質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一三号

肥料、輸入粗飼料価格の高騰から生産者の経営を守るための支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月五日

紙 智子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   肥料、輸入粗飼料価格の高騰から生産者の経営を守るための支援に関する質問主意書

 私は、本年六月十日に「肥料、配合飼料、輸入粗飼料の高騰に対する緊急支援に関する質問主意書」(第二百八回国会質問第六五号。以下「質問第六五号」という。)を提出し、政府は同月二十四日に答弁書(内閣参質二〇八第六五号。以下「答弁第六五号」という。)を決定した。

 一トン当たりの輸入価格は、尿素では新型コロナウイルス感染症の流行前の二〇二〇年一月の三万六千六百十一円から本年四月には十一万七千四百四十八円と約三・二一倍に、りん酸アンモニウムは四万四百七十四円から十四万七百二十二円と約三・四八倍に、塩化カリウムは四万四千八十五円から八万四千二十七円と約一・九一倍に上昇した。また、配合飼料の工場渡価格の全畜種の加重平均は、二〇二〇年一月の一トン当たり六万七千百七十二円から本年三月には八万三千二百二円と一・二四倍に上昇した。さらに、本年四月における輸入乾牧草の一キログラム当たりの輸入価格は、対前年同月比で約一・三五倍に上昇したことが明らかになった。

 農業経営に占める肥料費の割合が畑作で十三%(北海道は十五%)、飼料費は肥育牛が三十%、酪農が四十八%(同四十一%)、肥育豚が六十%、養鶏が五十六%である。

 新型コロナウイルス感染症の長期化に加え、ロシアのウクライナ侵略、政府の円安誘導策により二〇二二年六月末には一ドル百三十六円へと円安が進行し、肥料、輸入粗飼料のみならず、燃油をはじめとする生産資材の高騰によって、生産者の経営が圧迫されていることから、以下、質問する。

一 私は、質問第六五号において、肥料については、「二〇〇八年、リーマンショックで価格が高騰した際は、価格高騰前との差額を財政支援したが、事務手続きの煩雑さに加え、助成額が価格高騰分の七割であったことから、改善が求められた」と指摘し、新たな仕組みを求めたところ、答弁第六五号は「今後の肥料価格の動向が農業経営に及ぼす影響を見極めつつ、どのような対策が必要かを検討してまいりたい」との回答であった。

1 岸田文雄首相は、令和四年第一回物価・賃金・生活総合対策本部(六月二十一日)において、「食料品については、輸入小麦価格や飼料コストの抑制策に加え、農産品全般の生産コスト一割削減を目指して、二〇〇八年の対策も参考に、(中略)新しい支援金の仕組みを創設」すると発言している。燃油、マルチなど農業資材が高騰している。「農産品全般の生産コスト一割削減」は誰が行うのか。生産者だけに求めるのか。政府の見解如何。

2 岸田文雄首相は、令和四年第二回物価・賃金・生活総合対策本部(七月十五日)において、肥料原料価格の高騰対策については、二〇〇八年の対策も参考に、化学肥料二割低減の取組を行う農業者の肥料コスト上昇分の七割を補填する、新たな支援金の仕組みを創設するとしている。二〇〇八年の支援策と何が違うのか。申請や事務手続きの簡素化がどのように図られるのか。すでに化学肥料の低減に取り組んでいる生産者にメリットがあるのか。政府の見解如何。

3 新たな支援金は前年の肥料コストの上昇分の七割を支援することになっているが、新型コロナウイルス感染症の流行前の二〇二〇年一月から本年四月には、尿素の輸入価格は三・二一倍、りん酸アンモニウムは三・四八倍、塩化カリウムは一・九一倍に上昇しているのに、何故、前年のコスト差に限定したのか。政府の見解如何。

二 質問第六五号において、「輸入粗飼料価格については、価格高騰を緩和するための支援策はない」と指摘し、緊急支援を求めたところ、答弁第六五号は「国産粗飼料の広域流通のモデル的な取組の実証等を支援する」との回答であった。

1 一般社団法人中央酪農会議は、本年六月十五日に「日本の酪農経営実態調査」を公表した。同調査では、「日本の酪農家の九割が経営難」、「このままだと継続が難しいと感じる酪農家が六割」になることが明らかとなり、経営悪化の要因は「円安」が八十九・八%とトップになっている。新型コロナウイルス感染症の長期化や円安に加え、ウクライナ情勢によって、飼料原料、輸入粗飼料が高騰している。政府が本年七月十五日に示した「農産物生産コスト一割削減に向けて創設される新しい支援金等について」には、配合飼料価格高騰対策は示されているが、輸入粗飼料価格の高騰対策は示されていない。支援策が必要と考えるが、政府の見解如何。

2 二〇二〇年三月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、「肉用牛・酪農の生産拡大など畜産の競争力強化」をするために、水田を活用した飼料生産など、国産飼料の生産・利用を推進するとしているが、水田活用の直接支払交付金の牧草の単価を十アール当たり三万五千円から一万円に削減することは、この基本計画に背くものではないか。政府の見解を示されたい。

三 政府が本年七月十五日に示した「農産物生産コスト一割削減に向けて創設される新しい支援金等について」における生産者の所得を維持・向上させる施策、効果を明らかにされたい。

  右質問する。