質問主意書

第208回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇八第五七号
  令和四年六月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)及び(2)について

 令和二年末時点で難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二第一項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)中の者の数及び審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいい、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十九号)第七十五条の規定による改正前の入管法第六十一条の二の九第一項の異議申立てを含む。一の4の(1)についてを除き、以下同じ。)中の者の数は、それぞれ、一万七千六十一人及び六千六百六十人である。

 令和三年末時点で難民認定申請中の者の数及び審査請求中の者の数は、それぞれ、一万三千三百二十四人(速報値)及び三千二百九十五人(速報値)である。

一の1の(3)について

 令和三年に地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局をいう。以下同じ。)における振り分けの段階で明らかに濫用・誤用的な案件として振り分けられたB案件又はC案件(「難民認定事務取扱要領」(平成十七年五月十三日付け法務省管総第八百二十三号法務省入国管理局長通知)に「B案件」又は「C案件」として記載されているものをいう。以下同じ。)の数は、B案件が三十三件であり、C案件が千百九十六件である。

一の1の(4)について

 令和三年に難民認定申請をした者のうち、難民認定申請時に二十歳未満であったもので在留資格を有していなかったものの数は二百十四人(速報値)であり、このうち入管法第二十二条の二第一項の規定により本邦に在留していたものの数は百五十六人であり、不法に本邦に在留していたものの数は五十八人(いずれも速報値)である。

一の1の(5)及び二の3について

 令和三年に仮滞在許可(入管法第六十一条の二の四第一項の仮滞在の許可をいう。以下同じ。)を受けた者のうち、仮滞在許可を受けた時点で二十歳未満であったものの数は九人(速報値)であり、その年齢別の内訳は、零歳が六人、一歳が三人(いずれも速報値)である。

 また、同年に仮滞在の許否の判断をした者のうち、東京出入国在留管理局成田空港支局(以下「成田空港支局」という。)、東京出入国在留管理局羽田空港支局(以下「羽田空港支局」という。)、名古屋出入国在留管理局中部空港支局(以下「中部空港支局」という。)及び大阪出入国在留管理局関西空港支局(以下「関西空港支局」という。)におけるお尋ねの「仮滞在が許可された人数及び許可されなかった人数」については、いずれも零人である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の2の(1)及び(2)について

 令和三年に難民と認定した者(審査請求手続において認定した者を含む。)七十四人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は四人(速報値)であり、退去強制令書発付後に難民と認定したものの数は二人(速報値)である。

 また、同年に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者五百八十人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は百二十三人(速報値)であり、退去強制令書発付後に在留を特別に許可したものの数は百十四人(速報値)である。

一の2の(3)から(5)までについて

 お尋ねについては、集計に当たって難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、通常の業務において集計していないものであり、お尋ねの「集計に要する時間の見込み」を含め、お答えすることは困難である。

一の2の(6)及び六の2について

 御指摘の「いわゆる「新しい形態の迫害」」に係る御指摘の「仕組み」の内容については、難民審査参与員からの提言や諸外国の実例なども参考にしながら、現在においても引き続き検討中であり、この「いわゆる「新しい形態の迫害」」を受けたことを理由に令和三年に難民の認定を受けた者はいない。

一の2の(7)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の2の(8)について

 令和三年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者九人の国籍別の内訳は、イランが二人、ウガンダが二人、中国が二人、ガーナが一人、カメルーンが一人、パキスタンが一人である。

一の3の(1)について

 平成二十二年から平成二十九年まで難民認定申請数が増加を続けていたことに伴い、審査期間が長期化している未処理案件が生じていた中で、それらを集中的に処理したことから、難民認定申請から処理までに要した期間の平均が長期化したものであると考えている。

一の3の(2)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(1)について

 口頭意見陳述(行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号。以下「新法」という。)第三十一条第一項本文に規定する意見の陳述をいい、新法による改正前の行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号。以下「旧法」という。)第四十八条において準用する旧法第二十五条第一項ただし書に規定する口頭で意見を述べる機会を含む。以下同じ。)の申立てをした者に対し、その機会を与えるか否かは、審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいう。)においては審理を主宰する難民審査参与員が判断し、異議申立て(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第七十五条の規定による改正前の入管法第六十一条の二の九第一項の異議申立てをいう。)においては難民調査官が難民審査参与員の意見を聴いた上で判断している。

一の4の(2)について

 現在においても、臨時的措置として、必要に応じて事件を「臨時班」に配分した後、当該「臨時班」において早期処理が見込めないと判断した場合、当該事件を他の班に配分することがある。

一の4の(3)について

 お尋ねの「「臨時班」に関与している難民審査参与員」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の4の(4)について

