質問主意書

第208回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇八第五五号
  令和四年六月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員舩後靖彦君提出障害のある労働者に対する労災認定基準に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員舩後靖彦君提出障害のある労働者に対する労災認定基準に関する質問に対する答弁書

一について

 障害を有する労働者に対する労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号。以下「労災保険法」という。)に基づく保険給付の支給の決定又は不支給の決定(以下「労災認定」という。)に当たっては、必要に応じて、当該労働者が有する障害の程度、労働災害の発生状況及びその原因等について個別に調査を行っているところである。また、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第九十七条の規定に基づき、労働者の障害の有無にかかわらず、労働災害の発生状況及びその原因等に関する報告を事業者に義務付けているところである。

 こうした取組を通じて、障害を有する労働者を含む労働者に対して、労災認定及び労働災害を防止するための施策について適切に措置を講じているところであり、現時点において、御指摘の「被災労働者のうち障害者であるもの・・・の件数、被災態様、被災原因」を調査することは考えていない。

二について

 お尋ねの「障害を有しない労働者の基準に照らす」及び「障害を有する労働者を基準として業務の過重性が判断されるべき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、労災保険法第一条においては「労働者災害補償保険は、業務上の事由・・・による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して・・・必要な保険給付を行」うと規定されており、労災認定に当たっては、労働者の疾病の発症等について、業務に内在する危険が現実化したものであると認められることを要し、御指摘の「障害のある労働者の労災認定」に当たっても、当該労働者の疾病の発症等について、業務がそれ以外の要因に比べて相対的に有力な原因と認められ、業務に内在する危険が現実化したものであると認められるかどうかを、疾病ごとの認定基準等に基づき個別に判断することとしているところ、こうした判断の過程において、当該労働者の障害の程度を考慮することとなることから、障害を有する労働者に特化した認定基準を新たに設ける必要があるとは考えていない。

三について

 御指摘の「「自然経過を超えて有意に増悪させている」ことが確認されれば十分であるという「自然経過超過増悪説」」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、基礎疾患を有する労働者の脳血管疾患及び虚血性心疾患等に係る労災認定については、医学等の専門家による検討の成果に基づいて取りまとめられた「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」を踏まえて定めた「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和三年九月十四日付け基発〇九一四第一号厚生労働省労働基準局長通知)の別添「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」に基づいて行っているところであり、適切なものと考えている。