不確定性を定量化する新たな予測法も確立されてきている。

 日本学術会議の見解において、「国と原子力規制委員会が地方公共団体および国民に対して担うべき責任を結果的に果たすことができないという異常な事態が放置されたままになっている」、「モニタリングポスト等の観測値のみに依存する我が国の防護策は、予測情報を積極的に活用する国が多い中、国際的比較からも奇異に映る」との指摘を受けていることを踏まえて、原子力災害時の避難の判断にSPEEDIを利活用する検討を始めるべきと考えるが政府の所見を伺う。

 なお、仮に政府においてSPEEDIの利活用に関する方針を変更しない、またはそのための検討すら行わないとする場合は、その理由を明確かつ具体的に示されたい。

  右質問する。