質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第五九号
  令和五年五月十二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問に対する答弁書

一について

 暫定保全措置命令とは、仲裁廷が、仲裁判断があるまでの間、当事者の一方の申立てにより、他方の当事者に対し、仲裁法の一部を改正する法律(令和五年法律第十五号。以下「改正法」という。)による改正後の仲裁法(平成十五年法律第百三十八号。以下「新仲裁法」という。)第二十四条第一項各号に掲げる措置を講ずることを命ずる命令をいう。

 暫定保全措置命令のうち新仲裁法第二十四条第一項第三号に掲げる措置を講ずることを命ずるものについては、新仲裁法第四十七条第一項の規定により、当該暫定保全措置命令の申立てをした者は、裁判所に対し、当該暫定保全措置命令に基づく民事執行を許す旨の決定を求める申立てをすることができ、当該決定がある場合に限り、当該暫定保全措置命令に基づく民事執行をすることができる。

 暫定保全措置命令のうち新仲裁法第二十四条第一項第一号、第二号、第四号又は第五号に掲げる措置を講ずることを命ずるものについては、新仲裁法第四十七条第一項の規定により、当該暫定保全措置命令の申立てをした者は、裁判所に対し、当該暫定保全措置命令に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときに新仲裁法第四十九条第一項の規定による金銭の支払命令を発することを許す旨の決定を求める申立てをすることができ、当該支払命令を債務名義として、民事執行の申立てをすることができる。

二について

 国際連合国際商取引法委員会が策定した「国際商事仲裁モデル法」では緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定が設けられていないこと等を踏まえ、改正法においては、御指摘の緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定を設けないこととしたものである。

三の1について

 御指摘の改正は、仲裁手続に関して裁判所が行う手続について、裁判所における専門的な事件処理態勢を構築し、その適正かつ迅速な処理を図るためのものである。

三の2について

 お尋ねの「国際仲裁に関する事案の申立て」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、新仲裁法第五条第五項は、仲裁判断の執行決定を求める申立てに係る事件が東京地方裁判所又は大阪地方裁判所以外の地方裁判所に申し立てられた場合において、当該地方裁判所が相当と認めるときは、当該事件の全部又は一部を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することができることとしている。

三の3について

 裁判所の人的体制の整備については、裁判所において、仲裁手続に関して裁判所が行う手続を適正かつ迅速に処理できるよう、適切に対応していくものと考えている。

四について

 新仲裁法第四十六条第二項ただし書は、裁判所は、相当と認めるときは、仲裁判断書の全部又は一部について日本語による翻訳文を提出することを要しないものとすることができるものとしているところ、いかなる場合に仲裁判断書の日本語による翻訳文の提出の省略を相当と認めるかについては、裁判所において、個別の事案に応じ、適切に判断されるものと考えている。