質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第一五号
  令和四年十月十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員塩村あやか君提出「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩村あやか君提出「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「ノネコ」については、法令上の定義はないが、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の細部解釈及び運用方法について」(令和四年九月十六日付け環自野発第二二〇九一六三号環境省自然環境局長通知)において、「狩猟鳥獣である「ノネコ」・・・については、生物学的な分類ではペットとして飼われているネコ・・・と変わらないが、飼主の元を離れて常時山野等にいて、専ら野生生物を捕食し生息している個体」としている。お尋ねの「ノラネコ」については、同通知において、「飼い主の元を離れてはいても、市街地または村落を徘徊している」ものとしている。

 お尋ねの「ノネコも動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)の対象となるのか」については、個別具体的な事情により判断されることとなり、一概にお答えすることは困難であるが、その上で申し上げれば、「飼主の元を離れて常時山野等にいて、専ら野生生物を捕食し生息している個体」であるノネコについては、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)の対象とならない可能性が高いと考えている。

二について

 奄美大島における飼い猫については、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町及び龍郷町(以下「五市町村」という。)それぞれの条例に基づき、令和三年度において三千百十七頭が登録されている。同島における野良猫の頭数については、五市町村において集落単位で把握を進めているが、現時点においては、同島全体での把握には至っていないため、お答えすることは困難である。同島におけるノネコの頭数については、環境省が平成二十六年度に実施した調査に基づき、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(平成三十年三月環境省那覇自然環境事務所、鹿児島県、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町及び龍郷町策定。以下「管理計画」という。)に平成二十六年度時点で約六百頭から千二百頭との推定値を記載している。

 また、後段のお尋ねについては、お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、管理計画において、同島の森林内で同省が捕獲した猫(以下「捕獲した猫」という。)の中で首輪を装着しているなどの特徴を有する個体については、管理計画に記載された基準に基づき、飼い猫の可能性が高いと五市町村で構成される奄美大島ねこ対策協議会(以下「協議会」という。)が判断することとしているが、御指摘の「ノラネコ、外で飼われている飼いネコがノネコと判断される基準」は策定していない。

三について

 お尋ねの「保護する必要のある希少種」の具体的に意味する範囲が必ずしも明らかではないが、例えば、奄美大島に生息する種のうち、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四条第三項に規定する国内希少野生動植物種であって、環境大臣等が同法第六条第二項第六号に規定する保護増殖事業を行っている対象であるアマミノクロウサギ、アマミヤマシギ及びオオトラツグミの三種の生息数については、最新の数値は現在見直しを行っているところであるが、それぞれの種の保護増殖事業十ヶ年実施計画(平成二十六年十二月環境省沖縄奄美自然環境事務所策定。令和元年十二月改定)において、それぞれ同島において二千頭から四千八百頭、同島を含む南西諸島の一部において二千五百羽から九千九百九十九羽、同島において二千羽から五千羽との推定値を採用しているところである。

四について

 三についてで述べた種については、山中で死亡している個体が多いと考えられることなどから、「死亡数」の網羅的な把握及び「死亡原因」の分析に必要な数の死体を回収することが困難であるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

 なお、環境省が令和三年に死体を回収した百二十四頭のアマミノクロウサギの死亡原因については、死体の回収された際の状況又は死体解剖における所見を踏まえ、令和四年八月末時点で、犬又は猫による捕殺が二十三件、交通事故が六十一件、死亡原因の不明なものが四十件であると分析しているところである。

五について

 前段のお尋ねについて、奄美大島において、不妊去勢手術が実施されている飼い猫については、令和三年度末時点では二千六百七十六頭であり、これらが「島内の飼いネコに占める割合」は八十五・九パーセントである。また、捕獲した猫については、管理計画において野外に戻さないよう対応することとしており、捕獲した個体に対して不妊又は去勢措置を行った上で捕獲した場所に戻す取組(以下「TNR」という。)は、管理計画を策定したいずれの主体においても実施していない。

 後段のお尋ねについて、五市町村全てにおいて、管理計画に基づく同島における生態系の保全に向けて、飼い猫に対する不妊去勢手術の助成事業や野良猫に対するTNRの事業が実施されているところであるが、これらの事業の効果を確かなものにするためには、それぞれの実施割合を高めることが重要であると考えている。政府としては、これらの事業の効果の検証や必要に応じた管理計画の見直しを含め、協議会と必要な連携を進めていく考えである。

六について

 捕獲した猫のうち飼い猫の可能性が高い個体に係る公示に当たり、実際に公示を実施する市町村において、適切な公示方法が採用されているものと承知している。また、公示期間については、奄美大島に所在する保健所において保護された犬を収容する際の公示期間を踏まえて、管理計画において「一週間」としており、妥当であると考えている。

 お尋ねの「捕獲したネコの保護及び譲渡に要した費用」の具体的に意味する範囲が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、捕獲した猫のうち飼い猫の可能性が高い個体以外の個体については、管理計画に基づき、協議会において、一時飼養、譲渡等の事業を実施しているところであり、令和三年度に当該事業に要した費用は約千二百万円であったと承知している。

七について

 「「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」に係るロードマップ」(令和二年十月環境省沖縄奄美自然環境事務所、鹿児島県、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町及び龍郷町策定)の中で「重点地区A」と定められた地域において、令和三年度末時点では、「飼いネコのマイクロチップの装着率」は五十二・○パーセント、同ロードマップの指標の一つである屋外で飼われている猫の不妊去勢率は八十九・七パーセント、「室内飼育されているネコの数」は二百六頭、「ノラネコに対するTNR実施率」は九十四・四パーセントである。

八について

 捕獲した猫のうち飼い猫の可能性が高い個体以外の個体については、これまで、一時飼養中に死亡した二頭を除いて、全頭が譲渡されており、安楽死させる処置は取られていないと承知している。また、協議会において譲渡等の事業が実施されているところ、政府としては、当該事業に係る経費を予算に計上していないが、引き続き、管理計画に基づく奄美大島における生態系の保全に向けて、必要な取組を進めていく考えである。