質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一五号

「私人逮捕」と称する動画の拡散に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十月二十日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   「私人逮捕」と称する動画の拡散に関する質問主意書

 近年、SNSの普及により、ユーチューバーなどが「私人逮捕」と称し、他人の行為を犯罪と決めつけて、その人を取り押さえて、拘束する様子を撮影した動画がインターネット上で拡散されている。

 刑事訴訟法第二百十三条「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」という規定に基づいて、現行犯として逮捕していると見受けられるが、同法第二百十二条に規定する現行犯人に該当しない場合や被害者とされた者が望んでいないにもかかわらず、拘束している又は執拗に拘束しようとしている動画が拡散されている場合も見受けられる。

 私人であっても犯罪行為を目撃し、犯人が逃走することを阻止するために現行犯逮捕することは、犯罪行為の早期解決につながる場合も想定されるが、一方で、現行犯逮捕の要件の取り違え、事実誤認、人違いによりトラブルになる可能性もあるので、緊急性がある場合でも慎重に行うべきである。

 また、その様子を動画撮影し、公開する行為は、犯罪を行った事実があったとしても軽微な犯罪の場合、インターネット上に顔を晒すことに公益性があるとは言えず、私刑や名誉毀損に該当する可能性もある。事実誤認により犯罪を行っていない人が顔を晒されてしまった場合、一度インターネット上に拡散してしまった動画を削除することは非常に難しいため、無実の罪で誹謗中傷を受けることになるなど大きくプライバシーを侵害する状態になってしまう。

 以上のことから、憲法第二十一条で表現の自由が保障されているとはいえ、「私人逮捕」動画の公開に歯止めをかける必要があると考える。

 以下、政府の所見を伺う。

一 「私人逮捕」と称して、他人を拘束する動画がインターネット上に数多く拡散されているが、この問題に対する政府の把握状況及び認識について伺う。

二 前記一について、政府が把握している場合、インターネット上で「私人逮捕」と称する動画を公開することによって生じ得る法的問題点についての政府の見解を伺う。

  右質問する。