質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一号

陸上自衛隊のセクハラ事案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月三日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   陸上自衛隊のセクハラ事案に関する質問主意書

 二〇二二年七月十四日に配信されたAERAdot.の記事「二十二歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは」(以下「本件記事」という。)によれば、陸上自衛隊の元隊員であった女性(以下「本件被害者」という。)は、陸上自衛隊に所属していた二〇二一年六月から同年八月にかけて、複数の上官から集団で、「胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた」などといったセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)を受けていたと実名で告発した(以下「本件事案」という。)。

 本件記事中では、本件被害者は適応障害と診断され、休職することとなったとあり、さらに、本件被害者は、総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告したが、一課からは「八月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。その後、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出したが、不起訴処分となったという。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 事実関係について

1 本件被害者が、本件事案について、本件記事中の「一課」に相談したことは事実か。

2 本件被害者が、本件事案について、本件記事中の「警務隊」に被害届を出したことは事実か。また、本件記事によると、「警務隊」は司法警察職員として検察に書類送検をしたようだが、これは事実か。

二 自衛隊におけるセクハラ対策制度等について

1 防衛省人事教育局服務管理官付セクシュアル・ハラスメント相談窓口(以下「防衛省セクハラ相談窓口」という。)は何名体制で運営されているのか。役職ごとに示されたい。

2 防衛省本省パワハラ・セクハラ防止担当部署(以下「防衛省担当部署」という。)はそれぞれ何名体制で運営されているのか。役職ごとに示されたい。

3 過去五年間に、防衛省セクハラ相談窓口及び防衛省担当部署はセクハラに関する相談を何件受け付けたのか示されたい。

4 過去五年間に、防衛省において、セクハラを理由として懲戒処分を受けた者は何人いるか、示されたい。

5 自衛隊において、セクハラを防止する研修は行われているか。行われていれば、その内容を示されたい。

6 本件記事中の「一課」は防衛省担当部署にあたるのか。あたらないとしたら、「一課」職員は、防衛省担当部署に本件事案を取り次いだのか。

7 建前上、部隊の他の誰かがセクハラ被害を受けていて、それを防衛省セクハラ相談窓口及び防衛省担当部署に通報した場合、不利益処分は受けないとしていても、本件記事中「「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり」とあるように、直属の上司が報復をにおわせて通報した者を探していては、通報した者及び被害者の保護が図られない。防衛省セクハラ相談窓口及び防衛省担当部署に通報した者は、不利益処分を受けないのか。また、どのように通報した者を保護しているのか。

三 自衛隊では、航空自衛隊基地に勤務していた元自衛官の女性が同僚の男性隊員から性的暴行を受け、被害を相談した上司には逆に退職を強要され、五百八十万円の損害賠償が認容された事例(札幌地判平成二十二年七月二十九日)(以下「札幌地裁判例」という。)や、女手一つで子育てをしている期限付き非常勤隊員に対し、雇用が不安定な立場につけこみ、継続任用するか否かという人事権をにおわせて、本人の意に沿わずにキスや性交をしPTSDを発症させたとして八百八十万円の損害賠償が認容された事例(東京高判平成二十九年四月十二日)など、たびたび重大なセクハラ事件が起こっている。特に、本件被害者はまさに札幌地裁判例とほぼ同様のケースであり、貴重な女性隊員の退職を防ぐことができなかったという点において、札幌地裁判例時点からセクハラ対策の進歩が見えない。相談窓口といった体裁をととのえても、実効性がないセクハラ対策など無意味である。本件事案を機に、自衛隊は今以上の体制でセクハラ対策を進めるべきと考えるが、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。