 審査請求に係る口頭意見陳述及び質問(新法第三十六条に規定する質問をいい、旧法第四十八条において準用する旧法第三十条に規定する審尋を含む。)の期日が開かれなかった六千二十一人のうち、口頭意見陳述及び質問を申し立てたが、期日が開かれなかった人数の合計は、二千八百二十三人である。

 その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(5)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の5について

 出入国在留管理庁において把握しているところでは、難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、令和三年に提起された件数は三十五件、同年に終局裁判がなされた件数は第一審、控訴審及び上告審の合計で二十六件である。

 また、同年において難民不認定処分取消請求訴訟、難民不認定処分無効確認請求訴訟又は難民認定義務付け訴訟における国の敗訴が確定した事案はない。

一の6の(1)及び(2)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の6の(3)について

 お尋ねの「「人道的な配慮を理由に在留を認めた」とされるミャンマー人四百九十八人のうち、難民とは認定されなかった四百五十六人」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の6の(4)について

 お尋ねの「「人道的な配慮を理由に在留を認めた」とされるミャンマー人四百九十八人のうち、難民認定手続の結果が出ていない四十二人」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の6の(5)について

 お尋ねの「二〇二一年末時点で難民認定手続中かつ緊急避難措置に係る在留資格「特定活動」を有しているミャンマー人千七百三十人のうち、四十二人について「人道的な配慮を理由に在留を認めた」」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の6の(6)について

 お尋ねの「迅速な審査が行われているといえる状況か」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにしても、引き続き迅速な案件処理に努めていく考えである。

二の1について

 令和二年に一時庇(ひ)護上陸許可(入管法第十八条の二第一項の一時庇護のための上陸の許可をいう。以下同じ。)の申請をした者の数は七人であり、その国籍・地域別の内訳は、イランが三人、イエメンが一人、カメルーンが一人、シリアが一人、南スーダンが一人である。同年に一時庇護上陸許可を受けた者の数は、南スーダンが一人である。

 令和三年に一時庇護上陸許可の申請をした者の数及び一時庇護上陸許可を受けた者の数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

二の2について

 過去四年間に、地方出入国在留管理局の各空港支局及び福岡出入国在留管理局福岡空港出張所(以下「福岡空港出張所」という。)において、難民認定申請を行った者の数は、成田空港支局については、平成三十年が二十三人、平成三十一年及び令和元年が十七人、令和二年が七人、令和三年が零人、羽田空港支局については、平成三十年が一人、平成三十一年及び令和元年が二人、令和二年が一人、令和三年が一人、中部空港支局については、平成三十年が零人、平成三十一年及び令和元年が零人、令和二年が零人、令和三年が零人、関西空港支局については、平成三十年が一人、平成三十一年及び令和元年が二人、令和二年が零人、令和三年が零人、福岡空港出張所については、平成三十年が零人、平成三十一年及び令和元年が零人、令和二年が零人、令和三年が零人である。

三の1について

 令和三年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は百二十四人(速報値)であり、このうち、難民認定申請中のものの数は十三人、審査請求中のものの数は六人(いずれも速報値)であるが、難民不認定処分取消請求訴訟係属中のものの数については、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

三の2について

 お尋ねの「施策」については、過去の国会における御議論等も踏まえ、法改正の要否を含め検討しているところである。

四の1について

 令和三年度において、難民認定申請をしている者のうち生活に困窮するものに対する支援としてする保護費の支給(以下「保護措置」という。)の申請をした者の数は、百四十八人であり、保護措置を受けた者の数は、二百五十人である。

四の2について

 外務省においては、難民認定申請者保護事業等の実施を公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(以下「委託先」という。)に委託しているところ、令和三年度における、委託先が保護措置の申請を受け付けてから保護措置を開始して差し支えない旨の結果通知を同省から受けるまでの期間の平均は、約八十五日である。

 また、同年度における保護措置を受けた者の平均受給期間は、約十八箇月である。

四の3について

 令和三年において、保護措置の申請をしたものの保護措置の開始が不適当と判断された者の数は、六十七人であり、その国籍は、イラン、ウガンダ、エジプト、カメルーン、ガンビア、ジンバブエ、スリランカ、セネガル、タンザニア、中国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、マリ及びミャンマーである。

 また、同年における、委託先が当該申請を受け付けてから保護措置の開始が不適当である旨の結果通知を外務省から受けるまでの期間の平均は、約百四十六日である。

四の4について

 令和三年度において、保護措置の対象者のうち直ちに住居を確保する必要があるものに対する支援として提供している難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「緊急宿泊施設」という。)を利用した者の数は、四人であり、その男女別の内訳は、男性が二人、女性が二人であり、国籍別の内訳は、カメルーンが一人、ガンビアが一人、コンゴ民主共和国が一人、セネガルが一人である。

