質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二二号

安倍元総理に国葬儀を行う理由等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月五日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   安倍元総理に国葬儀を行う理由等に関する質問主意書

 岸田総理は本年七月十四日の記者会見で、安倍晋三元総理の国葬儀、いわゆる国葬について以下のように述べている。

 「今回の選挙では、遊説中の安倍元総理が卑劣な暴力により命を落とされるという衝撃的な事件が起こりました。改めて、安倍元総理に哀悼の誠(まこと)をささげます。

 安倍元総理におかれては、憲政史上最長の八年八か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。

 外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。

 こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。」

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 「安倍元総理におかれては、憲政史上最長の八年八か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと」について、第二次安倍政権の二〇一五年には七十五日間、二〇一七年には九十八日間、二〇二〇年には四十七日間にわたって憲法第五十三条に違反して臨時国会の召集要求を無視しているが(特に、二〇一七年には臨時国会後直ちに衆議院を解散している)、安倍政権が「憲政史上最長」であったからと言ってそれを国葬儀の理由とすることは憲法の定める国民主権、議会制民主主義の観点から問題があるのではないか。

二 「東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。」について、安倍元総理が「東日本大震災からの復興」、「日本経済の再生」、「日米関係を基軸とした外交の展開等」について具体的にどのような国葬儀に値するだけの実績があると考えているのか具体的に説明されたい(「等」についても具体的に答えること)。また、これらの実績についてそれが戦後の歴代の総理の実績に比べても国葬儀を行う必要があると考えるほどに卓越したものと考える理由についても具体的に説明されたい(例えば、民主党政権の東日本大震災の復興の取組と比較するなどして答弁されたい。)。

三 「外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。」について、安倍元総理の国際的な評価が戦後の歴代の総理と比較して特別に国葬儀に値するだけ高いものであると考える理由について具体的に示されたい。また、安倍元総理への襲撃は断じて許されない蛮行と考えるが、一方で、戦後の総理においても大平氏や小渕氏のように在職中にお亡くなりになった方々がおり、その際にも国内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられているところ、なぜ、「突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられている」ことが安倍元総理を国葬儀で追悼しなければならない理由となると考えているのかについて具体的に説明されたい。

四 「国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。」について、なぜ安倍元総理の国葬儀を行うことが、我が国が暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示すことになるのか、更には、なぜ我が国が暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示すために国葬儀が必要であると考えているのかについて具体的に説明されたい。また、同様になぜ国葬儀を行うことが、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していくことになり、更には、なぜ活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していくために国葬儀が必要と考えるのか具体的に示されたい。

五 前記二から四までについて、なぜ、安倍元総理を追悼するに際して二〇二〇年の中曽根元総理などの内閣・自由民主党合同葬儀ではなく、国葬儀でなければならないと考えるのかについて併せて説明されたい。

六 岸田総理による七月十四日の記者会見の内容には、安倍元総理を国葬儀で追悼しなければならないことを具体的に示す理由がないところ、少なくとも明確な説明がなければ、政治利用のための国葬儀ではないかという疑念を抱かれるのではないか、政府の見解を示されたい。

七 安倍元総理については、昭和四十七年政府見解の「外国の武力攻撃」の文言の曲解等による法解釈ですらない不正行為による憲法違反である集団的自衛権行使の容認やアベノミクスの異次元の金融緩和により日本銀行が債務超過の危機に陥り円安による価格高騰等を国民に強いるなど、その政策や政治手法については深刻かつ大きく賛否が分かれるものが多々あるところ、こうした政治家である安倍元総理を国葬儀で追悼することは日本社会に大きな分断をもたらすことになるのではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。