 また、保護措置の申請から緊急宿泊施設の利用開始までの平均日数は約二十日、最短日数は零日、最長日数は七十八日である。

四の5について

 お尋ねの令和三年度の支給額は、①保護費が一億五百二十万八千九百三十一円、②生活費が六千八百五十万七千二百五十四円、③住居費が二千六百二十八万五千四十四円、④医療費が千四十一万六千六百三十三円である。

 また、同年度の緊急宿泊施設の予算額は、三百万九千六百円であり、執行額は、現在精算の手続を行っているところであり、現時点で具体的な金額をお示しすることは困難である。

五の1について

 お尋ねの各数値のうち、令和三年末時点の「(8) 前記五1(2)のうち退去強制令書の発付後に初めて難民認定申請した者の数及びその国籍の内訳」については、集計を行っておらず、その余の(1)から(7)までの各数値は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

五の2について

 令和三年末時点で退去強制令書の発付を受けて仮放免されていた者の数は四千百七十四人である。

五の3について

 出入国在留管理庁が各収容施設からの報告に基づいて把握した拒食中の被収容者の数は、令和三年末時点で零人、令和四年六月八日時点で一人(いずれも速報値)である。

六の1について

 御指摘の「一般化・明確化」については、難民認定制度の透明性向上の観点から、現在、我が国及び諸外国の実例や国連難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)が公表した文書なども参考にしながら検討中であり、所要の作業が終わり次第、できる限り早期に公表する予定である。

 また、お尋ねの「UNHCRとの協議の状況」については、UNHCRとの間で意見交換を継続的に実施しているところである。

六の3について

 難民認定申請に対する一次審査における難民認定申請をした者に対する事情聴取は、当該者から本国での迫害状況等の難民となる事由を聴取してその内容を確認するとともに、当該者の供述態度等からその供述の信用性を慎重に吟味することを目的として行うものであることに鑑みると、難民認定申請に対する一次審査における事情聴取に際して代理人の立会いを認めることについては、慎重に検討すべきものであると考えている。

 なお、平成二十九年三月から、難民認定申請に対する一次審査における難民認定申請をした者に対する事情聴取に際して、親を伴わない年少者、重度の身体的障害を有する者、精神的障害を有する者、重篤な疾病を抱える者等、特に配慮が必要な者については、医師、カウンセラー、弁護士等の立会いを認める取扱いを実施している。

 その上で、難民認定手続においては、従前から、難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号。以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書(昭和五十七年条約第一号。以下「難民議定書」という。)第一条の規定により難民条約の適用を受ける者を、難民認定申請の内容により個別に審査して難民と認定するなど、難民認定手続の適正な運用に努めてきたところであるが、更なる適正化を図るため令和二年十二月に第七次出入国管理政策懇談会が取りまとめた報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」を踏まえ、当該報告書で示された論点について、現在、法務省において検討を行っているところである。

六の4について

 お尋ねの「独立性を有する組織の設置」については、難民認定手続とその他の出入国在留管理行政の様々な手続とは密接に関連しており、難民の認定に関する事務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があり、新たに独立した機関を設置する必要はないものと考える。

 その上で、難民認定手続においては、従前から、難民条約第一条の規定又は難民議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける者を、難民認定申請の内容により個別に審査して難民と認定するなど、難民認定手続の適正な運用に努めてきたところであるが、更なる適正化を図るため令和二年十二月に第七次出入国管理政策懇談会が取りまとめた報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」を踏まえ、当該報告書で示された論点について、現在、法務省において検討を行っているところである。

六の5について

 お尋ねの「UNHCRの研修」の意味するところが必ずしも明らかではないが、難民に該当するか否か審査を行う上で、難民調査官の調査能力の向上は、難民を迅速かつ確実に保護するために重要であると考えており、従前から、UNHCR等の協力を得て、難民調査の手法等に関する研修等(以下「研修等」という。)を実施し、難民調査官の調査能力の向上を図っているところである。

 また、難民調査官は、難民認定申請者の国籍国等の人種、宗教、社会、政治等の国内情勢や日々刻々と変化する国際情勢について専門的な知識や情報を収集し、これらを十分に理解することが必要であるところ、出入国在留管理庁においては、入国審査官の中から、このような難民調査官にふさわしい資質を備えた者を難民調査官に指定しており、当該指定の前後を問わず、研修等を通じて難民調査官の調査能力の向上を図っているところである。

 また、令和四年四月一日現在の難民調査官に指定されている者の数は四百五人であり、その余のお尋ねについては、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。